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素人園芸解説 -私はこう育て る-

園芸知識:樹形作り

概要

  1. 樹形とは、文字通り「樹木の形」をいう。主に、「樹冠(木全体の枝葉をひとかたまりに見立てた言い方)」、「主幹(地面から伸びる一番太い幹)」、「主枝(主幹から伸びる主な枝)」の三つから構成される。
  2. 樹木は、人間の手の入らない自然の状態ならば、本来の樹形、すなわち「自然樹形」となる。人間の管理下で育てる場合も、不要な枝を切除する程度の必要最低限の手入れなら、それなりに自然樹形に近い形に育つ。
  3. とはいえ、こだわりを持ち、整枝・剪定によって好みの樹形を作り上げるのも、園芸・庭造りの楽しみの一つである。同じ樹木でも、樹形によって、全く別の木に見えたりする。
  4. 人工的に作る樹形を、「人工樹形(仕立て樹形)」という。人工樹形は、整枝・剪定によってのみ作られるもので、自然界には存在しない。
  5. 樹形作りの手順は、落葉樹と常緑樹とで若干異なる(特に、剪定の適期が全く異なる)。どちらかというと、常緑樹のほうが、いろんな樹形に対応しやすい傾向がある。
  6. 実際の剪定作業における基礎知識は、「切り戻し・剪定」のページを参照。また、果樹については、特別な仕立て方が他にもあるので、「果樹」一覧の「仕立て樹形」も参照。

