ジャンル別索引:野菜・穀類
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植物名リスト
このジャンルについて
概要
- ここにあるのは主に、食用目的で栽培する草本である。なお、キノコは植物ではないので除外している。香草・薬草の類は「ハーブ」の一覧に、また、果実を食用とする木本は「果樹」に分類した。
- 「穀類」という言葉は、厳密には、「主に種子を利用するイネ科の食用作物」を指す。日本人の主食となるコメ(イネ)の他、トウモロコシ、ムギ類、雑穀(アワ、キビ、ヒエなど)などが該当する。なお、広義では、イネ科ではない食用作物(マメ類、キヌア、食用アマランサスなど)も穀類に含める。
- 便宜上、野菜でも穀類でもない加工用の食用作物(「特用作物」)も、ここで一緒に扱っている。ゴマ、ヒマワリなどが該当する。(ちなみに、ハーブも「特用作物」に含まれる。)
- 野菜は、収穫時期によって、「春野菜」「夏野菜」「秋野菜」「冬野菜」に分かれる。同じ野菜でも、品種ごとの収穫期の幅が広いものは、複数の季節にまたがる。
- 春野菜…アスパラガス、ウド、エンドウ、キャベツ、ジャガイモ、タケノコなど。
- 夏野菜…オクラ、キュウリ、トウモロコシ、トマト、ナス、メロンなど。
- 秋野菜…カボチャ、ゴボウ、サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、ナスなど。
- 冬野菜…シュンギク、ダイコン、長ネギ、ハクサイ、ホウレンソウ、レンコンなど。
- また、野菜は、食用部分によって、下記の三つにも分かれる。このうち果菜の多くは夏野菜である。
- 葉菜…葉や茎、花茎などを食用にする。キャベツ、シソ、ネギ、ホウレンソウ、モロヘイヤなど。
- 果菜…果実を食用にする。オクラ、キュウリ、スイカ、トマト、ナスなど。
- 根菜…根や地下茎を食用にする。ゴボウ、ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、ビーツなど。
- ここでは、基本的に鉢やプランターで栽培することを前提に解説している。植える容器の深さは、最低でも15cm以上欲しい。ただ、小型の葉菜なら、イチゴ容器くらいの深さでも作れる。
- 野菜には多くの品種があり、同じ野菜でも、品種によって育て方が異なることがある。整姿の方法や施肥の時期などを間違うと、収穫量が皆無になることもあり得るので、もし解説付きのタネ袋やラベルなどがあれば、必ずそちらの栽培方法に従う。また、品種名がわかっている場合は、種苗会社や、各地域の農業技術研究機関などのサイトで、その品種に合った育て方を見つけたい。
タネから育てる
- 多くの野菜は本来、多年草である。しかし普通は、ラッキョウなど球根性のものを除き、秋まきまたは春まきの一年草として扱う。寒冷地では、ほとんどの野菜が春まきとなる。
- キャベツやダイコン、ホウレンソウなど、葉菜や根菜の多くは、春まきと秋まきの両方が可能である。しかし、春まきは、長日条件(夜間より昼間のほうが長いこと)によって、あまり育たないうちにトウ立ちし、食味が落ちるので、トウ立ちの遅い春まき用の品種を選んでまくようにする。秋まきの場合は、そのような心配はない。
- 市販のタネは、病気の予防のため、殺菌剤が粉衣されていることが多い。そのようなタネは、誤って食べないよう注意。モヤシ用にするのも好ましくない。ペットのエサにするのも厳禁。
- 春にタネをまく場合、室内で加温しながら早まきすれば、早く発芽させられる。屋外で早まきする場合は、タネをまいた土に、黒いビニールやホットキャップ(半分に切ったペットボトルの上半分でもよい)などをかぶせ、地温の確保に努める。畑の場合は、ビニールで畝の上にトンネルを作る。(いわゆる「トンネル栽培」。)
- タネから育てた場合、数回、間引きをするが、葉菜や、いくつかの根菜(カブ、ダイコン、ニンジンなど)では、間引き苗も食用になるので捨てない。
- 春まきのカボチャやキュウリなど、短日条件(夏至以降の、夜が長い状態)で雌花を咲かせる夏野菜は、タネまきが遅れると、雌花が少なくなる。雌花が少ないと、結果的に収穫量も減る。
苗から育てる
- 市販の苗を購入する際は、下記のような苗を選ぶ。
