いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育て る-

園芸知識:挿し木・根伏せ

概要

  1. 植物の繁殖方法といえば、実生(タネまき)と分球が代表的であろう。が、それ以外にも、人為的に行える繁殖方法が存在する。その一つが「挿し木」である。なお、草本においては、「木」ではないということで、「挿し芽」と呼ぶこともある。
  2. 植物には、体の一部が欠けると、その欠けた部分を再生しようとする性質がある。挿し木は、親株の一部(枝、茎、根など)を切り取って「挿し穂(または穂木)」とし、それを清潔な「挿し木床」に挿すことで、足りない部分を再生させる繁殖方法である。
  3. 「挿し木」は、必ずしも、茎や枝を挿し穂にするとは限らない。葉を切り取って挿す「葉挿し」「葉柄挿し」や、根の途中の部分を切り取って挿す「根伏せ(根挿し)」という方法もある。ここでは、全てひっくるめて「挿し木」という言葉を使うことにする。
  4. 植物によって、活着(挿し穂から根や芽が発生し、苗として独り立ちすること)しやすい部分が違うので、殖やしたい植物に適した方法を選ぶ。例えば、多年草のアカンサスやコンフリーなどは、茎を挿してもまず活着しないが、太い根を挿せば容易に苗ができる。また、庭木のサルスベリのように、枝を挿しても根を挿しても、容易に活着する植物もある。
  5. 分球しにくい球根を刃物で切り分けて挿し木する、「カッティング」や「ツイン・スケーリング(鱗片挿し)」も、挿し木や葉挿しの範疇に入るが、ここでは割愛した。別ページの「株分け・分球」にある「人為的に分球させる」を参照。
  6. 挿し木で殖やせる植物は、かなり多いので、いろんな植物を挿して、根が出るか試すのも楽しい。根が出る前に挿し穂の体力が尽きて失敗する「挿し木が難しい植物」は多いが、「挿し木ができない植物」というのは意外と少ない。(挿し木ができない植物といえば、ヤシ類がよく挙げられるが、こちらは取り木なら可能。)
  7. 挿し木のメリットは、単に、株を殖やすことだけではない。当たり前の話だが、挿し木で得られる子株は、親株より若く、体が小さい。そのため、老化した古株の若返りや、大きく育ちすぎた株を小さく仕立て直したいときなどにも、挿し木は有効な手段となる。
  8. また、挿し木で殖やした子株は、親株と遺伝的に同一のクローンであり、親株と全く同じ性質を持つ。従って、優れた性質を持つ親株を殖やしたいときにも、挿し木が便利である。なお、タネから生まれた子株は、親株と遺伝的に異なっており、親と同じ性質を受け継ぐとは限らない。
  9. さらに、挿し木で作った子株は親株の分身なので、最初から成株に近い体を持っており、生長が早いという利点もある。(タネから生まれた子株は、いわば生まれたての赤ん坊なので生長が遅く、なかなか成株にならない。)

