いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育て る-

園芸知識:タネまき・育苗

概要

  1. 多くの植物は、子孫を残すために花を咲かせ、種子(タネ)を作る。このタネを採種してまけば、親株とは違う、新しい子株を得ることができる。植物の繁殖方法はいろいろあるが、このタネまきが最も自然な方法であろう。
  2. 同じ植物の苗がたくさん欲しければ、市販の苗をまとめ買いするより、タネから育てたほうが経済的である。そもそも苗が出回らない植物なら、自分でタネをまいて育てるしかない。
  3. タネまき~育苗の作業は、面倒と思われがちだが、慣れれば面白いほど苗ができる。基本的に、タネが大きな植物ほどまきやすく、発芽後の管理も容易なので、慣れないうちは、大きなタネで練習するとよい。タネが大きな植物としては、アサガオやオシロイバナ、オジギソウ、キンセンカ、コスモス、スイートピー、ヒマワリ、ホウセンカ、マリーゴールドなどがある。なお、庭木や果樹のタネも大きいが、こちらは、草花のタネとは少々勝手が違うので、少し経験を積んでからにしたほうが無難。
  4. 市販の園芸植物は、「F1品種(一代交配種)」であることが多い。これらは、文字通り、一代限りの雑種なので、そこからタネを採って二代目を育てても、初代とは違う姿に育つことが多い。
  5. 市販の果物や野菜は、ほとんどが一代限りの品種なので、食べた後にタネを採ってまいても、親株と同等の品質を持つ子株は、あまり期待できない。しかし、カンキツ類やビワ、トロピカルフルーツ類(アボカド、パパイヤ、マンゴー、ライチなど)は、品質の劣化が起きにくく、良質の子株を得られる可能性が高い。ただし、輸入果物の中は、殺菌・殺虫などの目的で、放射線処理されているものがあり、そのような果実のタネは、まいても発芽しない。