人工樹形の種類

  1. 主な人工樹形を下に列挙する。樹形によって、主幹と主枝の形に主眼を置いたものと、樹冠の形に主眼を置いたものの二通りがある。まずは前者から挙げる。
    • 単幹仕立て…文字通り、主幹が一本しかない仕立て方。側枝(わき枝)の無い部分が、樹高の1/2以上ある。
    • 直幹仕立て…単幹仕立てのうち、一本の主幹がまっすぐ直立した仕立て方。イメージとしてはクリスマスツリーの形。
    • 曲幹仕立て…単幹仕立てのうち、主幹が曲がりくねりながら伸び上がる仕立て方。日本庭園でよく見られる。
    • 斜幹仕立て…曲幹仕立てに似るが、主幹が左右どちらかに傾いている。
    • 流枝(なげし)仕立て…斜幹仕立てに似るが、主枝を横方向に長く伸ばし、大きく茂らせた仕立て方。主幹よりも主枝のほうが長くて目立つ。池のほとりに木を植え、水面上に主枝を伸ばさせるのが一般的。
    • 片流枝仕立て…流枝仕立てに似るが、枝の流れが左右どちらか一方に偏っている。
    • 双幹仕立て…「相生(あいおい)」ともいう。主幹が地際付近で二又になっている仕立て方。めでたい樹形とされる。一方の主幹は太く大きく、もう一方の主幹は細く小さく仕立てるが、木が二本あるように見せるのは良くない。
    • 多幹仕立て…「武者立ち」「武者仕立て」ともいう。ある程度太く育った主幹を、低い位置で切断して芯を止め、切り口付近から三本以上の幹を出させて、枝葉を不規則に配置した仕立て方。持ち手の短いフォークを縦にしたようなイメージ。
    • 株立ち仕立て…目立った主幹がなく、株元から多数の細い幹が伸び、ブッシュ(ヤブ)状に茂った仕立て方。
    • 寸胴仕立て…「寸胴切り仕立て」「ずんど」ともいう。太く育った主幹や主枝を、適当な高さ(3m前後)で切断して、残った主幹や主枝に直接、枝葉を小さく茂らせる仕立て方。大きくなりすぎた木を無理やり小さくするための樹形で、現在はあまり用いられない。アオギリやイチョウ、カシ、クスノキなどの大木で見かけることがある。
    • 台杉仕立て…京都の北山杉に用いられてきた、独特な樹形。主幹を高さ50~60cmのところで切断し、切り口付近から伸びた数本の主枝を、縦方向にまっすぐ伸ばし、その付け根と先端に枝葉を茂らせる仕立て方。切断された元の主幹がコブ状に盛り上がっているものが良品とされる。
    • 棒樫仕立て…アラカシの木に用いられる仕立て方。主幹を残して、ほとんどの枝葉を切り払い、主幹のあちこちから直接、枝葉を小さく茂らせた仕立て方。
    • 枝吹き仕立て…主枝を短く切り詰め、そこから多数の細い枝を出させた仕立て方。枝葉のかたまりを、木全体に不規則に配置する。
    • 車仕立て…「車作り」ともいう。まっすぐ直立した主幹に、車輪状(放射状)に伸びた枝が、上から下まで等間隔に配置された仕立て方。真横から見ると、「串」の字のような形になる。最初は円柱形に仕立て、形ができてから、不要な部分の枝を切除して仕上げる。
    • 玉散らし仕立て…「散らし玉仕立て」「玉散らし作り」「散らし玉作り」ともいう。主幹から伸びた枝ごとに、枝葉を玉状に丸く刈り込み、木全体に、枝葉の玉を不規則に配置した仕立て方。枝によって、玉の形・大きさに変化をつける。
    • 段仕立て…「段作り」ともいう。玉散らし仕立てに似るが、こちらは玉の形・大きさを統一し、木全体に、規則的に配置する。
    • 貝作り…玉散らし仕立てに似るが、こちらは玉状ではなく、一枚貝や二枚貝のような扁平な形に刈り込む。
  2. 次に、樹冠の形、または木全体の形に主眼を置いた樹形を挙げる。
    • 円筒形…直立した一本の主幹と、円筒・円柱形に刈り込まれた樹冠から成る。
    • 円錐形…直立した一本の主幹と、円錐形に刈り込まれた樹冠から成る。
    • 長円型…直立した一本の主幹と、真横から見て楕円形に刈り込まれた樹冠から成る。
    • 角仕立て…直立した一本の主幹と、真横から見て長方形~台形に刈り込まれた樹冠から成る。
    • 傘型…直立した一本の主幹と、傘型(真横から見て三角形)に刈り込まれた樹冠から成る。
    • 球形…「玉仕立て」「球仕立て」ともいう。直立した一本の主幹と、球形に刈り込まれた樹冠から成る。樹高が低いため、主幹は、根元が少し見える程度か、全く見えない。
    • 半球形…直立した一本の主幹と、半球形(真横から見て半円形)に刈り込まれた樹冠から成る。樹高が低く、主幹は、根元が少し見える程度。
    • 枝垂れ形…直立した一本の主幹の、下枝と下葉を全て切除し、上部だけに長い枝を多数出させ、下垂させた仕立て方。ウメやサクラなどでよく見られるが、枝垂れ性の品種を選ばないと綺麗に仕上がらない。
    • 参差(しんし)形…細く長い枝を、たくさん入り乱れさせた仕立て方。ウメやボケなど、芽吹きがよく、小枝が入り交じって出る樹種で可能。
    • スタンダード仕立て…直立した一本の主幹の、下枝と下葉を全て切除し、上部だけに、丸く刈り込まれた枝葉が茂っている仕立て方。
    • 三つ編みスタンダード仕立て…スタンダード仕立てに似るが、主幹が三つ編みにされているもの。三本の苗木を寄せ植えして三つ編みにし、一本の木のように仕立てる。
    • トピアリー…樹冠全体を、動物の姿やハート型など、さまざまな形に刈り込んだもの。高さのある形を作りたいときは、ある程度木が育ってから製作にかかる。複雑な形を作る場合は、市販のワイヤー製の型枠を使うと、枠からはみ出た部分を切るだけで良いので簡単。イヌツゲなど、葉が小さく密に茂り、刈り込みに強く、芽吹きがよい樹種で行える。
    • 生垣…細い竹を格子状に組み(四つ目垣)、その竹を支柱にして、同一種の常緑樹を一列・等間隔に植え、仕切り壁の代わりにしたもの。壁のような、平べったい形に刈り込む。数種類の常緑樹を混植して作った生垣は「混垣(まぜがき)」と呼ばれる。
    • 壁面仕立て…「エスパリエ」ともいう。壁面にネットやワイヤーなどを固定し、そこに幹や枝を誘引して固定し、平面的に仕立てたもの。つる性植物だけでなく、枝が長く伸びて枝垂れる木でも可能。フジや、果樹類でよく行われる。
  3. 太い枝が水平方向に伸び出している樹形は、下支えする支柱無しでは、枝の重みを支えきれない。しかし、支柱を一箇所だけに立てると、風などによる圧力が、その一点に集中し、裂けてしまうことがある。従って、支柱は二箇所以上立てた方がよい。

刈り込みに強い樹種

  1. 参考までに、刈り込み剪定に強く、樹形が作りやすい木の例を挙げておく。
    • 落葉樹…アキニレ、イチョウ、イボタノキ、トウカエデ、ドウダンツツジ、ニシキギ、ヤマモミジ、レンギョウなど。
    • 常緑樹…アカメモチ、アベリア、アラカシ、イヌツゲ、ウバメガシ、カナメモチ、キョウチクトウ、キンモクセイ、ギンモクセイ、クチナシ、クロガネモチ、ゲッケイジュ、サカキ、サザンカ、サツキ、サンゴジュ、シイ、シラカシ、ジンチョウゲ、サンゴジュ、西洋ツゲ(ボックスウッド)、チャノキ、ツツジ、ツバキ、ネズミモチ、ハクチョウゲ、ハマヒサカキ、ヒイラギ、ヒイラギモクセイ、ヒサカキ、ピラカンサ、ベニカナメ、ホンツゲ、マサキ、モチノキ、モッコクなど。
    • 針葉樹…イチイ、イヌマキ、カイヅカイブキ、カマクラヒバ、カヤ、キャラボク、サワラ、スギ、タマイブキ、ニオイヒバ、ニッコウヒバ、ヒノキ、ヒマラヤスギ、ヒムロスギ、ラカンマキ、レイランドヒノキなど。