作業の準備

  1. 挿し木の作業適期は、原則として、落葉樹が2~3月・6~7月、常緑樹が3月・6~7月・9月、針葉樹が2~3月・6月である。また、草花全般や熱帯性の植物は、5~7月・9~10月に挿す。
  2. 発根(挿し穂から根が出ること)するには、最低でも、気温20℃くらい必要。気温が低すぎると、挿し穂の活動が鈍いために発根しにくく、逆に、気温が高すぎると、挿し穂が病原菌に侵されたり、暑さでバテたりして、発根率が悪くなる。
  3. 挿し穂を採取する親株は、なるべく若い株が良い。実際の採取作業は、晴れか曇りの日に行うのがよく、雨の日は適さない。また、採取の時間帯は、植物が活発に活動している日中をなるべく避け、午前中か夕方にする。
  4. 挿し穂にするのは、よく日の当たる場所に伸びた、しっかりと固まった枝・茎が良い。旺盛に伸びている途中の、淡緑色の柔らかい枝の先端は、萎れやすいので適さない。
  5. また、挿し穂には、品種の特性がきちんと出ている枝を選ぶ。例えば、斑入り葉の植物なら、斑が鮮明に入った葉の付いた枝を選ぶ。斑がぼやけていたり、葉が緑一色になっているなど、先祖返りを起こしている枝は適さない。ただし、先祖返りした枝のほうが挿し木の成功率が高く、発根後に、品種の特性が復活することも実際にあるので、余裕があれば挿してみるとよい。
  6. 植物の種類にもよるが、挿し穂にするのは、必ずしも枝の先端である必要はない。先端部分は、とかく萎れやすいので、切り捨てて、枝の途中部分を挿し木することもある。枝の先端部分を挿すことを「天挿し」「天芽挿し」「頂芽挿し」「芽挿し」、枝の途中を挿すことを「茎挿し」「管挿し」などと呼ぶ。(余談だが、「茎挿し」は、挿し穂を横向きに挿すと、呼び方が「茎伏せ」に変わる。)
  7. また、木本の挿し木では、その年の春に伸びた新梢を挿すのを「半熟枝挿し」「緑枝挿し」、去年以前に伸びた古い枝を挿すのを「熟枝挿し」「前年枝挿し」などと呼ぶ。

