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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ヨトウムシ類

ヤガ科に属する。老熟幼虫が主に夜間に食害することから、漢字で「夜盗虫」と書く。昼間は、株元の土中で丸くなっていることが多い。葉がひどく食害されているのに虫の姿が見つからないときは、これの発生を疑ったほうがよい。

※同じ仲間のアカマダラヨトウ、イネヨトウ、ハジマヨトウ、植物体の内部に食入するため、「シンクイムシ」の一種として扱っている。また、集団で葉に食入するハマオモトヨトウは、「エカキムシ」の一種とした。

発生時期

4~11月

【補足事項】
  1. アワヨトウ…4~12月
  2. オオシマカラスヨトウ…4~5月
  3. シロイチモジヨトウ…7~11月
  4. シロシタヨトウ…4~6月・9~11月
  5. スジキリヨトウ…5~10月
  6. ハスモンヨトウ…7~12月
  7. ヨトウガ…4~6月・9~11月

被害箇所

葉、つぼみ、花、芽、果実など。

形態など

老熟幼虫で体長3~4cm程度。体色は黄灰色~黒褐色、灰白色など。単独で生活する。
卵塊は、主に葉裏に生み付けられる。若齢幼虫は体長1~2cm程度で、体色は淡緑色~黄褐色。集団で生活することが多く、昼間も食害している。

【補足事項】
  1. アワヨトウ…老熟幼虫で体長3.5~4cm。体色は淡褐色~茶褐色。全体的に濃色の縦線がうっすら見えており、特に、体側面の白っぽい線が目立つ。寒さに弱いらしい。年4~5回の発生。
  2. オオシマカラスヨトウ…老熟幼虫で体長4~4.5cm。体色は黄緑色で、体側面に細い黄色の線が入る。尾部にとがった突起を持つ。サナギになる際は、葉を糸でつづってマユを作る。ヨトウムシというより、ヤママユガの仲間に似る。また、他のヨトウムシ類と違って集団を作らず、多発することもない。卵で越冬する。年1回の発生。
  3. シロイチモジヨトウ…老熟幼虫で体長3cm程度。体色は淡褐色~灰褐色。二~三齢幼虫までは集団生活をする。ヨトウガに似るが、葉裏に生み付けられる卵塊が、白っぽい毛で覆われるのが特徴。
  4. シロシタヨトウ…老熟幼虫で体長4.5cm。体色は黄褐色~茶褐色。体側面に、黒・白・黄色で彩られた細い線が一本入る。サナギで越冬する。年2回の発生。
  5. スジキリヨトウ…老熟幼虫で体長3cm。体色は淡褐色。背面に、黒褐色の小斑紋が二列並ぶ。樹上で孵化し、芝生に降りてくる。若齢幼虫は黄緑色。年3~4回の発生。
  6. ハスモンヨトウ…老熟幼虫で体長3.5~4cm。体色は灰色~茶褐色で、黒い小斑紋が点々と並ぶ。個体によって、体色や模様の差が大きい。葉裏に生み付けられる卵塊を覆う毛は黄色っぽい。若齢幼虫は、刺激されると集団で糸を吐いてぶら下がり、逃亡する。二~三齢幼虫までは集団生活をする。寒さに弱い。幼虫で越冬する。年1~2回の発生。
  7. ヨトウガ…老熟幼虫で体長4cm。体色は個体差が大きく、灰褐色、灰黒色、淡緑色、黄褐色など。全身に黒い小斑点がある。若齢幼虫は淡緑色。二齢幼虫までは集団生活をする。シロイチモジヨトウと似るが、こちらは、葉裏に生み付けられる卵塊に毛が無い。サナギで越冬する。年2回の発生。

主な被害

若齢幼虫は葉肉だけを浅く食害するため、被害部分が白っぽく透けて見える。
老熟幼虫になると、茎葉や花を多量に食害する。時には、地上部がほとんど無くなることがある。また、トウモロコシやネギ類の場合は、シンクイムシのように、葉筒や葉鞘の内部に入り込み、内側から食害することがある。

【補足事項】
  1. アヤナミツマキリヨトウ、ムラサキアカガネヨトウ…いずれもシダ類を加害する、特異な種。
  2. オオシマカラスヨトウ…新梢を食いちぎるため、「シンキリアオムシ」とも呼ばれる。
  3. コモクメヨトウ…オトギリソウだけを加害する。
  4. スジキリヨトウ…芝生の中の立ち木を中心として、円状にシバを食害する。

