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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ゾウムシの仲間(食入する種類)・チョッキリ類

ゾウムシ類は種類が多く、オサゾウムシ科、カツオゾウムシ科、ゾウムシ科、マメゾウムシ科、ミツギリゾウムシ科など、さまざまな科に渡る。チョッキリ類はオトシブミ科に属する。
ゾウムシ類は、口吻がゾウの鼻のように長いことから、別名「ゾウビムシ」とも呼ばれる。アシナガゾウムシの仲間の雄成虫は、前脚が異様に太くて長いのが特徴。(雌成虫の脚は普通。)
また、シギゾウムシの仲間の成虫は、口吻がかなり細長く、目立つ。名前は、クチバシの長い水鳥「シギ(鴫)」に由来する。チョッキリ類は、雌成虫が新梢をかみ切って萎れさせるため、この名が付いた。

とても臆病で、種類によっては、危険を感じると脚を縮めて落下し、死んだふりをする。

発生時期

3~10月(極暖地に生息する種類は一年中。)

【補足事項】
  1. ウメチョッキリゾウムシ…4~5月
  2. エンドウゾウムシ…5~7月
  3. オジロアシナガゾウムシ…4~8月
  4. カシアシナガゾウムシ…5~8月
  5. クリシギゾウムシ…8~10月
  6. クロケシツブチョッキリ…4~8月
  7. シロオビアカアシナガゾウムシ…5~8月
  8. ソラマメゾウムシ…4~8月
  9. モモチョッキリゾウムシ…5~8月

被害箇所

果実、幼果、豆サヤ、新梢、茎、芽、新葉、果梗、花、つぼみ、バルブ、根、地下のイモなど。

形態

【成虫の形態】甲虫類の一種。体長は種類によって異なり、2~13mm程度。体色は、黒褐色や淡褐色、暗紫色、赤銅色など。体表面に微毛を持つ種類が多い。

【補足事項】
  1. アズキゾウムシ…体長3mm前後。体色は赤褐色~茶褐色で、黒褐色の斑紋が複雑に入る。
  2. アリモドキゾウムシ…体長6~7mm。体色は黒く、胸部と脚が赤褐色。名前の通り、アリを思わせる体型。「侵略的外来種ワースト100」の一つ。極暖地に生息する。サツマイモの重要害虫として有名。
  3. イチゴハナゾウムシ…体長3mm。体色は灰褐色~黒褐色、赤褐色など。翅の後方に黒い斑紋が一対ある。関東以北に多い。成虫で越冬する。年1回の発生。
  4. イモゾウムシ…体長4mm前後。体色は灰褐色~暗茶褐色で、翅の後方に白い横線が入る。全身に短い毛がある。アリモドキゾウムシと同様、「侵略的外来種ワースト100」の一つで、極暖地に生息する。
  5. ウメチョッキリゾウムシ…体長3~4mm。体色は青紫色。土中でサナギになる。年1回の発生。
  6. エンドウゾウムシ…体長4~5mm。体色は黒褐色。アメリカからの侵入害虫らしい。年1回の発生。
  7. オオランヒメゾウムシ…体長5mm程度。体色は黒褐色~灰褐色。2006年に沖縄で初確認された、東南アジアからの侵入害虫。
  8. オジロアシナガゾウムシ…体長10mm程度。体色は淡灰白色と黒色の二色で、くっきりと色分けされている。丸っこい体型で、動作は緩慢。
  9. クロケシツブチョッキリ…体長2.5~4mm。体色は黒褐色。暖地に多い。バラによく発生するため、別名「バラゾウムシ」という。年2~3回の発生。
  10. シロスジオサゾウムシ…東南アジアからの侵入害虫で、日本では1976年に沖縄で初確認された。極暖地にのみ生息する。
  11. ソラマメゾウムシ…体長5mm。体色は灰黒色。年に1度の発生。
  12. モモチョッキリゾウムシ…体長7~10mm。体色は赤銅色で、金属光沢がある。晴れた日の日中に活動する。老熟幼虫が土中で越冬する。年1回の発生。

