灰色かび病(ボトリチス病)
糸状菌による病害。ボトリチス属菌による。気温20~23℃程度で湿度が高いと多発する。低温に強く、10℃程度しかなくても湿度さえあれば発病する。
この病原菌は腐生性が強いため、枯れかけの葉や、傷んだ花がらなどによく発生する。また、病原菌は、分生子(胞子)を形成するために紫外線を必要とするらしい。
発生時期
3~7月・9~11月
被害箇所
茎、葉、葉柄、葉鞘、新梢、新芽、花弁、つぼみ、果実、果梗、地下の球根、地際部分など。
主な症状
灰褐色~黒褐色・淡褐色・暗緑色・赤褐色などをした小斑点ができ、次第に拡大する。やがて、不整形の水浸状病斑を形成し、軟化腐敗する。多湿時には、腐敗部分に灰白色または茶褐色のカビが生え、その後、ゴマ粒のような黒い菌核を生じる。
葉に発生した場合、葉の縁から進行することが多い。
花弁の場合は、花弁の縁から進行することが多い。淡色系の花弁では濃色の病斑が、濃色系の花弁では淡色の病斑ができる。放置すると、その後にできる果実まで進行することがある。
球根植物がこの病気に侵されると、地下の球根まで進行し、腐敗・枯死することがある。
その他、貯蔵中の果物に、灰褐色をした綿状のカビが発生することがあるが、これもこの病気の一種である。
また、トマトの果実に多数発生する淡色の斑点(「ゴーストスポット」と呼ぶ)も、この病気の一種である。
対策
発病初期なら被害部分を全て除去し、薬剤を使用。病状が進行した株は周りの土とともに処分する。
【薬剤】【散布・土壌灌注】アミスター10、アミスター20ル、エムダイファー、オーソサイド、オキシラン、カリグリーン、キャプタン、キャプレート、グリーンダイセンM、グリーンペンコゼブ、ゲッター、サンヨール、ジマンダイセン、ジャストミート、スイッチ、スクレタン、ストロビー、スミブレンド、スミレックス、セイビアーFL20、ターフトップDF、ダイマジン、ダコニール1000、ダコレート、ダコレックス、トップグラスDF、トップジンM、トリアジン、ハーモメイト、パスポート、パスワード、プラタンフ、フルピカ、フロンサイド、フロンサイドSC、ヘリテージ、ベルクート、ベルクローブ、ペンコゼブ、ベンレート、ボトキラー、ポリオキシンAL、ポリキャプタン、ポリベリン、ロブラール500アクア、ロブラールなど。
【注意点】耐性菌が出やすいため、同一薬剤の連続使用は避ける。
予防策
傷んだ葉や花がらなどは早めに除去し、清潔を心がける。密植を避け、通風を改善する。土の水はけを改善する。株に水をかけない。できれば雨に当てない。多肥を避ける。窒素肥料を控える。株元を清潔に保つ。
近くに被害株があれば除去する。耐病性品種を栽培する。下葉が土に付かないようにする。株元をマルチングする。マルチング材は清潔なものを用いる。株とその周囲を近紫外線除去フィルムで覆い、胞子の形成を阻害する。
球根植物の場合、掘り上げた球根をすぐに乾燥させる。
【薬剤】【散布・土壌灌注】上記と同じ。
主な被害植物
非常に多い。下記は一例。
【草花・鉢花】アゲラタム、アスター、インパチエンス、カーネーション、キク、キンギョソウ、キンセンカ、グラジオラス、グロキシニア、サクラソウ、シクラメン、ジニア、シネラリア、シャクヤク、スターチス、スミレ、ゼラニウム、セントポーリア、ダイアンサス、ダリア、チューリップ、デージー、トルコキキョウ、ニチニチソウ、パンジー、ビオラ、ヒマワリ、フリージア、プリムラ、ベゴニア類、ペチュニア、ポインセチア、ホウセンカ、マリーゴールド、ミヤコワスレ、ラナンキュラス、ルピナスなど。
【観葉・多肉】アイビー、サボテン類、ブライダルベールなど。
【樹木・果樹】アジサイ、イチジク、イチョウ、ウメ、オウトウ、カキ、カリン、カンキツ類、キイチゴ、キウイ、キョウチクトウ、クチナシ、サツキ、サワラ、シャクナゲ、スギ類、セコイア、ツツジ類、トドマツ、ネズミモチ、ハナミズキ、バラ、ヒノキ、ビワ、ブドウ、ボタン、マツ類、モミノキ、モモなど。
【ハーブ・野菜】イチゴ、ウド、キュウリ、スイートマジョラム、タマネギ、トマト、ナス、バジル、レタス類など。
【ラン】アカカリス、ウチョウラン、エビネ、カタセタム、カトレア、オンシジウム、シンビジウム、デンドロビウム、パフィオペディラム、ファレノプシス、マキシラリア、リカステなど。