植物の害虫
※害虫の名前が分からない場合は、下記の分類からどうぞ。なお、例えば「ゾウムシ類」のように、「シンクイムシ」「テッポウムシ」「その他の食害する虫」など、複数の分類にまたがる害虫もあります。
- アブラムシ・ワタムシ
- 吸汁する害虫としては最も有名。きわめて種類が多く、性質はさまざま。
- カイガラムシ
- 体にカイガラをまとった虫。多発すると植物を枯らすことがある。
- センチュウ(ネマトーダ)
- 非常に小さく、肉眼で見えにくい微生物。根や茎葉などを加害する。
- ダニ
- 植物の汁を吸うダニ。肉眼で見える種類からほとんど見えない種類までさまざま。
- 虫コブを作る虫
- 葉や果実などの汁を吸い、その刺激で、被害部分を異常な形に変形させる虫。
- その他の吸汁する虫
- 植物の汁を吸う虫のうち、上記5系統以外のもの。
※害虫名リストの下方に、このジャンルに関する解説文があります。
※害虫の名前がある程度分かっている場合は、この五十音順の一覧からどうぞ。
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害虫名リスト
このジャンルについて
概要
- 植物の害虫とは、文字通り、人間が栽培する植物に害をなす虫である。加害の方法はさまざまで、茎葉や根をかじって食べるもの、茎や枝に入り込んで食い荒らすもの、口吻を突き刺して汁液を吸うものなどがある。いずれにせよ、植物の健全な生育を妨げる。
- ここに全ての害虫を収録するのは不可能なので、比較的有名な害虫を選別した。ただし、細かな間違いが非常に多いと思われるので、参考程度に。
- 使用する薬剤は、一般の園芸店で購入できるものを優先的に記載し、毒物・劇物は除外した。(一部、登録失効農薬や無登録農薬が混じっている。)なお、エアゾール剤やスプレー剤は、とても種類が多く、しかも、商品の入れ替わりが激しいため、少ししか記載していない。薬剤についての基本的な知識は、「薬剤」のページへ。
- 植物の害虫といえば、イモムシ・ケムシ類やアブラムシ、カイガラムシなどが代表格だが、マイナーどころとして、ゴキブリやセミなども害虫に当たる。もっとも、家庭園芸において、これらを園芸害虫として駆除することは、まず無い。
基本的な対策
- 薬剤を使うのは最終手段である。可能なら、地道な捕殺が一番。イモムシやケムシなどは、箸やピンセットでつまんで捨てるとよい。
- 基本的な対策としては、「肥料(特に窒素肥料)を過剰に与えない」「密植せず、風通しに気を配る」「虫害にあった痕跡の無い、健全な株を購入する」「未熟な有機物を土に混ぜない」「殺虫剤を多用せず、天敵を大切にする」などが挙げられる。
- 寒冷紗や不織布で株全体をすっぽり覆うと、害虫が植物に触れられないため、虫害を受けなくなる。しかし、風通しが悪くなるため、気温の高い時期などは、病気が出やすい。また、株に覆いをした時点で、すでに害虫がいた場合、覆いの中で虫を飼ってしまい、被害が甚大になる。
- サクラやマツ類などは、10月下旬頃、主幹に「こも巻き(誘殺バンド)」をしておけば、害虫がその中に入って越冬する。気温が上がり始めると害虫がこもから出て活動を再開するので、必ず2月上旬には外し、燃えるゴミに出すか、焼却するなどして処分する。ただし、こもの中には、害虫以外の、益虫や無関係の虫が潜むことも少なくない。従って、あまり効率の良い駆除方法とは言えない。
- 樹木は、とかく害虫が付きやすい。大きな木は薬剤散布もままならず、害虫天国になっていることさえある。なるべく薬剤に頼らず虫害を減らしたければ、冬の間に、落ち葉の中や樹皮の下、樹皮の裂け目、枝の又の部分などに潜んでいる害虫を探し出し、徹底的に捕殺しておく。成虫の状態で潜んでいることもあるが、多くは卵やサナギである。
- 薬剤に頼りたくなくても、庭に多くの木を植えている場合は、冬季の石灰硫黄合剤とマシン油乳剤の散布だけは行っておいて損はない。これらを散布すると、春以降の病害虫の発生が抑えられるため、結果的に、春~秋の薬剤使用回数を減らすことができる。石灰硫黄合剤は、病気と害虫の両方に大きな効果があり、マシン油乳剤は、カイガラムシやハダニなどの害虫に効果がある。
