園芸知識:自家製堆肥・腐葉土
概要
- 土の質の善し悪しは、植わっている植物の生育を大きく左右する。土がよければ、根の張りも良くなり、水や養分の吸収量が多くなって、植物が健全に育つ。土の詳細については、「土」のページを参照。
- 土質を改善する資材を「土壌改良材」といい、主に、堆肥と腐葉土の二種類がある。これらを土にすきこみ、よく混ぜると、崩れて粉状になっていた土の粒が回復して水はけや通気性が改善し、また、土中の微生物の活動も活発になって、土がフカフカになる。また、土の酸性度や肥料濃度が偏っていた場合、それらを安定させる効果もある。
- 堆肥と腐葉土は、いずれも、落ち葉などの有機物を微生物の働きで発酵・分解・熟成させたものだが、原材料が異なる。腐葉土が主に枯れ葉から作られるのに対し、堆肥は、稲ワラや雑草、家畜の糞、剪定くず、生ゴミなど、いろいろあり。
- 市販の堆肥は、植物の残骸や家畜の糞から作られていることが多い。家畜の糞尿と敷ワラに由来する堆肥は、本来は「厩肥」と呼び、堆肥とは区別される。
- 堆肥は、名前に「肥」の字が付くが、窒素(N)やリン酸(P)、カリ(K)などの肥料成分をあまり含まないため、肥料として使うことはない。
- 近年、ゴミ減量の観点から、家庭で出る生ゴミを堆肥化する人が増えつつあり、専用の容器や発酵剤などが市販されている。が、そうしたものを購入せずとも、自家製堆肥作りは簡単に行える。
- 堆肥の発酵には、酸素のある環境下で増殖する「好気性菌」の力を借りた「好気発酵」と、酸素の無い環境下で増殖する「嫌気性菌」の力を借りた「嫌気発酵」がある。一般家庭では主に、好気発酵によって堆肥を完成させる。嫌気発酵は難易度が高く、油断すると腐敗状態になりやすい。
- 好気発酵は、水分が多いと全く進まない。生ゴミの水分含有量は80~90%以上もあるため、必ず水気をよく切り、水分量を減らしてから使う。手で強く握りしめれば水分を感じる程度、50~60%前後の水分量が最適。水分が多いと腐敗し、良い堆肥ができない。第一、臭くて困る。
- 生ゴミの水分は、台所の三角コーナーに入れておくだけでもだいぶ減るが、そこからさらに進んで、ネットに入れて半日吊るしたり、新聞紙に広げて乾かすなどすれば、かなりの水分が蒸発し、理想的な状態になる。
- 堆肥作りに適する生ゴミは、野菜くずや果物の皮の他、ダシがら、肉や魚のくず、米ぬか(一度入浴剤として使ってから堆肥化するのがおすすめ)、枯れた切り花、など。いずれも、事前に細かく刻んでから使わないと、分解に余計な時間がかかる。
- もちろん、食べ残しの食材も堆肥化できる。ただ、極端に塩分・油分の多い食品は適さない。塩分は堆肥化後も残留して塩害の原因になるし、油分は微生物の活動を妨げるためである。とはいえ、一度に多量に使わなければ問題ない。
- 茶葉の出がらしも良い材料だが、タンニンやフェノール類を多めに含むため、よく成分を出させてから使う。また、コーヒーかすは有害物質を含むため、一度に大量に用いるのはよくないといわれる。とはいえ、一般家庭で出る程度のコーヒーかすなら何の問題もない。なお、茶葉の出がらしとコーヒーかすを材料にすると、消臭効果が期待できる。
- 生ゴミであっても、貝殻、エビやカニの殻、大きな骨、梅や桃のタネ、爪楊枝など、硬いもの・分解に時間かかるものは、使わないほうがよい。(粉砕すれば使える。)また、タケノコの皮やササの葉のように、抗菌・殺菌作用のある生ゴミも、微生物の増殖を抑制する恐れがあるため、あまり多量に入れない。
- ペットの糞や死骸は、寄生虫や病原菌など衛生上の問題があるため論外。(使えることは使えるが、好ましい材料とはいえない。)タバコの吸殻も毒性が強く不適。その他、割れた陶器やガラス、金属、プラスチック類など、分解されないものも入れてはいけない。広告・チラシなどの紙類も混入しないよう注意する。
