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素人園芸解説 -私はこう育てる-

アザミウマ(スリップス)類

アザミウマ科・クダアザミウマ科に属する。晴天の昼間は行動がすばしっこく、危険を感じると飛び跳ねて逃げる。高温・乾燥条件を好むが、極端な高温は苦手で、酷暑期は数が減る。
最も厄介なのは、ミカンキイロアザミウマとミナミキイロアザミウマの2種類で、これらは薬剤や粘着トラップなどの効果が低く、防除が難しい。
この仲間は全て害虫と思われがちだが、中には、他のアザミウマやハダニを捕食する有益な種類もある。

※クダアザミウマの仲間は、名前の通り、葉を管状に巻いて巣を作る。この巣は「虫コブ」の一種とされるが、「ハマキムシ」や「虫コブを作る害虫」には含めず、ここで取り上げた。

発生時期

3~11月(暖地では、冬季も発生が続くことがある。)

【補足事項】
  1. カキクダアザミウマ…3~7月
  2. クリバネアザミウマ…5~9月
  3. チャノキイロアザミウマ…5~10月
  4. ネギアザミウマ…5~11月
  5. ヒラズハナアザミウマ…5~10月
  6. ビワハナアザミウマ…5~10月
  7. ミナミキイロアザミウマ…5~11月

被害箇所

茎、葉、花、つぼみ、果実など。

形態

成虫で体長0.8~3mm。体色は、淡黄色や黒色、橙色、暗褐色、赤褐色、灰褐色など。体形は細長く、翅が四枚ある。
この仲間は不完全変態だが、幼虫と成虫の間に、全く摂食しない、サナギのような形態がある。(実際、「サナギ」と呼ばれることがあるらしい。)
代表種ともいえるキイロアザミウマの仲間は、土中でサナギになるが、前蛹とサナギ、二つの形態がある。また、サナギ形態の時も歩行が可能。(ただし、摂食はしない。)

なお、幼虫は、成虫とほぼ同じ姿だが翅が無く、体色は淡黄色。サナギになるときは地表に降りる。(サナギになる際に、紫外線を必要とするらしい。)被害を受けた葉などをよく見ると、ごく小さな、黒いヤニ状の点々が見えるが、その下に潜んでいることが多い。

【補足事項】
  1. カキクダアザミウマ…体長2mmと大型で、体色は黒色。幼虫は淡黄色。年1回の発生。
  2. グラジオラスアザミウマ…体長1.4~1.9mm。侵入種で、日本では1985~1986年に茨城・静岡で初確認された。
  3. クロトンアザミウマ…体長1.5mm前後。体色は暗褐色~黒色。
  4. チャノキイロアザミウマ…体長0.9~1.2mm。体色は淡黄色で、背面中央に黒い縦線が一本見える。
  5. ネギアザミウマ…体長1.3mm。体色は黄色で、秋になると黒褐色に変わる。普段は、ほぼ雌しかおらず、単為生殖によって殖える。成虫で越冬する。
  6. ビワハナアザミウマ…体長1.4~1.6mm。体色は橙黄色。
  7. ミカンキイロアザミウマ…体長1.3~1.7mm。体色は黄色~茶褐色で、背面中央に黒い縦線が一本見える。日本では1990年に埼玉・千葉で初確認された。
  8. ミナミキイロアザミウマ…体長1.2~1.4mm。体色は黄色で、背面中央に黒い縦線が一本見える。東南アジアに産する暖地性の虫で、寒冷地には少ない。極暖地や加温設備内でしか越冬できない。日本では1978年に宮崎・熊本で初確認された。
  9. ユリノクダアザミウマ…一生を土の中で過ごす、かなり特異な種類。

