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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ジャンル別索引:多肉植物・サボテン

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※ 植物名リストの下方に、このジャンルに関する解説文があります。

植物名リスト

このジャンルについて

概要

  1. ここにあるのは、水分を蓄えた肉厚の茎葉を持ち、土の乾燥に耐える植物である。(私の独断と偏見で分類。)一般的に、サボテンを始めとする多肉植物は、極端な乾燥や強光に晒される場所に暮らすものが多い。そうした過酷な環境に適応するべく、体内に貯水組織を発達させているのが大きな特徴である。
  2. しかし、茎葉が多肉質なら全て多肉植物なのかというと、そうでもない。例えば、カトレアはかなり肉厚な硬い葉を持つが、これは「洋蘭」であって多肉植物として扱うことはない。また、子持ち海葱は肥大した丸い鱗茎が地表に露出し、葉も少し肉厚だが、あくまで「球根植物」であって多肉植物ではない。多肉植物とそうでない植物の線引きは、少しあやふやなところがある。
  3. 多肉植物は、植物の分類学上、特定の科に限定されているわけではなく、サボテン科はもちろんのこと、キョウチクトウ科、スベリヒユ科、ツルボラン科(アロエ科)、トウダイグサ科、ハマミズナ科(ツルナ科)、ベンケイソウ科など、50以上の科にまたがる。
  4. 多肉植物は、サボテンのイメージから、暑い砂漠に生えるものと思われがちだが、実際は、北極圏・南極圏を除く、ほぼ世界中に分布しており、日本にも存在する。
  5. サボテンや多肉植物の多くは和名が付いている。そのため、学名よりも、和名で呼ばれるほうが圧倒的に多い。例えば、サボテンの「エキノカクタス・グルソニー」という学名を聞いても、ピンとこないが、「金鯱(きんしゃち)」という和名を聞けば、植物園の温室でよく見る、金色のトゲを持つ大型の球サボテンを連想しやすい。また同様に、「クラッスラ・ポーチュラセア」という学名から、「金の成る木(=花月)」を連想できる人は少数派と思われる。
  6. 多肉植物には、秋に葉が紅葉する種類がある。だいたい最低気温が10℃前後になると、紅葉が始まるらしい。モミジなどとは違い、紅葉したからといって、葉が落ちてしまうことはない。暖かくなると元の葉色に戻る。美しい紅葉を見るには、生育期間中に適度な日光に当て、紅葉が始まる頃に肥料の効き目が切れるように管理することが大切。また、水やりも、秋が近づくにつれて控えめにする。

サボテンについて

  1. サボテンは多肉植物の筆頭格で、全ての種類が「サボテン科」に属する。サボテン科は非常に大きな科で、原種だけでも3,000種前後、園芸品種も含めると5,000種にも達するといわれる。そのため、園芸上は、他の多肉植物から切り離して扱うのが普通である。(「サボテン・多肉植物」のように、分けて表記することが多い。)
  2. サボテンの最大の特徴は、トゲが生える「刺座(「アレオーレ」ともいう)」の存在である。刺座にはクッション状の毛が生えており、トゲだけでなく、花芽や子株もここから発生する。トゲを持つ植物自体はバラやユズなどいろいろあるが、刺座を持つ植物は、サボテン以外には存在しない。

メセン類について

  1. ハマミズナ科(ツルナ科)に属する「メセン(女仙)」と呼ばれる一群は、多肉植物の中でも、別格の地位を占める。(そのため、科名を「メセン科」とすることもある。)大きく分けて、姿形を楽しむ「玉型メセン」と、美しい花を楽しむ「花物メセン」があり、単に「メセン」というと、前者だけを指すようである。最近は、玉型メセンの開花株が安く売られているが、これは典型的な冬型種で、夏越しに注意が必要な種類もある。
  2. 花物メセンは、マツバギクの仲間やリビングストンデージーなどが代表種である。こちらは夏型種がメインで、耐寒性は無いものの、栽培容易な種類がほとんど。「花物」と呼ばれるだけあって、どの種類も非常に美しい花を咲かせる。