- 草木の枝葉を用いる場合、スギやヒノキ、マツなどの針葉樹や、アセビ、イチョウなどの枝葉は、分解されにくかったり、他の植物に有害な物質を含んでいたりするので、なるべく避ける。タケ・ササ類やカキ、クスノキ、サクラなども、微生物の増殖を抑制するので注意。どうしても使う場合は、一年以上かけてじっくり熟成させる。
- 直径2cm以上の太い枝や、常緑広葉樹(カシやツバキなど)の葉は、問題なく使えるが、そのまま入れると分解に時間がかかりすぎるので、よく天日干しして乾燥させるか、細かく裁断する。
- 雑草も良い材料だが、水分を多く含む(80%程度)ため、刈り取ってすぐ使用するのではなく、半日~丸一日、天日で干してから使用すれば、分解が早くなる。枯れ草は即使用可能。
- 次に、生ゴミを用いた、簡単な堆肥の作り方を示す。各材料や発酵促進剤の層の厚さは、小さな容器で作る場合は薄く、大きな容器で作る場合は厚くする。なお、堆肥の作り方に正解はなく、人によってさまざまな方法が考えられる。
- 直径・深さが20~50cmくらいの、やや深めの穴を掘るか、大きめの植木鉢やプランターなどを用意する。バケツやペットボトル、ポリ袋などでも大丈夫。できれば、底から水分が抜ける容器(=底面に水抜き穴のある容器)を使いたい。
- 1.の穴または容器に、野菜くず等の生ゴミ、枯れ葉、剪定くず、雑草などの材料を、5~15cmの厚さ(容器の大きさによって調節)で入れる。
- 2.の上に、発酵促進剤を0.5~3cmの厚さ(こちらも容器の大きさによって調節)で重ねる。発酵促進剤は、わざわざ専用のもの(商品名…「コーラン」など)を買わなくても、市販の過リン酸石灰、牛糞堆肥、バーク堆肥、発酵油かす、発酵鶏糞、腐葉土、米ぬか、使い古した培養土などで代用できる。これらがなければ、普通の土や砂でもよい。なお、生ゴミを使わず、落ち葉や雑草、剪定くずなどで堆肥を作る場合は、発酵促進剤の層は無くても大丈夫。
- さらに生ゴミ等を、2.と同じ厚さで積み重ねる。2.の層と3.の層を交互に数段重ねたら、上からよく踏みつけて押し固める。上に重しを載せてもよい。
- 雨がかからないようビニールシートなどで覆いをし、1ヵ月ほど、そのまま放置する。一度に大量に作ると、発酵が進むにつれ、内部で発酵熱が発生し、時に60~70℃にも達する。発火の心配はない。
- 1ヵ月経過したら覆いを外し、スコップなどで中身を切り返す。下段にあるものほど早く分解されるので、定期的に上段と下段を入れ替えるのがコツ。終わったら、また押し固め、覆いをして放置する。二回目以降の切り返し作業は、2~3週間に一度ほど行いたい。
- 切り返しの際、原形をとどめた材料がたくさん目に付くようなら、作業後に上から水をかけ、湿り気を与えると、分解が進みやすい。
- 材料の量にもよるが、だいたい3~6ヵ月、夏なら1~2ヵ月ほど経てば、自家製堆肥の完成。完成品は色が黒く、材料が原型をとどめていない。また、ベトつかず、触るとポロポロと崩れる。臭いをかいでも、腐敗臭やドブ臭、アンモニア臭はしない。表面に多少白いカビが生えているのは問題ない。
- 中身の切り返し作業は、面倒なうえに臭いがして嫌なものだが、材料の種類によって分解される速度が違うため、サボらずに行い、均一な分解を促す。また、攪拌することで、材料の中に酸素が取り込まれ、好気性菌の働きが一層活発になる。
- 臭いが気になるようなら、乾いた土やおがくずを混入すれば軽減できる。発酵促進・消臭剤として、過リン酸石灰や木酢液を散布するのもよい方法である。
- 窒素分が過剰だと臭いが発生しやすいため、窒素を多く含むもの(肉や魚のくず、油かす、魚粉、鶏糞、骨粉など、動物に由来する材料)を、一度に多用しないことも大切。
- 堆肥化の最中に、ハエや、ミズアブ類の幼虫が発生することがあるが、問題はない。しかし、大量に発生すると精神衛生上よくないので、堆肥作成中の容器にはしっかりとフタをして、さらに目の細かい網で覆うなどし、成虫の飛来・産卵を防ぐ。