- 茎が太く、節間が間伸びしておらず、全体的に草丈が低い。
- 葉の色ツヤがよく、葉の縁が縮れたり、変形していない。(特にナス科野菜は注意。)
- ポットの底穴から根が見えるが、外に長く伸び出ていない。
- 双葉が大きく、落ちずに残っている。
- 地際部分に、変色など、病気の痕跡がない。
- トマトやナス、キュウリ、スイカ、メロンなどの苗には、接ぎ木苗と普通の苗(自根苗)がある。接ぎ木苗は値段が高いが、病虫害や連作障害に強く育てやすいので、慣れないうちは接ぎ木苗を購入する。
- 春になると、夏野菜の苗があちこちで市販されるが、本来の植え付け適期より、かなり早い時期に売り出されることが多い。苗を買ったものの、植え付け適期まで日数がある場合は、とりあえず、よく日光の当たる暖かい場所に置き、適期が来るまでそのまま育てる。その間、鉢底から根が見えるようなら、一回り大きな鉢に、根土を落とさないように注意して植え替え、適期を待つ。
- 多くの園芸植物は苗を定植する際、根鉢を少し崩して植え付けるが、野菜の場合は、根を触られると生育の停滞を招くので行わない。植え付け時はポットからそっと抜き、土を崩さないよう注意してら植える。なお、深植えは禁物。
日頃の管理
- ミツバやミョウガなど、ごく一部の例外を除き、ほとんどの植物は十分な日照がなければ育たない。
- 極端な水切れを起こすと、葉菜なら葉の枯れこみ、果菜なら落果、根菜なら根の肥大不良を引き起こす。真夏は、株元にマルチングをするとよい。
- 肥料は、幼苗の頃より、ある程度生長してからのほうがよく吸収するので、元肥より追肥に重点を置く。
- 葉菜には窒素(N)を多く含む肥料、果菜にはリン酸(P)を多く含む肥料、根菜にはカリウム(K)を多く含む肥料を施すのが原則。面倒なら、肥料の三大要素(N-P-K)が等量(10-10-10)含まれている肥料があれば足りる。もちろん、野菜の専用肥料を使うのも良い。
- 野菜に限った話ではないが、中量要素(硫黄・カルシウム・マグネシウム)や、微量要素(亜鉛・塩素・鉄・銅・ホウ素・マンガン・モリブデン)が欠乏すると、生理障害が起きることがある。カルシウム欠乏によるトマトの「尻腐症」などは典型的な例である。堆肥や腐葉土などが十分に施された新鮮な土なら、これらの要素が不足することはないが、土質に自信がなければ、市販の「微量要素肥料」を適量施す。
- 葉菜の多くは、生育期間が短いので、タネまき(または苗の植え付け)後、収穫まで一気に育て上げる。従って、水切れや肥料切れは禁物である。特に、株元から引き抜くのではなく、下葉や若芽だけをかき取って収穫した場合は、直後に必ず追肥する。追肥に用いる肥料は、即効性の液肥が良い。
- 果菜は、果実がなり始めると、急に水と肥料を欲しがるようになる。トマトやナスのように、長期間次々に実を付ける野菜は、成らせすぎると株の勢いが衰えるので、果実が適当な色・大きさになったらどんどん収穫する。
- つる性の果菜は、生育初期から施肥量(特に窒素肥料)が多いと「つるぼけ」を起こし、つるばかり伸びて果実が成らないので注意。
- 雌雄異花の果菜(ウリ科に多い)は、正常に受粉が行われないと実が成らない。虫が少ない場所では、人工授粉したほうが確実である。
- 根菜が根(または地下茎)に養分を蓄える栽培中期~後期は、水と肥料を切らさないようにする。蓄えられる養分は葉で作られるため、元気な葉をたくさん茂らせることも大切。
育てる容器
- 葉菜は、根があまり深く伸びず、小さめの鉢やプランターでも育てられる。また、ミツバなど小型の野菜は、水を含ませたオアシスやスポンジなどで栽培する、簡易水耕栽培も可能。
- 根菜を鉢やプランターで育てる場合は、どうしても、ミニ系の品種が中心になる。地植えで作る場合は、土をできるだけ深く耕しておく。また、土の中に石や化成肥料、未熟な堆肥などが混じっていると、根(または地下茎)の形がおかしくなる。(ダイコンの又根が典型的。)
- 「袋栽培」も人気がある。文字通り、培養土の入ったポリ袋を鉢代わりにし、野菜を栽培する方法で、最近は、袋栽培専用の培養土も売り出されている。使用の際は、ポリ袋に水抜き穴を多数開けておくのを忘れない。大袋の製品を使えば、大きな根菜も栽培できる。なお、見た目が今ひとつなので、袋ごと鉢やプランターに入れたり、麻袋などの中に入れたりすれば、風情が出る。(その方が、土の部分に日光が当たらなくなり、土の温度が上がりすぎて根腐れする危険性が減る。)