主な被害

主に、新葉や花、つぼみ、果実などに寄生し、傷を付けながら吸汁する。被害部分は、「かすり状に色が抜ける」「萎縮・変形する」「コルク状になって硬くなる」「ケロイド状になる」「褐色の油をかけたような光沢が出る」などの症状が現れる。
ホコリダニ類の加害と症状が似るが、アザミウマは、虫の姿や糞が肉眼で見えるため区別できる。(ホコリダニは、肉眼ではほとんど見えない。)
ウイルス病を媒介するため、必ず早期に駆除する。(媒介能力を持つのは幼虫だけで、成虫には無いらしい。)茎葉に現れる被害症状は、あたかもウイルス病の症状のように見えるので、しっかり区別する。

【補足事項】

  1. …葉脈だけ、あるいは葉脈と葉脈の間が、褐色~黒褐色に変色することがある。また、果菜類では、葉裏が銀色っぽい光沢を持つことがある。(「シルバリング」という。)
    クダアザミウマの仲間は、名前の通り、葉を縁から縮れさせて葉巻状にし、その中に潜むことが多い。そのため、外観からも被害がわかりやすい。
  2. 果実…ヘタの周囲の果皮に、淡褐色~黒色をした傷が輪状に現れたり、果皮に褐色のカサブタができ、果肉までコルク化したりする。果皮の一部だけが着色しないこともある。イネでは、モミの表面に黒い点ができる。イチジクでは、果実に侵入し、内部を腐らせたりする。
  3. つぼみ…花弁の薄い花が被害を受けると、花弁同士がくっ付き合い、正常に開花しなくなる。
  4. …ハナアザミウマの仲間は、名前の通り、花によく寄生し、花弁に黒いシミ状の汚れを発生させる。
    なお、花の一部が変色したり、色が抜けたり、全体的に汚らしく咲いたりするのは、ミカンキイロアザミウマの被害であることが多い。
【補足事項その2】
  1. カキクダアザミウマ…カキの葉裏から吸汁し、葉を縁から縦(主脈と平行)に巻き込ませる。被害葉は黒褐変し、早期に落葉する。幼果が被害を受けると、果皮に多数の小斑点が連なって現れ、その部分がコルク状になる。
  2. クスクダアザミウマ…クスの若枝や葉裏に寄生する。どちらかというと幼木を好む。炭疽病を誘発する。
  3. クロトンアザミウマ…被害葉は褐変して巻き込む。
  4. ネギアザミウマ…高温乾燥条件で多発する。
  5. ミカンキイロアザミウマ…葉や花の表面を加害する。特に花を好む。
  6. ミナミキイロアザミウマ…発生初期は、葉裏の葉脈に沿って加害する。ナスの場合、しばしば果実のヘタの隙間に寄生し、果実の見た目を悪くする。
  7. ユリキイロアザミウマ・ユリノクダアザミウマ…ユリの球根の鱗片の隙間で集団生活し、吸汁する。被害球根は鱗片が枯れて剥がれやすくなる。やがて、球根全体が褐色に変色する。地上部はいじけて育たない。
  8. ワサビクダアザミウマ…普段はワサビの葉裏に寄生する。暑さに弱いため、夏のみ地下に潜り、根を加害する。

対策

見つけ次第、虫のいる被害部分を除去する。

【補足事項】
  1. カキクダアザミウマ…春~初夏に、丸まった葉を見つけ次第、処分しておけば、果実が被害にあわないらしい。

【薬剤】【散布・土壌混和】Mr.ジョーカー、アークリン、アーデント、アクタラ、アクテリック、アタブロン、アディオン、アドマイヤー1、アファーム、アファームエクセラ、アプロード、アルバリン、アントム、ウララDF、エンセダン、オルチオン、オルトラン、オルトランA、オルトランC、オルトランMP、オレート液剤、オンコル、カウンター、カスケード、カルホス、コルト、サイアノックス、ジェイエース、ジェネレート、除虫菊、スケルサイドA、スピノエース、スミソン、スミチオン、スミナイス、スミフェート、ダイアジノン、ダントツ、ディアナSC、ディプテレックス、デミリン、テルスター、トクチオン、トレボン、粘着くん、バイスロイド、パダン、ピレオール、ブルースカイAL、プレオ、ベストガード、ベニカ、ベニカD、マイトコーネ、マッチ、マラソン、ミルベノック、モスピラン、ラノー、リーズン、ルーバン、レターデン、レルダン、ロムダンなど。