食害する虫
- いずれも、アゴや歯で植物体をかじって食べる。被害を受ける部位は、葉や茎、根、花、果実などさまざま。対処が遅れると、植物が枯れることもあるので侮らない。また、害虫の種類によっては、ウイルスなどの病気を媒介する。
- イモムシ・ケムシ類…「イモムシ」「ケムシ」と呼ばれる虫は、多くはガの幼虫である。一部、チョウやハチの幼虫も混じる。
- チョウの幼虫は、ガの幼虫ほど一斉に多発しないため、株が十分大きく育っていれば、放置しても問題ないこともある。一方、ハチの幼虫は、体こそ小さいものの、集団で加害する傾向があり、侮れない。なお、ハチといっても、人を刺す種類ではない。
- イモムシ・ケムシ類の多くは、若齢幼虫の時期は集団で暮らし、老熟すると単独行動するようになる。駆除方法は捕殺が基本。若齢幼虫のうちに気がついたら、幼虫が群れている枝や葉ごと切り取って捨ててもよい。
- 薬剤で駆除する場合は、イモムシ・ケムシ用のものなら何でも使えるが、老熟幼虫には、やや効きにくい傾向がある。なお、ハチの幼虫には、園芸用のBT剤(ゼンターリ、トアローなど)が効かないので、注意が必要。
- エカキムシ(潜葉性害虫)…ごく小型のガの幼虫が多くを占めるが、一部、ハエやタマムシなどの幼虫も含まれる。
- 虫が葉の組織内に侵入し、葉肉を食い荒らしたり、吸汁したりする。「エカキムシ」の呼び名は、虫の移動した跡が白っぽい線のように見えることから来ている。ただし、どの種類も葉に線を描くわけではない。
- 大発生しない限り、植物を枯らすことはなく、多少の発生なら放置して差し支えない。薬剤を使う場合は、虫が葉の内部にいることから、展着剤を使ってしっかり付着・浸透させる必要がある。が、それでも効きにくい。
- シンクイムシ…ハエやハチ、甲虫類にもいるが、やはりガの幼虫が多い。
- シンクイムシとは、若い枝や茎、つぼみ、果実、根などの内部に侵入(「食入」という)して食い荒らす害虫の総称である。虫が植物体の奥深くに潜り込むため、薬剤が効きにくく、厄介である。
- 種類によっては、食入を受けた部分が膨らみ、「虫コブ」状となる。が、少し膨らむだけで、明確なコブではないことから、「虫コブを作る虫」のページには入れていない。
- テッポウムシ…本来は、カミキリムシの幼虫だけを指す言葉である。しかし、ここでは、カミキリムシと似た加害をする他の昆虫類(甲虫類とガの仲間)も、一緒くたに扱っている。
- 上記のシンクイムシが、主に果実や新梢など、樹木の末端部分に入り込むのに対し、この仲間は、樹木の幹や枝の内部に侵入し、木質部を食害するため、よりダメージが大きい。被害植物は、早くに紅葉・落葉して衰弱し、時には枯死する。
- 薬剤を使う場合は、食入孔から流し込むか、綿などに染み込ませて詰め込み、気化した薬剤で死に至らしめる。が、幹や枝の奥深くに潜む虫なので、駆除の難易度はかなり高い。
- ハマキムシ…ほぼ全てが、ガの幼虫で占められる。
- 葉や花、つぼみ、果実などを糸でつづり合わせて巣を作り、その中から食害を続けるのが特徴。種類によっては、葉を縁から巻くため、「ハマキムシ」と呼ばれる。
- どの種類も、幼虫はやや小さめのイモムシで、危険を感じると、かなりの素早さで逃げていく。
- 対策は、被害部分ごと除去するか、巻かれた葉を開いて捕殺するのが基本。薬剤を使う場合は、巣の中までたっぷり染み込ませたり、浸透移行性の殺虫剤を使用する。が、エカキムシほどではないものの、やはり巣の中にいるため、駆除しにくい傾向がある。
- その他の虫
- 害虫としては、大して問題にならないものから、非常にタチの悪いものまで両極端である。アリ、コオロギ、ダンゴムシ、ヤスデなどは前者、オンブバッタ、ナメクジ、コガネムシ、ゾウムシ、テントウムシダマシ、ハムシなどは後者といえる。 なた、アリやケシキスイなど、食害はしないものの、植物に傷をつける虫も、ここに入れた。