タネの入手・扱い

  1. タネを購入する際は、タネの管理が適切な、信頼できる店を選ぶ。店頭に並んでから、ひと夏、またはひと冬を越した古いタネは、まいても発芽しないことがある。入荷したての新しいタネでも、直射日光が当たる場所に置いているなど、陳列の仕方が悪ければ、急激に発芽率が低下する。
  2. 新しいタネが店頭に並び始めるのは、タネまき適期よりも、かなり早い時期である。春まきのタネなら、年明けには並んでいるし、秋まきのタネは、夏休み前に売り出される。早めに買ったタネは、タネまき適期が来るまで、冷暗所で保存しておく。
  3. 完熟直後のタネは、休眠していることが多い。いったん休眠に入った後、夏の高温・冬の低温などの経験(「休眠打破」という)をすると、休眠から覚める性質がある。そうすることで、寒さに弱い春まき一年草が真冬に発芽して枯れる、などという失敗を回避しているのである。除虫菊やパンジーなどは、タネを、湿らせた状態で数週間冷蔵庫に入れる「低温処理」を行ってからまけば発芽率が上がるが、この処理方法は、タネが持つ、そのような性質を利用したものといえる。
  4. 市販のタネは、大抵、すでに休眠から覚めた状態で売られている。低温処理を行う必要はなく、そのまままける。ただし、ごく一部、処理が必要なタネがあるので、タネ袋の説明書きをよく読む。
  5. 休眠から覚めたタネは、水を吸うと、内部で化学反応が起こり、生命活動を開始して発芽に至る。球根植物とは違い、乾燥保存している間に発芽することはない。しかし、植物ごとに、発芽に適した温度が決まっており、水さえあれば即発芽する、というわけでもない。
  6. 発芽適温は、市販のタネなら、タネ袋に記載されている。目安としては、熱帯~亜熱帯産の植物のタネなら20~25℃(だいたい22℃前後)、寒帯~温帯産の植物のタネなら15~20℃(だいたい18℃前後)である。発芽適温を守らないと、まいても発芽しなかったり、極端に発芽率が悪くなったりする。
  7. タネから育てたい植物の代表は、一年草類である。一年草は、生育の時期によって、「春まき一年草」と「秋まき一年草」に大別される。春まき一年草は、熱帯~亜熱帯産の植物が多く、発芽適温も高いので、タネまきは十分暖かくなるまで待ち、4月下旬~6月下旬頃に行うとよい。秋まき一年草は、寒帯~温帯産の植物が多く、発芽適温が低いので、十分涼しくなるまで待ってからまく。ただし、冬までに十分大きく育てないと、寒さに耐えられないので、あまり遅まきするのもよくない。9月下旬~11月上旬頃にまくとよい。
  8. ヒョウタンやヘチマ、ワタなど、完熟した果実を観賞・利用する一年草は、タネまきが遅れると、果実が熟す前に生育期間が終わってしまい、失敗することがある。
  9. 庭木や果樹のタネは、タネが完熟してはじけ飛ぶ直前に採種し、保存せず、すぐにまくのが原則である。完熟したタネを乾燥させてしまうと、干からびて発芽しなくなったり、休眠に入ってしまい、発芽が数年後になったりする。
  10. トルコキキョウやベゴニアなど、粉末状の微細なタネは、あまりに小さすぎて扱いにくいので、タネの表面を特殊資材でコーティングし、大きな粒にした「コーティング種子(ペレット種子)」が市販されている。コーティング種子は、直径1mmほどあるので、元々のタネに比べて格段にまきやすい。
  11. 多くの植物のタネは、光の強弱に関係なく発芽する。しかし、中には、バジルやプリムラ、ペチュニアのように、タネに光が当たらないと発芽しない「好光性種子(明発芽種子)」や、ケイトウやジニア、ニゲラのように、タネに光が当たると発芽しない「嫌光性種子(暗発芽種子)」が存在する。自分がまくタネがどの性質に該当するのか、よく調べてからまかないと、タネが無駄になりかねないので注意する。大雑把に言って、粒の大きいタネほど嫌光性で、粒の細かいタネほど好光性である。市販のタネなら、性質がタネ袋に明記されている。
  12. 余ったタネを保存する際は、乾いた紙で包み、海苔などの空き缶に入れて密封し、冷蔵庫の野菜室に入れる。このとき、乾燥剤も一緒に入れておくと、なお良い。長期保存するほど発芽率が低下するので、なるべく早くまき切る。
  13. 樹木のタネは、保存せずに、すぐにまいた方が良いが、やむを得ず保存する場合は、湿らせた紙に包むか、湿らせた清潔な土に埋め込み、それをビニールで包んで密閉した上で、冷蔵庫の野菜室に入れる。庭があれば、地面に直接埋めてもよい。長期保存はできないので、なるべく早くまき切る。
  14. 例外的に、果肉のないカサカサした果実(「乾果類」という)を付ける樹木の中には、タネを乾燥保存できる種類がある。(例、ウツギ、カエデ、スギ、ツツジ、ヒノキ、マツなど。)これらのタネは、乾燥状態での長期保存が可能。
  15. タネは、古くなると発芽しなくなる。タネの寿命は植物によって違うが、せいぜい2~3年である。1年以内に寿命が尽きるタネもある。
  16. 植物によっては、タネの形や色が、品種によって全く違うことがある。ヒマワリが典型例で、大型品種のタネは大きいのに、小型品種のタネはとても小さい。また、種皮の縞模様も、鮮明なものと、ぼやけているものがある。同じ植物なのに、タネの見た目が違うと不安になるが、品種ごとの個性と割り切って育てる。

まく前の処理

  1. 果実からタネを採り出してまく時は、必ず果肉をきれいに取り除き、タネをよく水洗いする。果肉には発芽抑制物質が含まれていることが多く、そのまままくと、発芽率が著しく低下する。
  2. バーベナなど、種皮に発芽抑制物質が含まれる植物は、タネを布袋に入れて洗面器などに沈め、一晩、水道水を流しっ放しにして、発芽抑制物質を洗い流す。ただ、市販のタネは、すでに発芽抑制物質が取り除かれており、そのまままくことができる。
  3. アサガオやスイートピーなど、種皮が石のように硬いタネ(「硬実種子」という)は、まく前に、丸一日水に浸けておき、吸水してふくらんだタネを選んでまく。ふくらまなかったタネは、種皮に少し傷を付け(発芽部を傷付けないよう注意)、もう一日、水に浸けてみる。なお、水に浮くタネは、まいても発芽しないことが多いので取り除く。(※ 大粒のタネの場合のみ。中~小粒のタネの場合は、水に浮くタネのほうが良質なこともあるらしい。)
  4. ローダンセやワタなど、全体が毛でびっしりと覆われるタネは、そのまままくと、毛が水をはじいて吸水しにくく、発芽率が悪い。毛のあるタネは、粒の細かい砂と一緒に手でよくもみ、毛を取り除いてからまく。全ての毛を取る必要はなく、タネの輪郭が明確にわかる程度まで取り除けば大丈夫。市販のタネは、最初から毛が取り除かれている。