夏型種・冬型種・春秋型種

  1. 多肉植物は、生育の仕方によって「夏型種」「冬型種」「春秋型種」の三系統に分けられる。聞き慣れない言葉だが、球根植物に、春~秋に生育し冬に休眠する「春植え球根」と、秋~春に生育し夏に休眠する「秋植え(夏植え)球根」があるのと同じ理屈。なお、サボテンは、ほとんどの種類が夏型種に属する。
  2. 夏型種…春~秋に生育し、冬に休眠する。
    • 【ア行】アダンソニア、アデニウム、アガベ(「笹の雪」「No.1」など)、アデニア、アナカンプセロス(「春夢殿」「吹雪の松」など)、アプテニア、アロエ(スプラフォリアタ、「医者いらず」「鬼切丸」など)、アローディア、イドリア、イベルビレア、イポメア、ウェルウィッチア、ウンカリーナ、エキドノプシス、エディトコレア、オスクラリア、オペルクリカリアなど。
    • 【カ行】ガステリア、カランコエ(「錦蝶」「月兎耳」「唐印」など)、カラルマ、カリバナス、キフォステンマ、クセロシキオス、クラッスラ(エクスパンサ、「花月」「神刀」「若緑」など)、グラプトペタルム、ケラリア、ゲラルダンサス、コミフォラ、コラロカルプス、コレウスなど。
    • 【サ行】サンセベリア、ジゴシキオス、シッサス、シナデニウム、シノクラッスラ、シンニンギア、スタペリア、スタペリアンサス、セロペギア、センナなど。
    • 【タ行】タキトゥス、タバレシア、タリヌム、ディスキディア、ディッキア、ディディエレア、デウテロコニア、デカリア、デュバリア、デロスペルマ(「花嵐山」など)、トラデスカンティア、ドルステニア、ドロサンセマムなど。
    • 【ナ行】ネオアルソミトラ、ノリナなど。
    • 【ハ行】ハエマンサス(「線香花火」など)、パキコルムス、パキポディウム(「亜阿相界」「恵比寿笑い」など)、ピレア、フィッカス、フィランサス、フェルニア、フォッケア、プセウドリトス、プテロディスクス、ブラッキステルマ、ブルセラ、プルメリア、プレクトランサス、ヘクチア、ペディランサス、ポーチュラカリア、ホーディア、ボスウェリア、ホヤ、ボンバックスなど。
    • 【マ行】モナデニウム、モモルディカ、モリンガなど。
    • 【ヤ行】ヤトロファ、ユーフォルビア(フランコイシー、「紅彩閣」「花キリン」など)、ユッカなど。
    • 【ラ行】ランプランサス、レクステイネリア、レデボウリアなど。
  3. 冬型種…秋~春に生育し、夏に休眠する。
    • 【ア行】アエオニウム、アストリディア、アストロロバ、アドロミスクス、アナカンプセロス(アルストニー、パピラセアなど)、アルギロデルマ、アルブカ、アロイノプシス、アンテギバエウム、イミタリア、エキヌス、エリオスペルマム、オドントフォルス、オトンナ、オフタルモフィルムなど。
    • 【カ行】カディア、カランコエ(「白銀の舞」など)、ギバエウム、キリンドロフィルム、クラッスラ(スザンナエ、「キムナッキー」「月光」「シンガールブラ」「稚児姿」「都星」「緑塔」など)、グロッチフィルム、ケイリドプシス、ケファロフィルム、ケラリア、ケンシチア、コノフィツムなど。
