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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ジャンル別索引:庭木・花木

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※ 植物名リストの下方に、このジャンルに関する解説文があります。

植物名リスト

このジャンルについて

概要

  1. ここにあるのは、比較的耐寒性が強く、地植えに向く木本である。果実を収穫できる木は「果樹」、耐寒性の弱い木本は「鉢花」「観葉植物」へ。
  2. 種類によって、花を観賞する木(花木)、枝葉を観賞する木(葉もの)、果実を観賞する木(実もの)と、用途はさまざまである。
  3. 木本は、休眠期に葉が落ちる「落葉樹」と、一年中葉が茂っている「常緑樹」に分けられる。そして、落葉樹はさらに「落葉広葉樹」と「落葉針葉樹」に分かれ、常緑樹は「常緑広葉樹」と「常緑針葉樹」に分かれる。
  4. ここでは、落葉広葉樹を「落葉樹」、常緑広葉樹を「常緑樹」、落葉針葉樹と常緑針葉樹をまとめて「針葉樹」と呼ぶことにする。
  5. 針葉樹は、幅の狭い細長い葉を持つのが特徴。種類によっては、本当に針に似た葉をしている。なお、常緑針葉樹は園芸上、「コニファー」と総称されることがある。
  6. 木の高さによって、下記のように分類される。高木はさらに「大高木(20m超)」「中高木(~20m)」「小高木(~10m)」という細かい分類があるが、そのような巨樹を庭や鉢に植えることは少ないと思われるので、ここでは触れない。
    • 高木…高さ5mを超える木。「喬木」ともいう。
    • 中木…高さ3mを超え、5m以下の木。
    • 低木…高さ3m以下の木。「灌木」ともいう。
    • 小低木…高さ1m以下の木。明確な主幹を持たず、地際付近から多くの細い枝を出す。
    この他、「半低木(亜低木)」という言葉もあるが、これは木の高さを表す言葉ではなく、「基部のみ木質化し、枝先などは草のように柔らかい、木本と草本の中間的な植物」をいう。
  7. 各植物ページの解説は全て、鉢植えで育てることを前提にしている。しかし、地植えにしたほうが、水やりや植え替えなどの管理がほぼ不要になるので、楽ができる。

日照について

  1. 木本は、日なたでよく育つ「陽樹」と、日陰でよく育つ「陰樹」がありで、育てる場所によって使い分ける。大雑把に言って、落葉樹や針葉樹は、ほとんどが陽樹だが、常緑樹は、陽樹が多いものの、陰樹も相当数存在する。なお、多くの陽樹は日陰では育たないが、多くの陰樹は日なたでも育つ性質がある。(つまり、陰樹のほうが、日光の強弱に対する適応範囲が広い。)
  2. 陽樹でも、真夏の西日だけは嫌がることがある。だからといって、地植えの大きな木まで頑張って遮光する必要はない。年数の経った木は、植わった場所の環境に慣れており、強い日光が当たっても耐えられる。
  3. 休眠中の落葉樹は葉が一枚もないので、日光の当たらない暗い日陰で越冬させても大丈夫。ただし、園芸上は「落葉樹」に分類されていても、完全には落葉しない(中途半端に葉が残る)、「半落葉性」の木もある。(例、アジサイ、バラ、ヒペリカムなど。)半落葉性の木は、休眠中も日光に当てるとよい。春が近づいて新芽が動き出せば、ようやく古葉が落ちる。

