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素人園芸解説 -私はこう育てる-

アブラムシ類・ワタムシ類(虫コブを作る種類)

アブラムシ科・カサアブラムシ科・ネアブラムシ科に属する。アブラムシといえば、吸汁性害虫の帝王的存在だが、ここで取り上げている種類は、吸汁の刺激で植物体にコブを生じさせるタイプである。
この仲間は、虫コブの色や形にこそ特徴があり、虫そのものの姿は、見る機会が少ない。
種類によっては、虫コブに入りそびれた幼虫が、敵を攻撃する「兵隊型」に変化し、虫コブを狙う天敵と戦うという。

※普通に吸汁するアブラムシ・ワタムシ類は、別ページとして独立している。

発生時期

3~12月

【補足事項】
  1. イスノタマフシアブラムシ…6月
  2. エゴノネコアシアブラムシ…6~7月
  3. エドヒガンコブアブラムシ…5月
  4. オカボノクロアブラムシ…4~5月・10~11月
  5. キツリフネコブアブラムシ…6~11月
  6. ケヤキヒトスジワタムシ…4~6月
  7. ササキコブアブラムシ…4~6月
  8. ナギナタコウジュワタムシ…8~10月
  9. ナシハマキワタムシ…5月
  10. ヒガンザクラコブアブラムシ…4~5月
  11. ミザクラコブアブラムシ…3~4月
  12. モンゼンイスアブラムシ…5~6月
  13. ヤノイスアブラムシ…3~6月
  14. ヤノハナフシアブラムシ…8~10月

被害箇所

葉、枝、芽、根など。

形態など

成虫で体長1~3mm程度。体色は、淡緑色や淡黄色、黄褐色、赤紫色などで、普通のアブラムシと同様。虫コブを作るのは、主に幼虫である。集団で吸汁する普通のアブラムシと違い、成虫に翅があることが多い。普通は卵で越冬する。