タネのまき方

  1. タネまきの方法には、タネを花壇や畑に直接まく「直まき」と、「まき床」を用意して土を入れ、そこにタネをまいて育てる「箱まき」がある。
  2. 「直まき」は、苗を移植する手間が無いので楽だが、まいたタネや発芽したばかりの幼苗が、土中の病原菌や害虫に負けてしまうことがよくある。しかし、タネが大きく、病虫害に負けない体力のある植物や、移植を嫌う植物には良い方法である。また、畑で野菜を栽培するときなど、一度に大量の植物を育てる場合も、直まきのほうが効率的。なお、タネが微細な植物は、直まきしないほうがよい。
  3. 「箱まき」は、移植などの作業が面倒だが、清潔な土で安全に幼苗を育てられるのが利点。発芽後も、幼苗の生長具合に応じ、土の量や植え鉢を変更でき、きめ細かい管理ができる。
  4. まき床の容器は、小さめのビニールポットや連結ポット(プラグトレイ)、平鉢、専用の育苗箱などを用いる。玉子パックの底に水抜き穴を開けたものでもよい。タネの大きさにもよるが、浅めの容器を用いるのがコツ。深い容器を使うと、底の方の土が乾きにくいため過湿になりやすく、発芽した幼苗が根腐れすることがある。なお、使い古した鉢などをそのまま使うと、まいたタネや、発芽した幼苗が腐ることがあるので、あらかじめ、オーソサイドなどの園芸用殺菌剤か、熱湯などで消毒してから用いる。
  5. まき床に入れる土は、無菌で、pHが弱酸性~ほぼ中性の土を用いる。適するのは、赤玉土小粒や川砂、バーミキュライト、ピートモス、水ゴケの粉末など。市販のタネまき専用土もよい。土の深さは3~5cm程度が最適。なお、不潔な古土を使うと、タネや幼苗が腐る病気が出やすい。
  6. まき床の土には、肥料を入れないほうが安全である。元肥を入れると、幼苗が肥料負けを起こすことがある。もしも入れる場合は、まき床の底のほうに、少なめに混ぜ込む。
  7. まいたタネにかぶせる土(覆土)の厚さは、タネの厚さの一~二倍が基本である。覆土が厚すぎると発芽しない。(タネの厚さが1mmなら、覆土は1~2mm。)よく分からなければ、とりあえず、タネが見えなくなる程度に土をかぶせる。ただし、好光性種子や、直径1mmにも満たない微細なタネには覆土をしない。
  8. とはいえ、覆土には、タネを乾燥から守ったり、発芽時に種皮をむけやすくする役割がある。(発芽の過程をよく見ると、発芽しかけの幼苗は、土との摩擦を利用して種皮を脱いでいる。)好光性種子や微細なタネに覆土をしてはいけないのは事実だが、覆土の役割を考えると、土の粒の間からタネが見え隠れするくらい、ごく薄く土をかぶせたほうが、その後の生育が良かったりする。覆土の加減が難しければ、タネと、粒の細かい土を等量混合し、それを土の上にばらまく。
  9. タネのまき方は、以下の三通りある。
    1. 条まき(筋まき)…土の表面に浅い溝を作り、そこにタネを一列にまく。
    2. 点まき…土の表面に小さな穴を掘り、そこにタネを数粒ずつまく。
    3. ばらまき…土の上に、タネを適当にばらまく。
    基本的に、大粒のタネは条まきか点まき、微細なタネはばらまきする。
  10. タネまきの手順は、だいたい下記の通りである。2.の過程は省略可能。
    1. まき床の容器に土を入れ、表面を優しくならして平らにする。
    2. まき床に水やりして、土を落ち着かせる。このとき、土がへこまないよう、ホースや水差しではなく、ハス口を付けたジョウロを使うとよい。
    3. タネ同士が重ならないよう注意しつつ、まき床全体に、タネを均等にまく。
    4. 2mm程度の、目の細かいふるいを使い、全てのタネに均等に土をかぶせる。粉末状の微細なタネなら、1mm目のふるいを使い、「みじん(径1mm未満の微細な土の粒)」をかぶせてもよい。まいたタネが少量なら、ふるいを使わず、指先で丁寧に覆土する。
    5. 水を張った浅いトレーや鉢受け皿などに、まき床ごと浸し、底から水を吸わせる。(「腰水」という。)
    6. 腰水にしたまき床を、直射日光や雨、強い風などの当たらない、涼しい場所に置き、発芽を待つ。
  11. 最近は、圧縮ピートモスで作られた、「ジフィー」シリーズや「ピートバン」など、手軽で便利なタネまきキットが市販されているので、それを使えば、まき床の容器や土を用意する手間が省ける。なお、乾燥したピートモスは水を吸いにくいため、あらかじめ、浅く水を張ったトレーや鉢受け皿などに浸し、じっくり吸水させてからタネをまく。
  12. タネまきの後、上から水やりをすると、タネが水で流されたり、覆土が飛び散る恐れがあるので、腰水とし、底面から吸水させる。しかし、粒の大きなタネは水で流れにくく、覆土も厚いので、ハス口を付けたジョウロを使えば、上から水やりしても大丈夫。
  13. タネをまいたら、発芽するまで、決して乾かしてはいけない。一度でも乾かすと、吸水して活動し始めていたタネが干からび、二度と発芽しなくなる。毎日監視できなければ、湿らせた新聞紙か、空気穴をたくさん開けたビニールなどでまき床を覆い、湿度を保つ。ただし、発芽が始まったら、即座に覆いを取り除かないと、幼苗が日光不足や蒸れのために徒長したり、腐ったりするので注意する。
  14. まき床を直接、土の上に置くと、ダンゴムシやナメクジなどの害虫がやって来るので、コンクリートの上や、棚などに置いたほうが安全である。
  15. 一つのまき床には、一種類のタネだけをまく。たとえ、同じ種類の植物でも、品種や花色が違っていれば、別々のまき床にまいたほうがよい。なぜなら、同じ種類の植物であっても、品種や花色の違いで、発芽後の生長速度が違うことが多々あり、弱い品種や花色が負けてしまうためである。
  16. いろんな植物のタネを、たくさんのまき床にまいた場合は、それぞれに、名前を書いたラベルを立てておかないと、どのまき床に何のタネをまいたのか、分からなくなる。