- 数日おきに、材料に石灰窒素を霜降り程度ふりかけると、殺虫効果がある。ただし、石灰窒素は刺激臭が強いうえ、分解過程で有害な「ジシアンジアミド」が発生する。それが気になる場合は、園芸用の苦土石灰で代用する。石灰窒素ほどの効果は無いが、pHをアルカリ性に傾けることで、虫の発生が抑制される。また、木酢液にも虫を寄せ付けない効果があるので、併用するとよい。
- なお、手っとり早いからといって、作りかけの堆肥に殺虫剤を散布したりすると、堆肥の中に殺虫剤成分(または、殺虫剤が分解されて生じた副産物)が、長期間残留する可能性がある。
- 少しでも早く堆肥を完成させたければ、やはり市販の発酵促進剤を使ったほうがよい。また、堆肥作り用の容器を日当たりのよい場所に置くと、内部の温度が上がり、発酵が早く進む。
- 乾燥すると発酵が進まないので、乾けば水をかける。度が過ぎると腐敗してドロドロになり、ひどい悪臭が発生するので注意。もし腐敗させてしまったら、乾燥した土、落ち葉、枯れ葉などを多めに投入し、よく混ぜ合わせれば、水分と臭いが吸着されてマシになる。珪酸塩白土やゼオライト、パーライト、バーミキュライト、麦飯石、木炭などでも効果ありだが、やや不経済か。
- 堆肥の材料に、雑草の種子や害虫の卵、病原菌などが混入していることは珍しくない。大規模な堆肥作りなら、発酵に伴う高温で死滅するので問題ないが、一般家庭での小規模な堆肥作りだと、発熱が不十分なため生存しやすい。(完全に死滅させるには、55~60℃以上の高温が1~2週間程度必要らしい。)ただ、堆肥化の過程で、種子や卵の生存率は落ちるし、病原菌についても、植物に有用な菌類の増殖によって数が抑制されるため、あまり問題視しなくてもよいと思われる。
- 底面から水分が抜ける容器で生ゴミ堆肥を作ると、発酵の過程で、底から汚水が出てくる。この水は肥料成分を多く含み、水で100倍に希釈すれば液肥として使える。(悪臭注意。)また、何も植えていない花壇やプランターの上に、堆肥製作中の容器を直接置けば、すぐ下の土に水が染み込み、元肥の代わりになる。
- 完成した堆肥は、なるべく早く使い切る。保存する場合は適当な袋に入れておくが、密閉するのは良くない。なお、紫外線に当たると有用な微生物が減少するため、日光の差す場所に置かない。
- 生ゴミ堆肥を作る手間を少しでも減らすには、市販の道具を利用するのも手である。ここでは、「コンポスト」と「家庭用生ゴミ処理機」の二種類を挙げておく。(※「コンポスト」とは本来、英語で「堆肥」を意味する言葉だが、ここでは「家庭用堆肥製造容器」を指す言葉として用いる。)
- 「コンポスト」は一見、巨大な丸型ゴミ容器といった風情だが、底が抜けているのが特徴。広い庭でなくても、ちょっとしたスペースがあれば設置可能。使い方は下記。
- 設置場所を決める。フタを開けるとどうしても臭いが出るので、近所迷惑になりにくい場所が適する。よく日光の当たる場所なら、中身の温度が上がり、発酵が速く進む。
- 設置場所が決まったら一度、コンポスト容器を置き、地面に円形の跡を付ける。次に、その円の内側を、深さ10~20cmほど掘り下げる。
- 容器を穴の中にはめ込み、周囲に少し土を盛る。(つまり、容器の下部10~20cm程度を土中に埋め込む。)
- 生ゴミ等の材料を容器の中に入れ、その上に、乾いた土を振りかける。このとき、一度にたくさんの材料を入れるのではなく、家庭内で生ゴミ等が発生する都度、少しずつ入れることが大切。かける土は、周囲の庭土や使い古しの培養土などでよい。一度にかける量は、材料全体が見えるか見えないか、程度の少量とする。
- 材料と土の投入を繰り返し、中身が一杯になったら、そのまま2~3ヵ月(夏なら1ヵ月)ほど放置する。
- 数ヵ月経過したら、容器を引っこ抜く。地面に近い下層の部分から堆肥化が進んでいるので、未熟な上層の部分とよく混ぜ合わせ、均一な発酵を促す。
- 再び容器を据えて、切り返しの終わった材料を中に戻し、フタを閉める。その後1ヵ月ほど経てば、自家製堆肥が完成する。
