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素人園芸解説 -私はこう育て る-

園芸知識:自然農薬

概要

  1. 「自然農薬」とは、「人体に安全」とされる成分(例…牛乳、重曹など)を農薬の代わりとして使い、病虫害を防ごうという試みである。実際の効果としては、植物の健康を増進しつつ、ニオイで害虫を遠ざけたり、殺菌効果で病原菌の活動を抑えたり、有益な菌の栄養分となったり、という感じ。本物の農薬のような劇的な効果は現れないため、過剰な期待はしない。
  2. 物によっては毒性が強く危険である。「自然農薬=安全、農薬=毒」と一概に決めつけるのは良くない。市販の農薬は国が定めた安全基準をクリアし、登録を受けている。(その基準が本当に安全か、という点は置いておく。)自然農薬には、そうした客観的な安全基準が存在しない。市販品の自然農薬もあるが、農薬登録されていない製品は、上記の理由から、本当に安全かどうか分からない。すべて自己判断・自己責任で使用されたし。
  3. もし、市販品の自然農薬に、「うどんこ病に効く」とか「アブラムシを駆除できる」とか、そうした効果を売りにしている製品があれば、疑ってかかった方がよい。なぜなら、そうした謳い文句は、「農薬取締法に基き、正式な登録を受けた農薬」にしか許されないからである。(つまり、法律上問題があるということ。)
  4. 自然農薬も、普通の農薬と同様、効果が長続きしない。よくもって5~7日である。少しでも長持ちさせたければ、展着剤を加え、成分を茎葉にしっかりくっ付ける。
  5. 薬液1リットルにつき1~2gの黒砂糖、または5~7gの石鹸を溶かすと、展着剤の代わりになる。なお、キャベツなど、表面が水をはじく植物に使う際は、もう少し多めに溶かす。
  6. 自然農薬もいちおう薬なので、植物によっては薬害が出る。葉の一部などに試しがけを行い、変色などの異常が起きないことを確認してから使用する。散布後に異常が起きたら、希釈率を上げ、薄くしてみる。それでもダメなら散布を諦め、別の方法を考える。
  7. 実際の散布作業の詳細は、市販の農薬と同じである。「薬剤(農薬)」ページにある「噴霧法」を参照。毒性のあるものを除き、マスクなどで防御する必要はない、とされる。なお、服に付くとシミになり、洗濯しても落ちないものがあるので注意。散布後、効果が今ひとつだと感じたら、5~7日後にもう一度散布する。