シダ類の胞子まき

  1. シダ植物はタネを作らないので、胞子をまく「胞子まき」で殖やす。生育が遅い上に、雑菌に負けやすいこともあり、タネまきに比べるとハードルが高いが、挑戦する価値はある。
  2. 胞子をとるには、葉裏に付く「胞子嚢(胞子が入った小さな袋状組織)」が濃茶色~黒褐色になった頃に、葉ごと切り取って、風通しの良い冷暗所で乾燥させる。よく乾くと、胞子嚢と胞子が分離し、まきやすくなる。まく際は、目の細かいふるいにかけて、不要な胞子嚢を取り除く。
  3. 適温(18~25℃)と湿度さえあれば、いつでもまけるが、春にまくのが一番やりやすい。実際の胞子まきの手順は下記。
    1. 浅鉢と用土(上記のタネまき用土と同じだが、粒の大きさは5mm以下)を用意し、熱湯をかけるか、電子レンジで短時間熱するなどして消毒し、無菌状態にする。(※ 空気中に漂うコケ類の胞子や雑菌を除去するため。)
    2. 用土が冷めたら、表面に胞子を薄くばらまき、ガラス板をかぶせて密閉する。胞子は微細なので覆土は不要。
    3. まき床を浅い「腰水」にし、底面から給水させる。
    4. まき床を日陰の冷暗所で管理し、発芽を待つ。
  4. シダ類は発芽後、「前葉体」という器官を作る性質がある。この前葉体が肉眼で確認できるまで、数ヵ月ほどかかるので、その間、乾燥させないよう注意する。鉢上げできるのは葉が4~5枚になった頃だが、初期生育が遅いため、その段階に到達するまで、数年かかることもある。
  5. 胞子をすぐにまかない場合は、タネの保存と同じく、乾燥剤とともに密封して冷蔵庫に入れておく。

