いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育て る-

園芸知識:水やり

概要

  1. 植物体の約90%は水でできており、水無くしては生存できない。地面に根を下ろす植物なら、雨水や地中の水分を利用できるが、鉢などの容器に植えられた植物は、人間が水を与えなければ干からびてしまう。
  2. 植物の葉は、日光を受けると裏面にある気孔を開き、体内の水分を水蒸気として蒸散させ、同時に熱も放出し、温度を下げる。蒸散ばかりしていると体内の水分量が減少するため、それを補うため、根が地中の水分を吸収する。
  3. 根は、周囲の土に水分が無ければ水を求めて伸び、水があれば吸収し、乾くとまた伸びる。(この時、土の粒の間にある酸素や養分も吸っている。)そのため、土が乾いたり湿ったりを繰り返す、適切な水やりを続ければ、鉢の中によく根が張り、生育が良くなる。
  4. 水不足の状態が長く続くと、葉は気孔を閉じ、水分の減少を防ごうとする。すると葉の温度が上昇し、葉が焼けたり、ひどいと枯れ込むこともある。また、上部にある若い葉が足りない水分を補おうと、古い葉から水分を奪い、下葉枯れが起きる。
  5. 水やりは、「一日に○回」とか「○日に一回」などと、決まった間隔で行うものではない。動物が、のどが渇けば水を飲むのと同じで、植物も、水不足になれば水を欲しがる。そして、その頻度は、季節や温度、湿度、日照量、風当たり、土の種類、鉢の材質などに大きく左右される。
  6. 水やりのタイミングは「土の表面が白っぽく乾いたら与える」のが大原則である。鉢植えを枯らす原因は、水のやり忘れよりも、水のやり過ぎによる根腐れのほうが多いといわれる。「少しくらい萎れても気にしない」というくらいの気持ちで。
  7. 園芸には、「水やり三年」という言葉がある。これは、まったくの園芸初心者が土の乾湿加減の調節を体得できるまで約三年かかる、という意味である。実際、そのくらい経験を積まないと、なかなか分からない。水やりは簡単そうに見えて、非常に奥が深いものである。

