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素人園芸解説 -私はこう育て る-

園芸知識:水耕栽培

概要

  1. 水耕栽培とは、土を一切使わず、肥料成分を含んだ培養液の中に根を張らせ、植物を栽培する方法である。根を張らせる「培地」を使う方法と、使わない方法があるが、ここでは前者を取り上げる。なお、ハイドロカルチャーについては、「観葉植物」ページにある「ハイドロカルチャー」を、水栽培については、「球根植物」ページの「水栽培」を参照。
  2. 水耕栽培に適する植物は、短期間で収穫を終える小型の葉菜類、およびハーブ類である。(例…クレソン、サラダ菜、シュンギク、セリ、チンゲンサイ、バジル、ハネギ、ホウレンソウ、マーシュ、ミツバ、リーフレタス、ロケットなど。)が、イチゴ、トマト、ミニトマトなども可能。
  3. 培養液を、普通の液体肥料で自作しようとすると、濃度の調整が難しい。そのため、市販の水耕栽培専用液体肥料を使う。水耕栽培は、土が無く、根が肥料分に直接触れるため、肥料濃度が濃いと、すぐに肥料負けを起こし、枯れてしまうので注意する。

栽培装置

  1. まず、ウレタンかスポンジ、ロックウールなどを「培地」とする。2cm角(2×2×2cm)くらいに切り、上部に小さな穴を開けて、タネを1~2粒ずつ埋め込む。タネをまき終わったら、浅い容器に水を張り、培地を並べて、発芽するまで日陰で管理する。発芽が始まったら、日光に当てる。
  2. 次に、水の漏らない大きめの容器と、発泡スチロール製のフタ、観賞魚用のエアポンプとチューブ、エアストーン、珪酸塩白土(商品名「ミリオン」)、培養液、を用意する。フタには、培地がぴったり収まる植え穴を、10~15cm間隔で開ける。(上の例なら、2×2cmの四角い穴を開ける。穴が大きすぎると、培地が水中に落ちてしまう。)なお、発泡スチロール製のフタがなければ、木の板や、料理用のラップ、アルミホイルなどでも代用できる。
  3. 容器に、培養液と少量の珪酸塩白土(水腐れ防止用)を入れ、エアポンプにつないだエアストーンを沈めて、培養液に空気を供給させる。なお、培養液の水面とフタの間に、必ず1~2cm程度の空間を作っておく。(球根の水栽培の場合と同じで、根の窒息を防ぐため。)
  4. 培地のタネが発芽し、本葉1~2枚になったら、苗を一つずつ丁寧にフタの植え穴にはめ込む。
  5. トマトのような大型の野菜では、作った苗を、いったん、5cm角くらいに切った大きめの培地に移植してから植え穴(もちろん5×5cmの穴)に入れないと、生長後に株元のバランスが悪くなる。なお、大型の野菜は、水分の吸収量も多いので、大きなトロ箱でも一~二株しか作れない。

日頃の管理

  1. 水耕栽培装置の置き場所は、雨が当たらない明るい場所ならどこでもよいが、直射日光が容器の壁面に当たらないよう配慮する。茎葉への光量が不足するようなら、アクアリウム専門店で植物用蛍光灯を購入し、装置の上に設置する。
  2. 苗の生長とともに培養液が減っていくので、あらかじめ水面に印を付けておき、減った分を補充する。このとき、追加する培養液は、最初から入っている培養液より、やや薄めの濃度にするのがコツ。
  3. 培養液の補充を繰り返すうちに、肥料分のバランスが崩れてくるので、月に1~2回(真夏は週に1~2回)、培養液を全て取り替える。このとき、容器内に藻が発生していれば、きれいに掃除する。作物の根が乾燥しないよう、手早く作業する。
  4. 真夏は培養液がぬるま湯になりやすく、真冬は凍ってしまいがちである。そうなると根がひどく傷み、枯死しかねないため、水温管理に気を配る。水温計を設置し、水温を5~28℃(できれば15~25℃)の範囲に抑えるとよい。本格的にやるなら、観賞魚用のサーモスタットと水中用ヒーターも併用するべき。
  5. 作物を収穫したら、古い培養液を捨てて容器を洗い、また苗作りから始める。土を使わないので、連作しても何の問題もない。

マメ知識

  1. 市販のポット苗を水耕栽培に利用したければ、根に付いた土を、水洗いで落としてから植える。(全て落とす必要はない。)このとき、根を傷付けないよう注意する。苗が水中に落ちないよう、植え穴は小さめに。
  2. 上記のような、大掛かりな水耕栽培装置を作らなくても、最近は、水耕栽培専用の装置が、比較的安価に市販されている。家電量販店などで購入可能。
  3. また、イチゴパックの底に少量の珪酸塩白土を敷き、その上にウレタンかスポンジ(ハイドロボールでも可)を敷いて培地とし、培養液をごく浅め(培地の高さの1/5~1/4程度)に注いだだけの、ごく簡単な装置でも、水耕栽培は可能である。(水耕栽培というより、ハイドロカルチャーである。)この場合、培養液は頻繁に(週に1~2回)入れ替える。小型の葉菜類を少量作りたいだけなら、この程度の装置で十分。