発芽~間引き

  1. 発芽までにかかる日数は、植物によってまちまちである。発芽適温下なら7~10日程度で発芽するものが多いが、二週間~一ヵ月かかる植物もある。庭木や果樹のタネは総じて発芽が遅く、半年から1~2年、あるいはそれ以上かかるものさえある。この間、鳥やアリにタネをほじられないよう注意する。(鳥は発芽した幼苗も狙うのでタチが悪い。)
  2. 発芽直後に幼苗が突然腐ったり、倒れて枯れてしまうことがあるが、これは「苗立枯病(なえたちがれびょう)」である。まき床の容器や土が不潔だと、高確率(夏場ならほぼ100%)で発生する。容器と土は、買ったばかりの新品を使うか、園芸用殺菌剤や熱湯などで消毒したものを用いる。
  3. タネにも、粉末状の殺菌剤をまぶしておけば、発芽後の病気の発生率が下がる。市販のタネは、すでに殺菌剤処理済みのものが多い。タネ袋に「キャプタン剤処理済」「チウラム剤処理済」「ベノミル剤処理済」などと書いてあれば間違いない。
  4. 発芽直前になると、覆土の表面にヒビが入ってくる。このヒビから新鮮な空気が入り込み、それによってタネの活動が活発化するため、上から押さえたり、水をかけたりしてヒビを塞ぐのは良くない。
  5. 発芽が始まったら、まき床を日光の当たる場所に移動させる。全ての幼苗の葉に均等に日光が当たるよう、定期的にまき床を回転させてやるとよい。
  6. 発芽後しばらくの間は、ジョウロなどで上から水やりすると、せっかくの幼苗が倒れてしまう。小さな水差しで水を与えるか、引き続き、腰水にしておくとよい。ただし、タネの頃とは違い、土の過湿が、即、幼苗の徒長や根腐れにつながるので、トレーや鉢受け皿にためる水は、半日で完全に乾く程度の、ごく少量にしなければならない。ある程度苗が育ったら、ハス口を付けたジョウロで水やりできる。
  7. 複数の花色のタネを一緒にまき、何色の花が咲く苗か分からない場合、苗の茎や芽の先端、節の部分などの色を見れば、だいたいの見当が付く。赤みを帯びていれば、赤系の花を咲かせる苗で、緑色をしていれば、白や黄色系の花を咲かせる苗だと考えられる。(もちろん、全ての植物に当てはまるわけではない。)
  8. 発芽後の間引きは、数回に分けて行う。一回目は子葉(双葉)が揃った頃、二回目は本葉1~2枚の頃、三回目は本葉3~5枚の頃が目安である。よほど多くのタネをまかない限り、普通は、1~2回間引けば足りる。なお、幼苗の数が少なく、苗同士の間隔が最初から広くとれている場合は、あまり間引きの必要が無い。
  9. 優先的に間引くのは、葉の形や色が悪かったり、生育が思わしくなかったり、種皮が脱げていなかったり、早くも病虫害を受けたりした苗である。その後は、苗の生長に応じて、互いの葉が触れ合わないように間隔を広げていく。一回目の間引きで株間1cm、二回目で3cm、三回目で5cm、といった具合である。
  10. 間引き対象の苗は、ピンセットなどを使い、根ごと引き抜く。しかし、苗がある程度生長すると、土の中に根が張ってくるため、引き抜く時に、残したい苗の根を傷めることがある。それを避けるには、間引く苗の地上部分だけをハサミで切り取る。
  11. 市販のタネには、「ミックス」と称し、一つのタネ袋に、複数の品種や花色を混合した製品がある。そのようなタネは、品種や花色によって、発芽のタイミングや生育の速度、葉の大きさなどがバラバラであることが多い。そのため、葉色や生育が悪く見える苗でも残しておくなど、間引き方に注意しないと、特定の品種や花色ばかりが残ってしまう。
  12. ごくまれに、市販のタネが、ウイルスに侵されていることがある。発芽後、葉の萎縮や奇形、モザイク状の色抜けなどが見られたら、育苗をやめ、処分したほうがよい。ウイルス病は治療法がなく、自然に治癒することもない。
  13. 間引き後、残した幼苗がぐらつくようなら、子葉が埋まらない程度に、株元に土寄せし、安定させる。放置すると幼苗が倒れたり、本葉の重みで子葉の下の茎(胚軸)が曲がったりする。(「腰砕け苗」という。)