水やりの実際

  1. 水やりの方法は、「鉢の縁ギリギリまで水をため、それが土に吸い込まれたら、鉢底から水が流れ出てくる」のが理想的である。たっぷりと水を与えることで、土中の二酸化炭素や、根から分泌された老廃物が、水と一緒に鉢底から押し流され、代わって土の表面から新鮮な空気が入り込むため、根が機嫌よく呼吸できるようになる。ついでに、土中に蓄積した塩類(余剰な肥料など)も、きれいに洗い流される。
  2. やや余談になるが、土中に含まれる空気の二酸化炭素濃度は、大気中よりはるかに濃く、何十倍にもなるらしい。それでも植物の根や土中の微生物が酸欠にならないのは、余分な二酸化炭素が土中の水に溶け込み、流亡するため。「鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水を与える」ことの意義は、このことからも理解できる。
  3. 水やりの時間帯は、植物が活動を開始する早朝が最適。それが無理なら夕方でも問題ないが、なるべく日没までに行う。
  4. 夜間は、ある程度、土が乾いた状態にしておくと、夏の暑さ負けや、冬の凍結などを防ぎやすい。
  5. サボテンのように、茎葉が肥厚して多肉質になった「多肉植物」は、体内に水分をためることができるので、普通の植物よりも、水やりは少なめで済む。多肉植物は、乾燥に強い分、水が多いと腐りやすい。
  6. 水やりの際は、茎葉や花に水をかけない。上記のように、植物は、葉裏にある気孔から水を蒸散させ、減った分を根から吸い上げている。そのため、葉がぬれると、気孔からの水分の蒸散量が少なくなり、根からの水分吸収も悪くなる。また、茎葉や花がぬれると病原菌が増殖しやすくなる。特に梅雨時は注意が必要。
  7. とはいえ、実際には、茎葉や花に水がかかっても、意外と病気は出ないものである。なお、ハダニが付きやすい植物は、葉裏までシャワーで水をかければ、ハダニの増殖を抑えることができる。
  8. なお、挿し木を行う前、挿し穂の切り口を水に浸して水あげを行うが、この時ばかりは、しっかりと水あげさせる必要があるので、挿し穂の葉をぬらさない。
  9. 植え付け・植え替えの直後は、たっぷりと水やりし、根と土を密着させるのが原則。ただし、多肉植物は、根にできた傷から腐ることがあるので、作業後、3~7日ほど経ってからにする。
  10. 鉢やプランターなどに植え付け・植え替えをした直後の水やりは、底から流れ出る水の色が透明になるまで、しっかり行う。最初は土色の水が出てくるが、これは、土中のみじん(径1mm未満の微細な土粒)が流れ出ているためである。みじんが多いほど土の水はけが悪くなるので、きちんと洗い流しておく。
  11. 少量の水をちまちま与え続けると、水のかかった部分だけが湿り、鉢底の土は乾いたまま、という事態を引き起こす。また、鉢の縁まで水をためず、土の表面の、ある一箇所にばかり水をかけていると、土の中に水の通り道(「水みち」という)ができ、水の行き渡る部分と、全く来ない部分に分かれてしまうことがある。いずれも、水がしみ込まない部分の根が傷んだり、根の張り方が偏ったりするので、好ましくない。
  12. 水やりの回数が多すぎて、いつも土が湿っていると、根の伸長が抑えられる。それだけならまだしも、常に水浸しの状態が続くと、根が新鮮な酸素を吸うことができず窒息し、根腐れを起こす。そうなると、株全体が枯れるのは、時間の問題となる。
  13. せっかくきちんと水やりしても、鉢が傾いていると、水やりの後、鉢底の一部に水が溜まり、そこに張った根が腐ることがある。鉢の置き場所は、できる限り水平に。
  14. 鉢の下に「鉢受け皿」を敷いている場合は、水やり後、鉢底から出た余分な水が受け皿に溜まる。そのままにすると根が水浸しになり、根腐れしかねないので、必ず、溜まった水を捨てる。
  15. 室内に置いた大鉢などは、鉢受け皿に水が溜まったからといって、いちいち鉢を移動させて水を捨てるのが億劫である。そんなときは、雑巾やボロ布を受け皿に浸し、水を吸わせるとよい。
  16. 鉢土に、竹串を、鉢底に達するまで縦に挿し込んでおくと、土の乾き具合を判別しやすい。竹串は、ぬれている部分と乾いている部分で色が違うので、水やりの前に抜き、色の違いを確かめれば、土がどこまで乾いているか目安になる。越冬中や休眠期は、鉢底まで完全に乾いてから水やりを行うので、この方法が便利である。
  17. 与える水は、水道水のようなきれいな水が適する。一晩くみ置いた水なら、なおよい。植物によっては、塩素を嫌うことがあるらしく、そのような場合は一度、浄水器を通す。風呂の残り湯も使えるが、水中に汚れが含まれているため、毎日のように与えると、根が傷んだり、病気が出る可能性がある。(滅多にないと思うが。)なお、入浴剤を使用した残り湯は禁止。
  18. また、池や川が近くにあるからといって、そこから水を汲んできて与えるのも問題がある。そのような水には、植物の病原菌(特に疫病菌)が潜んでいることが多い。とはいえ、庭の水まきには適する。(庭土は量が多く、微生物の種類も多いため、多少、水中の病原菌が入り込んだところで、すぐ抑え込まれる。)
  19. 地植えの植物には、原則として水やりの必要はない。しかし、造成地の場合は、土の質が悪かったり、土の量が少なかったりして、乾きすぎてしまうことがある。真夏に晴天が続くようなら、散水して、樹幹の真下にある土と、枝葉をたっぷりと濡らしてやる。(地表を湿らせる程度では、地下の根まで届かないので注意。)打ち水をかねて夕方に散水すると、少しだけ周囲の温度が下がり、一石二鳥。広い庭なら、市販のスプリンクラーを設置するのもよい。