【幼虫の形態】老熟幼虫で体長5~10mm。色は、乳白色や黄緑色などで、頭部は褐色~暗褐色。体は丸みを帯び、脚は無い。老熟すると土中に潜り、サナギになる。

【補足事項】
  1. カシアシナガゾウムシ…白いウジムシ状。カシ類の新梢内で成虫となり、大きな孔をあけて脱出する。年1回の発生。
  2. クロケシツブチョッキリ、モモチョッキリゾウムシ…枯れた被害部分とともに地上に落ち、土中でサナギになって越冬する。

主な被害

【成虫の被害】新梢、葉、芽、花、果実などを浅く食害したり、穿孔して産卵したりする。被害部分は枯れ、果実は落果する。

【補足事項】
  1. イチゴハナゾウムシ…イチゴのつぼみや若い果実を食害するため、収穫量にひびく。花弁や若い葉も食害する。
  2. ウメチョッキリゾウムシ…新梢だけでなく、果実にも産卵する。被害果は落果する。
  3. オオランヒメゾウムシ…ランの茎葉や花、根などを食害するほか、バルブや生長点付近に産卵する。
  4. カシアシナガゾウムシ…カシ類の新梢の先端に孔をあけて産卵する。
  5. クロケシツブチョッキリ…新梢やつぼみの基部に穿孔・産卵する。その結果、枝枯れし、花が咲かなくなる。
  6. シロオビアカアシナガゾウムシ…アジサイ類の新梢を穿孔し、萎れさせる。
  7. シロスジオサゾウムシ…ヤシ類の新葉や生長点を食害する。被害がひどいと枯死する。
  8. ヒメシロコブゾウムシ…ウコギ科薬草の葉を食害する他、葉先を折り曲げて産卵する。
  9. モモチョッキリゾウムシ…果梗や結果枝をかみ切って萎れさせ、果実に穴を開けて産卵する。衰弱した木ほどよく発生する。

【幼虫の被害】新梢や芽、花、果実、根など、様々な部位に食入する。食入孔から、糞やヤニが出たりする。食入孔より上部の枝葉は萎れて枯れ、果実は落果する。虫の種類によっては、被害部分がコブ状に膨らむことがある。なお、一カ所に食入している幼虫は一匹とは限らず、複数いる場合もある。
イモや果実、マメが食入を受けた場合、気付かずに収穫した後も、被害果の中で生長を続けていることがあり、注意を要する。

【補足事項】
  1. アズキゾウムシ…アズキ類のマメに食入し、食い荒らす。収穫後の貯蔵中にも、被害は進行する。
  2. アリモドキゾウムシ…サツマイモなど、ヒルガオ科植物のイモを加害する。
  3. ウメチョッキリゾウムシ…被害を受けた新梢の枯れ方が枝枯病にそっくりなので注意。新鮮な枯れ枝にカビが付いてなければ、この虫の害である可能性が高い。
  4. イモゾウムシ…アリモドキゾウムシと同様、ヒルガオ科植物のイモを加害する。
  5. エンドウゾウムシ…マメ類のマメに食入する。ただし、加害するのは生のマメだけで、乾燥マメは好まない。
  6. オオランヒメゾウムシ…ランのバルブに食入する。被害株は枯死することもある。
  7. オジロアシナガゾウムシ…クズの茎に食入する。被害部分は虫こぶ状にふくらむ。
  8. カシアシナガゾウムシ…カシ類の新梢の内部を食害する。被害部分は紡錘状に膨れる。成虫の羽化後、被害枝は枯れる。
  9. カツオゾウムシ…タデ科植物のうち、イタドリやスイバの仲間を好む。
  10. クリシギゾウムシ…クリの果実の内部を食害する。成虫はイガの外から直接、果肉内に産卵するため、収穫後も目立った傷や食入孔がなく、発見しにくい。晩秋に脱出し、土中に潜るが、成虫になって出てくるのは2~3年後。そのため、2~3年に一度の発生となる。
  11. クロケシツブチョッキリ…成虫が枯らした新梢やつぼみの内部を食べて成長する。バラの重要害虫として有名だが、初夏以降は、サルスベリも加害する。
  12. シロスジオサゾウムシ…サトウキビの茎に食入し、枯死させる。
  13. ソラマメゾウムシ…名前の通り、ソラマメのマメに食入する。
  14. ハスジゾウムシ、ハスジカツオゾウムシ…いずれもキク科植物の根や茎に食入し、枯死させる。
  15. ヒメシロコブゾウムシ…ウコギ科薬草の根に食入し、枯死させる。
  16. モモチョッキリゾウムシ…成虫が枯死させた新梢や果実の内部を食べて生長する。老熟すると脱出し、土に潜って越冬する。

