カミキリムシ類(テッポウムシ)
カミキリムシ科に属する。近くに山林があると多発するが、街路樹や庭木を食樹とし、市街地にも生息している。
老木や弱った木ほど被害にあいやすい傾向がある。しかし、タケトラカミキリのように、枯死した木を好み、生木を嫌う種類も多い。中には、腐朽した木しか食べない種類もある。
クビアカツヤカミキリは特定外来生物であるため、もし発見した場合は、最寄りの地方環境事務所に連絡する必要がある。
マツノマダラカミキリと共生関係にあるマツノザイセンチュウについては、「マツノザイセンチュウ」のページに載せた。
発生時期
周年(成虫飛来期は3~9月。)
【補足事項】下記は、いずれも成虫飛来期。- キクスイカミキリ…4~6月
- キボシカミキリ…5~9月
- クビアカツヤカミキリ…6~8月
- クワカミキリ…7~9月
- ゴマダラカミキリ…5~8月
- シロスジカミキリ…5~8月
- スギカミキリ…3~5月
- ソボリンゴカミキリ…5~7月
- ヒメスギカミキリ…3~5月
- ブドウトラカミキリ…8~9月
- ベニカミキリ…4~6月
- マツノマダラカミキリ…5~7月
- ミヤマカミキリ…6~8月
- リンゴカミキリ…5~8月
- ルリカミキリ…5~6月
被害箇所
幹、下枝など。
形態
【成虫の形態】甲虫類の一種。体長1~6cm。長い触角を持つため、さらに大きく見える。体色は、黒色・褐色・黄褐色・灰褐色・赤褐色・赤紫色・藍色などで、種類によってさまざま。背面に、淡色の模様を持つ種類が多い。卵から成虫になるまで時間がかかるため、一部の例外を除き、数年に一度の発生となる。
種類によっては、捕まえると、鳴き声を出して威嚇する。(発達した大きな顎を持つため、手で捕まえる時は、噛まれないよう注意。)
- アオカミキリ…体長2~3cm。体色は、光沢のある青緑色だが、個体差があり、赤みがかったものや、紫色がかったものなどもある。脚と触覚は黒。
- キクスイカミキリ…体長0.7~1cm。体色は黒く、胸部に橙色の斑紋がある。カミキリムシの多くは樹木を加害するが、この種類は例外で、キク科の草本を狙う。成虫で越冬する。年1回の発生。
- キボシカミキリ…体長1.5~3cm。体色は灰黒色で、淡黄色の小斑紋が多数ある。触覚も黒と淡黄色の縞々。1~2年に一度の発生。
- クビアカツヤカミキリ…体長3~4cm。体色は黒く、ツヤがあり、胸部に赤い斑紋が目立つ。別名「クロジャコウカミキリ」。ロシア南部~中国~ベトナム北部にかけて生息する外来種。バラ科樹木の大害虫で、日本では2018年に特定外来生物に指定されている。
- クワカミキリ…体長3.5~4.5cm程度。体色は灰褐色で、全身に微毛が生える。2~3年に一度の発生。
- ゴマダラカミキリ…体長3cm前後。体色は黒く、白い小斑点が多数ある。触覚も黒白の縞々。1~2年に一度の発生。
- シロスジカミキリ…体長5cm程度と日本最大級。体色は黒褐色で、不規則な淡黄色の斑紋が縦方向に並ぶ。この斑紋は、死ぬと白色に変わるため、「シロスジカミキリ」の名が付いた。2~4年に一度の発生。
- スギカミキリ…体長1.5~2.5cm程度。体色は黒く、左右の翅に、淡橙色をした斑紋が二つずつ入る。粗皮下に産卵する。1~2年に一度の発生。
- ソボリンゴカミキリ…体長2cm前後。体色は、胸部と脚が橙褐色、翅と頭部、触角が黒。縦に細長い体型。
- ヒメスギカミキリ…名前の通り小型で、体長0.6~1.3cm。雌雄で体色が異なり、雌は翅の部分が赤褐色。雄は全身が黒色~濃藍色で、翅の肩の部分に、赤褐色の斑紋が入る。
