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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ドクガ類・マイマイガ類

毒ケムシの一種。(エルモンドクガ、ウチジロマイマイ、カシワマイマイ、キアシドクガ、クロモンドクガ、コシロモンドクガ、スギドクガ、スゲオオドクガ、ナチキシタドクガ、ノンネマイマイ、ヒメシロモンドクガ、マイマイガ、マメドクガ、ヤナギドクガ、リンゴドクガ等を除く。)
種類によって毒の強さは異なる。本当の意味での有毒種は意外に少ないが、一般に無毒とされる種類でも、人によっては、触れるとかぶれたり、体毛が刺さることがあり、注意を要する。

ドクガ科に属する。どの種類もきわめて雑食性なうえ、ひどく暴食するので、早期に駆除しないと丸坊主にされる。

発生時期

  1. ウチジロマイマイ…5月・7~8月
  2. エルモンドクガ…6~9月
  3. カシワマイマイ…4~7月
  4. キアシドクガ…4~5月
  5. キドクガ…6~10月
  6. クロモンドクガ…4~10月
  7. ゴマフリドクガ…4月・6~7月・9~11月
  8. スギドクガ…4~9月
  9. スゲオオドクガ…6~10月
  10. チャドクガ…4~6月・8~10月
  11. ドクガ…4~6月・9~10月
  12. ヒメシロモンドクガ…5~10月
  13. フタホシドクガ…7~10月
  14. ブチヒゲヤナギドクガ…5~10月(特に8月。)
  15. マイマイガ…4~6月
  16. マメドクガ…5~11月
  17. モンシロドクガ…4~9月
  18. ヤナギドクガ…4~7月
  19. リンゴドクガ…6~11月

被害箇所

葉、新芽など。

形態など

老熟幼虫で体長2~7cm。体色は、若齢幼虫のうちは地味だが、老熟幼虫になると、黄褐色や黒褐色、灰褐色、緑色、白色など、さまざまな色が入り混じって派手になる。体全体に、長い毛と、微細な毒針毛を持つ。種類によっては、胸部背面に、ブラシ状の太い毛束が並んでいたり、コブがあったりする。