挿し木の手順と注意点

  1. 基本的な挿し木の手順は、だいたい以下の通り。
    1. 枝の先端、7~15cm程度を切り取って挿し穂にする。節の部分からよく発根するので、挿し穂1本につき、2~3節付いているのが望ましい。取った挿し穂は、切り口が乾かないよう、すぐ水に浸ける。口にくわえる人もいるが、植物には有毒な種類が少なくないので、おすすめしない。
    2. 挿し穂の下葉を切り捨て、3~5枚程度に制限する。が、例えばローズマリーのように、葉がとても小さい植物は、傷んでいる葉を取り除くだけでよい。なお、挿したとき土に埋まる部分には、葉を残さないのが原則。(腐敗の原因になる。)
    3. 葉が大きすぎると挿し穂の水分が過剰に蒸散し、萎れるので、大きな葉は、半分くらいの面積になるよう切り詰める。目安としては、五百円玉二枚分の面積を限界とし、それ以上なら切ったほうがよい。
    4. 挿し穂の切り口が潰れていると、そこから腐るので、鋭利な刃物で切り口を斜めに切り返し、きれいに整える。なお、木本の場合は、草本より堅くしっかりしているため、左右から一回ずつ、斜めに切り返し、切り口をくさび形にしてもよい。(くさび形の方が断面積が広いため、水揚げがよく、根も多く出やすい。)いずれも、切り返し作業は、水中で行う「水切り」で行いたい。
    5. 清潔なビンなどに水を入れて挿し穂を浸し、6~12時間、そのまま水揚げ(吸水)させる。急ぎの場合は、30分~1時間の水揚げでもよい。このとき葉が濡れていると、水揚げの妨げになるので、よく水を切っておく。なお、挿し穂を取り、即座に挿す場合は、水揚げ無しでも案外大丈夫だったりする。
    6. やや深めの清潔な鉢を用意し、雑菌や肥料分を含まない用土を入れて、「挿し木床」を作る。挿し木床の用土は、まず、大粒の用土(赤玉土大粒や鉢底石など)を深さ2~3cmに敷き詰め、その上に、小粒の用土(赤玉土小粒や川砂、挿し木専用土など)を5~8cmくらいの深さに入れるとよい。挿し木床ができたらよく水やりをし、用土を湿らせておく。
    7. 細い棒を使って、挿し木床の用土に深さ3~5cm(挿し穂の長さの1/3~1/2が目安)の穴を開け、そこに、水揚げの済んだ挿し穂を丁寧に差し込む。垂直に挿しても斜めに挿してもよいが、挿し穂の切り口を傷めないよう注意する。挿し穂同士の葉が重ならないよう、挿し穂の間隔は3~5cmほど空ける。(葉が触れ合うのは問題ない。)挿し穂の節の部分から発根しやすいので、1節は土中に埋めたい。
    8. 水差しなどを使い、挿し木床全体に優しく水やりする。(これ以降は、挿し穂の葉が濡れても問題ない。)乱暴に水やりすると挿し穂が倒れ、作業をやり直す羽目になる。なお、挿し木床ごと、水を張った浅い皿などに浸し、底面から水を吸わせる「腰水」でもよい。
    9. 風や雨、直射日光などが当たらない日陰に挿し木床を置き、発根を待つ。発根にかかる日数は植物によってまちまちだが、草本なら2~3週間、木本なら1~6ヵ月が目安。どれだけ時間がかかっても、発根までは、絶対に挿し木床を乾燥させてはいけない。
    10. 挿し穂から新芽が発生し、旺盛に生育し始めたり、挿し木床の底穴から根が見えてきたりしたら、「鉢上げ(挿し木床から小鉢への植え替え)」が可能である。鉢上げ作業は、真夏と真冬を除けば、いつでも行えるが、なるべく、その植物の植え替え適期に従う。作業中は、出たばかりの根を折ったり傷つけたりしないよう注意。なお、すぐに鉢上げを行わない場合は、挿し木床を日当たりに移動させ、薄い液肥を与えるなどして、そのまま育てる。
  2. 挿した後は、決して挿し穂を萎れさせてはならない。どうしても萎れるようなら、空気穴をたくさん開けたビニール袋で挿し木床全体をくるんで密閉する「密閉挿し」とする。ただし、真夏に密閉挿しをすると中が蒸れ、病気が発生するので注意。
  3. また、挿し木床として、8~10号くらいの大きな深鉢を用い、底のほうに浅く用土を入れて挿し木すれば、鉢壁が風除けの役目を果たしてくれる。
  4. 挿し穂には2節以上を付け、1節は土中に埋めるのが原則だが、1節しかない短い挿し穂でも挿し木は可能。その場合、挿し穂全体と、葉の下部1/3くらいを土中に埋め、葉の上部だけを地表に露出させた上で、密閉挿しにする。
  5. 水揚げ・水やりに使う水は、普通の水道水で十分。少しでも発根率を高めたければ、「メネデール」などの植物活力剤を規定倍率に薄めたものを用いると、良い結果が出る。
  6. 挿し木床に使う容器は、鉢が最も扱いやすいが、底から余分な水が抜ける入れ物なら何でもよい。大切なのは、清潔であること。なお、使う容器の種類によって、「箱挿し」「トレー挿し」「ポット挿し」などと呼び分けることもあるが、やり方は全て同じである。
  7. 挿し木床に入れる用土は、清潔で肥料分が無く、水はけが良いことが条件である。市販の挿し木専用土のほか、赤玉土、川砂、バーミキュライト、パーライト、酸度調整済みピートモス、水ゴケなどが適する。ツツジ科植物のように酸性土を好む種類なら、鹿沼土+ピートモスで挿し木すると、成績が良い。
  8. フラワーアレンジメントなどに使うオアシスも、挿し木用土の代わりになる。オアシスを適当な大きさに切り、棒で穴を開けて、直接挿し穂を差し込めば完了。発根後、そのまま鉢に植え込めるため、大変お手軽。ただし、オアシスは土中で分解されにくいため、土を汚したくなければ使用を避ける。
  9. 挿し穂の切り口に、インドール酪酸(商品名…「オキシベロン」)や、ナフタレンアセチルアミド(商品名…「ルートン」)などの発根促進剤を少量付けて挿し木すると、発根率が高まり、根の量も増える。たくさん付けすぎると、挿し穂の吸水の妨げになるので注意。なお、これらは「生長調整剤」と呼ばれる農薬の一種であるため、好みでない人は、珪酸塩白土粉末の「ハイフレッシュ」を付けても同様の効果が得られる。
  10. 挿し穂を挿す位置は、挿し木床の中心部を避け、縁の近くに挿したほうが、水はけや通気性が良いため、発根しやすいとされる。が、それだと、一つの挿し木床に挿せる挿し穂が少なくなってしまうので、あまりこだわる必要はない。大きな挿し木床の中心に挿し穂を挿しても、きちんと発根する。
  11. 挿し穂を挿し込む深さは、基本的には上記の通りだが、休眠中の、葉が無い落葉樹を挿し木する場合は、挿し穂の上部2~3cmがやっと見えるところまで深く挿し、乾燥から守るとよい。この場合、過湿の害を受けやすくなるので、水のやり過ぎに注意する。
  12. いくら水切れが怖くても、挿し木床を雨に当てるのは厳禁。挿し穂が倒れる原因になる上、雨水は不潔なので、病気が発生し、挿し穂が全滅することもある。
  13. 挿し木中は、発根したかどうか、目で見て確かめたいのが人情である。しかし、挿し穂を抜いて確認するのはよくない。もし発根していたら、根が切れたり折れたりして、挿し穂がひどく弱る。確認したければ、手で挿し穂を軽く引っ張ってみるとよい。抵抗があれば、根が張っていると推測できる。
  14. 挿し穂が黒っぽくなって枯れたら、残念ながら失敗…といいたいところだが、例外があるので特記しておく。冬に地上部が枯れる植物(宿根草・一部の庭木など)を初夏に挿した場合、挿し穂の上部は枯れ込みつつ(ご丁寧にカビることもある)、土中の部分が生きており、発根して新芽を作っていることがある。この場合、外からは挿し穂の活動が全く見えないため、失敗と判断しやすい。挿し穂がダメになったように見えても、すぐ諦めず、秋までは様子を見るとよい。
  15. 鉢上げの時期は、上記の通り、真夏と真冬を避ければ、いつでもよいが、9月以降に挿したものは、寒さに負けやすい。そのため、年内に十分発根していても、そのまま冬を越させ、翌春に鉢上げしたほうがよい結果となる。