- ブドウトラカミキリ…体長1~1.5cm。体色は、頭部と翅が黒く、胸部が赤褐色。翅に淡黄色の横縞が二本入っており、名前の由来になっている。年1回の発生。
- ベニカミキリ…体長1.2~1.7cm程度。体色は赤紫色で、胸部にテントウムシのような黒い斑紋がある。1~2年に一度の発生。
- マツノマダラカミキリ…体長2~3cm。体色は、黒褐色地に、灰色の斑模様が入る。マツノザイセンチュウを媒介し、松林を壊滅させる大害虫として、あまりにも有名。年1回の発生。
- ミヤマカミキリ…体長3.4~5.7cmと日本最大級。体色は茶褐色~黒褐色で、全身に微毛を持つ。夜行性で、燈火によく集まる。2~3年に一度の発生。
- リンゴカミキリ…体長2cm前後。体色は、翅が灰褐色で頭部は黒。胸部と腹側は橙色。腹部がほっそりしている。2年に一回の発生。
- ルリカミキリ…体長1~1.5cm程度。体色は、翅が藍色で、それ以外は橙色。2年に一度の発生。
【幼虫の形態】老熟幼虫で体長1~7cmと、種類によって幅がある。体色は乳白色。どの種類も脚が無い。
【補足事項】- キクスイカミキリ…老熟幼虫で体長2cm程度。体色は乳白色~淡黄色。老熟しても茎から出ず、そのままサナギ・成虫になる。
- キボシカミキリ…老熟幼虫で体長4~5cmと、やや大きめ。体色は乳白色。
- クワカミキリ…老熟幼虫で体長7cmと大きめ。体色は、赤み帯びた乳白色。
- シロスジカミキリ…日本最大級の種類だけに、老熟幼虫は体長8~10cmにも達する。
主な被害
【成虫の被害】新梢・枝・幹などの樹皮を食害し、枝葉を萎れさせたり、孔をあけたりする。被害部分より上部が枯れることもある。地際部分が被害にあうと、木全体が枯れる。
また、孔をあけて産卵し、樹幹内に幼虫を食入させる。老木など、地際付近の幹が太い木ほど、産卵されやすい。
- キクスイカミキリ…アジア~ヨーロッパ産のキク科植物を好む。茎に傷を付けて産卵するため、被害部分より上の部分が萎れる。
- クワカミキリ…新梢の樹皮を食害する。幹や太い枝の樹皮に馬蹄形の傷を付け、そこに一つずつ産卵する。
- ゴマダラカミキリ…樹皮を食害するだけでなく、地際近く(基本的に地上60cm以下だが、30cm以下が最も多い)に孔を開けて産卵する。
- シロスジカミキリ…地際から1.5m以下の、比較的低い部分の樹皮をぐるりと傷つけ、そこに産卵する。傷は円形で、直径1cm前後。傷一つにつき卵が一つある。古い木を好む。
- マツノマダラカミキリ…樹皮を食害するが、それよりも、マツ類の大害虫であるマツノザイセンチュウと共生関係にある事のほうが大問題。食害後の傷口から、このセンチュウが侵入すると、松ヤニが出なくなり、カミキリにとって産卵しやすい環境が整う。被害を受けたマツは衰弱し、確実に枯死する。
【幼虫の被害】枝や幹の内部に食入し、トンネル状に食害する。食入孔は、地面から高さ1.5mくらいまでの、比較的低い位置にあることが多い。幼虫がいる部分付近からは、おがくず状の糞(「フラス」という)やヤニが出る。被害枝は折れやすい。また、木が著しく弱るため、キクイムシなど、他の害虫の発生を誘発する。
【補足事項】- キクスイカミキリ…キク科植物の茎内に侵入し、内部を下方に向かって食害する。食入孔からは糞が出る。地際近くでサナギになるため、株全体が枯れることもある。