施肥・その他の管理

  1. 花や果実を観賞する木は、開花や結実のために、毎年体力を消耗するので、定期的に肥料を施したい。枝葉だけを観賞する木は、あまり肥料を必要としないが、定期的に刈り込みや剪定を行うのなら、やはり定期的な施肥が必要である。
  2. 施肥の時期は、鉢植えの場合、冬~早春の「寒肥(元肥)」、初夏の「夏肥(追肥)」、秋の「秋肥」の三回が基本である。落葉樹は寒肥に重点を置き、あとは少なめに施すが、常緑樹は一年中生長が続くので、秋肥もしっかり与える。なお、落葉樹・常緑樹とも、初夏の追肥だけは、伸長中の新梢が徒長してしまう危険があるため、窒素分を控えめにする。
  3. 樹木類の基本的な生育サイクルは、だいたい決まっている。春に伸び出した新梢は、6月下旬~7月中旬頃に生育を一時停止して成熟し、暑さが収まってくる9月頃に再度生長する。(「秋伸び」という。)7月以降に窒素肥料が多いと、秋になってからも強い新梢が伸びることがあり、その結果、秋に伸びた未熟な新梢が冬の寒さで傷んでしまう。7月以降に窒素分を控えるのは、このためである。
  4. 地植えの場合は、肥料を全く施さないか、施すにしても寒肥(元肥)だけで足りる。鉢植えと同じように施してもよく育つが、肥料の分量は少なめにする。木をあまり大きくしたくなければ、いっそ無肥料でよい。
  5. ただし、苗木や幼木の間は、木の用途や鉢植え・地植えを問わず、施肥を怠らない。木が小さいうちに、しっかり肥料を与えて体を作らせておけば、健全な成木に育つ。
  6. 地植えの大きな木に肥料を施す際は、地面を少し掘り、肥料を埋め込む方法をとる。肥料を埋める場所は、樹冠(全ての枝葉をひとかたまりに見立てた言い方)の枝先の真下付近(木を真上から見て、樹形全体を円に見立てた、その円周上)がよい。市販のスティック型肥料を打ち込むと楽。小さな苗木や小低木なら、株元に、適当に肥料をばらまくだけで十分。
  7. 夏~秋にかけて花芽分化(花芽のもとが作られること)する木が多いので、この時期だけは、窒素分を控えないと、次回の花付きが悪くなる。また、鉢植えの木は、同時に水やりも控えめにすると、花芽が多くできる。ただし、乾かしすぎて枯らさないよう注意。
  8. 枝葉を観賞する木は、5~6月に「芽摘み(摘芯)」を行うと、新梢の伸びを抑制したり、逆に、枝数を増やしたりできる。しかし、具合の悪い木で行うと、かえって弱ることがある。「芽摘み」は、カエデやケヤキなどの盆栽で行う作業である。
  9. 木の形を整えるには剪定が必要である。剪定を行う適期は、落葉樹なら11~3月と6~7月頃、常緑樹なら3月と6~7月頃、針葉樹なら3~4月と6~7月、11~12月頃が目安。ただし、たとえ適期であっても、開花中は剪定を行わない。剪定作業の詳細については、「切り戻し・剪定」を参照。
  10. 庭木・花木類の繁殖方法は、接ぎ木や挿し木、取り木が一般的である。タネからでも殖やせるが、木本のタネは一般的に、草本のタネより発芽が遅く、発芽率も悪く、おまけに発芽後の生長まで遅いので、根気がいる。それぞれの具体的な方法については、「接ぎ木」「挿し木・根伏せ」「取り木」「タネまき・育苗」のページを参照。
  11. タネから殖やす場合は、果実の果肉を完全に洗い流してタネを取り出し、保存せず、すぐにまくのが大原則。すぐにまけなければ、タネが乾かないよう、湿らせた砂などに埋めて密封し、春にまく。なお、カエデやツツジ、マツなどのように、果肉のないカサカサしたタネは、乾燥保存しても大丈夫。(ただし、ツバキ等、例外もある。)