対策

【成虫の対策】見つけ次第捕殺する。種類によっては、木を揺すると、脚を縮めて落ちてくるので、素早く集めて捕殺する。

【成虫の薬剤】【散布】Mr.ジョーカー、アークリン、アーデント、アクタラ、アクテリック、アタブロン、アディオン、アドマイヤー1、アプロード、アルバリン、アントム、エンセダン、エンバーMC、オルチオン、オルトラン、オルトランA、オルトランC、オルトランMP、オンコル、ガーデンアースB、ガードベイトA、カウンター、カスケード、カダンAP、カダンD、カルホス、グランドオンコル、サイアノックス、サニーフィールド、ジェイエース、ジェネレート、ショットイン、スケルサイドA、スターガード、スタークル、スミソン、スミチオン、スミナイス、スミフェート、ダイアジノンSL、ダントツ、ディプテレックス、テルスター、トクチオン、トレボン、ノーモルト、パーマチオン、パイベニカ、ピレオール、ベジタメートAL、ベストガード、ベニカ、ベニカD、ベニカX、マッチ、マラソン、マルチガード、モスピランなど。


【幼虫の対策】見つけ次第、被害部分ごと除去する。枯れ落ちた枝や果実の中にも虫がいることがあるので、放置しない。


【幼虫の薬剤】【散布】成虫の薬剤と同じ。
土中で加害する種類には、スケルサイドA、ダーズバン、ダイアジノン、ダイアジノンSL、ネキリトン、ブイハンター、ホームガーデン、ボルテージ、ラグビーMCなども有効。

【注意点】幼虫は、植物の内部にいるため、薬剤防除しにくい。

予防策

周囲の雑草を除去する。土中で越冬するので、周囲の土を軽く耕して掘り起こし、凍死させる。果実に食入する種類では、幼果に袋かけをし、産卵を防ぐ。
成虫は銀色に光るものを忌避するので、銀色ポリフィルムなどでマルチングする。

【補足事項】
  1. クリシギゾウムシ…被害の大きい晩生系品種を避け、早生品種を栽培する。
  2. モモチョッキリゾウムシ…幼果に袋かけをし、産卵を防ぐ。冬季、株の周囲の土を軽く掘り起こし、越冬幼虫を殺す。

主な被害植物

【草花・鉢花】アザミ、カーネーション、キク、シラン、ナデシコ類など。

【樹木・果樹】アジサイ、アンズ、ウメ、カシ類、クヌギ、クリ、サクラ、サルスベリ、スモモ、タラノキ、ナシ、バラ、ビワ、マルメロ、モモ、リンゴなど。

【ハーブ・野菜】アズキ、イタドリ、イチゴ、ウド、エンサイ、エンドウ、クズ、コウライニンジン、ゴボウ、ササゲ、サツマイモ、サトウキビ、スイバ、ソラマメ、タデ類、ヨモギ、ラッカセイなど。

【ラン】アスコセントラム、コクレアンテス、シンビジウム、スパソグロッティス、デンファレ、パフィオペディルム、バンダなど。

主な種類

アズキゾウムシ、アリモドキゾウムシ、イチゴハナゾウムシ、イモゾウムシ、ウメチョッキリゾウムシ、エンドウゾウムシ、オオランヒメゾウムシ、オジロアシナガゾウムシ、カシアシナガゾウムシ、カツオゾウムシ、クヌギシギゾウムシ、クリシギゾウムシ、クロケシツブチョッキリ(バラゾウムシ)、シロオビアカアシナガゾウムシ、シロスジオサゾウムシ、ソラマメゾウムシ、ハスジゾウムシ、ハスジカツオゾウムシ、ヒメシロコブゾウムシ、モモチョッキリゾウムシなど。