道具について

  1. 水やりには、ハス口の付いたジョウロか、口の細い水差しを使う。両者とも、商品によって大きさやデザインはさまざまなので、好みの品を。
  2. ジョウロを使う場合は、水のやり方によって、適宜、ハス口の向きを変える。ハス口を下向きにすると、水のかかる範囲が狭くなり、小さな鉢でも、土に対して正確に水やりできる。逆に、ハス口を上向きにすると、水のかかる範囲が広がり、頭から水をかけたい場合などに適する。
  3. ホースで直接水やりするのもよいが、必ず、先端にハス口のあるノズルを取り付ける。ハス口が無いと、水の勢いで土が飛び散り、穴が開いて根が露出してしまう。(やむを得ずハス口無しで水やりする時は、先端に手を添え、水の勢いを弱める。)また、表土を伝って、水が別の場所に流れていき、土中にしみこまない、という事態も起こりうる。
  4. 取り付けるノズルは、古くからある真鍮製のもので十分。しかしホースが長く、蛇口が遠い場合は、いちいち水を止めにいくのが面倒なので、コックの付いたノズルを使う。(普通のノズルを使う場合、ホースを折り曲げれば、一時的に水を止めることができる。)ただし、蛇口に対するホースの取り付けが甘いと、水圧でホースが外れて水が飛び散るので、専用の連結器具を使い、しっかり取り付ける。
  5. 最近は、スプレーガン式のハンドノズルがあるので、これを使うのもよい。散水方法を手元で切り替えられる製品もあり、かなり便利。

真冬・休眠期の水やり

  1. 越冬中など、植物が休眠している期間は、一貫して、土を乾き気味に保つ。そうすると植物内の水分量が減って、樹液が濃縮され、耐寒性が高まるとされる。
  2. 休眠中は根の活動が鈍いため、土がなかなか乾かず、水やりの回数が減る。が、一回に与える水の量を減らすのはよくない。水やりの間隔こそ広がるが、鉢底から流れ出るまで与える原則は、生育中も休眠中も変わらない。
  3. とはいえ、耐寒性の無い植物では、土中の水で根が長時間冷やされ続けると、根腐れしやすくなる。夜も暖かい室内に置く限りは、それほど神経質になる必要はないが、気になる場合は、与える水の量を、鉢底から流れ出ない程度まで減らす。
  4. 休眠期の水やりは、土が鉢底まで乾ききった頃を見計らって与える。鉢土の表面が乾いたからといって、あわてて与える必要はない。
  5. 寒い屋外で越冬中の植物に水やりをする場合、夕方に行うのは避ける。夜間に余分な水分が残ると、土が凍ったり、霜柱が立って、根が傷む原因となる。
  6. 耐寒性の無い多肉植物の中には、低温期に水を与えると、株が冷え、容易に腐る種類がある。(例、観葉植物のサンセベリアなど。)そのような植物には、越冬中、一滴の水も与えない。長期間断水させると茎葉の表面にシワが寄ってくるが、それでも気温が十分に上がるまで、水やりを我慢する。(サンセベリアの場合、半年くらい水が無くても生きられる。)もちろん、室内で十分な温度が保てる場合は、そこまで断水させる必要は無い。
  7. 夜も暖かい室内で越冬させている植物には、空中湿度を保つため、ときどき霧吹きで水をかけてやるとよい。かける水は、一晩汲み置いた温水を使い、夜までには完全に乾くようにする。

