ダイコン
イメージ
原産地
地中海沿岸・中央アジア~西アジア
科
アブラナ科
高さ
30~100cm
花期
4~5月
形態
一年草
収穫期
3~7月・11~1月
別名等
ラファヌス(属名)
大根/ラフク/蘿蔔/ローペ/スズシロ/ラディッシュ/ジャパニーズラディッシュ/チャイニーズラディッシュ(いずれもサティブス変種ホルテンシス)
ハマダイコン/浜大根(サティブス変種ホルテンシス品種ラファニストロイデス)
日照
9月上旬~7月上旬の生育期は、戸外の直射日光下(酷暑期は西日を避ける)。
水やり
生育期は、土の表面が乾けば与える。
肥料
元肥の他、本葉3~4枚の頃と、本葉6~7枚の頃に、固形肥料の置き肥。
【補足】追肥は、カリ(K)を主体に施す。土中に元肥を入れると又根になりやすいため、発芽後に置き肥する。
植え付け
4月か、9月上旬~10月上旬、株間20~35cm(ミニ種は株間15cm)。
【補足】普通は移植しないが、もし必要なら、根鉢を崩さないように行う。
整姿
株間が狭いと十分肥大しないので、間引きをサボらない。根部が肥大し始めたら、株元に土寄せし、露出しないようにする。
繁殖
【タネまき】3月上旬~6月上旬か、8月下旬~10月中旬。(品種によってタネまき適期が違うので、時期にあったものを選ぶ。春まきは、トウ立ちの遅い品種を選び、早まきを避ける。)
耐暑性
弱い。
耐寒性
わりと強い。
解説
- 誰もが知る野菜の一つ。スーパーなどで売られているのは、根の上部が緑色をした「青首ダイコン」と呼ばれる品種群ばかりである。
- きわめて品種が多く、「秋王」「打木源助ダイコン」「桜島ダイコン」「聖護院ダイコン」「耐病総太り」「時無ダイコン」「二年子」「練馬ダイコン」「三浦ダイコン」「美濃早生」「宮重」「守口ダイコン」など盛りだくさん。
- 「三浦ダイコン」は神奈川県三浦半島の地方品種で、根が先端に近いほど太くなっているのが特徴。以前は生産量が多かったが、今は「青首ダイコン」に取って代わられている。「守口ダイコン」は、ゴボウのような根が長さ1mにもなり、世界一細長いダイコンとして知られる。その形状ゆえに沖積層の砂質土壌でなければ作れず、昔は大阪の旧淀川周辺で作られていたが、現在の産地は愛知と岐阜(やはり川沿い)のみに存在する。守口漬で有名。
- 鹿児島県の特産「桜島ダイコン」は、世界最大のダイコンである。早生種~晩生種まであり、晩生種が一般的。根部の重さは、大きいもので30kgにも達する。葉の形状も独特で、緑色が濃く、表面が強く縮れる。また、葉の枚数がきわめて多く、かなりの長さがあり、しかも地面に伏せながら放射状に広がるため、普通のダイコンの葉とは、まったく雰囲気が異なる。個体変異が多く、間引き作業に熟練の技が要求されるという。タネまきから収穫までは、約半年かかるらしい。
- 最近は、根部の内部が赤い「天安紅心」や、地上に露出した部分が濃緑色になる「江都青長」のような中国ダイコンも人気がある。日本のダイコンに比べると根部が小さいが、タネまき~収穫までの期間が短く、作りやすい。
- なお、岩手県岩泉町にも、根部の表皮と中心が赤~紫色になる、独特な地ダイコンがある。
- よく見かける大型のダイコンの他、根部が短いミニ系のダイコンもある。ミニ系の品種には、「ミニコン」「雪美人」などがある。コンテナ栽培に適する。さらに小型の種類は「ラディッシュ」と呼ばれるが、ラディッシュについては、別ページに分けて解説した。
- カイワレダイコンは、「大阪四十日(おおさかしじゅうにち)ダイコン」という、ダイコンの一品種をモヤシにしたもので、そういう名前の品種があるわけではない。カイワレ(貝割れ)とは、双葉の形からの連想である。ちなみに、「大阪四十日ダイコン」を普通に栽培すると、名前の通り、タネまき後40日くらいで、小型のダイコンが収穫できる。煮物、浅漬けに。
- 根部の形は、丸いものと細長いものがある。細長いタイプはさらに、上部ほど太いもの、尻部ほど太いもの、寸胴型、とっくり型、ねずみ型(短根で下ぶくれ、かつ、細長い根が一本だけ伸びる形状)、などに分かれる。