入手~植え付け・植え替え

  1. 苗木を入手する際は、次のような点に注意して選ぶ。
    • 節間が間伸びせず、全体的にずんぐりしている。
    • 色ツヤのよい葉がたくさんある。落葉樹を休眠期に入手する場合は、芽がたくさんある。
    • 木の上部だけでなく、下部にも枝がある。
    • 接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分がしっかりと癒合し、台木と穂木の太さの差が小さい。
    • 根にコブがなく、細い根がたくさんあり、かつ、根が乾燥していない。
    • 根元がぐらつかない。
  2. 根がほとんど無い粗悪な苗を平気で売る店があるので、日頃から、信頼できる店を知っておきたい。葉のない落葉樹のポット苗や根巻き苗は、根が一本もなくても、外見ではわからない。
  3. 家のシンボルツリーにするなど、最初から大きな木を入手したい場合は、専門的に扱っている造園業者に注文し、植え付け作業までやってもらったほうがよい。大きな木の植え付け・支柱立ては、素人には難しい。また、一度、縁ができれば、その後のメンテナンスも頼みやすい。
  4. 植え替え・植え付けの適期は、原則として、落葉樹なら葉の無い11~3月頃、常緑樹なら比較的気温の高い3月・6~9月頃、針葉樹ならやや寒い2~4月・9~11月頃である。
  5. 例外的に、カエデやケヤキなどは、年明け後に植え付け・植え替えを行うと、活着が悪く、木が弱ることがある。また、ボケやボタンは、9~11月の間に済ませないと、根頭がんしゅ病にかかったり、ネコブセンチュウの被害を受けやすくなったりする。さらに、サルスベリやヒペリカム、ネムノキのように、暖地性で、やや耐寒性に欠ける木は、3~4月がよい。
  6. 庭木・花木類は、原則として、新梢が出て固まるまでの、4月上旬~5月中旬の間は、植え替え・植え付けをしてはいけない。根を一切傷付けなければ可能だが、よほどの理由がない限りは避ける。
  7. 落葉樹の植え替え・植え付けは、休眠期に行えば成功率が高く、意外と簡単である。(もちろん、フジのように、根を切ると枯死しやすい、気難しい木もある。)基本的には、根鉢(根と土がひとかたまりになった部分)の表面を崩して、元の2/3程度の大きさにし、はみ出た長い根を切り詰めて植える。なお、根に付いた土を全て落とし、根を水洗いしてから植え付ける方法もある。
  8. 落葉樹の苗木には、土や鉢が無く、根がむき出しの状態で売られる「棒苗(裸苗)」というものがあり、冬に出回る。そのような苗を購入したらすぐ、半日くらいバケツの水に根を浸け、十分吸水させてから植える。根を乾かすと、ひどく弱る。
  9. 温暖地なら、休眠直前の10月頃に、苗木の根鉢の表面を軽くほぐしてから植え付けると、翌春からの生育がよい。
  10. 落葉樹を、どうしても葉のある時期に植え替えたければ、葉を全て摘み取ってから行う。6月頃に行える。ただし、枯らす危険は覚悟しておく。
  11. 常緑樹の植え替え・植え付けは、基本的に落葉樹の方法と同じだが、根に付いた土を落とすのは最小限にとどめたほうが、失敗が少ない。
  12. 常緑樹の植え替え・植え付けは、根を切り詰めると同時に「摘葉(蒸散を抑えるために、葉の数を減らす作業)」を行わないと、木が傷むことがある。とはいえ、よほど根を傷めない限り、行わなくても支障はない。
  13. 「摘葉」を行うには、伸長中の若い枝なら、軟らかい芽先の部分を摘み取るか、下葉を少し落とすとよい。伸長が止まった古い枝なら、枝先を少し切るか、枝に付いている葉を全て1/2の大きさに切る。
  14. 針葉樹の植え替え・植え付けは、種類によってかなり適期が異なるので注意する。実際の作業手順は常緑樹に準じる。
  15. 木の形状・種類を問わず、暖地性の樹木(例、ザクロ、サルスベリ、キョウチクトウ、ノウゼンカズラ、マキなど)の植え替え・植え付けは、気温が上がり始める3月頃に行う。これらの木は耐寒性が弱く、寒い時期に植え替え・植え付けを行うと、傷みやすい。
  16. 木の種類を問わず、根巻き苗(根の部分を麻布と荒縄で包んである苗)を植え付ける際は、そのまま植えるか、布と縄を丁寧に外し、根の土を落とさないよう注意して植える。ただし、ビニールや化学繊維など、土中で分解されない物質で巻かれている場合や、鉢植えにしたい場合は、必ず布と縄を取り外して植える。
  17. 木を鉢植えにする場合は、やや粘質の重い土(赤玉土や黒土など)を主体にした用土に植えると、根張りがよくなる。草花・野菜用の土では軽すぎて、根がしっかりと張れず、生育が思わしくない。
  18. 接ぎ木された苗木を植え付ける際、接ぎ木部分を覆っているテープは取り除いたほうがよい。すぐに取る必要はないが、取り忘れて時間が経つと、木の生長とともに幹に食い込んでしまう。
  19. 苗木や鉢植えを庭に地植えする場合は、以下のような手順で行う。
    1. 苗の根鉢より一回り大きな、円形の植え穴を掘る(植え穴の直径は根鉢の二倍が目安)。掘り上げた土には堆肥または腐葉土を2~3割混ぜ込んでおく。
    2. 植え穴を少し埋め戻して中央を盛り上げ、その上に、根鉢をほぐした苗木を据える。
    3. さらに土を埋め戻し、深さ10cm程度のドーナツ型の溝を残す。(これを「水鉢」と呼ぶ。)
    4. 水鉢の中にたっぷりと水を注ぎ、しばらくして水が引いたら、再度、たっぷりと水を注ぐ。これを二~三回繰り返したら、土を全て埋め戻して水鉢をつぶし、そのまま半日ほど放置する。
    5. その後、株元を軽く踏み固めておく。ただし、ツツジ類のように、細い根がひとかたまりになっている植物は、株元を踏んではいけない。(ここまでの一連の作業を「水極め法(みずぎめほう)」という。)
    6. 水を何度も注いでは引かせる「水極め法」の他に、「土極め法」もある。土極め法は、苗を据えた後、土を埋め戻しながら、ひたすら、手や棒で根の間に土を突き込む方法である。土を全て埋め戻したら、株元を軽く踏み固め、しっかりと水やりをする。
    7. 作業が終わったら、苗木がぐらつかないよう支柱を立てておく。
  20. 地植えの木(特に常緑樹)で、2m以上あるような大きな木や、根が粗く細根が少ない木を、どうしても植え替えたい場合は、作業の数ヵ月~1年前に「根回し」を行う。根回しの作業手順は、「根回し」のページをを参照。
  21. 植え付け・植え替えをしたばかりの木は、支柱を立てて安定させておく。そうしないと、風雨などで木がぐらぐらすると、根が地中で揺さぶられ、土と密着しないため活着が悪くなり、最悪の場合、枯死することがある。
  22. 大きな木を植え付けた場合は、複数本の支柱を組み合わせ、縄で縛って固定する。一般的なのは、三本の支柱を使い、八箇所を縄で縛る「八がけ支柱(三本支柱)」と、街路樹などでよく見る「鳥居型支柱」である。縄の結び方は、一度縛るとほどけない「男結び」とする。(いずれも、文章で表すのは無理があるので、詳細は割愛する。)一度添えた支柱は、数年間そのまま使い続けるので、自信がなければ、植え替え作業から支柱立てまで、造園業者に頼んでやってもらう。

