マツノザイセンチュウ
大規模なマツ枯れを発生させることで非常に有名。日本在来のセンチュウではなく、北アメリカからの侵入害虫とされる。そのため、日本やヨーロッパのマツ類は被害を受けるが、アメリカのマツ類(大王松など)は抵抗性を持つ。
日本のマツ類を確実に枯死させる大害虫でありながら、存在が知られるようになったのは、比較的最近のことである。
ひとたびマツの幹内に侵入すると駆除しにくいため、侵入の予防、すなわち、媒介虫であるマツノマダラカミキリを遠ざけることに重点が置かれる。そのため、景勝地などでは、どうしても薬剤の頻繁な散布(特に空中散布)が欠かせず、問題となっている。
日本にはもともと、在来種のニセマツノザイセンチュウが存在する。こちらは在来の害虫だけに、日本のマツに激烈な枯死被害を出すことは無い。マツノマダラカミキリの本来の共生相手は、こちらであるらしい。
発生時期
8~10月
被害箇所
全体。
形態など
体長0.6~1mm。ごく小さなミミズ状で、体色は半透明。
マツノマダラカミキリ(=マツクイムシ)と共生関係にあり、カミキリの羽化成虫がマツの幹から脱出する際に、体にくっ付いて、別のマツまで運んでもらう。一方、このセンチュウの被害を受けて弱ったマツはヤニが出なくなり、マツノマダラカミキリの好適な餌となる。
主な被害
5~7月頃、マツの幹から脱出したマツノマダラカミキリ成虫は、別のマツに飛来し、新梢の樹皮を食害する。(この行動を「後食」という。)このとき、樹皮の傷口からマツノザイセンチュウが侵入する。
侵入したセンチュウは、セルロース分解酵素である「セラーゼ」を出し、樹脂細胞(エピセリウム細胞)や形成層細胞を破壊しながら、木全体に拡散する。また同時に、木がセンチュウに抵抗するために出したテルペン類の揮発により、道管(厳密には仮道管)内で「キャビテーション」という現象が起こって、水分の通りが妨げられ、木は次第に萎れていく。
被害を受けたマツはヤニが出なくなる。8~9月頃には急激に葉が赤くなり、数ヵ月以内に衰弱・枯死する。大気汚染のひどい地域に発生が多い傾向がある。
被害が多いのは、主に景勝地や松林、山林などで、都市部にあるマツに寄生することは少ない。が、万一、マツノマダラカミキリの成虫を見かけたら、最大級の警戒が必要となる。
対策
被害株を早急に切り倒し、適切に処分する。枯死した木をそのまま残してはいけない。
【薬剤】【幹内に注入】グリンガード・エイト、センチュリーエースなど。
【注意点】薬剤での駆除は、あまり幹が太っていない、若い木に限られる。が、劇的な効果はあまり期待しない。
予防策
5~7月頃に飛来するマツノマダラカミキリの成虫を徹底的に駆除する。抵抗性品種を栽培する。木を弱らせない。近くに枯死したマツ類があれば、被害を受けているかに関わらず、必ず切り倒して処分する。
【薬剤】【散布】ガットキラー、ガットサイドS、サッチューコートS、スミチオン、スミパイン、トクチオン、バークサイドF、パインサイドS、マツグリーンなど。
【注意点】これらの薬剤は、媒介虫であるマツノマダラカミキリの成虫の飛来・食害・産卵を防ぐ目的で使用する。
主な被害植物
【樹木・果樹】マツ類(特に、アカマツとクロマツ)。