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素人園芸解説 -私はこう育てる-

イラガ類

毒ケムシの一種(アカイラガ、ウストビイラガ、タイワンイラガ、ムラサキイラガ等を除く)。

イラガ科に属する。別名「イラムシ」「電気虫」。植物に付く毒虫としては、ドクガ類と並んでタチが悪い。かなりの多犯性で、記した植物以外も、通りすがり的に加害することがあり、注意を要する。(筆者は、スイレンの葉裏にいたヒロヘリアオイラガに刺されたことがある。)

発生時期

5~10月(真夏は一時的に減る。)

【補足事項】
  1. アオイラガ…6~7月・9~10月
  2. アカイラガ…6~7月・9~10月
  3. イラガ…6~10月
  4. クロシタアオイラガ…6~10月
  5. テングイラガ…6~7月・9~10月
  6. ナシイラガ…8~11月
  7. ヒメクロイラガ…6~10月
  8. ヒロヘリアオイラガ…6~7月・9~10月
  9. ムラサキイラガ…5~7月・9~10月

被害箇所

葉など。

形態など

老熟幼虫で体長1~2.5cm。体色は淡黄色~淡緑色で、黒色や青色、褐色などの模様が入る。体形はナマコのようで、やや扁平。全身に細かいトゲ(毒棘)がある。たいてい葉裏にいる。
地際近くの土中や樹皮の裂け目、枝の分岐部などに、楕円形の硬いマユを作って越冬し、春、マユの中で蛹になる。このマユも種類によっては有毒のため、注意を要する。

なお、どの種類も、成虫は毒を持たない。

【補足事項】
  1. アオイラガ…老熟幼虫で体長2.5cm。体色は黄緑色。背中に濃青色の縦線が一本ある。年2回の発生。
  2. アカイラガ…老熟幼虫で体長1.8~2cm。体色は黄緑色で、半透明。全身にコブ状の突起があるが、触れると脱落しやすい。姿がニガウリ(レイシ)の果実に似るため、別名「レイシムシ」とも呼ばれる。年2回の発生。
  3. イラガ…老熟幼虫で体長2.4~2.5cm。体色は淡黄緑色で、背面に茶色と青の特徴的な模様がある。全身に黄緑色のトゲを持つ。この仲間では珍しく、若齢幼虫の頃から単独生活をする。年1~2回の発生。
    秋になると、鳥の卵に似た、特徴的な模様のあるマユを、枝の分岐部に作る。このマユは、「スズメの卵」「スズメノショウベンタゴ」など、地方によってさまざまな呼び名がある。マユの中にいる前蛹(サナギになる直前の幼虫)は「タマムシ」と呼ばれ、釣り用の良いエサとなる。
  4. クロシタアオイラガ…老熟幼虫で体長1.8cm。体色は黄緑色。背面に赤~橙色の縦線が一本あり、その縦線は青色で縁取られる。大発生はしない。年1~2回の発生。
  5. テングイラガ…老熟幼虫で体長1cm前後。体色は個体差があり、黄緑色~赤褐色まで幅がある。背中が隆起しており、虫体を真横から見ると、三角形になっている。他の種類に比べ、毒刺毛が貧弱。年2回の発生。
  6. ナシイラガ…老熟幼虫で体長2cm。体色は緑色で、背面に黒く細い縦線が走る。胸部と尾部に、赤橙色をした突起が計3対あり、ここから黒い毒刺毛が伸びる。樹上にマユを作って前蛹となり、越冬する。年1回の発生。
  7. ヒメクロイラガ…老熟幼虫で体長2.3cm。体色は淡黄色~黄緑色だが、黒い小斑点が多数散らばるため、全身が黒ずんで見える。背中のトゲは黒い。他の種類とは異なり、終齢幼虫になるまでの長期間、集団で食害する。秋になると葉をかみ切り、その葉もろとも落下して、浅い土中や落ち葉の中に黒褐色のマユを作る。年1~2回の発生。
  8. ヒロヘリアオイラガ…老熟幼虫で体長1.5cm。体色は黄緑色で、背中に青っぽい縦線がある。大発生しやすい。本来は暖地性だが、近年、生息域を広げている。年2回の発生。
  9. ムラサキイラガ…老熟幼虫で体長1.5cm。体色は黄緑色で、体型は扁平な楕円型。刺毛はあるが、毒は無い。年2回の発生。

主な被害

葉裏に寄生し、食害する。被害葉は、葉肉だけを浅く食われ、白っぽく透けて見える。老熟幼虫になると、葉が無くなるほど食い荒らす。

漢字で「刺蛾」と書くことからわかるように、虫体に触れると、電撃を受けたような激痛を感じ、腫れ上がる。もし刺された場合は、患部を冷水で洗い、抗ヒスタミン系軟膏など(通常の虫さされ薬でよい)を塗れば、数日で痛みと腫れが引く。症状がひどい場合は、迷わず病院(皮膚科)へ。

対策

見つけ次第捕殺する。多くの種類は、孵化して間もないうちは群れているので、被害葉ごと除去する。越冬中のマユは、見つけ次第つぶす。


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予防策

灯火に集まるので、誘蛾灯を設置し、成虫を誘引捕殺する。

【補足事項】
  1. アカイラガ、ヒメクロイラガ…地際近くの落ち葉の下や、株元の土中浅くでマユを作って越冬するので、木の周囲をしっかり掃除し、土を軽く耕すなどして、マユを取り除く。
  2. イラガ…落葉樹の場合、越冬中のマユがよく目立つので、探して取り除く。
  3. テングイラガ…葉の間にマユを作って越冬するので、探して取り除く。

主な被害植物

【観葉・多肉】アイビーなど。

【樹木・果樹】アカメガシワ、アセビ、アブラギリ、アンズ、イチョウ、ウメ、エノキ、エンジュ、オウトウ、オニグルミ、カイドウ、カエデ類、カキ、カシ類、カナメモチ、カリッサ、キイチゴ類、クスノキ、クヌギ、クリ、クルミ、クワ、ケヤキ、サクラ、ザクロ、サザンカ、サツキ、サルスベリ、サンゴジュ、シャクナゲ、シャシャンボ、シャリンバイ、スダジイ、スモモ、チャ、ツツジ類、ツバキ類、ドウダンツツジ、ナシ、ナツメ、ナラ類、ナンキンハゼ、ナンテン、バラ、ハンノキ、ヒイラギモクセイ、ヒサカキ、ピラカンサ、ビワ、プラタナス、ブルーベリー、プルーン、ボケ、ボタン、ポプラ、モクレン、モミジバフウ、モモ、ヤナギ類、リンゴなど。

【ハーブ・野菜】サツマイモ、ダイコン、ダイズなど。

主な種類

アオイラガ、アカイラガ(レイシムシ)、イラガ、ウスムラサキイラガ、オキナワナシイラガ、クロシタアオイラガ、クロスジイラガ、テングイラガ、ナシイラガ、ヒメクロイラガ、ヒロヘリアオイラガ、ホソヘリアオイラガ、ムラサキイラガなど。