植える土
- ほとんどの野菜は酸性の土を嫌い、石灰分を好んで吸収するため、植え付け前に、土に苦土石灰を施す。だいたいpH6.0~6.5になるように調整すれば、大抵のものは育つ。
- 多くの園芸植物は、小さな苗をいきなり大鉢に植えつけると、過湿害によって枯れてしまう。しかし、野菜(特に果菜)はこの限りではなく、小苗を最初から大きな鉢やプランターに植え付けて育てる。
- 同じ科に属する植物を、同じ土で連続して栽培すると、特定の病気や害虫が多発し、うまく育たない。この現象を「連作障害」という。連作障害を防ぐには、同じ土で同じ科の野菜を続けて栽培しないことが大切である。畑では、栽培地を分割して、別の科に属する植物を順番にローテーション栽培する「輪作」を行う。
- 鉢やプランターで野菜を作る場合は、一回収穫が終わるごとに土を替える。なお、連作障害は、野菜同士だけでなく、園芸植物同士や、野菜と園芸植物の組み合わせでも現れる。例えば、キク科のシュンギクを栽培した後に、同じキク科のジニア(ヒャクニチソウ)を植えると、生育が悪い。
- 菜園を借りて野菜を作るときは、連作障害に、特に注意しなければならない。以前に借りていた人が何を栽培したか分からなければ、連作に強い接ぎ木苗を植えるか、カボチャ、コマツナ、サツマイモ、タマネギ、トウモロコシ、ニンジン、ニンニク、フキ、ラッキョウ、ラディッシュなど、連作に耐えるものを選ぶ。なお、アブラナ科野菜は、連作は好ましくないものの、意外と障害は出ない。
- 連作を避けたいのは、下記の植物である。カッコ内は、空ける年数の目安だが、なるべく長く空けたほうがよい。特に、ウリ科やナス科、マメ科の野菜は、連作に弱すぎる。
- アカザ科…食用ビート(2年)、ホウレンソウ(1年)など。
- アブラナ科…カリフラワー(3年)、キャベツ(2年)、ハクサイ(2年)、その他のアブラナ科野菜(1年)など。
- ウリ科…キュウリ(2年)、シロウリ(3年)、スイカ(4~5年)、ニガウリ(2年)、マクワウリ(3年)、メロン(3~4年)など。
- キク科…ゴボウ(4~5年)、サラダナ(2年)、シュンギク(1年)、レタス(1~2年)など。
- セリ科…セロリ(2年)、パセリ(2年)、ミツバ(1~2年)など。
- ナス科…シシトウ(3~4年)、ジャガイモ(2~3年)、トウガラシ(3~4年)、トマト(3~5年)、ナス(4~5年)、ピーマン(3~4年)など。
- マメ科…インゲン(2~3年)、エダマメ(4年)、エンドウ(4~5年)、ササゲ(4年)、ソラマメ(3~4年)、ラッカセイ(3年)など。
- ユリ科…ニラ(2年)、ネギ(1年)など。
- その他…イチゴ(1~2年)、オクラ(3~4年)、クワイ(3~4年)、サトイモ(3~4年)、ショウガ(4年)、ヤマノイモ(4年)など。
地方野菜(伝統野菜)
- 日本の野菜は、長い歴史の中で、地域ごとの気候や食生活にあった品種が選抜・保存されてきた。そのような在来品種の野菜は、特に「地方野菜(伝統野菜)」と呼ばれる。
- 最も有名なのが京野菜で、「エビイモ(サトイモ)」「鹿茂ナス」「九条ネギ」「鹿ケ谷カボチャ」「聖護院カブ」「聖護院ダイコン」「すぐき菜」「伏見甘長トウガラシ」「堀川ゴボウ」「満願寺トウガラシ」「水菜」「壬生菜」などがある。
- 京野菜以外は、浪速野菜の「石川早生(サトイモ)」「大阪四十日(ダイコン)」「大阪しろ菜」「毛馬キュウリ」「中葉株張り(シュンギク)」「天王寺カブ」「水ナス」、加賀野菜の「打木赤皮甘栗カボチャ」「打木源助ダイコン」「加賀太キュウリ」「金沢青カブ」「金時草」「中島菜」などが有名どころである。
- こうした地方野菜(伝統野菜)は、日本全国全ての都道府県に多数存在する。それらの野菜は、根付いた地方で栽培・調理してこそ真価を発揮するので、自分の地元の野菜を知り、育ててみるのも楽しいものである。
- ただし、これらの野菜は主要品種に比べて収穫量が安定せず、耐病性が劣る傾向がある。また、タネや苗が一般に流通しないことも珍しくなく、入手に手間取るかもしれない。