【補足事項】
  1. イスノフシアブラムシ…体色は灰色。晩秋以降、アラカシに移動する。
  2. エゴノネコアシアブラムシ…体色は赤褐色で、白いロウ状物質で覆われ、一見、カイガラムシのように見える。夏にイネ科雑草に移り、秋にエゴノキに戻る。卵で越冬する。
  3. エドヒガンコブアブラムシ…体色は褐色。サクラの葉とヨモギ類の根の間で寄主転換する。卵で越冬する。
  4. オカボノクロアブラムシ…夏~秋の間は、イネ科の草(オカボなど)の根に移動する。卵で越冬する。
  5. カバハマキヒラタアブラムシ…体色は暗赤色~黒褐色で、白い綿状物質で覆われる。マンサクとシラカバを行き来する系統と、シラカバだけに寄生する系統があるらしい。
  6. クサボタンワタムシ…体色は暗赤褐色で、白い綿状物質で覆われる。ケヤキとクサボタンの間を行き来する。クサボタンに寄生するグループは、天敵を撃退する「兵隊型」の個体を擁するらしい。
  7. ケヤキヒトスジワタムシ…体色は黒褐色。翅のある個体のみ、白い綿状物質で覆われる。ケヤキとササ類の間で寄主転換する。天敵を撃退する「兵隊型」の個体を擁するらしい。
  8. ケヤキフシアブラムシ…体色は淡黄色。夏はササ・タケ類の根に移動し、秋になるとケヤキ類に戻る。
  9. ササコナフキツノアブラムシ…体色は暗褐色で、白い綿状物質に覆われ、コナカイガラムシ類に似る。天敵を撃退する「兵隊型」の個体を擁するらしい。
  10. ササキコブアブラムシ…体色は暗緑色~黄緑色。サクラの害虫だが、夏はヨモギに移動する。卵で越冬する。
  11. ナギナタコウジュワタムシ…体色は赤橙色で、白い綿状物質で覆われる。
  12. ナシハマキワタムシ…体色は緑色で、白い粉状物質で覆われる。卵で越冬する。
  13. ヌルデシロアブラムシ…体色は淡黄褐色~赤紫色。晩秋に有翅の雌が現れ、チョウチンゴケ類に移動し、そこで生まれた幼虫が越冬する。
    この虫が作る虫コブは「五倍子(ごばいし、ふし)」と呼ばれ、タンニンの含有量が特に多い。そのため染料などに用いられ、昔は、お歯黒の材料の一つとしても使われた。
  14. ヒガンザクラコブアブラムシ…体色は緑褐色。サクラの葉とヨモギ類の根の間で寄主転換する。卵で越冬する。
  15. ブドウネアブラムシ…体長0.5~1mmと小型。体色は黄褐色。(幼虫は淡黄色。)旧属名の「フィロキセラ」の名でも呼ばれる。北アメリカ原産で、1885年に日本に侵入した。19世紀のヨーロッパで猛威を振るったことで悪名高い。
    アブラムシの仲間は、雌虫だけで単為生殖する期間中、胎生(卵ではなく直接、子虫を生む)で殖える種類が多いが、この種類は単為生殖であっても、卵で殖えるらしい。春、ブドウの葉に寄生する「葉生型」のグループが現れ、その中から、根に寄生する「根生型」グループが分岐する性質がある。
  16. ボタンヅルワタムシ…体色は赤褐色で、白い綿状物質で覆われる。ケヤキとボタンヅルの間で寄主転換する。卵で越冬する。ボタンヅルに寄生するグループは、天敵を撃退する「兵隊型」の個体を擁するらしい。
  17. マンサクフクロフシアブラムシ…体色は淡黄褐色~黄緑色で、個体によっては、白い綿状物質で覆われる。マンサクとシラカバの間で寄主転換する。
  18. ミザクラコブアブラムシ…体色は緑褐色。サクラの葉とキクの根の間で寄主転換する。
  19. モンゼンイスアブラムシ…体色は暗褐色。秋~冬はカシ類やシイ類に移る。卵で越冬する。
  20. ヤノイスアブラムシ…体色は黄褐色~橙褐色。夏はコナラに移動する。卵で越冬する。
  21. ヨモギクダナシアブラムシ…体色は濃赤褐色で、白い粉状物質で覆われる。

主な被害

葉や枝、芽などに、淡黄色~黄緑色、黄白色、赤褐色などをした虫コブを形成し、内側から吸汁する。虫コブの形は、球形、袋状など。種類によっては、表面が毛状突起やトゲ状突起で覆われる。
季節によって寄生植物を変える種類では、虫コブを作るのは一次奇主(その年最初に寄生する植物)だけで、二次奇主(初夏頃から加害する植物)に対しては、普通に集団で吸汁する。

