ナス
イメージ
原産地
インド東部
科
ナス科
高さ
60~100cm
花期
6~10月
形態
春まき一年草
収穫期
6~11月
別名等
ソラヌム・メロンゲナ(学名)/茄/茄子/ナスビ/エッグプラント/メランザーナ/オーベルジーヌ
(※その他の種類の和名・異名はページの一番下にまとめた)
日照
4月下旬~11月上旬の生育期は、戸外の直射日光下。
水やり
生育期は、土の表面が乾けば与える(水切れは厳禁)。
【補足】花に水をかけると、受粉の妨げになる。果実の生育中に水切れすると、果実表面のツヤが無くなることがある。
肥料
春の元肥の他、一番果着果後(一番最初の果実が付いてから)~10月上旬に、固形肥料の置き肥。
【補足】夏に行う更新剪定の直後は、必ず追肥する。普通は、雄しべより雌しべのほうが長いが、肥料(特に窒素)が不足すると、雄しべが長くなって結実しにくくなり、花色も薄くなる。
植え付け
5月上旬~6月上旬、株間40~60cm(大型種の米ナスは、株間1m)。
【補足】移植を嫌うので、根を傷めない。
整姿
株元をマルチングし、地温が下がらないようにする。一番最初の果実(一番果)は、小さいうちに収穫し、株の負担を軽くする。(二番目以降の果実は、開花後20~25日で収穫す。)
【仕立て方】一番最初の花(一番花)が咲いた後、その下から側枝が数本伸びてくるので、生育の良い2本を左右に伸ばさせ、他の枝は全て切り、「三本仕立て」とする。「三本仕立て」ができあがったら、主枝と左右の側枝に支柱を立て、安定させる。
【更新剪定】7月下旬~8月上旬頃、主枝と側枝を、葉2~3枚残して切り戻す。(株全体を2/3~1/2にするつもりで。)
繁殖
【タネまき】2月上旬~6月上旬。(低温期は加温する。タネまき適期は、普通は5月上旬までだが、秋ナスだけを狙うなら、遅まきしてもよい。初期生育がとても遅いので苗を買ったほうが楽。)
耐暑性
わりと強いが、35℃以上になると、果実の品質が著しく落ちる。
耐寒性
とても弱い(最低15℃)。
解説
- 夏野菜の中で、最も作りやすいものの一つである。系統ごとに、丸ナス・中長ナス・長ナス・小ナス・米ナス(ベイナス)などに分かれる。果実の色は、一般的な黒紫色だけでなく、白・黄色・緑色などもある。米ナスは、ヘタの部分のみ緑色をしているのが特徴。
- 主な品種は、丸ナスなら「早生大丸」、中長ナスは「千両二号」、長ナスは「黒陽」「庄屋大長」、米ナスなら「くろわし」などがある。
- 土着の地方品種も数多い。京野菜として有名な大型丸ナスの一種「賀茂ナス」、大阪の泉南地域特産で、水分が多く柔らかい「泉州水ナス」、仙台市周辺特産で、果実がかなり細長い「仙台長ナス」、山形の鶴岡市特産で、果実が丸く小さい「民田ナス」などがある。また、ナスの栽培・消費の盛んな新潟県中越・下越には、文字通り巾着型(下ぶくれの丸ナスで、縦方向に浅い溝がある)の果実を付ける「巾着ナス」がある。
- 日本のナスは、多くが濃赤紫~黒紫色である。しかし、埼玉の「青ナス」や、新潟の「白ナス」は、果実の表面が淡緑色~緑色である。花色も白~淡紫色をしている。いずれも丸ナス系。鹿児島や宮崎の「白ナス」も緑色のナスだが、果実の形はさまざまなものが揃っている。また、宮古島にも、果皮が淡緑色になる在来の地ナスがある。
- 緑色系のナスは、青臭そうに見えるためか、一般市場にはなかなか出回らない。しかし、耐暑性や果実の品質において優れており、また、煮物にした時に、煮汁に黒い色が出ないという長所がある。
- 切り花でおなじみの赤ナスも、同属の植物である。ミニトマトのような果実をたくさん付け、可愛らしいが、鑑賞専用で、食用にはならない。
注意点・病害虫
- 本来は多年草だが、普通は春まき一年草扱いする。タネの寿命は比較的長く、古いタネでも発芽する。
- 春になると、苗がたくさん出回るので、購入して植え付けるとよい。よい苗は、節間が詰まり、双葉が落ちずに残っていて、一番花が咲きかけているものである。なお、接ぎ木苗のほうが、病気が少なく育てやすい。
- ややアルカリ性の土を好む。酸性土を非常に嫌うため、植え付け前の石灰散布は必須。
- 8~10号鉢に一株、65cmプランターに二株植えられる。
- 高温による生育不良や、果実の成り疲れなどで樹勢が低下すると、表面にツヤのない、品質の悪い果実(「ボケナス」「ボケ果」などと呼ぶ)が増える。また、開花期の気温が低すぎたり高すぎたりすると、不完全受精による「石ナス」を生じる。石ナスは小さくて硬く、内部に「す」が入っており、食用に適さない。
- 半枯病にかかると、葉の半分だけが、葉脈に沿って黄色くなり、やがて枯死するので、抜き取り処分する。また、黒枯病は、葉や葉柄、茎などに、褐色~紫褐色の小斑点ができ、次第に拡大して、円形~不整形の同心円状病斑を形成する病気。果実に発生すると、小さなイボが多数でき、変形することがある。ダコニール1000やトップジンM、ベンレートなどを散布する。
- どちらかというと病害の多い野菜だが、接ぎ木苗を栽培した場合や、新しい清潔な土に植えつけた場合は、意外と発生しないものである。
- 害虫は、アブラムシやヨトウムシ、オンシツコナジラミ、テントウムシダマシ、チャノホコリダニ、ミナミキイロアザミウマなどがある。
- 芽の先端や果実が茶色く変色して硬くなり、生長が止まったら、チャノホコリダニの被害である。このダニは肉眼ではほとんど見えず、被害が出てから気付くことが多い。バロックフロアブルなど、ハダニ用の薬剤で駆除できる。(なお、殺ダニ剤のケルセンは、ナスに対してひどい薬害が出る。すでに登録失効し、販売されていない薬だが、もし入手しても、決して使ってはいけない。)
- ナスは、殺虫剤のオルトランにも薬害が出ることがあるので、なるべく使用を避ける。
収穫・利用
- 果実のヘタの部分にトゲがあるので、扱いに注意する。このトゲは、果実が新鮮であるほど鋭い。
- 収穫したらすぐに食べるのが原則。保存するときは、約10℃の低温下におく。これより温度が高くても低くても傷みやすい。
- 収穫が遅れると、果実のツヤがなくなり、硬くなって、食べられなくなる。
余談
- 果実の肥大に着色が追いつかず、ヘタのすぐ下に白っぽい部分が帯状に残ることがある。そのような状態を「へた抜き」という。特に害などは無い。
各種の和名・異名
- テクサヌム(異名)/ヒラナス/アカナス/カザリナス/チャイニーズスカーレットエッグプラント(いずれもインテグリフォリウム)
- ペピーノ/メロンペアー(いずれもムリカツム)
- 長ナス(メロンゲナ変種オブロンゴシリンドリクム)
- 千成ナス(メロンゲナ変種デプレッスム)
- タマゴナス/シロナス/ギンナス(いずれもメロンゲナ変種プミリオ)
- 丸ナス(メロンゲナ変種マルナス)
(※データ:大阪市基準)