    • 【サ行】サルコカウロン(モンソニア)、シュワンテシア、ストマチウム、スパルマンサス、セネシオ(ラティシペス、「万宝」など)、セファロフィルム、セムナンテなど。
    • 【タ行】ダクチロプシス、ダドレア、チタノプシス、チレコドン、ディオスコレア(「亀甲竜」など)、ディディオマオツス、ディプロソマ、ディンテランサス、デロスペルマ、ドーベニアなど。
    • 【ナ行】ナナンサスなど。
    • 【ハ行】ハエマンサス(「眉刷毛オモト」など)、バンヒルディア、ブーファン、フォーカリア、フォークイエリア、プサモフォラ、ブルビネ、ブルンスビギア、プレイオスピロス、ベイゼリア、ペラルゴニウム、ベリスフォルディア、ベルゲランサス、ベルセミア、ヘレアンサスなど。
    • 【マ行】マカイロフィルム、マッソニア、マレフォラ、ミトロフィルム、ムイリア、メストクレマ、モナンテス、モニラリア、モンソニアなど。
    • 【ヤ行】ユーフォルビア(「羊玉」など)など。
    • 【ラ行】ラピダリア、リトープス、ロンボフィルムなど。
  4. 春秋型種(低温夏型種・高温冬型種を含む)…春と秋に生育し、夏と冬に休眠する。
    • 【ア行】アガベ(ネバデンシス、「青磁炉」など)、アボニア、アロイデンドロン、アロエ(エリナセア、コルトリリオイデス、ハエマンティフォリア、パルブラ、ポリフィラ、ラエタなど)、エケベリア、オロスタキスなど。
    • 【カ行】クラッスラ(「紀の川」「月光」「稚児姿」「火祭」「星の王子」「紅葉祭り」など)、グラプトベリア、コチレドンなど。
    • 【サ行】セダム(ヒントニー、「乙女心」「玉つづり」「虹の玉」「宝珠」など)、セネシオ(「銀月」「新月」「七宝樹」「清涼刀」「緑の鈴」など)、センペルビウムなど。
    • 【タ行】ディオポゴン、トリコカウロン、トリコディアデマなど。
    • 【ハ行】ハオルチア、ハオルチオプシス、パキフィツム、パキポディウム(「光堂」など)、フェネストラリア、フリティア、ペペロミア、ボウイエアなど。
    • 【ヤ行】ユーフォルビア(オベスム、ゴルゴニス、ステリスピナなど)、ユッタディンテリアなど。
  5. なお、上記の植物名(属名)の羅列は、信憑性が低いことを付け加えておく。例えば、エケベリアやパキフィツムは、夏型種とする文献と、春秋型種とする文献があった。また、ハオルチアも、文献によって、冬型種だったり春秋型種だったりで一定しなかった。
  6. 「春秋型種」という言葉は、もともと、耐暑性の弱い夏型種(低温夏型種)と、耐寒性の弱い冬型種(高温冬型種)の総称だったらしい。要するに、過ごしやすい気候の時だけ生育する種類である。この生育型の植物には、暑さ寒さを非常に嫌い、栽培にコツがいるものが混じっている。その中でも、特に栽培の難しいものは「難物」と呼ばれ、上級者向けに位置づけられる。
  7. 日本は夏が過酷すぎるうえ、冬もそれなりに冷え込む。そのため結局、多くの種類が春と秋に生育することになる。
  8. また、「夏型種」だからといって耐暑性が強いとは限らず、逆に、「冬型種」だからといって耐寒性が強いとは限らない。どんな種類でも、最低限の夏越し・冬越し対策を怠らない。