- コンポスト容器は、内部が密閉されるうえ、有機物の分解過程で水が発生するため、とかく水分過剰になりやすい。内部の水分が多いと腐敗が起き、悪臭が発生するので、じめじめしているようなら、天気のよい日にフタを開け、水分を飛ばす。このとき、網戸用の網などをかぶせておけば、中に虫が入らずに済む。
- 「家庭用生ゴミ処理機」は、堆肥化途中の悪臭や不潔感が苦手な人や、コンポストを設置する場所のない人に適する。値段が張るが、自治体によっては助成金が出るので確認するとよい。
- 生ゴミ処理機には、下記の三系統がある。いずれも「生ゴミ堆肥を作る装置」ではなく、あくまで「生ゴミを処理・減量する装置」である点に注意。
- 温風乾燥式…庫内に投入した生ゴミを加熱処理して水分を飛ばし、臭いや汁漏れを抑えると同時に、体積を約1/7に減らす。電気が必要なのは処理時だけなので、最も経済的。数日おきに処理物を取り出し、その後さらに熟成させれば、堆肥として完成する。
- 微生物分解式(バイオ式)…おがくず状の菌床(微生物資材)が入った処理槽に生ゴミを投入して、温度湿度を一定に保ち、時々自動攪拌して、微生物に生ゴミを分解させる。分解が終わる度に菌床ごと取り出し、新しい菌床を足さなければならないが、それ以外は装置任せ。生ゴミ投入量が多すぎると、分解が追いつかなくなるので、そうなったら投入を一時停止する。
- ハイブリッド式…温風乾燥式と微生物分解式の両方の機能を併せ持つが、どちらかというと微生物分解式に近い。
- 微生物分解式生ゴミ処理機で用いる微生物資材は、必ず機種指定のものを用いる。土や砂などを使うと、故障の原因になりかねない。つまり、ときどき資材を買い足さなければならないわけで、その意味では不経済である。また、庫内の環境を一定に保つ必要があるため、常に電気が必要。
- 温風乾燥式生ゴミ処理機で処理が済んだ「元・生ゴミ」は、堆肥と呼ぶにはほど遠い未熟品である。そのまま土中に混ぜると、植物の根に悪影響を及ぼし、枯らしてしまう可能性が高い。従って、処理物をいったん別の容器に移し、尿素や硫安などの窒素肥料を少量(尿素なら総重量の5%、硫安なら10%)振りかけてよく混ぜるか、または、使用済みの古土などと等量混合し、1~3ヵ月ほど熟成させてから使用するとよい。
- 微生物分解式生ゴミ処理機で処理が済んだ「元・生ゴミ」は、かなり分解が進んでおり、ほぼ完成品に近くなっている。鼻を近づけてみて、酸っぱい臭いや漬物臭を感じるようなら、別の容器に移し、2週間~1ヵ月ほど熟成させてから使用する。なお、処理機から取り出したときに、未熟な生ゴミが混じっていたら、ふるいなどで取り除き、また処理機に戻しておく。
- 腐葉土も、堆肥と同様の方法で作れる。材料は、落葉樹の落ち葉が一番使いやすい。クヌギやナラなどのブナ科落葉樹や、ケヤキなどのニレ科落葉樹の葉だけで作ると、良いものができる。
- 常緑照葉樹(例、カシやツバキ)の葉は厚く硬いため、分解が遅くて使いづらい。しかし、じっくり時間をかけて熟成させれば、とても良質の腐葉土を得られる。特に、ブナ科の常緑樹であるシイやカシの葉は、腐葉土の材料としては最上級のものである。完熟まで一年ほどかかるので、気の長い人は挑戦を。
- カヤ、スギ、ヒノキ、マツなどの針葉樹は、油脂が多く、分解に時間がかかるうえ、有害物質を含むことがあるため、腐葉土の材料としては今ひとつ。また、アセビ、イチョウ、エゴノキ、クスノキ、タブノキなどにも、有害な物質が含まれる。さらに、カキ、サクラ、ササ、タケなどの葉は、多量に使うと微生物の増殖を抑え、発酵を阻害する。どうしても使いたい場合は小量にとどめるか、あるいは、一年以上の長期間をかけてじっくり発酵させる。
- 雑草を使う場合は、上の方で書いたように、半日以上天日干しし、水分を飛ばしてから使ったほうがよい。基本的に、イネ科の草のように、細く長い葉を持つ植物ほど、繊維が強いため分解が遅い。クローバーのようなマメ科植物や、コンフリーなどのムラサキ科植物の葉は、分解が早く、使いやすい。