真夏の水やり

  1. 真夏は根が水をよく吸い上げるため、すぐ土が乾く。油断すると水切れし、枯死しかねないので、朝と夕方の最低二回、水やりをしたい。ただし、暑い日中でも、土が完全に乾き、株がひどく萎れていれば、夕方まで待たず、即座に水やりをする。この場合、鉢土の蒸れを防ぐため、夕方まで鉢を日陰に移動させておく。
  2. あまりに鉢土の乾きが速く、頻繁な水やりが必要なら、鉢の中に根が回りきっていると考えられるので、一回り大きな鉢に植え替えるとよい。このとき、根鉢は崩さない。
  3. 真夏は植物もバテて、根が弱っているので、過湿は禁物。暑さに弱い植物は、過湿で鉢土が蒸れると、あっけなく枯死する。
  4. 暑い日は、植物にもシャワーで水をかけたくなるが、陽当たりの良い場所でそれをやると、茎葉に付いた水滴が、強烈な日光を集めるレンズの役目をし、葉焼け・変色の原因になる。また、植物全体に水をかけても、温度が下がるのは一時的なので、劇的な効果はない。
  5. ただし、夕方のシャワーは、植物の温度を下げる効果がある。行う場合は、なるべく土に水をかけず、茎葉だけを濡らすよう心がける。葉の裏にも水がかかるよう、下から上に向けてシャワーをすれば、ハダニの駆除もできて一石二鳥。
  6. 大型の鉢やプランターなどに土をたくさん入れ、その中に、植物を鉢ごと埋める「二重鉢」も、水切れ対策の一つである。鉢の部分だけを埋め、水やりの際は、鉢の外側の土にも与えるのがコツ。庭があれば、そこに穴を掘って鉢を埋めてもよい。これらの方法は、夏の暑さ避け対策としても、かなり有効である。

多忙・留守中の水やり

  1. 水やりの時間がとりにくければ、「底面灌水鉢(底面給水鉢)」を使うのも手。底面灌水鉢とは、シクラメンの鉢物によく使われる特殊な鉢で、鉢底に水をためる皿が付いており、そこから不織布のヒモを伝って、鉢土に水が上がる仕組みになっている。根が吸い上げた分だけ、下から水が上がってくるので、過湿になりにくい。皿の中の水さえ切らさなければ、水切れも起きない。しかし、鉢土が常に湿った状態になるため、水切れに特に弱い植物だけに用いるのが望ましい。
  2. 旅行など、長期間水やりができない場合は、誰かにお願いするのが最善だが、それが無理なら、下記のような方法をとる。環境にもよるが、夏なら2~3日、それ以外の季節なら7~10日ほど耐えられる。
    1. ペットボトルに水を入れて、市販の給水ノズルを付け、鉢土に逆さまに差し込んでおく。なお、ペットボトルに日光が当たるとお湯になるので注意。(アルミホイルを巻いておけば、断熱剤の代わりになる。)
    2. 鉢土に穴を空け、水を含ませた保水剤を流し込む。(園芸用の保水材が市販されている。)
    3. 上記の底面灌水鉢に植え替えて、貯水皿にたっぷり水をためておく。
    4. 大型プランターや発泡スチロール箱などに土を入れ、鉢ごと埋め込む。
    5. 直射日光の当たらない地面に穴を掘り、鉢ごと埋め込む。
    6. 根鉢を崩さないように鉢から抜き、二回りほど大きな鉢に植え替える。(このとき、根鉢は崩さない。)帰宅後は元の鉢に戻す。
    7. 水を張った皿やトレーの中に鉢植えを置き(水位は3cm前後)、鉢底から水を吸い上げさせる「腰水」にする。
    8. 水を張った皿やトレーの中にレンガなどで鉢置き台を作り、鉢底穴に細長い布きれ(不織布や木綿など)の一方を5cmほど差し込んで、もう一方を水に浸し、鉢置き台に置けば、底面から潅水ができる。このとき、鉢底が水面に触れないよう注意。
  3. いずれの方法をとる場合も、出発直前に水やりした後、鉢を日陰に移動させ、土の乾きを少しでも遅らせることを忘れない。可能なら、少し剪定して葉を減らし、水分の蒸散を防ぐ。鉢土の表面を水ゴケなどでマルチングすれば、さらに乾きにくくなるのでおすすめ。
  4. 留守中、鉢植えを室内に入れておく場合は、室温の上がりすぎに注意する。特に真夏は、とんでもない室温になり、植物が高温障害を起こして枯れてしまうことがよくある。
  5. 他に、市販の自動灌水装置(自動水やり器)を用いる方法もある。最近は、装置の種類も増え、多くの鉢に、タイマー式で、自動的に水を与えられる製品もある。なお、灌水装置を用いる場合は、留守にする前に、必ず動作テストをしておく。出かける当日に初めて使用し、正常動作しなかった場合、悲惨な結末が待っている。(植物が枯れるばかりでなく、水道栓から水が漏れて、家が水浸しになることもある。)