【補足事項】
  1. イスノタマフシアブラムシ…イスノキの枝に、球形の虫コブを作る。虫コブは黄緑色で、やわらかい。
  2. エゴノネコアシアブラムシ…エゴノキの芽に、バナナの房に似た大きな虫コブ(別名「エゴノネコアシ」)を作る。虫の体に触れると、刺されることがあるので注意。
  3. エドヒガンコブアブラムシ…サクラの葉の先端や縁を巻き込ませ、袋状の虫コブを作る。虫コブは紅色を帯びる。
  4. オカボノクロアブラムシ…春~初夏にかけて、ニレ類の葉に、球形や不整形で赤褐色~紅色をした、大きな虫コブを多数作る。
  5. カバハマキヒラタアブラムシ…マンサクの枝にサンゴ状の虫コブを作るほか、シラカバの葉を巻き込ませたり、萎縮させたりする。
  6. キツリフネコブアブラムシ…ツリフネソウ類の葉に袋状の虫コブを作る。
  7. クサボタンワタムシ…ケヤキの葉に虫コブを作ったり、クサボタンの葉を萎縮させたりする。
  8. ケヤキヒトスジワタムシ…ケヤキ類の葉に、小さな丸い虫コブを作る。オカボノクロアブラムシの被害に似るが、虫コブが緑色。
  9. ササキコブアブラムシ…サクラの葉の表に、黄白色~淡桃色をした、大きな袋状の虫コブを作る。
  10. ササコナフキツノアブラムシ…エゴノキの芽に、バナナの房状をした大きな虫コブを作る。この虫コブは、エゴノネコアシブラムシの虫コブに、よく似ている。
  11. ナギナタコウジュワタムシ…ナギナタコウジュの葉に、赤紫色の虫コブを作る。
  12. ナシハマキワタムシ…ナシの葉の縁を巻き込ませて虫コブにする。被害部分は肥厚し、紅色を帯びる。
  13. ヌルデシロアブラムシ…ヌルデの葉の基部に、やや角張った、複雑な形の虫コブを作る。虫コブは、夏以降、赤みを帯びる。
  14. ハナフシアブラムシ…ヌルデの枝先に、サンゴのように枝分かれした虫コブを作る。
  15. ヒガンザクラコブアブラムシ…サクラの葉の縁を巻き込ませ、袋状の虫コブを作る。
  16. ブドウネアブラムシ…春に発生する「葉生型」の個体は、葉裏に小さな虫コブを形成する。一方、葉生型から分派した「根生型」の個体は、根に長さ0.5~1cmの細長い虫コブを多数形成し、木を衰弱枯死させる。なお、ヨーロッパ系のブドウでは、葉生型は出現しないらしい。
  17. ホウセンカコブアブラムシ…葉の縁を表側にたたんだような虫コブを作る。虫コブは赤く変色する。
  18. ボタンヅルワタムシ…ケヤキの葉に丸い虫コブを作る。
  19. ミザクラコブアブラムシ…サクラの葉に袋状の虫コブを作る。
  20. モンゼンイスアブラムシ…イスノキの枝に、褐色の大きな虫コブを作る。虫コブは堅く、球形~紡錘形をしている。
  21. ヤノイスアブラムシ…イスノキの葉に丸い虫コブを作る。虫コブの色は黄緑色・淡紅色・赤紫色など。
  22. ヤノハナフシアブラムシ…ヌルデの葉の基部に、サンゴのように枝分かれした、紅色の虫コブを作る。
  23. ヨモギクダナシアブラムシ…ヨモギ類の葉の縁を変形させ、裏側に巻き込ませる。被害部分は赤くなる。

対策

見つけ次第、虫コブのある部分を除去する。


【薬剤】【散布・土壌混和】Mr.ジョーカー、アークリン、アースガーデンC、アースガーデンD、アースガーデンW、アーデント、アーリーセーフ、アクタラ、アクテリック、アタックワンAL、アディオン、アドマイヤー1、アファーム、あめんこ、アルバリン、アントム、ウララDF、園芸用キンチョールE、エンセダン、オルチオン、オルトラン、オルトランA、オルトランC、オルトランDX、オルトランMP、オレート、オンコル、ガーデンアースB、ガーデンガードAL、ガーデントップ、ガードベイトA、カダンA、カダンD、カダンV2、カダンセーフ、カルホス、キックバールAL、コルト、コロマイト、サイアノックス、サニーフィールド、サンクリスタル、サンヨールAL、ジェイエース、ジェネレート、スケルサイドA、スターガード、スミソン、スミチオン、スミナイス、スミフェート、ダブルアタックAL、ダントツ、チェス、ディプテレックス、テガールAL、テルスター、トクチオン、トレボン、粘着くん、パイベニカ、ブルースカイAL、ベジタメートAL、ベストガード、ベニカ、ベニカD、ベニカDX、ベニカX、ベニカグリーンV、ベニカマイルド、マラソン、ムシキントール、ムシラップ、モスピラン、モスピランワン、リーズン、レルダンなど。