- 上記の生ゴミ堆肥と違って、腐葉土は、臭いや汚水が無いに等しいため、作る容器の種類を問わない。生ゴミ堆肥と同じ容器でもよいし、布の袋やミカンの網、古いストッキングなどでも可。ただ、紙袋は、一緒に分解されてしまい、穴が空く恐れがあるため適さない。
- 材料が少なすぎると十分に発酵が進まず、よい腐葉土ができない。なるべく大きな容器を用意する。
- 生ゴミ堆肥はさまざまな食品を材料とするため栄養価が高く、肥料成分、特に窒素(N)を多く含む。従って、生ゴミ堆肥を施した土に植物を植える際は、元肥を少なめにするか、いっそ施さない。なお、腐葉土は生ゴミ堆肥と違い、肥料成分をほとんど含んでおらず、元肥の代わりに使うことはできない。
- 生ゴミ堆肥を花壇や畑にすき込む量の目安は、1平方メートル当たり2~4リットル。65cmプランターなら、0.2~1リットルくらいに抑える。上記のように肥料成分を多めに含むため、あまり多量にすき込むのはよくない。
- どのような方法で堆肥・腐葉土を作るにせよ、大切なのは、完熟させてから使うことである。未熟な堆肥・腐葉土を土に投入すると、土中の微生物が分解し始めるが、その際に、植物の生存に不可欠な酸素や炭素、窒素などを消費する。おまけに、根の生長を妨げるアンモニアや二酸化炭素を発生させる。そのような土では、植物の健全な生育は望めない。
- また、未熟な堆肥・腐葉土を分解する微生物の中には、病原菌(ピシウム属菌、リゾクトニア属菌など)も混じっている。わざわざ病原菌に餌を与えて増殖させる必要はない。
- 最後に、生ゴミを堆肥化せず、直接、庭や畑に埋めて処理する方法に触れる。投入する生ゴミが微量(1平方メートルあたり、月に1~2kg未満)で、かつ、その場にすぐ植物を植えないのなら、有意義である。しかし、埋める生ゴミが多量だと、急激な分解によって土中の窒素が硝酸に変化し、土壌や地下水の汚染につながる。自然の浄化速度にも限界があるということは、肝に銘じておかなければならない。土の中はゴミ捨て場ではない。
- やむを得ず生ゴミを直接埋める場合は、一回当たりの量をできるだけ少なくする。また、あまり深く埋めず、よく土と混合して、好気性菌に分解を任せる。
- 生ゴミの堆肥化を早めるために、ミミズを使う方法がある。ミミズは微生物より体が大きい分、生ゴミの分解速度が速い。使うミミズは、地面を掘り返すと出てくるフトミミズの仲間ではなく、体がやや扁平で縞模様が目立つシマミミズである。フトミミズの仲間は気難しく飼育が困難なうえ、シマミミズと違って未熟な生ゴミを好まない。
- シマミミズは普通の土にはおらず、家畜の糞や堆肥を積み上げた場所などに生息する。そうした採取場所がなければ、ミミズコンポストを扱う専門店から購入できる。釣具店で販売していることもある。ただ、ミミズコンポストを始めるには、かなり大量のミミズ(最低でも500g)が必要なので、専門店から買うほうが賢明。
- シマミミズは生ゴミなどの未熟な有機物を好んで食べ、良質な粒状の土に変えてくれる。が、餌が無くなると死滅するため、継続して与え続けなければならない。
- ミミズには歯が無く、硬い生ゴミをかじることができない。そのため、微生物によって少し分解が始まった、半熟状態の生ゴミを好んで食べる。生ゴミ投入前に、予め細かく刻んでおけば、微生物が分解しやすくなり、ミミズの口に入るのも早まる。
- ミミズコンポストの容器には、国産品と輸入品があり、いずれも国内の専門店で売られている。輸入品については、個人輸入で入手することも可能。
- 普通の箱でミミズを飼うこともできる。プラスチック箱より、木箱のほうが、内部が蒸れにくくて良い。シマミミズは表層土に生息する生き物で、土の深いところに潜らないため、深い容器は適さない。また、容器が深いと、中身が自重で固まりやすく、攪拌が大変になる。深さ30~40cmくらいが限界。