自然農薬の例

  1. 代表的な自然農薬を下に列記する。まず最初は、害虫忌避や滅菌・抗菌、生長促進・耐病性向上などを総合的に期待するものである。ここでは、誰でも気軽に作れてすぐ使えるものを私の独断と偏見で載せた。個人的に作るのが面倒だと思ったもの(長期の熟成が必要なものや、数多くの材料をブレンドするもの)は除外している。
    1. オオバコの茎葉を、水1リットルにつき50g入れた煮出し汁…2倍液を散布
    2. 乾燥ヒジキの戻し汁(アラメでも可)…原液を散布
    3. 黒コショウを、水1リットルにつき80g入れた煮出し汁…300倍液を散布
    4. クマザサの葉を、水リットルにつき一掴み入れた煮出し汁…原液を散布
    5. コーヒー(インスタント可)…原液~2倍液を散布
    6. 穀物醸造酢(米酢など)…20~50倍液を散布
    7. ショウガの根茎すりおろし汁…100~200倍液を散布
    8. スギナの茎葉を、水1リットルにつき20~50g入れた煮出し汁…2倍液を散布
    9. 煎茶…50倍液を散布
    10. ツクシの頭を、水1リットルにつき3~6g入れた煮出し汁…原液を散布
    11. 草木灰(市販のカリ肥料)…霜降り程度の量を、茎葉に直接散布
    12. トウガラシを、水1リットルにつき50~80g入れた煮出し汁…200~300倍液を散布
    13. ドクダミの茎葉を、水1リットルにつき100g入れた煮出し汁…500倍液を散布
    14. ニンニクのすりおろし汁…100~300倍液を散布
    15. ネギの茎葉を、水1リットルにつき50g入れた煮出し汁…2倍液を散布
    16. ピーマンの完熟果実を、水1リットルにつき50g入れた煮出し汁…200倍液を散布
    17. ミカンの皮を一個分、3~6リットルの水に一晩浸けた浸出液…原液を散布
    18. みりん…500倍液を散布
    19. ヨモギの葉を、水1リットルにつき20~50g入れた煮出し汁…原液~50倍液を散布
    20. ローマンカモミールの茎葉・花を、水1リットルにつき100g入れた煮出し汁…100倍液を散布
    21. ワサビの根茎すりおろし汁…100~200倍液を散布
  2. 雑草・野菜などを材料に使うときは、採れたての新鮮な状態で使うのではなく、数日干してやわらかくなったものが良い。また、乾燥させた材料を使うと、生の材料よりも有効成分が多く出るため、上に載せた分量より薄め・少なめとする。
  3. 次に、病気の抑制にターゲットを絞った自然農薬の例を挙げる。
    1. 重曹の1,000~1,200倍液を散布すると、うどん粉病や灰色かび病に効果がある。(ベーキングパウダーは添加物があるので不可。)病気の発生初期に、発病部分に集中的に散布するのがコツ。なお、病気の治療効果はあるが予防効果は無い。
    2. 米酢の10~50倍液も、うどん粉病に効果がある。
    3. 黒砂糖水を200倍以上に薄めた液を散布すると、葉のさまざまな病気が減少する。
    4. 米ぬかを土の表面に霜降り程度散布したり、木炭や竹炭の破片を土中に1平方メートル当たり一握りほど投入すると、病原菌の活動を抑える拮抗菌が繁殖し、結果的に病害が減る。
    5. ミカンの皮で株元をマルチングすると、病気を抑制する。
  4. お次は、害虫の被害を軽減する自然農薬である。
    1. 牛乳を、原液のままか2倍に希釈し、アブラムシなどの小型害虫に散布すると、気門(呼吸孔)がふさがれて窒息するため、駆除できる。(賞味期限切れの古い牛乳でも可。)展着剤を加えると、さらに効果的。また、石鹸の100~200倍液にも、同様の殺虫効果がある。いずれも、葉裏の気孔が塞がれるのを避けるため、散布後しばらく経ったら、水で軽く洗い流す。
    2. トウガラシを25~35度の焼酎に漬け込み、2~3週間後に、150~300倍に希釈して散布すると、害虫忌避効果がある。トウガラシと焼酎の分量は、いずれも瓶が満杯になる程度。
    3. ナスタチウムの茎葉をすり潰して30倍に薄め、濾してから散布すると、害虫忌避効果がある。
    4. カモミール、ニンジン、ヒマワリ、レタス、ヨモギなどをすり潰して30~50倍に薄め、濾したものをアブラナ科野菜に散布すると、モンシロチョウやコナガなどの害虫が減る。(一種類だけを散布しても、ブレンドして散布しても、どちらでも良い。)
    5. ホウレンソウをすり潰して30~50倍に薄めたものをニンジンに散布すると、キアゲハが付きにくくなる。
    6. 植物の近くに、灯油や、ニンニク、ニラ、ネギなどをすり下ろしたもの(要するに、臭いのきついもの)を小皿に入れて置くと、虫が近付きにくくなる。
    7. ワームウッドを煎じた液を地面にまくと、ナメクジが来なくなる。
    8. コーヒーかすで株元をマルチングすると、虫が近付きにくくなる。
    9. 水1リットルにタバコの吸い殻10~20本を浸して一晩おいたものを散布すると、殺虫効果がある。(50本くらい入れれば効果が高まる。)ただしナス科植物に対しては、タバコモザイクウイルス伝染の危険があるため使用禁止。なお、この殺虫液は人間に対しても毒性がある。また、臭いも強い。
    10. アセビやトリカブトの茎葉・花を、水1リットルにつき10~30gほど入れて煮出した浸出液にも、強い殺虫効果がある。しかし、これらもまた、人間に対して毒性がある。
    11. ボウフラがわいた水に、灯油を数滴たらせば全滅する。(水質汚染注意。その水を動植物に与えるのは厳禁。)
    12. 実行する勇気のある人は少ないと思われるが、病死した害虫の死骸(新鮮で、かつ、カビやキノコが生えていれば完璧)を集めてすり潰し、水で10倍程度に希釈したものを2~3日そのまま置き、こしたものを、生きた害虫に散布すると、病気がうつって死ぬ。
  5. 何を材料に使うにせよ、散布前に一度、布や紙でしっかり濾過しておかないと、散布用のスプレーが詰まってしまうので注意する。

