コガネムシ類・ハナムグリ類
※コガネムシ類とハナムグリ類は、姿こそ似ているものの、植物への加害の仕方や、被害の度合いは大きく異なる。
いずれもコガネムシ科に属する。小鉢植えの場合、幼虫の発見が遅れると致命的である。原因不明の衰弱、株元がぐらつく、鉢土が陥没する、などの症状が現れたら発生を疑う。
家畜糞に由来する堆肥(牛糞堆肥・豚糞堆肥など)や、バーク堆肥には、コガネムシ類の成虫を誘引する物質が含まれているらしい。しかし、これらを避けようとすると、使える堆肥がほぼ無くなってしまう。
なお、この仲間を「カナブン」と総称することがあるが、カナブンという和名の昆虫は、コガネムシとは別に、きちんと存在する。カナブンはハナムグリ類の一種で、園芸植物を加害しない。(そもそも、ハナムグリの仲間は、害虫とは言い難い面があるので、一般家庭では、取り立てて駆除する必要は無いと思われる。)
コメツキムシ類の幼虫も、コガネムシ類の幼虫と同様の加害をするが、対策は同じでよい。
発生時期
5~10月(幼虫は7~12月。)
【補足事項】(いずれも成虫飛来期。)- アオドウガネ…6~10月
- コアオハナムグリ…4~6月・9~10月
- ドウガネブイブイ…6~10月
- ヒメコガネ…6~9月
- マメコガネ…5~10月
被害箇所
根、葉、花など。
形態
【成虫の形態】いずれも甲虫類の一種。体長1~2.5cm前後。体色は赤褐色や濃緑色、茶褐色など。体表に金属光沢がある。夜行性の種類が多い。幼虫で越冬する。
ハナムグリの仲間は、コガネムシ類とは習性が異なり、樹液や花粉、花の蜜などを主食とする。また、昼間に活動することが多い。
- アオドウガネ…体長2cm程度。体色は濃緑色。ドウガネブイブイに似る。
- オオクロコガネ…体長2cm前後。体色は黒褐色。体に光沢が無い。
- コアオハナムグリ…体長1~1.5cm程度。暗緑色地に、黄白色の小斑点がある。全身に細かい毛を持つ。危険を感じると体を硬直させ、落下する。
- ドウガネブイブイ…体長2~2.5cmと、やや大型。体色は銅色~青銅色。木を揺すると落ちてくる。年1回の発生。
- ヒメコガネ…体長1.3~1.6cm。体色に変化が多く、緑色や銅色、赤銅色などがある。翅の縦じわが目立つ。基本的に年1回の発生。
- マメコガネ…体長1~1.3cmとやや小型。体色は、胸部が金緑色で、腹部が赤銅色。集団で活動する傾向が強い。危険を感じると、後脚を斜め上に上げる、奇妙なポーズを取る。他の種類と違って、昼間でも活動し、夜の灯火に集まることはない。アメリカに侵入し、「ジャパニーズビートル」と呼ばれている。年1回の発生。
【幼虫の形態】体長1.5~4cm。体色は乳白色~黄色で、頭部は赤褐色。イモムシ類とは違い、脚は胸部に6本あるだけ。いつも体を「C」の字形に曲げている。
なお、ハナムグリの仲間は、コガネムシ類とは異なり、土中の腐食質や、朽ち木などを食べるため、害虫ではない。
主な被害
【成虫の被害】葉や花を食害する。葉脈は食べずに残す。
【補足事項】- コアオハナムグリ…花の中に潜り、花粉を食べたり吸蜜するが、このとき子房を傷つけるため、結実が妨げられ、花の寿命も縮む。果樹では、果実の肥大後も、表面に引っかき傷が残り、見た目を悪くする。
- マメコガネ…夜行性の多いコガネムシ類としては珍しく、日中に、集団で食害する。1匹が食害を始めると、どんどん仲間が集まってくる。白や黄色の花に集まりやすい傾向がある。
【幼虫の被害】土中で根を食害する。被害株は、根を失って急激に萎れ、やがて枯死する。根菜類では、根部に複数の浅い穴をあけられる。傷口から病原菌が侵入して腐ることも多い。
対策