【補足事項】
  1. ウチジロマイマイ…老熟幼虫で体長2~3cm。体色は、黄褐色~緑褐色地に、灰白色や黒の縦線が入る。頭部は黄褐色。幼虫もマユも、保護色の褐色をしており、見つけにくい。体毛はまばら。日中は葉の陰などに隠れている。卵で越冬するが、暖地では幼虫で越冬するらしい。年2回の発生。
  2. エルモンドクガ…老熟幼虫で体長3~3.5cm。体色は黒色で、全身に黒と黄白色の毛を持つ、地味なケムシ。年2回の発生。和名は「L紋毒蛾」で、成虫の白い翅にある、「L」字に似た黒い模様が由来。
  3. カシワマイマイ…老熟幼虫で体長5~5.5cm。体色は、灰白色地に黒褐色の斑紋があり、頭部は茶褐色。保護色のため、樹皮上にいると見つけにくい。黒く細長い毛束が頭部に一対、尾部に三対ある。枝や葉などに糸でぶら下がり、サナギになる。しばしば大発生する。卵で越冬する。年1回の発生。
  4. キアシドクガ…老熟幼虫で体長3~4cm。体色は黒く、背面に淡黄色の小斑紋が並ぶ。毒針毛は無い。
  5. キドクガ…老熟幼虫で体長3cm。体色は、黒地に赤橙色の縦線模様が入り、白い小斑紋が並ぶ。頭の基部から、妙に長い毛束が一本伸び出ている。幼虫で越冬する。年2回の発生。
  6. クロモンドクガ…老熟幼虫で体長2.5~3cm。体色は茶褐色で、胸部背面に黒いブラシ状毛束が二つある。頭の基部から、妙に長い毛束が一本伸び出ている。年2回の発生。
  7. ゴマフリドクガ…老熟幼虫で体長2.2~2.5cm。体色は黒く、背面と側面に黄色い縦線がある。側面には、さらに、赤橙色の斑紋が並ぶ。胸部背面にコブがある。
  8. スギドクガ…老熟幼虫で体長4~4.5cm。体色は緑~黄緑色。直線上に並ぶ白い斑紋と、背面のブラシ状毛束が目立つ。全身に長い毛がまばらに生えている。刺激を受けると体を丸め、背中にある黒い模様を露出する。幼虫で越冬する。年2回の発生。
  9. スゲオオドクガ…老熟幼虫で体長4.5cm。体色は淡褐色で、背面に黒褐色の縦線が一本入り、褐色のブラシ状毛束が並ぶ。尾部にも、長い褐色毛束がある。
  10. チャドクガ…老熟幼虫で体長2.5~3cm。体色は淡黄褐色~黒褐色。老熟幼虫は背面に黄褐色~橙褐色の縦線があり、そこに黒い斑紋が並ぶ。頭部も黄褐色。胸部背面はコブ状に盛り上がる。卵で越冬する。年2回の発生。ドクガと並んで危険な種類で、卵~幼虫~マユ~成虫と、一貫して毒刺毛を持ち、死骸や脱皮殻も危険。
  11. ドクガ…老熟幼虫で体長3~4cm。頭部と背面が黒く、体側面は橙色。体に多くのコブを多く持ち、特に胸部背面のコブが目立つ。全身に、白く長い毛がある。幼虫で越冬する。年1回の発生。チャドクガと同様、卵~幼虫~マユ~成虫と、一貫して毒刺毛があり、死骸や脱皮殻も危険。
  12. ヒメシロモンドクガ…老熟幼虫で体長3.5~4cm。派手な体色で、黒と黄橙色の体に、赤と白の小斑紋がある。また、「コツノケムシ」の別名通り、頭部の両脇と尾部に、尻尾のような、黒く長い毛束がある。背中にも、白い大きな毛束が四つ並ぶ。若齢幼虫は、黄褐色~暗褐色と地味。幼虫で越冬する。年2~3回の発生。
    老熟幼虫時代の日長が一定時間より短くなると、「短翅型(翅が極端に短い成虫)」と呼ばれる雌が現れ、越冬のための「休眠卵」を産む、変わった性質がある。短翅型の雌成虫は飛ぶことができない。
  13. ブチヒゲヤナギドクガ…老熟幼虫で体長3cm。体色は黒褐色。よく見ると黄褐色の縦線が二本ある。葉をつづり、その中でサナギになる。年2回の発生らしい。
  14. マイマイガ…老熟幼虫で体長5.5~7cm。体色は、黄褐色と黒色が複雑に入り混じり、頭部から尾部にかけて、青色のコブと赤褐色のコブがずらりと並ぶ。全身に長い毛を持つ。孵化幼虫は、糸を吐いてぶら下がり、風に乗って移動する。長い糸を吐いて枝からぶら下がるため、別名「ブランコケムシ」ともいう。老熟幼虫は、昼間は日陰でじっとしている。卵で越冬し、樹上でサナギになる。年1回の発生だが、周期的に大発生を繰り返す。
    なお、成虫の姿が雌雄で大きく異なり(「性的二形」という)、雌は大きな白っぽいガだが、雄はやや小さく、全体が茶褐色で、櫛状の触角が目立つ。
  15. マメドクガ…老熟幼虫で体長3.5~4cm。体色は黒褐色~黒色。背面と側面に、褐色や濃褐色をした、大きなブラシ状毛束が目立つ。頭部の両脇にも、黒く細長い毛束がある。幼虫で越冬する。年3回の発生。
  16. モンシロドクガ…老熟幼虫で体長2~2.5cm。体色は、黒色と黄橙色のツートンカラーで、白い小斑紋が並ぶ。全身が黒褐色の毒刺毛で覆われる。葉裏などにマユを作る。中齢幼虫~サナギで越冬する。年2~3回の発生。成虫も毒針毛を持つ。
  17. リンゴドクガ…老熟幼虫で体長3~3.5cm。体色は黄白色で、黄色のブラシ状毛束を持つ。全身を覆う体毛も黄色。尾部に赤い突起が目立つ。刺激を受けると体を丸め、背中の黒い斑紋を露出する。サナギで越冬する。年2回の発生。

主な被害

葉や新芽を多量に食害する。

有毒種の場合、脱皮の抜け殻や、死骸に残った毒針毛に触れてもかぶれる。幼虫だけでなく、成虫も毒針毛を持つ。チャドクガなどは、不用意に近づくと、抜けた毒針毛が風で飛んで来て、知らない間に刺されることがある。
毒針毛に触れた瞬間は気が付かず、少し時間をおいてから発疹などの症状が出る。もし触れてしまったら、下手にいじらず、患部を流水ですすぐか、粘着テープを貼り、そっと剥がすなどして毒針毛を取り除き、抗ヒスタミン系軟膏など(通常の虫さされ薬でよい)を塗布する。かきむしると毒針毛の付着範囲が広がり、さらに悪化する。
また、毒針毛の付着した可能性のある衣類は、手袋をはめて、他の物とは別に洗濯し、念入りにすすぐ。仕上げにアイロンをかければ、毒針毛のタンパク質が変質し、毒性が消える。

【補足事項】
  1. ウチジロマイマイ…針葉樹だけを加害する。葉先が食害されて褐色になるため、遠目にも目立つ。また、枝に、クモの巣状に糸を張り巡らし、そこにたくさんの糞が溜まるため、存在がわかりやすい。都市部の生け垣などに被害が多い。
  2. スギドクガ…針葉樹だけを加害する。しばしば大発生する。
  3. ブチヒゲヤナギドクガ…集団で暴食し、葉が無くなると、近くの別の木に移動することを繰り返す。被害は8月に集中する。