- 根部の表面の色は、赤や白、紫などがある。
- 花は、白~淡紫色でなかなか美しく、一見の価値あり。
- 日本の海岸に自生するハマダイコンは、ダイコンが野生化したものとされる。こちらは根が細く、普通は食用にしない。(食へること自体は可能。)
注意点・病害虫
- 基本的に、晩夏~初秋にタネをまき、初冬~冬に収穫するのが普通。品種によっては、秋まき翌春どり・早春まき晩春どり・春まき初夏どり・初夏まき夏どり、などもある。
- 多くの種類は耐暑性が今ひとつだが、桜島ダイコンなど南方系の品種は気候に適応し、優れた耐暑性・耐病性を持っている。
- 直根性のため、タネは直まきするのが普通である。他の野菜類とは違い、ポットで育苗し、ある程度大きくなってから定植、という育て方はしない。
- 大型のダイコンは地植えで育てるが、植え付け前に、土地を深さ30~50cmまで耕し、石やゴミを取り除いておかないと、又根になることがある。また、土中に未熟な堆肥が混入していたり、肥料が根に直接触れたときも又根になりやすいため、堆肥は完熟品を使い、肥料は株元から少し離して置く。しかし時折、思いがけない形の又根ができることもあり、形を楽しむのも一興。
- コンテナ栽培する場合は、根が深く伸びないミニ系の品種を選ぶ。大型種のダイコンをコンテナ栽培したければ、培養土の大袋に水抜き穴を開け、その中で育てる「袋栽培」がおすすめ。袋一つにつき、一~二株ほど作れる。
- 微酸性~中性の土でよく育つ。が、酸性の土にも、ある程度耐えられる。
- 収穫が遅れると、根の中心部が老化・木質化し、「す」が入りやすい。特に、春まきの品種は、す入りになりやすいので注意が必要。なお、中国ダイコンは、す入りになりにくい。
- 自分の花粉では結実しにくく、タネを採るには、二株以上あった方がよい。
- 病気は、ウイルス病や軟腐病などのほか、根の内部に黒い斑点が多数できる、バーティシリウム黒点病と萎黄病がある。萎黄病は気温が高いと発生しやすく、根部を切断すると、切り口に黒い輪が見えるほど病斑が濃い。(同時に、中心部も黒く変色していることが多い。)一方、バーティシリウム黒点病は、比較的低温条件で発生しやすく、黒い輪の色が薄い傾向がある。
- ダイコンを侵す病気は多いが、それに抵抗性を持った品種もまた多いので、決して育てにくい野菜ではない。ただし、ウイルス病にはかなり弱く、しばしば大発生し、生産農家に打撃を与えてきた歴史がある。そのため、日本では、生産地を移転したり、栽培する品種を入れ替えるなどして対抗しているらしい。家庭園芸では、品種ごとの種まきの適期を守り、アブラムシを適切に駆除していれば、大発生することはない。
- 茎葉にはほとんど異常がないのに、抜いてみると根部の表皮が淡褐色になって荒れていることがある。さらに、そのようなダイコンの根を水平に切断してみると、中心部だけが淡褐色になっていたりする。これはホウ素欠乏の典型的な症状であって、病気ではない。植え付け前に石灰を施しすぎるなどして、土がアルカリ性になっていると発生しやすい。ダイコンは比較的、ホウ素欠乏を起こしやすい野菜である。
- 害虫は、アブラナ科野菜ではおなじみの、アブラムシ、アオムシ、ヨトウムシ、コナガ、コナジラミ、ナノクロムシ(カブラハバチ)が出る。この他、キスジノミハムシやシンクイムシの被害も受ける。
- ダイコンは、アブラナ科植物としては比較的連作に強い。が、萎黄病などの発生を避けるためにも、なるべく行わない。なお、根の表面を食害するキスジノミハムシは、連作するほど被害が大きくなる。
収穫・利用
- 外側の葉が垂れてきたら、早めに引き抜いて収穫する。収穫後も葉を付けままにしておくと、根部の水分が奪われ、す入りになってしまうので注意。
- 葉も食用になる。むしろ、根部より葉のほうが栄養価が高いらしい。間引き菜(中抜き菜)もおいしい。
余談
- 春の七草の一つ「すずしろ」とは、ダイコンのこととされる。
- ダイコンの皮や葉を干したものは、入浴剤として使うことができる。
(※データ:大阪市基準)