いろんな挿し木

  1. 挿し穂の水あげが悪く、発根しにくい場合は、「団子挿し(玉挿し)」という方法を取ることがある。これは、「赤玉土を水でよく練って、耳たぶくらいの柔らかさに固め、それで直径2~4cmの団子を作って挿し穂の切り口をくるむ」という方法で、木本の挿し木に対して行われる。団子を付けたまま挿し木床に挿し、その後は、普通の挿し木と同じ管理をする。発根率がよくなる理由は不明だが、古くから行われている。
  2. 落葉樹を早春(2~3月)に挿し木する場合、予め、葉がない12~2月頃に挿し穂を採っておき、乾かさないように挿し木適期が来るまで貯蔵、という方法をとることがある。この場合、挿し穂は、30~60cmくらいの長さで採取し(あまり短く切らないのがコツ)、束ねて、深さ30cmの土中に水平に埋めるか、湿らせた新聞紙に包み、ビニールで密閉して冷蔵庫(5℃前後)で保存する。
  3. この方法は面倒だが、挿し木後の成功率が若干上がるので、少ない挿し穂で効率的に苗を殖やせる。しかし、家庭園芸においては、「数打ちゃ当たる」方式で一度にたくさん挿せば済む話なので、無理に行う必要はない。
  4. ツユクサ科観葉植物やマツバボタンの仲間などは、非常に発根しやすい。茎の一部を手でちぎり、そのまま地面に挿すだけでも発根する。これらの植物には、無菌の挿し木用土を用意する手間が要らない。このような挿し木の方法を、「露地挿し」と呼ぶ。木本では、キョウチクトウやザクロ、スギ、ヤツデ、ヤナギなどで露地挿しが可能。
  5. 観葉植物の一部の種類では、「茎伏せ」が可能である。文字通り、茎を「挿す」というより「横に伏せる」方法で、葉の無い茎を長さ3~5cmずつに切り、挿し木用土の上に寝かせるだけである。茎の下半分は土に埋めるとよい。その他の手順は、挿し木の場合と同じ。コルディリネ、ディフェンバキア、ドラセナ類などで行える。
  6. やや余談になるが、ガーベラやセントポーリア、レモングラスのように、親株の脇に子株ができて殖える植物は、株分けで殖やすことが多い。しかし、株分けを行うと、往々にして、根のない子株ができてしまうものである。もし、根のない子株を作ってしまったら、上記の挿し木の手順で挿してみるとよい。うまくいけば発根する。
  7. カランコエやサボテン類などの「多肉植物」は、挿し穂の扱いが少し違うので注意する。多肉植物は、挿し穂の切り口が濡れた状態で挿し木すると腐りやすいため、作業の前に、挿し穂を1~3日放置し、切り口を乾かしてから挿す。水揚げも不要。挿し穂が乾いたら、軽く湿らせた清潔な土に挿し、発根するまで明るい日陰に置く。この間の水やりは、表土を軽く湿らせる程度にするか、いっそ行わない。種類によるが、だいたい10日~1ヵ月で発根する。
  8. 例えばポインセチアのように、切り口から乳液が出る植物は、それをよく洗い流してから挿し木する。そうしないと、乳液が切り口を塞いでしまい、吸水ができなくなって挿し穂が萎れる。
  9. 市販の切り花も挿し穂になる。この場合、多少値段が高くても、新鮮な切り花を扱っている生花店で購入した方がよい。初夏に買ったバラの切り花などは、挿し木すれば容易に活着するものが多い。
  10. 植物によっては、挿し穂を土ではなく、水に挿して発根させる「水挿し」ができる。最も簡単な挿し木法で、採取した挿し穂を、水を入れた花瓶などに生けておくだけである。(生け花や切り花でも、生けている間に発根することがある。)水挿し中の水は、あまり頻繁に替えず、週に一~二回くらいが適当。水の中に「ミリオン」などの根腐れ防止剤を少量入れておけば水が腐らず、発根率も高まるのでおすすめ。観葉植物は、水挿し可能な種類が多い。
  11. 水挿しで発根した苗の根は、水中生活に適した状態になっているため、鉢上げ後、しばらくの間は、水切れさせないよう注意する。根が土中生活に慣れたら、通常の水管理とする。