- コンポスト容器の底には小さな穴を複数空けておき、通気性と排水性を確保する。また、ミミズは光を嫌うので、光を通す容器は適さない。
- コンポスト容器の置き場所は、直射日光の当たらない涼しい場所を選ぶ。ミミズはどの種類も蒸れに弱く、簡単に死滅するため、夏越しが一番の問題となる。できれば、内部が32℃以上にならないのが望ましい。低温については、-10℃を下回るような極寒地でない限り問題ない。ただし中身が完全に凍結しないよう、最低限の保護は必要。
- 温度の影響を最小限に抑えるためには、置き場所以外に、コンポスト容器の大きさも気を配る。容積が大きければ大きいいほど、外部の気温に影響されにくい。
- 最初にコンポストを作る際は、容器の中に、ミミズの住み処(低栄養の餌でもある)を入れる必要がある。軽くてふかふかしており、通気性と保水性に優れていることが大切なので、適するのは、細かく裂いた新聞紙(折り込みチラシは不可)、段ボール紙、ワラ、古いタタミやムシロ、おがくず、枯れ草などである。また、ミミズは体内に砂嚢という器官を持ち、その中に貯めた土や砂粒で餌を消化するため、普通の土(庭土や、園芸用培養土など)も霜降り程度、振りかける。容器に材料と土をたっぷり入れたら、軽く水をかけて混ぜ、中に空気を含ませる。
- ミミズは土が乾くと生きていけないので、容器の中身が常に湿っている必要がある。かといって水浸しになるほど濡らすと、今度は呼吸困難になる。適度な水分量は、土を手で握ってみて湿り気を感じる程度。握って水が滴るようでは水分が多すぎる。容器の底に穴を開けてあれば、過度に水がたまりすぎることはない。
- 容器内でミミズが落ち着いたら、生ゴミなど、高栄養の餌を与える。一日に入れてもよい量は、中にいるミミズの総重量の半分を限界とする。従って、ミミズを1kg入れたら、一日に500gまで餌を入れることができる。多めに入れると腐敗・悪臭を誘発し、ひどいと容器の内部がドロドロのドブ状になってミミズが全滅する。
- 餌として適する生ゴミは、果物の皮や野菜くずなど、植物質のものが良い。肉や魚などの動物質は好まないので避けるか、入れるにしても、ごく少なめとする。容器内に適当に放り込むと、臭いに釣られてハエなどの虫が集まるので、ミミズの住み処の中に埋め込む。
- 週に一度くらい、クマデやレーキなどで中身を優しく攪拌し、呼吸用の酸素を取り込ませるとともに、好気性菌の活動を促す。
- ミミズが餌を食べると、黒っぽい粒状の糞が発生するが、この糞はきわめて良質の堆肥である。容器内に糞が増えてきたら、かき集めて取り出し、ふるいにかけてから、土壌改良に使う。(ふるいに残ったミミズやゴミは容器に戻す。)ミミズは自分の糞の中では健康的に暮らせないので、容器内を糞だらけにしないことが大切である。糞を取り出したら、新たに、住み処となる新聞紙などの材料と、土を追加するのを忘れない。
- ミミズの糞は肥料成分を多めに含むため、これで土壌改良した場合は、元肥を入れないか、または、量を大幅に減らす。
- 市販のミミズコンポスト容器には、内部で発生した水の取り出し口が付いた製品もある。手作りのコンポスト容器でも、底に穴を開けておけば、水が滴り落ちてくる。この水は、通称「ミミズの尿」などと呼ばれ、分解された生ゴミの水分や、ミミズの糞に含まれる水分などの集合体である。良質の天然液肥なので、水で5~10倍に薄め、植物に与える。市販の化成肥料の液肥とは違い、多少濃度が濃くても、植物を枯らすことはない。
- 容器内の環境が良ければミミズはどんどん増え、たくさんの生ゴミを処理してくれる。が、何らかの原因で環境が悪化すると、数が減ったり、時には容器から這い出て逃げ出すことがある。ただ、もともとミミズは、あまり長い距離を歩けないうえ、表皮の乾燥に耐えられないため、這い出てもすぐ干からびる運命にある。そのため、ミミズコンポストがあるからといって、家の中にミミズが大量に入り込むことは無い。