病虫害対策

  1. 庭木・花木類は、とかく害虫が付きやすい。大きな木は薬剤散布もままならず、害虫天国になっていることさえある。なるべく薬剤に頼らずに虫害を減らしたければ、冬の間に、落ち葉の中や樹皮の下、樹皮の裂け目、枝の又の部分などに潜んでいる害虫を探し出し、徹底的に捕殺しておく。成虫の状態で潜んでいることもあるが、多くは卵やサナギである。
  2. 薬剤はなるべく使いたくないが、庭に多くの木を植えている場合、冬季の石灰硫黄合剤とマシン油乳剤の散布だけは行ったほうがよい。これらを散布すると、春以降の病害虫の発生が抑えられ、結果的に、生育期間中の薬剤使用回数を減らすことができる。石灰硫黄合剤は、病気と害虫の両方に大きな効果があり、マシン油乳剤は、カイガラムシやハダニなどの害虫に効果がある。
  3. いずれも、12月中旬~3月中旬(常緑樹は2月上旬まで)の冬季のみ散布が可能で、それ以外の時期だと、ひどい薬害が出る。なお、冬の積雪が多い地域では、降雪直前か、雪解け直後に散布する。
  4. 石灰硫黄合剤は、散布時期が遅れると、常緑樹に対して薬害が出やすい。一方、マシン油乳剤は、カンキツ類の果実やマツ類など、一部を除いて、比較的薬害が少ないが、散布が遅れると、キウイやブドウにも薬害が出ることがある。
  5. 石灰硫黄合剤とマシン油乳剤は、混用(混ぜて一緒に散布すること)や同時散布ができない。両方散布する場合は、1ヵ月ほど間隔を空ける。なお、いずれか一方しか散布しない場合は、5~7日ほど間隔を空け、2~3回散布すれば十分。(個人的には、1回の散布で足りると考える。)
  6. 石灰硫黄合剤は強アルカリ性で、金属を腐食させるので、乗用車などにかからないよう、細心の注意を払って散布する。皮膚や粘膜に付着すると、ヤケドのような症状が出るので、直接触ったり、吸い込んだりしてはいけない。また、一般家庭では行わないと思うが、石灰硫黄合剤をリン酸肥料と混用すると、硫化水素(温泉地でおなじみの、卵が腐ったような臭いの気体)が発生し、中毒を起こすことがある。(※硫化水素は、濃度が高まると、無臭の気体となる。)
  7. 石灰硫黄合剤の散布が終わったらすぐ、使用した噴霧器を水でよく洗わないと、詰まってしまい、使えなくなる。