【注意点】3~4月頃、虫コブができる前に散布しないと、効果が無い。

【補足事項】
  1. ブドウネアブラムシ(根生型)…土に、スプラサイド(劇物)、モスピランなどを施用する。葉生型のほうは駆除が容易。

予防策

周辺の雑草を除去する。通風を改善する。窒素肥料を控える。黄色に集まるので、黄色粘着トラップを吊るす。
銀色に光るものを忌避するので、銀色のポリフィルムなどでマルチングする。株とその周囲を、近紫外線反射フィルムで覆う。

【補足事項】
  1. エゴノネコアシアブラムシ…樹皮の隙間などで越冬するので、粗皮を削り落としておく。
  2. オカボノクロアブラムシ…樹皮の隙間などで、卵の状態で越冬するため、粗皮を削り落としておく。
  3. ケヤキフシアブラムシ…中間寄主となるササ・タケ類を近くに植えない。
  4. ブドウネアブラムシ(根生型)…可能なら、苗の購入時に、被害を受けていないか、よく確認する。確実な駆除法が無いため、抵抗性品種、または抵抗性台木に接ぎ木した苗を育てるのが一番。抵抗性の無い品種は、ある品種に接ぎ木するとよい。アメリカ系品種のブドウは、この虫に抵抗性を持つ(この虫自体がアメリカ産のため)が、ヨーロッパ系品種やアジア系品種には抵抗性が無い。
  5. ヤノイスアブラムシ…中間寄主となるコナラを近くに植えない。

【薬剤】可能なら、冬季に、石灰硫黄合剤、マシン油乳剤を散布。

主な被害植物

【草花・鉢花】ツリフネソウ類、ナギナタコウジュ、ホウセンカなど。

【観葉・多肉】ササ類、タケ類など。

【樹木・果樹】イスノキ、エゴノキ、エゾマツ、カシ類、ケヤキ、コナラ、サクラ、シラカバ、トウヒ、ニレ類、ヌルデ、ハクウンボク、ブドウ、マンサクなど。

主な種類

【ア行】アキニレヨスジワタムシ、イスノキアブラムシ、イスノフシアブラムシ、イスノタマフシアブラムシ、エゴノネコアシアブラムシ(エゴノキネコアシアブラムシ)、エゾマツカサアブラムシ、エドヒガンコブアブラムシ、オカボノクロアブラムシ、

【カ行】カバハマキヒラタアブラムシ、キツリフネコブアブラムシ、クサボタンワタムシ、ケヤキヒトスジワタムシ(ケヤキヒトスジタマワタムシ、ケヤキフシアブラムシ)、

【サ行】サクラフシアブラムシ、ササキコブアブラムシ(サクラフシアブラムシ)、ササコナフキツノアブラムシ、シイコムネアブラムシ、センニンソウワタムシ(センニンソウコワタムシ、ハンショウヅルコワタムシ、ヒメボタンヅルワタムシ)、

【タ行】タケノウチエゴアブラムシ、ツリフネソウコブアブラムシ、

【ナ行】ナギナタコウジュワタムシ、ナシハマキワタムシ(ナシワタムシ)、ヌルデイボフシアブラムシ、ヌルデシロアブラムシ(ヌルデノオオミミフシアブラムシ)、

【ハ行】ハクウンボクハナフシアブラムシ、ハナフシアブラムシ、ハルニレオオイガフシワタムシ、ヒガンザクラコブアブラムシ、ブドウネアブラムシ(フィロキセラ)、ホウセンカコブアブラムシ、ボタンヅルワタムシ(ハンショウヅルオオワタムシ)、

【マ行】マンサクイガフシワタムシ、マンサクイボフシアブラムシ(カバヒラタアブラムシ)、マンサクフクロフシアブラムシ、ミザクラコブアブラムシ、モンゼンイスアブラムシ、

【ヤ行】ヤノイスアブラムシ、ヤノハナフシアブラムシ、ヨモギクダナシアブラムシなど。