木酢液について

  1. 自然農薬として最も有名と思われる木酢液は、炭やきの際に出た煙が冷やされて生じた水滴を集め、分離・濾過したものである。黄褐色~赤褐色をした、透明感のある液体で、独特な強い匂いがあり、強酸性を示す(pH2~3前後)。殺菌作用や害虫の忌避効果、植物の生長促進作用が認められており、近年、農薬の代用として使われるようになった。かつて、殺菌剤または展着剤として農薬登録されていたこともある。
  2. 病害虫予防を期待するなら、50~300倍に希釈して散布する。濃い液ほど薬害が出やすいので、散布前に、葉の一部に試しがけを行う。最初は800~1000倍くらいから始め、600倍、500倍と、除々に濃い希釈液に切り替えるとよい。なお、散布液が、やわらかい組織(萌芽中の新芽や、肥大中の果実など)にかかると、萎縮・変形することがあるので注意。
  3. 生長促進を期待するなら、200~500倍以上に希釈して散布する。1000~2000倍のごく薄い液でも一定の効果があるので、水やり代わりに与えるのもよい。また、何となく生育の悪い植物に対しては、100~200倍液を株元の土にたっぷり染みこませると、持ち直すことがある。効果がなければ、50倍液にしてもう一度試みる。
  4. 肥料成分が偏るなど、悪くなった土質を木酢液で改善したい場合は、植え付けの5~7日前に、5~50倍液をたっぷりなじませる。液が濃いため、植物が植わった状態で灌注すると、薬害の危険が大きいので注意する。ただ、土質の改善には堆肥・腐葉土などの土壌改良材が欠かせないので、木酢液だけに頼らず、併用したほうがよい。
  5. うどん粉病、菌核病、白さび病、炭疽病、軟腐病、灰色カビ病、ベト病など、地上部分に発生する各種の病気には、100~200倍に希釈して散布すれば、発病を抑制できる。また、樹木の立枯病や腐らん病など、幹や枝の一部が腐る病気に対しては、発病部位に原液を直接塗布する。(葉などに付かないよう注意。)
  6. さらに、20~200倍の希釈液を土中に直接灌注すると、青枯病、立枯病、軟腐病、根腐病、腐らん病、紋羽病、センチュウなどを抑制できる。ただし上記のように、濃い液を土中に灌注する場合は、根への害を避けるため、なるべく植え付けの5~7日前に作業する。
  7. ウイルス病にはさすがに効かない。が、木酢液の生長促進作用により、ウイルス病特有の症状が消え、健全に育つようになる。(完治はしない。)トマトやナスなど、短期間で生育を終える野菜類がウイルスにやられてしまったら、木酢液を試すのも手。うまくいけば、無病株とほとんど変わらない収穫が可能になる。
  8. アブラムシやカイガラムシ、オンシツコナジラミ、コナガ、ダニ、メセンチュウなどの害虫に対しては、100~300倍液くらいで忌避効果がある。ただし、害虫の種類によっては全く効果が無いこともある。
  9. 自家製堆肥の製作途中に、100~500倍に薄めた木酢液(300倍以上が無難)を数回散布すれば、臭いが消え、発酵が早く進み、良質の堆肥が完成する。臭い対策として使うなら、50倍の散布液でもよい。ただ、濃度が濃いと木酢液の殺菌力が発揮されてしまうので注意。
  10. 木酢液を使用している植物に農薬を散布すると、有効成分がよく浸透し、低濃度の農薬であっても効果がよく現れる、といわれる。薄めの農薬と、木酢液(300~1000倍)を一緒に混用して散布すれば、展着剤が不要になり(タールが展着剤の役割をする)、手間が省ける。なお、石灰硫黄合剤やボルドー液などのアルカリ性薬剤とは同時に使えないので注意。(間隔を一週間以上あけて別々に散布すれば大丈夫。)
  11. その他、不快な虫や小動物に対しても忌避効果があるとされる。焦げたような独特な臭気が火を連想させるため、本能的に近づかないという。
  12. 使用の頻度については、特に決まりは無く、個人の自由である。が、頻繁に使えば良い、というわけでもない。月に一~二度くらいが目安。多くても5~7日に一回。
  13. なお、ひと口に木酢液といっても、製造業者や製造方法、材料などによって、品質に微妙な差がある。希釈の濃度は、製品ラベルに載っている数字を優先した方がよい。
  14. 木酢液は、ミミズなど、土中の有益な小動物に対して害があるとされ、高濃度液の濫用は慎みたい。なお、糸状菌や細菌、放線菌などの微生物に対しては、状況によって数を増やしたり減らしたりと、さまざまな効果を現すらしい。(強酸性のため殺菌力が強いが、同時に微生物の栄養源にもなる。)
  15. 温度管理が悪い窯で作られた木酢液は、発ガン性を指摘される物質(ベンツピレンなど)を多めに含有する。また、精製が不十分な製品はタールが多く残留し、植物に害が出かねない。(先ほどの発ガン性物質も、精製が不十分だと多く残留するという。)さらに、炭焼きから得た正当な木酢液ではない、酢酸とタールを混ぜただけの超粗悪な偽物もあるらしい。購入の際は、信頼できる生産者が作った、透明度の高い良品を入手したい。基本的に、質が悪いほど色が濃く、黒っぽくなり、透明度も落ちる。
  16. 安価な製品は、どんな原材料を使っているか分かったものではなく、「国産品」と書いてあっても安心はできない。木酢液は建築廃材からでも作れる。また、有害物質(シロアリ駆除剤など)を含む木材や、安全性の確認されていない、外国の木材(毒成分を持つ樹木など)が材料になっている可能性もある。
  17. 木酢液は強酸性なので、鉄製など、金属でできた容器には保存できない。購入時の容器から移し替える場合は、農業用ポリタンクが適する。(普通のポリタンクは、いわゆる環境ホルモンの問題から、使わない方が良いという。)
  18. 日光が当たると変質するので、冷暗所で保管する。また、開封後は早めに使い切る。
  19. 木酢液に、上のほうで挙げた自然農薬を混ぜて散布したり、炭と一緒に使ったり、、トウガラシ、ドクダミ、ニンニク、などを漬け込んで有効成分を溶け出させる、といった使用法もある。工夫されたし。