【成虫の対策】見つけ次第捕殺する。多くの種類が夜行性で、昼間は活発に動かないため、植物を揺すると落ちてくる。
【成虫の薬剤】【散布】Mr.ジョーカー、アークリン、アーデント、アクタラ、アクテリック、アタブロン、アディオン、アドマイヤー1、アプロード、アルバリン、アントム、エンセダン、エンバーMC、オルチオン、オルトラン、オルトランA、オルトランC、オルトランMP、オンコル、ガーデンアースB、ガードベイトA、カウンター、カスケード、カダンAP、カダンD、カルホス、グランドオンコル、サイアノックス、サニーフィールド、スケルサイドA、ジェイエース、ジェネレート、ショットイン、スターガード、スタークル、スミソン、スミチオン、スミナイス、スミフェート、ダイアジノンSL、ダントツ、ディプテレックス、テルスター、トクチオン、トレボン、ノーモルト、パイベニカ、パーマチオン、ピレオール、ベジタメートAL、ベストガード、ベニカ、ベニカD、ベニカX、マッチ、マラソン、マルチガード、モスピランなど。
【幼虫の対策】被害株の根元を掘り、虫を捕殺する。(10~30cm、深くても60cmほど掘れば見つかる。普段は比較的浅い所にいるが、越冬中は深くもぐっている。)
自力で地面を歩き、土を掘って潜るので、地表に掘り出しただけで放置しない。
【幼虫の薬剤】【散布・土壌灌注・土壌混和】アクタラ、アドマイヤー1、エンバーMC、オンコル、オルトラン、オルトランDX、カルホス、グランドオンコル、サニーフィールド、ショットイン、スケルサイドA、ダーズバン、ダイアジノン、ダイアジノンSL、ダントツ、ディプテレックス、トクチオン、ネキリトン、ブイハンター、ホームガーデン、ボルテージ、マラソン、ラグビーMCなど。
【注意点】老熟幼虫には効果が劣るため、若齢幼虫(7~9月)を狙う。
予防策
成虫は光に引き寄せられるので、誘殺灯を設置し、誘引捕殺する。周囲の雑草を除去する。土に未熟な有機物を混ぜない。完熟有機物でも、多量に入れない。
砂質の土(造成したばかりの土地など)にも発生しやすいため、土壌改良する。鉢植えの場合は、時折、根の様子を見るために植え替える。
鉢植えの場合は、土の表面を、大きめのバークでマルチングしたり、目の細かいネットなどで覆うとよい。
主な被害植物
非常に多い。以下は一例。なお、成虫・幼虫で、加害の仕方こそ違うものの、被害を受ける植物はほとんど同じ。
【草花・鉢花】アイリス類、エンジェルストランペット、カスミソウ、キキョウ、グラジオラス、ジニア、ダリア、マリーゴールドなど。
【観葉・多肉】アイビー、アロエ類、花月、シバ類など。
【樹木・果樹】アカシア、アジサイ、アンズ、イヌマキ、エニシダ、オウトウ、カキ、カシ類、カンキツ類、キイチゴ、キウイ、キョウチクトウ、クスノキ、クヌギ、クリ、コナラ、サクラ、サザンカ、サツキ、サンゴジュ、シナノキ、スギ類、スモモ、ツツジ類、ツバキ、ドロノキ、ブドウ、ナシ、ナツヅタ、ニセアカシア、ハギ、バラ、フジ、ブドウ、フヨウ、プラタナス、ブルーベリー、プルーン、ポプラ、マツ類、マンサク、モモ、ヤナギ類、リンゴなど。
【ハーブ・野菜】アズキ、アスパラガス、イチゴ、エダマメ、エンドウ、カリフラワー、ササゲ、サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、ダイズ、ニガウリ、ニンジン、ブロッコリー、ヤマイモ、ラッカセイなど。
主な種類
【コガネムシ類】アオドウガネ、アカビロードコガネ、オオクロコガネ、コフキコガネ、セマダラコガネ、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ、マメコガネなど。
【ハナムグリ類】コアオハナムグリなど。