ネグサレセンチュウ類
ネコブセンチュウ類と並び、センチュウの二大巨頭的存在である。最も重要視されるのは、寄主範囲の広い、キタネグサレセンチュウ、クルミネグサレセンチュウ、ミナミネグサレセンチュウの三種類。このうち、キタネグサレセンチュウは、名前を見ると寒地性のように思えるが、全国的に分布しており、タチが悪い。なお、ミナミネグサレセンチュウは暖地性である。
クルミネグサレセンチュウは、イチゴの重要害虫である。「イチゴ根腐萎凋病」は、この虫が原因で発生するらしい。
余談だが、名前の紛らわしいニセネグサレセンチュウは、「ネグサレセンチュウの加害痕に寄生したカビ」を餌にしているらしい。従って、園芸害虫ではない。
関東以西に分布するニセフクロセンチュウは、ネグサレセンチュウの仲間ではないが、ゴボウやサツマイモなど、さまざまな野菜類の根部を腐らせる連作障害を引き起こす。こちらはアフリカンマリーゴールドやソルゴーの作付けで、数を減らすことができる。
※タマネギの球を腐らせるイモグサレセンチュウは、「クキセンチュウ類」に記載した。
発生時期
周年(冬は活動が鈍る。)
被害箇所
根。
形態など
体長0.7~0.9mm。ごく小さなミミズ状で、体色は、白色または半透明。
主な被害
根の内部に侵入し、組織を腐らせる。被害株は、細根が極端に減り、下葉から枯れ上がって、生育が衰える。被害がひどいと枯死する。また、萎凋病や萎黄病など、土壌に起因する病害を誘発する。
根菜類や球根植物では、太い根の伸長・肥大が止まり、細根ばかりになる。収穫できたとしても、著しい又根になっていたり、表面が点々と黒変していたりする。掘り上げて保存している間にも腐敗は進むので注意。
対策
発生した土で、エンバク、ギニアグラス、クロタラリア、テンサイ、ハブソウ、ヒマワリ、マリーゴールド(アフリカン、フレンチ、メキシカン、どの系統でも可)、ラッカセイなどを三ヵ月以上栽培し、すき込む。
エンバクやソルゴーは、品種によっては逆に、センチュウを増やすといわれる。
エンバク「スワン」「とちゆたか」、トウモロコシ、ヒマワリは、キタネグサレセンチュウを増やす。また、クロタラリアは、キタネグサレセンチュウに効果が無い。
- キタネグサレセンチュウ…アスパラガス、アフリカンマリーゴールド、エンバク「ネグサレタイジ」「ヘイオーツ」、ギニアグラス、スーダングラス、ソルガム、ライムギなども良い。
- クルミネグサレセンチュウ…アフリカンマリーゴールド、クロタラリアなどが良い。
- ノコギリネグサレセンチュウ…エンバク「ヘイオーツ」などが良い。
- ミナミネグサレセンチュウ…アフリカンマリーゴールド、エンバク「ヘイオーツ」、ギニアグラス、クロタラリア、ラッカセイなどが良い。
【薬剤】【土壌混和】ネマトリン、ネマトリンエース、ボルテージなど。
【注意点】薬剤に対して強い抵抗性を持つため、規定量を守り、ケチらない。
予防策
被害株から子株を採らない(特にイチゴ)。挿し木や挿し芽は、清潔な土で行う。連作を避ける。肥料に鶏糞を使ってみる。土壌酸度がアルカリ性に偏らないようにする。
一度発生した土は、徹底的に消毒するまで再利用しない。植物を購入する際は、すでに虫がいないか、よく観察する(目で見えないため、健全な根が十分張っているかを確認する)。
- スズラン…植え付け前に、地下茎を45~47℃の湯に30分浸して消毒する。
主な被害植物
【草花・鉢花】ガーベラ、キク、クローバー、スズラン、マーガレットなど。
【樹木・果樹】カイドウ類、クルミ、サザンカ、チャ、ツバキ類、バラ、マツ、リンゴなど。
【ハーブ・野菜】イチゴ、インゲン、ウリ類、エンドウ、カブ、カボチャ、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、ゴボウ、コンニャク、ダイコン、タマネギ、サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、ショウガ、スイカ、ダイコン、ダイズ、トウガラシ、トウモロコシ、トマト、ナガイモ、ナス、ニラ、ニンジン、ネギ、ハクサイ、フキ、ホウレンソウ、マクワウリ、ムギ類、メロン、ヤマイモ、ラッキョウ、レタス類など。
主な種類
キタネグサレセンチュウ、クマモトネグサレセンチュウ、クルミネグサレセンチュウ、チャネグサレセンチュウ、ノコギリネグサレセンチュウ、ミナミネグサレセンチュウ、ムギネグサレセンチュウ、モロコシネグサレセンチュウなど。