吸汁する虫
- いずれも、細長い口吻を持ち、それを植物に突き刺して汁液を吸う。被害を受けた部分は、色が抜けたり、変形するなどして、著しく価値を損ねる。その際、ウイルス病などの厄介な病気を媒介することが多く、侮れない。
- アブラムシ・ワタムシ…吸汁性害虫の代表的存在で、園芸害虫の中でも大きな地位を占める。その種類は非常に多く、生態や寄主植物も多岐に渡る。
- アブラムシ・ワタムシの仲間には、吸汁の刺激によって植物を変形させる種類も数多く存在する。変形の度合いが比較的低い種類については、「アブラムシ・ワタムシ」のページにまとめたが、「虫コブ」と呼べるほど変形の度合いがひどい種類は、「虫コブを作る虫」のページの方に移動した。
- この仲間は身近な虫であるわりに、あまり研究が進んでいないようで、文献に当たってもハッキリしない事柄が多かった。従って、「アブラムシ・ワタムシ」のページにも、実在しない種類や異名同種などが複数混じっている可能性が高いのであしからず。
- 比較的薬剤に弱く、駆除は容易である。ただ、葉を変形させるなどして巣を作る種類は、直接散布に強いため、浸透移行性の薬で対処した方がよい。
- カイガラムシ…アブラムシと並び、吸汁性害虫の代表格である。こちらもきわめて種類が多く、生態や寄主植物も多岐に渡る。
- アブラムシと同様、カイガラムシも、身近な虫のわりには、分類等の研究が進んでいない。従って、こちらも、存在しない種類や異名同種などが複数混じっている可能性が高いのであしからず。
- 厚いカイガラをかぶった種類は薬剤に強く、やや駆除しにくい傾向がある。場合によっては、歯ブラシなどで一気にこすり落とした方が手っ取り早い。
- センチュウ(ネマトーダ)
- 「線虫」の名の通り、ミミズに似た細長い体型をしている。ごく小さいため、肉眼では見えにくい。別名、「ネマトーダ」ともいう。また、植物に寄生して害を与える種類は、「植物寄生性センチュウ」と総称される。
- 植物寄生性センチュウには、植物内に侵入し、内側から吸汁するものと、植物内に侵入せず、外部から吸汁するものがある。このうち後者は「外部寄生性」といい、病原菌やウイルスを媒介する種類を含んでおり、油断ならない。
- センチュウの被害は、虫の人為的な持ち込みによって広がる。一度発生すると根絶が難しいため、そもそも持ち込ませないことが肝要である。
- ダニ
- ダニは昆虫ではなく、クモに近い仲間である。植物を加害するダニは、人間など動物を害することは無い。
- いろんな種類があるが、ロビンネダニやホコリダニは、一度被害を受けると根絶が困難なので、被害がひどければ処分したほうが賢明。
- 昆虫ではないため、薬剤は専用の「殺ダニ剤」を使う。しかし、コナダニやロビンネダニには、例外的に、普通の害虫用殺虫剤が効く。
- 虫コブを作る虫…主に、ダニ、ハエ、ハチ、アブラムシ、キジラミの仲間で占められる。それ以外には、カイガラムシ、グンバイムシ、コナジラミ、ゾウムシ、ハナノミなどに少数存在する。
- 葉や茎、根などに、さまざまな色や形をした「虫コブ(「虫えい」「ゴール」とも呼ぶ)」を作り、その中に潜みつつ加害する、やや特異な虫である。虫の吸汁加害活動が刺激となり、植物の組織が異常に肥大して、虫コブが形成されるらしい。
- この仲間は、分類や命名が、かなりいい加減である様子。従って、解説ページの中にも、存在しない種類や異名同種などが複数混じっている可能性が高いのであしからず。
- 加害虫は、常に虫コブの内部におり、薬剤の効果が薄い。薬剤防除を目指すなら、成虫が産卵する時期を狙って散布する。ただ、虫コブは外見上、非常に目立つため、鳥や寄生バチなどの天敵に襲われやすい。よほどのことがない限り、放置して差し支えない。
- その他の吸汁する虫
- 吸汁性害虫といえば、アブラムシとカイガラムシが代表格だが、他にもいろんな虫がいる。(例えば、セミもれっきとした吸汁性害虫である。)しかし、大した害の無い虫も多いため、駆除するかどうかは、虫の種類と被害の出方をよく思案して決める。