日頃の管理

  1. 日光を好む種類が多いので、生育期間中はよく日に当てる。とはいえ、真夏はとかく日焼けしやすいので、遮光したほうが無難。なお、秋に紅葉する種類は、春以降の日光が不足するときれいに色付かない。
  2. 他の園芸植物よりも、日光不足に対して敏感に反応する。少しでも日光が不足すると間延びし、良い姿にならない。
  3. この仲間は、茎葉に水分を蓄えているため、土の水分が過剰になると根元から腐りやすい。できる限り水はけのよい土に植え、水やりを少なめにして育てるのが基本。普通の植物は、生育期間中、植わっている土の表面が乾いたら水を与えるが、サボテン・多肉植物の場合は、さらに1~3日は待ち、鉢底まで乾ききった頃を見計らって水やりをする。
  4. 基本的に、冬型種は真夏、夏型種は真冬、春秋型種は真夏と真冬に生育が停止し、休眠に入る。この時期に水やりが多いと高確率で腐敗するため、ほとんど与えずにおく。(月に一~二回か、完全断水する。)
  5. その他、風通しのよい場所で育てることも非常に大切である。
  6. あまり多くの肥料を必要としない傾向がある。生育期間の初期に緩効性肥料を置き肥するか、植え替え時に元肥を入れれば、大抵の種類は足りる。ただし、生長が特に早い種類や、花期が長い種類には、薄めの液肥を追肥したほうがよい。ただ、秋に紅葉する種類は、色着く頃まで肥料が残ると汚い紅葉になる。
  7. 植える土は、市販の「サボテン多肉植物の土」でも足りるが、自分で作る場合は、川砂(または山砂)3に対し、赤玉土小粒3、腐葉土3、軽石砂1の混合などとする。鹿沼土や軽石、焼き赤玉土、もみ殻くん炭なども使える。その他の配合例については、「土」ページにある「実際の配合例」を参照。
  8. なお、森林性の着生サボテン(イースターカクタス、カニバサボテン、クジャクサボテン、月下美人、シャコバサボテン、リプサリスなど)は、通常の多肉植物とは勝手が違うため、専用の「シャコバサボテンの土」を使う。自分で土を配合する場合は、砂を減らし、やや重めの土にする。赤玉土小粒4に対し、腐葉土3、軽石またはパーライト3などで。さらに、根腐れ防止用に珪酸塩白土を一割ほど混ぜれば、なお良い。
  9. 植える鉢にはこだわらないが、あまり地中深くまで根を伸ばさない種類が多いので、深い鉢に植えるのはやめたほうがよい。(ただし、例外あり。)
  10. 植え替えの頻度は、サボテンならほぼ毎年、その他の多肉植物でも、2年に一度くらい。特に、3号以下の小鉢に植えているものは、必ず毎年植え替える。サボテンは一部の種類を除いて、特に植え替えを好み、生育のよい若苗なら、年に二回植え替えることも可能。
  11. 植え替えの時期は、生育期間の開始期(夏型種は3~5月、冬型種は9~10月、春秋型種は3~5月か9~10月)が原則だが、根元から腐り始めているなど緊急を要する場合は、季節を問わず即座に行う。
  12. 普通の植物は、植え替え後すぐに水やりをして、土と根を落ち着かせるが、サボテン・多肉植物の場合は、傷口から腐りやすいため、作業後3~7日ほど経ってから、様子を見て水やりを再開する。なお、植え替えや株分けなどで、株に大きな傷を付けた場合は、すぐに土に植えず、3~7日ほど裸のまま置き、傷口をしっかり乾かしてから植える。そうしないと傷口から病気が発生し、株全体が腐ることがある。
  13. 多くの多肉植物は、株分けや挿し木、葉挿しなどで、容易に殖やすことができる。カランコエやエケベリア、ガステリア、セダム、ハオルチア、パキフィツムなどには、たった一枚の葉からでも芽と根を出す、非常に生命力の強い種類が存在する。
  14. 種類によって耐寒性・耐暑性に大きな差があるが、園芸店や百円ショップに出回っているものは比較的丈夫。冬は最低5℃を目安にし、あまり高い温度にあわせない。ただし、アデニウムやパキポディウム、ペディランサス、ポーチュラカ、ヤトロファなど、特に寒さに弱い種類は除く。
  15. 比較的、害虫が付きやすい。ハダニやカイガラムシ、根ジラミの被害を特に受けやすい傾向がある。
  16. 最近は、多肉植物の寄せ植えが流行っているが、種類によって生育期や性質が違うことを踏まえ、同じ特性を持つものだけを寄せるようにしたい。