いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育て る-

園芸知識:和名・学名

概要

  1. 植物に限らず、あらゆる生物には名前がある。そして、ひと口に「名前」といっても、いろんな種類がある。

和名について

  1. ある国・ある地域の言語で付けられた名前のことを「普通名」といい、日本の場合、それを「和名」と称する。なお、英語で付けられた名前は、「英名」と呼ぶ。
  2. 和名は、一つの植物につき一つとは限らず、地域によってさまざま。そのため、最も一般的と思われる和名一つだけを「標準和名」と定め、それ以外の和名は、全て「別名」と呼んで区別する。わかりやすい例がヒガンバナで、標準和名は「ヒガンバナ」だが、別名は「マンジュシャゲ」「シビトバナ」「ユウレイバナ」など多数ある。
  3. ある一つの和名が、複数の植物を指すこともある。例えば、園芸上、「ヤグルマソウ」といえば、青紫の花が咲くキク科の一年草を指すが、同じ名前を持つ植物が、ユキノシタ科にも存在する。なお、キク科のヤグルマソウの標準和名は「ヤグルマギク」なので、ユキノシタ科のヤグルマソウとの、標準和名かぶりは無い。(余談だが、キク科のヤグルマソウの花は、あまり矢車に似ていないが、ユキノシタ科のヤグルマソウの葉は、矢車にそっくり。)
  4. また、「マツバギク」のように、一つの和名が、類似した複数の植物の総称になっているケースもある。この名前は、ある一種類の植物を指すものではなく、ハマミズナ科(ツルナ科)に属する複数の属(デロスペルマ属、ランプランサス属など)に属する、数多くの植物群をひっくるめたものである。
  5. 和名の中には、まったく市民権を得ていないものもある。シクラメンの和名は、「カガリビバナ」「ブタノマンジュウ」だが、そんな名前で呼ぶ人を見たことがない。
  6. 和名、英名を問わず、間違った名前が定着し、そのまま通っていることも多い。例をあげると、日本で「クリスマスローズ」と呼ばれる植物は、正しくは、クリスマスの時期に開花するニゲルという原種を指す名前である。しかし現実は、レント(カトリックの四旬節)の時期に開花する「レンテンローズ」の仲間も、「クリスマスローズ」の名で通っている。
  7. マーガレットやカーネーションなど、外来語に由来する名前は、和名とは呼ばない。なお、このようなカタカナ表記の名前は、必ずしも外来語に由来するとは限らず、生産者側が勝手に名付けたものもある。
  8. 現在、流通している植物の中には、生産・販売側の事情からか、一般受けしそうな名前が適当に付けられていることがある。そういう植物は、往々にして、俗称が一人歩きし、買った人が正確な名前を知らないことが多い。観賞用の植物ならよいが、飲食する可能性のあるハーブ類までその傾向があるのは問題だと思われる。(例えば、食用でない植物に「○○ジャスミン」「○○セージ」という名前を付けるのはどうか。)植物を育てるときは、栽培方法だけでなく、正しい名前(特に学名)も知るよう心がけたい。

学名について

  1. 和名や英名のように、植物の名前が、国・地域によってバラバラでは、とても不便である。そこで、「国際植物命名規約」に基づく万国共通の名称、「学名」が作られた。学名は、植物に限らず、あらゆる生物に対して付けられている。
  2. 日本では「学名はなじみがない」と思われがちだが、洋蘭や観葉植物は、学名で流通するものが非常に多い。(例、シンビジウム、デンドロビウム、アンスリウム、モンステラなど。)また、草花にもそうした植物がみられ、シクラメン、チューリップ、ビオラ、ペチュニアなどが該当する。
  3. 学名は通常、「属名+種小名」の組み合わせから成り(「二名法」「二名式命名法」などという)、ラテン語で表記する。実際は、その後に命名者名や発表年が続くが、しばしば省略される。
  4. 余談になるが、生物の分類の階級は、大きなものから順に、界(kingdam)・門(division)・網(class)・目(order)・科(family)・連(tribe)・属(genus)・節(section)・列(series)・種(species…略号sp.)・変種(variety…略号var.)・品種(form…略号f.)となっている。さらに、それぞれに「亜(sub)」を付けて細分化することがある。(例、亜科、亜属、亜種など。)なお、ここでいう「品種」は、交雑・交配によって作り出された「品種(園芸品種・栽培品種)」とは意味が異なる。
  5. 学名はイタリック体(斜体)で表記するのが正式である。また、属名の最初の一字は、必ず大文字で書く。なお、交雑・交配によって生まれた品種の名前は、「属名+種小名」に続けてローマン体で表記し、「'(シングルクォーテーション)」でくくるのがルール。
  6. 学名はラテン語なので、それを無理やりカナ表記すると、人によってさまざまな名前に変わってしまう。例えば、洋蘭のシンビジウム(属名)は「Cymbidium」と書くが、カナに直すと、「シンビジウム」「シンビディウム」「シンビジューム」など、いろんな書き方になる。このような表記揺れには、慣れるしかない。
  7. 基本的にローマ字読みすればよいらしい(人名・地名由来を除く)が、「u」は、しばしば、ウ段の音になったり、ア段の音になったりするので厄介。例えば、洋蘭のパフィオペディルム(属名)は「Paphiopedilum」と書くが、「パフィオペディラム」と読むことが多い。
  8. しかも、一つの植物につき、学名も一つとは限らない。植物の分類が変更されると、それに伴い、新しい学名ができる。学名が複数になると、正しいとされる学名を「正名」、それ以外の学名を「異名(シノニム)」と呼んで区別する。しかし、昔の学名のほうがよく知られている、というケースも多い。例えば、球根植物のアマリリスは、現在「ヒッペアストラム」という属に属するが、現在も旧属名の「アマリリス」で通っている。
  9. さらに面倒なことに、植物の分類や、正式な学名といったものは、研究者によって見解が異なることが少なくない。一般の家庭園芸家は、とりあえず、よく使われる学名を知っておけばよいものと思われる。