竹酢液について

  1. 竹酢液は、いわば木酢液の竹バージョンで、竹を蒸し焼きにして作ったものである。木酢液に比べてタールが少なく、色や匂いが若干薄い。また、人体に有害な物質を含むとされ、飲食用に適さない点も、木酢液と異なる。(ちなみに木酢液も、有害なホルムアルデヒドを微量含む。もっとも、そんなことを言い出すとキリがないが。)
  2. 品質が悪いほど色が黒っぽくなる点は木酢液と同じ。良品は淡い琥珀色~明るい茶褐色をしており、透明度が高い。
  3. 竹酢液の扱い方、使用法は、木酢液に準じる。ただ、木酢液より、心もち薄めに希釈したほうがよいらしい。

その他の小ワザ

  1. 薬を一切使いたくないが害虫は遠ざけたい、退治したいという場合は、害虫を誘引する「粘着トラップ」を吊り下げる方法もある。アブラムシ、コナジラミ、コナガ、マメハモグリバエなどには黄色、アザミウマ(スリップス)には青色のトラップを使う。いずれも、園芸資材を扱う店で購入できる。基本的にハウス栽培向けの資材なので、屋外で使うと、テントウムシなどの益虫まで一緒に殺してしまうのが難点。特に、黄色のトラップは、誘引される虫の種類が多いので注意。
  2. 普通のハエ取り紙や殺虫灯も効果があるが、やはり益虫も一網打尽にする欠点がある。
  3. アブラムシの場合、黄色い小皿に石けん水を入れ、植物の近くに置いておくと、黄色に誘引されて石けん水に飛び込み、駆除できる。ただし、これもハウス向きの方法であるため、屋外では効果が薄い。
  4. 翅を持つ小型害虫の多く(アブラムシ、アザミウマ、コナジラミなど)は、太陽光の方向を利用して飛ぶ方角を決めており、また、水に飛び込むのを避ける本能から、白~銀色のキラキラ光るものを避ける。その性質を利用し、市販の反射テープや不要なCDなどを吊り下げるのもよい。ただし、この方法は、植物が生長・繁茂するにつれて反射する光線が弱くなるため、効果が落ちていく。
  5. 寒冷紗や不織布など、空気を通す軽い素材で植物を隙間無くすっぽり覆い、害虫が近寄れなくするのも良い方法である。専用の虫除けセットも売られている。ただ、夏場は内部の通風が悪くなり、蒸れて病気が発生することがあり、注意が必要。また、冬に積雪のある地域では、積もった雪の重みで押しつぶされるため、この方法は使えない。なお、植物を覆う前に、すでに害虫がいないか確認しておかないと、中で害虫を飼う結果となり、かえって被害が甚大となる。
  6. よく知られているように、飲み残しのビールや日本酒を小皿に入れて置けば、夜間にカタツムリやナメクジが集まって来る。酔いつぶれて酒の中で溺死する者もいるが、飲み逃げする者のほうが多いので、それを防ぐためにも、きちんと見回る。見回りの時刻は、早くとも夜8時以降とする。酒を飲まない人は、バナナの皮や米のとぎ汁でも代用できる。(効果は今ひとつ。)
  7. カラスやハトなどの鳥害を防ぐには、植物の真上や、周囲の止まり木になりそうな場所に、細い釣り糸やテグス糸などを張り巡らしておく。また、スポーツ応援用のポンポンを作る、薄いビニールテープ(商品名…スズランテープ)を細かく裂き、吊しておくのもよい。鳥は、キラキラ、ヒラヒラする糸状の物体(翼や脚に絡みつきそうなもの)を非常に嫌う。
  8. 土が過湿になったときに発生するゼニゴケは、食用酢か、石灰窒素(化成肥料の一種)を散布すれば駆除できる。土壌中和用の石灰でも一定の効果あり。