- クビアカツヤカミキリ…ウメ、サクラ、モモの重要害虫。バラ科樹木の幹内に食入する。樹皮直下の形成層の部分を好むため、高確率で被害樹を枯死させる。地際からは、木くずと糞の混じった、赤褐色っぽい木クズが出る。
- クワカミキリ…カミキリムシの仲間は弱った木を狙うことが多いが、この種類は、健全な木を好んで加害する。
- ゴマダラカミキリ…孵化直後は樹皮を環状にかじるため、それだけで木全体が枯れることもある。その後、地際近くの低い部分や、根に食入する。(時折、高さ2m以下の、比較的高い位置に食入することもある。)被害部分の周囲は、筋状にでこぼこと盛り上がる。
- シロスジカミキリ…主幹のうち、地際から1.5m以下の、比較的低い部分を加害する。弱っていない、健全な木を加害する。
- スギカミキリ…名前の通り、スギやヒノキを好む。上下方向だけでなく、水平方向にも食い進むため、木へのダメージが大きく、しばしば、枯死に追いやる。
- ソボリンゴカミキリ…名前のイメージとは異なり、シャクナゲやツツジ類を加害する。地際部に糞が積もるため、被害に気づきやすい。
- ヒメスギカミキリ…基本的に、伐採直後の新鮮な木材に食い込む虫だが、弱った生木も加害し、枯死に追いやる。
- ブドウトラカミキリ…ブドウの重要害虫の一つ。食入された枝は黒ずみ、少し膨らむ。
- ベニカミキリ…伐採後のタケ材に食入する害虫として有名だが、生きたタケでも、衰弱していれば加害し、枯死に追いやる。
- ミヤマカミキリ…健全な木を好んで加害する。
- ルリカミキリ…新梢や若い枝を好み、幹や太い枝には食入しない。食入孔からは、特徴的な繊維状の木屑が多数出る。
対策
【成虫の対策】晩春~夏によく飛来するので、見つけ次第捕殺する。種類によっては、木を揺すると落ちてくるので集めやすい。
【薬剤】【散布】アクタラ、園芸用キンチョールE、カルホス、スミチオン、ダントツ、トクチオン、ベニカ、マラソン、モスピラン、リーズンなど。
【幹に装着】バイオリサ・カミキリなど。
【補足事項】
- キクスイカミキリ…Mr.ジョーカー、アークリン、アーデント、アクテリック、アタブロン、アディオン、アドマイヤー1、アプロード、アルバリン、アントム、エンセダン、エンバーMC、オルチオン、オルトラン、オルトランA、オルトランC、オルトランMP、オンコル、ガーデンアースB、ガードベイトA、カウンター、カスケード、カダンAP、カダンD、グランドオンコル、サイアノックス、サニーフィールド、ジェイエース、ジェネレート、ショットイン、スケルサイドA、スターガード、スタークル、スミソン、スミナイス、スミフェート、ダイアジノンSL、ディプテレックス、テルスター、トレボン、ノーモルト、パイベニカ、パーマチオン、ピレオール、ベジタメートAL、ベストガード、ベニカD、ベニカX、マッチ、マルチガードなども効果がある。
- マツノマダラカミキリ…スミパイン、バークサイドF、パインサイドS、ベニカマツケア、マツグリーンなど、専用の薬剤が多い。(ただし、バークサイドF、パインサイドSは、一般家庭では入手しにくい。)
【幼虫の対策】食入孔から針金を突っ込んで、中の虫を刺し殺す。食入部分が細い枝なら、見つけ次第、切除する。(落葉樹の場合は、冬を待ってから切除したほうが無難。)
【補足事項】- キクスイカミキリ…見つけ次第、被害部分を除去する。(この種類が加害するのは草本なので、切除が容易。
【薬剤】【食入孔に処理】アクタラ、アルバリン、園芸用キンチョールE、カルホス、スミチオン、ダントツ、テッポーダン、トクチオン、ベニカ、ベニカマツケア、マツグリーン、マラソン、モスピラン、リーズンなど。