イチゴなど、草丈の低い植物の場合、ダイアジノン、ネマトリン、ネマトリンエース、モスピランワンなども有効。
チャノキイロアザミウマのみ、殺菌剤のエムダイファー、ジマンダイセンが、忌避剤として使える。

【注意点】種類によって、効果のある薬剤が微妙に異なるため、一度散布して効果がなかった薬は使用をやめ、別の薬剤に切り替える。
キイロアザミウマの仲間は、薬剤に対してきわめて強い抵抗性を持ち、主要な薬剤のほとんどは効果が無い。効果のある薬(アタブロン、カスケードなど)でも、卵とサナギには効かないため、数回連続して散布する必要がある。
ただし、同一薬剤の連続散布は避ける。

予防策

周囲の雑草を除去する。通風を改善する。ときどき葉に水をかけて洗い流す。空中湿度を高めに保つ。傷んだ花がらは早めに摘み取る。
キク科やマメ科の花を好むので、近くで栽培しない。土中浅くでサナギになるため、株元をマルチングし、羽化を抑える。植物を購入する際は、すでに虫がいないか、よく観察する。
ヒメハナカメムシを始め、天敵が非常に多いので、それらを殺すような強い殺虫剤を使わない。種類によっては、樹皮の隙間で越冬するので、粗皮を削り落とす。
黄色・青色・白色・桃色などに集まるので、そうした色の粘着トラップを吊るす。また、光の反射率の高いものを忌避するため、白~銀色ポリフィルムなどでマルチングをしたり、テープを張り巡らしたりする。
紫外線の無い場所には寄り付かない種類(チャノキイロアザミウマなど)があるため、株とその周囲を、近紫外線反射フィルムで覆う。(ただし、ナスなどの果実の着色が悪くなる。)

【補足事項】
  1. カキクダアザミウマ…越冬の際の中間寄主となる、クス、スギ、ヒノキ、マツなどを近くで栽培しない。
  2. チャノキイロアザミウマ…中間寄主となる、イヌマキ、チャ、サンゴジュなどを近くで栽培しない。黄色粘着トラップを吊す。株元の地表面や落ち葉の陰などで越冬するため、冬季、株元を掃除し、表土を軽く耕す。
  3. ヒラズハナアザミウマ…青色粘着トラップを吊す。
  4. ミカンキイロアザミウマ…桃色粘着トラップを吊すとよいが、黄色や紫色、青色も効果があるらしい。
  5. ミナミキイロアザミウマ…青色か白色の粘着トラップを吊す。

【薬剤】

  1. グラジオラスアザミウマ、ユリキイロアザミウマ、ユリノクダアザミウマ…植え付け前の球根を、オルトランなどの薬液に浸して消毒。

主な被害植物

【草花・鉢花】アサガオ、アザミ、アルストロメリア、インパチエンス、エノコログサ、カーネーション、ガーベラ、カラー、カラスウリ、カランコエ、キク、球根ベゴニア、グラジオラス、グレコマ、クレマチス、クローバー類、ケイトウ、コスモス、サクラソウ、サルビア類、シクラメン、宿根アスター、スイートピー、スターチス、ストック、セラスチウム、セントポーリア、ソリダゴ類、タツナミソウ、ダリア、チドリソウ、ドクダミ、トルコキキョウ、ナデシコ類、ニチニチソウ、ハイビスカス、ハナショウブ、ハマユウ、バラ、ヒアシンス、ヒマワリ、ヒャクニチソウ、ヒョウタン、ヒルガオ、プリムラ、ヘチマ、ヘビイチゴ、ヘメロカリス、ベロニカ、ホオズキ、ユリ、ヨメナ、マリーゴールド、リンドウ、レンゲなど。