根伏せ

  1. 挿し木に比べると、根伏せ(根挿し)は、行える植物が少なく、あまり一般的ではない。作業の適期は、植物が旺盛な生育を開始する3月か、生育初期の5~7月頃がよい。ただし、寒さに弱い植物は、5~7月に行う。
  2. 木本の場合、接ぎ木された株が多いため、根伏せで殖やすと、台木の苗ができてしまう。そのため、木本、特に果樹の根伏せは、あまり行われない。ただし、接ぎ木の台木を殖やしたいときには、良い方法といえる。
  3. 根伏せ(根挿し)の手順は、ほぼ挿し木に準じる。
    1. 土を掘って、太く健康的な根を選び、7~10cmほど切り取って挿し穂とする。老いた古株の根は活着しにくいので、なるべく若い株を親株に選ぶ。
    2. 挿し木床を用意し、丁寧に挿し穂を挿し込む。このとき、上下を間違えないよう注意。また、必ず上部5mmくらいを地表に露出させておく。あまり深く挿してはいけない。
    3. その後の管理は、挿し木の場合と全く同じ。
  4. 根伏せ(根挿し)の場合、挿し穂を土中に挿し込まず、用土に浅く埋めるだけでも発芽する。だいたい、挿し穂の上半分が見え隠れする程度に埋まっていれば大丈夫。ただし、この方法は乾燥しやすいので、密閉挿しにしたほうがよい。
  5. 観葉植物のコルディリネやサンスベリアのように、土中に太い根茎を持つ植物は、それをぶつ切りにして挿せば、発芽して子株を得られる。これを「根茎挿し」という。手順は、上記の根伏せと全く同じだが、切り分ける根茎の長さは3~5cmもあれば足りる。
  6. 根伏せが可能な植物は、一度庭に植えると、根ごと掘り取らない限り、何回引っこ抜いても、同じ場所からまた芽を出して茂る。