【散布・塗布】ガットキラー、ガットサイドS、サッチューコートS、スミパイン、トラサイドAなど。
【注意点】食入孔や産卵孔に入れる薬剤は、直接噴射する他、綿に染み込ませて詰め、その上からフタをして気化させても効果がある。
【補足事項】
- ブドウトラカミキリ…卵が孵化する春の萌芽直前と、成虫が飛来する8~9月に、断続的に薬剤を散布する。
- ミヤマカミキリ…大きい木の場合、高さ4mくらいの場所に産卵・食入することがあるため、かなり高い部分にまで、薬剤使用が必要となる。
- ルリカミキリ…6月頃、樹皮上に、樹液のにじんでいる食害痕を見つけたら、殺虫剤を散布する。
予防策
株を弱らせない。抵抗性品種を栽培する。近くに枯死した被害木があれば、切り倒して処分する。剪定した枝などを放置せず、きちんと処分する。(幼虫は伐採された木の中でも成長する。)
被害樹の撤去が難しい場合は、幹をできるだけ細かく切断し、表面に殺虫剤をたっぷり散布すれば、羽化・脱出しようとする成虫に効果がある。
- キクスイカミキリ…枯れた茎の地際で越冬するので、冬の間に古い茎を切除する。キク科雑草のヒメジョオンやヨモギなどが発生源となるので、除草しておく。
- ゴマダラカミキリ…成虫飛来期に、主幹の地際部分(地面からの高さ30cm以下)に布やワラ、寒冷紗、新聞紙などを巻き付け、産卵を防ぐ。
- シロスジカミキリ…成虫飛来期に、主幹の高さ1.5m以下の部分に布やワラ、新聞紙などを巻き付け、産卵を防ぐ。また、樹皮に赤っぽい産卵痕を発見したら、その部分を金槌などで叩き、卵をつぶす。
- ブドウトラカミキリ…近くに野生のエビヅルやノブドウなどがあると発生源になるため、除去する。
- ベニカミキリ…タケを弱らせない。近くに枯れたタケがあれば処分する。
- マツノマダラカミキリ…マツ類を健全に育てる。(木が元気であれば松ヤニが分泌され、カミキリの産卵を受けにくい。)既にマツノザイセンチュウの被害を受け、全体的に葉が黄ばんできたマツがあれば、早急に切り倒して処分する。
主な被害植物
【草花・鉢花】アキレア、アスター、イソギク、キク、シャスターデージー、ノコギリソウ、ハルジオン、フジバカマ、マーガレット、ミヤコワスレ、ヤグルマギクなど。
【樹木・果樹】アオギリ、アカシア、アジサイ、アンズ、イチゴノキ、イチジク、ウメ、エゴノキ、オリーブ、カイドウ、カエデ類、カシ類、カシワ、カナメモチ、カマツカ、カリン、カンキツ類、キリ、キングサリ、クヌギ、クリ、クルミ、クワ、ケヤキ、コウゾ、サクラ、ザクロ、サルスベリ、サワラ、シイ、シャクナゲ、シラカバ、スギ、スモモ、センノキ、ツツジ類、トキワマンサク、ドロノキ、ナシ、ナツツバキ、ナラ類、ハナミズキ、バラ、ハンノキ、ヒノキ、ヒバ類、ヒマラヤシーダ、ビワ、フェイジョア、フジ、ブッドレア、ブドウ、プラタナス、ボケ、ボタン、ポプラ、マツ類、マルメロ、ムクゲ、モクレン、モミ、モモ、ヤシャブシ、ヤツデ、ヤナギ類、ユキヤナギ、ライラック、リンゴなど。
【ハーブ・野菜】イチゴ、ウド、タラノキ、タンジー、ヨモギなど。
主な種類
アオカミキリ、キクスイカミキリ、キボシカミキリ、クワカミキリ、ゴマダラカミキリ、シロスジカミキリ、スギカミキリ、センノカミキリ、ソボリンゴカミキリ、ヒメスギカミキリ、ブドウトラカミキリ、ベニカミキリ、マツノマダラカミキリ(マツクイムシ)、ミヤマカミキリ、リンゴカミキリ、ルリカミキリなど。