対策

見つけ次第捕殺する。卵の時期や発生初期なら群れているので、被害部分ごと虫を除去する。


【薬剤】【散布・土壌混和】Mr.ジョーカー、アークリン、アースガーデンD、アースガーデンW、アーデント、アクセル、アクタラ、アクテリック、アタックワンAL、アタブロン、アディオン、アファーム、アファームエクセラ、アプロードエース、アルバリン、エスマルクDF、園芸用キンチョールE、エンセダン、エンバーMC、オルチオン、オルトラン、オルトランA、オルトランC、オルトランDX、オルトランMP、ガーデンアースB、ガーデンガードAL、ガーデントップ、ガードジェットBT、ガードベイトA、ガードワン、カウンター、カスケード、カダンA、カダンD、カダンV2、カルホス、カルモック、キックバールAL、クオーク、ケムシカダンA、サイアノックス、サニーフィールド、サブリナ、サムコル、サンヨールAL、ジェイエース、ジェネレート、ショットイン、スターガード、スピノエース、スミソン、スミチオン、スミナイス、スミフェート、セレクトジン、ゼンターリ、ダイアジノンSL、ダイポール、ダブルアタックAL、ダントツ、チューンアップ、ツービットDF、ディアナSC、ディプテレックス、テガールAL、デミリン、テルスター、デルフィン、トアローCT、トクチオン、トルネード、トレボン、ノーモルト、バイオマックスDF、パイベニカ、バシレックス、ファルコン、ファイブスター、フェニックス、プレオ、プレバソン、フローバックDF、ベジタメートAL、ベストガード、ベニカ、ベニカD、ベニカDX、ベニカX、ベニカグリーンV、マッチ、マトリック、マラソン、モスピラン、リーズン、ロムダンなど。

イチゴなど、草丈の低い植物の場合、ダイアジノン、デナポン5%ベイト、ネキリトンKなども有効。

【注意点】薬剤に対してやや耐性を持つ。耐性の低い若齢幼虫のうちに駆除したい。
シロイチモジヨトウ、ハスモンヨトウ、ヨトウガには、成虫を誘引する合成フェロモン剤があるが、家庭園芸では一般的でない。

予防策

無用な電照を行わない。誘蛾灯を設置し、成虫を誘引捕殺する。砂糖水や蜂蜜にも誘引されるため、それらを用いた罠を作り、成虫を誘引捕殺する。
付近の雑草を除去する。窒素肥料を控える。可能なら寒冷紗などで覆いを作り、その中で栽培する。夜間に黄色蛍光灯を点灯し、成虫の活動を鈍らせる。

【補足事項】
  1. スジキリヨトウ…発生期に適宜、シバ刈りをする。
  2. ヨトウガ…紫外線蛍光灯を設置して成虫を誘引し、捕殺する。

主な被害植物

【草花・鉢花】アイリス類、アサガオ、アスター、アマリリス、アルストロメリア、インパチエンス、ウチョウラン、エノコログサ、エビネ、エリゲロン、エンジェルストランペット、オキザリス、オダマキ、オトギリソウ、カーネーション、ガーベラ、カスミソウ、カンナ、キク、キキョウ、キンギョソウ、キンセンカ、グラジオラス、クレマチス、ケイトウ、コスモス、サクラソウ、サルビア類、シクラメン、シャジン類、スイートアリッサム、スイートピー、スターチス、ストック、ゼラニウム、ダリア、デージー、トルコキキョウ、ナデシコ類、ハナショウブ、ハボタン、パンジー、ビオラ、ヒマワリ、ヒャクニチソウ、プリムラ類、フロックス、ペチュニア、マーガレット、マリーゴールド、ミヤコワスレ、ユリ、ルピナス、ワタなど。

【観葉・多肉】アジアンタム、アスプレニウム、コリウス、シダ類、シバ類、パイナップルなど。

【樹木・果樹】アベマキ、エノキ、オニグルミ、カキ、カシ類、カンキツ類、キイチゴ類、クヌギ、グミ、クワ、ケヤキ、コナラ、サクラ、ザクロ、チャ、ニレ類、バラ、ブドウ、ヤナギ類、ライラック、リンゴなど。

【ハーブ・野菜】アカザ、アスパラガス、アルファルファ、アワ、イタドリ、イチゴ、イネ、インゲン、エダマメ、エンダイブ、エンドウ、オクラ、カブ、カリフラワー、キビ、キャベツ、キュウリ、ケール、コールラビー、ゴボウ、コマツナ、サツマイモ、サトイモ、サトウキビ、シソ、ジャガイモ、シュンギク、ショウガ、スイカ、スベリヒユ、セロリ、ソバ、ソラマメ、ダイコン、ダイズ、タマネギ、チコリ、チンゲンサイ、漬け菜類、トウモロコシ、トマト、ナス、ニガウリ、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ類、ハクサイ、ハコベ、バジル、パセリ、ビーツ、ピーマン、ヒエ、フキ、フダンソウ、ブロッコリー、ホウレンソウ、ホースラディッシュ、ボリジ、マロウ、ミツバ、ミョウガ、ミント類、ムギ、モロヘイヤ、ヤマイモ、ラッカセイ、ラベンダー、レタス類、レモンバーム、レンコン、ロケットなど。

【ラン】カトレア類、スタンホペアなど。

主な種類

アヤナミツマキリヨトウ、アワヨトウ、オオウスヅマカラスヨトウ、オオシマカラスヨトウ(シンキリアオムシ)、ギシギシヨトウ、コモクメヨトウ、シマカラスヨトウ、シロイチモジヨトウ、シロシタヨトウ、シロスジアオヨトウ、スジキリヨトウ、ハスモンヨトウ、フサクビヨトウ、ホソバハガタヨトウ、ムラサキアカガネヨトウ、ヨトウガなど。