いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育てる-

イネ

イメージ

原産地

中国雲南省~インド東部

イネ科

高さ

50~100cm

花期

7~9月

形態

春まき一年草

収穫期

8~11月

別名等

オリザ・サティバ(学名)/イネ/稲/コメ/米/ライス


赤米/古代米(いずれもサティバ変種ロンギセタ)

日照

4月下旬~11月上旬の生育期は、戸外の直射日光下(きわめて日光を好む)。

水やり

生育期は、鉢ごと水に沈めるか、腰水にする。水鉢やバケツに直接用土を入れて植え込んでもよい(水深は5~8cm程度)。

【補足】最初から水深が低いと生育が悪くなるので、まず0.5cmから始め、葉の生長とともに徐々に深くする。真夏は水温が上昇しやすいので、水深を深めにする。


【中干し】(行わなくても支障はない。)
7月頃、茎の数が20本前後になったら、数日間水を抜き、土の表面を乾燥させる。(表土に軽くひびが入るまで乾かし、その後は、また水を張る。)


【落水】(行わなくても支障はない。)
収穫の5~7日前になったら完全に水を抜き、土を乾かす。

肥料

春の元肥の他、植え付けの1ヵ月後に、固形肥料の置き肥。

【補足】多肥にすると、実が入らなくなったり、さまざまな病気を誘発する。

植え付け

本葉が3~4枚になった頃、株間15cm。

【補足】2~3株を一組として植え付ける。深植えは禁物。

整姿

草丈が高くなるので、支柱をしたほうがよい。(風で倒れて水をかぶると、その後の生育が悪くなったり、病気が出たりする。)雑草に負けやすいので、きちんと除草する。

繁殖

【タネまき】4~5月。(浅く張った水に種モミを浸して暖かい場所に置き、芽出ししてからまく。)

耐暑性

品種によるが、わりと強い(ただし、暑すぎると品質が下がる)。

耐寒性

弱い。

解説

  1. おなじみのコメである。本来は多年草だが、日本では春まき一年草として扱う。
  2. イネの仲間は、大きく分けて、西アフリカ原産のアフリカイネと、アジアの亜熱帯地域原産のアジアイネがある。
  3. アジアイネは、さらに、インディカ米とジャポニカ米に分かれる。前者は、米粒が細長い「長粒種」で、粘りけが無い。(ただし、もち米用の品種には粘りがある。)後者は、米粒が短い「短粒種」で、日本では一般的な系統である。うるち米・もち米を問わず粘りが強いのは、ご存じの通り。
  4. 食用のイネは、おなじみの「白米」の他、モミが朱色っぽい「赤米」や、黒紫色をした「黒米(紫米)」がある。これらは、「古代米」と総称されることもある。精米すると白っぽくなるので注意。
  5. 観賞専用の品種もあり、穂の色が、赤や紫、緑色などいろいろあって美しい。秋花壇の演出やドライフラワーに最適。なお、上記の赤米や黒米も、穂の美しさから、観賞用に栽培されることがある。
  6. 栽培上はあまり関係ないが、本来は短日植物である。

注意点・病害虫

  1. 田んぼがなくても、鉢を水に付けたり、バケツなどに土を入れて育てれば、ある程度収穫できる。(「バケツ稲」という。)正月用しめ飾りの稲穂からとったモミをまいても作れる。
  2. 水田のイメージから、水生植物のように思われがちだが、普通の畑でも作れる。畑で作られたイネは「陸稲(おかぼ)」と呼ばれる。が、普通の土で作ると、水切れの危険があったり、連作ができなかったりするので、できればバケツ稲で。
  3. バケツ稲の用土は、田土(荒木田土)が一番よい。手に入らなければ、黒土か赤玉土に、少量(二割程度)の腐葉土か堆肥を混ぜて使用する。
  4. 植える容器は、最低でも10号鉢(直径30cm)以上の、大型のものを使う。単なる観賞用なら、5号鉢(直径15cm)で一株つくれるが、収穫が楽しめない。
  5. 水に沈めて栽培する場合、水を腐らせないよう注意。ボウフラの発生源にもなるので、夏は頻繁に水を替える。珪酸塩白土(商品名「ミリオン」)を沈めておくと、水が腐らない。
  6. 稲作農家では、タネモミをまく前に塩水に浸し、沈んだものだけをまくらしい。(「塩水選」という作業。)しかし、一般家庭では、そこまでこだわる必要はないと思われる。
  7. 種モミの芽出し作業は、行わなくても支障はない。地温さえ高ければ、直まきしても結構発芽する。もし芽出しを行う場合は、毎日きちんと水を替える。
  8. 「中干し」の作業は、地力を回復(具体的には、肥料の副成分による硫化水素発生を抑制)し、同時に株の育ちすぎを抑えるために行う。表土が十分乾いたら、元通り水を与える。なお、バケツ栽培では、水田と違って土が悪くなったりしないうえ、乾かしすぎによる枯死の危険があるので、特に行う必要はない。
  9. 収穫前の「落水」の作業は、実の余分な水分を抜き、味をよくするために行う。こちらも、バケツ栽培では、特に行う必要はない。
  10. 病虫害が多いのが困りもの。病気は、いもち病、白葉枯病、紋枯病、ウイルス病など。中でも、葉が灰緑色に枯れ込んだり、穂に実が入らなかったりする「いもち病」は大敵である。比較的低温で多湿の時期に、日照不足や窒素過多になると発生しやすい。大変有名な病気なので、専用の薬剤が多数あるが、ほとんど農家向けで、一般家庭では入手しにくい。
  11. 白葉枯病は細菌性で、葉に傷が付いたり、水をかぶったり、多肥にしたりすると発生する。葉の縁に黄色い波型の病斑ができて広がるので、オリゼメート、シラハゲンなどを散布する。
  12. 害虫はウンカ類、イネミズゾウムシ、カメムシ類、シンクイムシ(イネヨトウ、ニカメイチュウ)、ヨトウムシなどがある。が、一般家庭では意外と被害を受けない。むしろ、スズメに注意。

収穫・利用

  1. 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の通り、熟した穂は深く枝垂れる。そうなったら収穫適期。
  2. 収穫したら、穂からモミをしごき落として脱穀し、すり鉢とすりこぎで優しくこすり、モミ殻と玄米を分離する。その後は精米器に任せる。(一升瓶と棒を使って精米する方法が知られているが、時間と労力がかかる。)
  3. 収穫後の稲ワラも、マルチング材や堆肥材料などに重宝するので捨てない。腕に自信があればワラ細工にも。

(※データ:大阪市基準)