【観葉・多肉】イタビカズラ、ガジュマル、ゴムノキ、ヤシ類など。

【樹木・果樹】アオキ、アカシア、アカメガシワ、アケビ、アジサイ、アセビ、アボカド、イスノキ、イチジク、イチョウ、イヌツゲ、イヌマキ、ウツギ、ウメ、エゴノキ、エノキ、オウトウ、オオデマリ、カエデ類、カキ、カシ類、カナメモチ、カラタチ、カリン、カンキツ類、キウイ、キハダ、キリ、クサギ類、クスノキ、クチナシ、グミ類、クヌギ、クワ、ゲッケイジュ、コデマリ、コムラサキ、サカキ、サザンカ、サツキ、サルナシ、サンゴジュ、サンショウ、シイ類、シキミ、シャシャンボ、シャリンバイ、スターフルーツ、スモモ、センダン、タブノキ、タラノキ、チャ、ツゲ、ツツジ類、ツバキ類、ドウダンツツジ、トベラ、ナシ、ナラ類、ナンキンハゼ、ナンテン、ネクタリン、ネズミモチ、ネムノキ、ハギ、ハゼノキ、バラ、ヒイラギ、ヒサカキ、ヒノキ、ピラカンサ、ビワ、フェイジョア、ブドウ、フヨウ、マサキ、マタタビ、マンゴー、ムラサキシキブ、モクセイ類、モチノキ類、モッコク、モモ、ヤナギ類、ヤブニッケイ、ヤマモガシ、ヤマモモ、ユキヤナギ、リンゴ、レンギョウなど。

【ハーブ・野菜】アズキ、アスパラガス、アブラナ、アルファルファ、イチゴ、イネ、インゲン、エダマメ、エンドウ、オクラ、カブ、カボチャ、カラシナ、カラスウリ、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、クズ、クローバー、ゴボウ、ゴマ、コマツナ、サツマイモ、サトイモ、シシトウ、シソ、ジャガイモ、シュンギク、食用ホオズキ、シロウリ、シロザ、スイカ、スベリヒユ、セリ、ソバ、ソラマメ、ソレル、ダイコン、ダイズ、タデ類、タバコ、タマネギ、タンポポ、チャイブ、トウガラシ、トウガン、トウモロコシ、トマト、ナス、ニガウリ、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ類、ハクサイ、ハコベ、ハハコグサ(ゴギョウ)、ピーマン、ヒエ、ピスタチオ、ブロッコリー、ペピーノ、ホウレンソウ、マクワウリ、メロン、ヨモギ、ラッカセイ、ラッキョウ、レタス類、ワケギ、ワサビ、ワタなど。

【ラン】カタセタム、カトレア類、サギソウ、デンドロビウム、デンファレ、バンダ、ミルトニア、レリアなど。

主な種類

【ア行】イネクダアザミウマ、ウスイロアザミウマ、

【カ行】カキクダアザミウマ、ガジュマルクダアザミウマ、カトレアノアザミウマ、キイロハナアザミウマ、キミガヨランクダアザミウマ(イトランクダアザミウマ)、クスクダアザミウマ、グラジオラスアザミウマ、クリバネアザミウマ、クロゲハナアザミウマ、クロトンアザミウマ、コスモスアザミウマ、

【タ行】ダイズアザミウマ、ダイズウスイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、

【ナ行】ネギアザミウマ、

【ハ行】ハナアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、ビワハナアザミウマ、

【マ行】マメハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、

【ヤ行】ユリキイロアザミウマ、ユリノクダアザミウマ、

【ラ行・ワ行】ランノアザミウマ、ランノシマアザミウマ、ワサビクダアザミウマなど。