施肥の開始~移植・定植

  1. 発芽後の幼苗は、タネの中に含まれる貯蔵養分で育つ。が、生長とともに、次第に養分不足になるので、本葉が出始めた頃から、施肥を開始する。
  2. ただし、いきなり成株と同量の肥料を与えたりすると、幼苗が肥料負けを起こして枯れる。最初は2,000倍程度に希釈した薄めの液体肥料を週に一度与えるか、効果の穏やかな緩効性肥料を根元から数cm離れた場所に少量置き、様子を見る。本葉の数が増えてきたら、徐々に施肥量を増やしていく。
  3. 一般に、草花(特に一年草類)は、発芽後の生長が早いため、幼苗時から適切に肥料を与えないと、立派な株に育たないことがある。しかし、樹木の幼苗は生長が遅いので、発芽後も、急いで施肥をする必要はない。たとえ、発芽後3~4ヵ月くらい無肥料で放置しても、日光と水さえあれば育つものである。
  4. まき床で苗が順調に育ち、本葉が3~5枚になったら、移植が可能。作業前日に水やりを控え、まき床の土を乾き気味にしておくと作業しやすい。まき床から土ごと取り出して優しく崩し、根を傷めないよう注意しながら苗を掘り上げ、2.5~3号のビニールポットなどに一株ずつ丁寧に植え付ける。このとき、根に付いた土を落とす必要はない。一連の作業は、根を乾かさないよう日陰で手早く行う。移植が終わったら、ジョウロなどでたっぷりと水やりし(上からかけても大丈夫)、日当たりと風通しのよい場所に置く。
  5. 移植には、幼苗の根に刺激を与え、その後の根張りをよくする効果もある。しかし、面倒だと思うなら、最初から、ビニールポットや連結ポットにタネを数粒ずつまき、間引きながら育てる方法をとったほうがよい。
  6. 根があまり分枝しない「直根性」の植物は、移植をすると枯れやすい。移植を嫌う植物は、直まきするか、上記のように、ポットにタネをまき、間引きながら育てる。直根性の植物は、ケシ科、セリ科、マメ科などに多い。
  7. 移植できる大きさに育つ速度は、植物によってまちまちである。一年草の苗は生長が早く、すぐ移植適期を迎えるが、多年草の苗は遅れる傾向がある。樹木の苗はさらに生長が遅く、発芽から数年後に行う種類まである。
  8. 樹木の苗の場合、初めて移植する時期は、発芽からの経過日数・葉の枚数などで決めるのではなく、その樹種の植え替え適期に従ったほうが安全である。特に、落葉樹は、葉のある時期に植え替えると、枯死する危険が大きいので、落葉するまで待ってから移植したほうがよい。
  9. ビニールポットや連結ポットの内部に根がしっかりと張り、底穴から見えるようになったら、最終目的地に定植できる。余裕があれば、もう一回り大きなポットに再度移植し、さらに苗を作り込んでから定植してもよい。定植後は十分に水やりし、根と土をしっかり密着させる。
  10. 定植作業が遅れ、ポットの内部に根がまわり過ぎてしまったら、根鉢(根と土のかたまり)の表面を少し崩してから植え付ける。ただし直根性の植物はこの限りでない。

タネまきに慣れたら

  1. 一年草は、花が咲いてタネができると枯死するが、このタネを採っておけば、翌年以降も栽培できる。自家採種したタネは、親株よりも劣る雑種になることが多い半面、自分だけのオリジナル品種が生まれる可能性もある。
  2. 自分で育てている株からタネを採るには、果実が茶色くなったら早めに摘み取る。遅れると、タネが飛び散ってしまう。不安なら、紙袋などを果実にすっぽりかぶせておくとよい。収穫した果実は、短時間陰干ししてからタネを取り出し、ゴミなどを除いてから保存する。
  3. 最近は、海外からの輸入種子も一般的になっている。「Mr.Fothergill's」「Thompson & Morgan」「Unwins」など、イギリスの種苗会社からの輸入品が多いようである。タネ袋には、タネまきの方法や適期などが英語で書かれているが、これは現地でまく場合の説明なので、日本でまく場合は、そのまま適用しないほうがよい。特に、タネまき適期が問題で、大抵の輸入種子は、春まきするように書かれているが、これは、一年を通して湿度が低いヨーロッパ向けの説明と考えたほうがよい。日本では、夏が非常に蒸し暑いので、秋にタネをまき、そのまま越冬させて、夏が来る前に開花させたほうが成績がよい。(もちろん、耐寒性が弱い植物のタネは、春まきのままでよい。)
  4. 輸入種子を、秋まきするべきか、春まきするべきか、の判別は、その植物の原産地を調べれば、だいたい見当が付く。不安なら、一回で全てまき切らず、春と秋の二回に分けてまき、どちらが生育がよいか見極めるとよい。