対策

見つけ次第捕殺する。若齢幼虫のうちは群れているので、見つけ次第、被害部分ごと虫を除去する。


【薬剤】【散布・土壌混和】Mr.ジョーカー、アークリン、アースガーデンD、アースガーデンW、アーデント、アクセル、アクタラ、アクテリック、アタックワンAL、アタブロン、アディオン、アファーム、アファームエクセラ、アプロードエース、アルバリン、エスマルクDF、園芸用キンチョールE、エンセダン、オルチオン、オルトラン、オルトランA、オルトランC、オルトランDX、オルトランMP、ガーデンアースB、ガーデンガードAL、ガーデントップ、ガードジェットBT、ガードベイトA、ガードワン、カウンター、カスケード、カダンA、カダンD、カダンV2、カルホス、キックバールAL、クオーク、ケムシカダンA、サイアノックス、サニーフィールド、サブリナ、サムコル、サンヨールAL、ジェイエース、ジェネレート、スターガード、スピノエース、スミソン、スミチオン、スミナイス、スミフェート、セレクトジン、ゼンターリ、ダイアジノンSL、ダイポール、ダブルアタックAL、ダントツ、チューンアップ、ツービットDF、ディアナSC、ディプテレックス、テガールAL、デミリン、テルスター、デルフィン、トアローCT、トクチオン、トルネード、トレボン、ノーモルト、バイオマックスDF、パイベニカ、バシレックス、ファルコン、ファイブスター、フェニックス、プレオ、プレバソン、フローバックDF、ベジタメートAL、ベストガード、ベニカ、ベニカD、ベニカDX、ベニカX、ベニカグリーンV、マッチ、マトリック、マラソン、モスピラン、リーズン、ロムダンなど。

【注意点】サクラの場合、新緑の時期に薬剤を散布すると、薬害が出やすいので注意。トアローなどのBT剤を使うと良い。

予防策

誘蛾灯を設置し、成虫を誘引捕殺する。種類によっては、株元の落ち葉や土中で越冬するため、きれいに掃除したり、土を軽く耕しておく。

【補足事項】
  1. チャドクガ…冬季、幹や太枝の下面や葉裏などにある卵塊を探して処分する。卵塊は、淡褐色の毛(成虫の体毛)で包まれ、よく目立つ。
  2. ドクガ…株元の枯れ葉の中などで幼虫が集団越冬するため、探して駆除する。
  3. ヒメシロモンドクガ…冬季、樹皮などに付いている卵塊を探して処分する。
  4. マイマイガ…冬季、被害樹の周りなどに付いている卵塊を探して処分する。卵塊は淡褐色をしたフェルト状の毛で包まれ、よく目立つ。

主な被害植物

【草花・鉢花】エンジェルストランペット、ゼラニウム、ベゴニア類、ミヤコワスレなど。

【観葉・多肉】アイビー、ヨシなど。

【樹木・果樹】アオギリ、アコウ、アカメガシワ、アベマキ、アンズ、イジュ、イチジク、イヌツゲ、ウツギ類、ウメ、エノキ、オウトウ、カイヅカイブキ、カイドウ、カエデ類、カキ、カシ類、カシワ、カリン、キイチゴ類、キヅタ、ギンネム、クスノキ、クヌギ、クリ、クルミ、クワ、ケヤキ、サクラ、サワラ、サツキ、ザクロ、サザンカ、サルスベリ、サワラ、サンゴジュ、シイ類、シデ類、シラカバ、スギ類、スモモ、チャ、ツツジ類、ツバキ類、ドウダンツツジ、ナシ、ナツツバキ、ナラ類、ニシキギ、ニセアカシア、ニレ類、ヌルデ、ハシバミ、ハコネウツギ、バラ、ハマボウ、ヒサカキ、ヒノキ、ヒバ類、ヒマラヤシーダ、ビャクシン類、フジ、ブナ、プラタナス、プルーン、ボケ、ポプラ、マツ類、マンサク、ミズキ類、モモ、ヤシャブシ、ヤナギ類、ヤマモモ、ライラック、リョウブ、リンゴなど。

【ハーブ・野菜】イタドリ、インゲン、ソラマメ、ゴボウ、ダイズ、ホップ、モロヘイヤなど。

【ラン】エビネなど。

主な種類

ウチジロマイマイ、エルモンドクガ、カシワマイマイ、キアシドクガ、キドクガ、クロモンドクガ、コシロモンドクガ、ゴマフリドクガ、スギドクガ、スゲオオドクガ、タイワンキドクガ、チャドクガ、ドクガ、ナチキシタドクガ、ノンネマイマイ、ヒメシロモンドクガ(コツノケムシ)、フタホシドクガ、ブチヒゲヤナギドクガ、マイマイガ(ブランコケムシ)、マメドクガ、モンシロドクガ(クワノキンケムシ)、ヤナギドクガ、リンゴドクガなど。