葉挿し

  1. 葉を挿して芽を出させる「葉挿し」も、基本的には挿し木の手順と同じである。違いは、挿し穂が枝ではなく、葉であるという点だけ。行える植物は少ないが、イワタバコ科植物や、多肉植物の一部、ベゴニア類の一部、ペペロミアなどで可能。
  2. 葉挿しを細かく分類すると、下記のような方法がある。
    • 葉柄挿し…葉柄の付いた葉を挿し穂とし、葉柄の部分だけを用土に挿す。グロキシニア、セントポーリア、ペペロミア、レックスベゴニア、一部の多肉植物などで可能。
    • 全葉挿し…一枚の葉を挿し穂とし、太い葉脈を一本につき一箇所切断して、用土の上に広げて置く。レックスベゴニアで可能。
    • 葉片挿し(片葉挿し・くさび挿し)…下の二通りがある。
      • 太い葉脈を必ず残しながら、葉を細かく切り分け、葉縁に近い方を上に向けて用土に挿す。ストレプトカーパスやレックスベゴニアなどで可能。
      • 細長い葉を長さ5~10cmずつに切断し、上下を間違えないように用土に挿す。サンスベリア、ストレプトカーパス、レックスベゴニアなどで可能。
  3. 「葉柄挿し」の手順を簡単に示しておく。
    1. 傷や病虫害のない健全な葉を選び、付け根から丁寧に取り外す。あまり若い葉ではなく、十分に成熟した葉を使うのがコツ。
    2. この時、葉柄が長すぎれば2~3cmくらいさに切り、切り口をきれいに切り返しておく。
    3. 挿し木床を用意し、細い棒で用土に穴を開け、葉柄の部分だけを丁寧に挿し込む。目安としては、葉の付け根部分が埋まるか埋まらないか程度の深さ。葉が土に埋まると腐ることがある。
    4. 葉の表側から新芽が出るので、発芽後のことを考え、葉の表を上に向けて斜めに挿すとよい。なお、水やりの際は、葉の上に水をためないよう注意する。
    多肉植物の葉を挿す場合は、取り外した葉をそのまま数日置いて傷口をよく乾かし、腐りを防ぐ。傷口が乾いたら同様に挿すが、挿した後の水やりは行わない。種類によるが、水やりを始めるのは二~三週間後が適当。
    また、セントポーリアは水挿しも可能である。水の深さは、葉柄全体が水没する程度とする。
  4. 「全葉挿し」の手順は、「葉の太い葉脈を、一本につき一箇所(葉脈の真ん中辺りで)切断し、挿し木用土の上に、表を上にして広げて置く」というものである。葉の裏面、特に、傷を付けた部分が土に接しなければならないので注意。萎れやすいので、密閉挿しで行う。
  5. 「葉片挿し」は、葉をくさび形に切り分けるので、「くさび挿し」ともいう。かなり無茶な方法に思えるが、葉に残った葉脈の部分から発根・発芽してくる。手順を簡単に示す。
    1. 十分に成熟した、大きく健全な葉を選び、葉柄を切り捨てる。
    2. 葉を、葉脈に沿うようにして切り分ける。だいたい、一枚の葉から3~5枚の挿し穂が取れる。このとき、どの葉にも太い葉脈(できれば主脈)が残るように切り分けると成功率が高い。萎れやすいので、切り分けたらすぐに挿す。
    3. 挿し木床を用意し、葉の基部に近い部分(葉柄のあった方)を下に向けて挿す。深挿しすると腐りやすいので1~2cmくらいが適当。
    4. この方法は、普通の挿し木に比べて萎れやすいため、密閉挿しにするとよい。挿し木床全体を、小さな空気穴を開けたビニール袋ですっぽりとくるみ、日陰に置く。
  6. もう一つの「葉片挿し」は、上記の「くさび挿し」とは異なり、差し穂が長方形である。この方法の手順は、挿し木の場合と全く同じ。違いは、「枝ではなく細長い葉を挿し穂に使う」という点だけである。葉を切断した後は、上下が分からなくなりやすいので注意。上下を間違えて挿すと発根しない。
  7. 葉挿しを行うに際し、特に注意しておきたいのは、「葉挿しでできた子株は、親株の品種の特徴を失うことがある」という点である。例えば、縞模様の花を咲かせるセントポーリアを葉挿しで殖やすと、子株は普通の花になってしまう。また、斑入り葉のサンスベリアを葉挿しすると、子株には斑が入らず、緑一色になりやすい。