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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ハダニ類

ハダニ科に属する。ナミハダニとニセナミハダニは、従来、別種と考えられてきたが、現在は同一種とされている。
殺虫剤を使い過ぎると多発するので注意。(天敵が殺されたことで起こる、「リサージェンス」という現象である。)

発生時期

3~11月(最多発生は7~9月。)

【補足事項】
  1. カンザワハダニ…5~10月
  2. スギノハダニ…4~11月
  3. タケスゴモリハダニ…4~10月(6~8月に多い。)
  4. チビコブハダニ…6~7月・11月
  5. チャノヒメハダニ…3~10月
  6. トドマツノハダニ…4~10月
  7. ナミハダニ…周年
  8. ビャクシンハダニ…4~6月
  9. ミカンハダニ…周年(暖地以外では、冬に姿を消す。)
  10. モッコクハダニ…5~10月
  11. リンゴハダニ…6~9月

被害箇所

葉、葉柄、茎、若枝、花、花梗、つぼみ、果実、果梗など。

形態など

体長0.4mm前後で、雌のほうが大きい。体色は、赤~橙、黄、黄緑など。雌虫で越冬する種類と、卵で越冬する種類がある。ダニなので脚は8本だが、孵化幼虫のみ、脚が6本しかないらしい。
体が小さく水に流されやすいため、葉裏にいることが多い。雨に弱く、梅雨時に数が減り、夏の高温乾燥時に激増する。食物が減ってくると、糸を吐いて風に乗り、飛んで移動する。

【補足事項】
  1. カンザワハダニ…体長0.5mm。雌虫が越冬する。胴部が赤いため、「アカダニ」とも呼ばれる。
  2. スギノハダニ…赤色。スギの重要害虫。
  3. タケスゴモリハダニ…体長0.3~0.5mm。淡黄色。
  4. チビコブハダニ…体長0.5mm。葉表にいる。
  5. チャノヒメハダニ…体長0.3mm。赤色。
  6. ナミハダニ…体長0.5mm。「胴部が淡褐色~黄緑色~青色の個体」と「赤橙色の個体」があり、前者は「アオダニ」「シロダニ」とも呼ばれる。後者は「ニセナミハダニ」と呼ばれ、長らく別種と考えられてきたが、現在は同一種とされている。(こちらも「アカダニ」と呼ばれることがある。)なお、越冬時は、いずれの個体も、体色が赤橙色となる。
  7. ミカンハダニ…体長0.3~0.4mm。冬も休眠しない。西日本に多い。
  8. リンゴハダニ…赤褐色。卵で越冬する。北日本に多い。

主な被害

主に葉裏や花弁、果実表面などに寄生し、吸汁する。被害部分は、かすり状に白っぽく色が抜ける、色が悪くなる、褐色~黄色に変色する、ツヤが無くなる、萎縮・変形する、などの症状が出る。果実がひどく加害されると、色だけでなく、味まで悪くなる。
肉厚でない、やわらかな葉を好むため、被害株が若くみずみずしいほど、被害が甚大となる傾向がある。(※ミカンハダニ、リンゴハダニのような例外もあり。)

【補足事項】
  1. オンシツヒメハダニ…ラン科植物に広く寄生するOFV(ランえそ斑紋ウイルス)の、唯一の媒介虫である。
  2. カンザワハダニ・ナミハダニ…多発すると、集団で天幕状に糸を張りめぐらして巣を作り、その中で暮らす。巣は、茎葉の先端部付近に好んで作られる。
  3. タケスゴモリハダニ…タケ・ササ類の葉裏に、皮膜状に薄く糸を張って巣を作り、集団で暮らす。被害葉の表側には、黄色~黄緑色のモザイク模様が多数できる。被害がひどいと、葉が枯れる。
  4. トドマツノハダニ…広葉樹に寄生した場合、まず葉脈に沿って加害を始める。
  5. ミカンハダニ…硬くなった古い葉にも好んで寄生し、早期落葉させるため、被害が大きい。
  6. リンゴハダニ…若い葉は好まない。

対策

見つけ次第、濡れティッシュなどで拭き取る。水やりの際、葉の裏側まで水をかけ、水圧で洗い流す。


【薬剤】【散布】アーデント、アーリーセーフ、アカリタッチ、アクテリック、アタックワンAL、アファーム、あめんこ、イオウ、エアータック、園芸用キンチョールE、エンセダン、オサダン、オマイト、カーラ、カスケード、カダンA、カダンセーフ、カネマイト、クムラス、コロナ、コロマイト、サルファー、サンクリスタル、スケルサイドA、スターマイト、スピノエース、スミチオン、スミナイス、タイタロン、ダニカット、ダニゲッター、ダニサラバ、ダニ太郎、ダニトロン、ダニボーイ、ダブルアタックAL、テデオン、テトラマイト、テルスター、トモノールS、ニッソラン、ネマトリン、粘着くん、パイベニカ、ハッパ、パノコン、バロック、ベニカX、ベニカグリーンV、ベニカマイルド、ペンタック、マイトクリーン、マイトコーネ、マラソン、ムシラップ、ユニフローサルファーなど。

【注意点】汎用性の高い殺虫剤(スミチオンやマラソンなど)を使うと、天敵を殺す危険のほうが大きいため、専用の殺ダニ剤を使う。
薬剤に対し耐性が付きやすいため、同じ薬剤の連続散布は避ける。

予防策

周囲の雑草を除去する。通風を改善する。ときどき葉裏に水をかける。雨に当てる。夏期、寒冷紗などで遮光する。樹皮の隙間などで越冬するので、粗皮を削り落としておく。大切な植物の近くで、発生の多い植物(ウリ科・ナス科・マメ科野菜、イチゴ、チャ、ナシなど)を栽培しない。
ヒメハナカメムシを始め、天敵が非常に多いため、それらを殺すような強い殺虫剤を使わない。なお、ハダニ類の代表的な天敵である、肉食性のカブリダニ類(ケナガカブリダニ、チリカブリダニ、フシカブリダニ、ミヤコカブリダニなど)は、体長0.4mm前後で、姿がハダニに似るため、見分けるのが難しい。

【補足事項】
  1. ナミハダニ…カーネーションの場合、抵抗性品種を栽培する。(葉が強くカールする品種ほど、抵抗性が弱いらしい。)

【薬剤】可能なら、冬季に、石灰硫黄合剤、ハッパ(菜種油)、マシン油を散布。

主な被害植物

非常に多い。下記は一例。

【草花・鉢花】アサガオ、アザレア、アブチロン、アヤメ、インパチエンス、ウチョウラン、エビネ、エンジェルストランペット、オキナグサ、オダマキ、カーネーション、ガーベラ、カラマツソウ、キキョウ、キク、キンギョソウ、グラジオラス、クレマチス、コスモス、サクラソウ、サボテン類、サルビア類、シクラメン、シャジン類、シュンラン、スミレ、ゼラニウム、ダリア、デュランタ、デルフィニウム、トケイソウ、トルコキキョウ、ナスタチウム、ナデシコ類、ノボタン、ハナショウブ、パンジー、ヒマワリ、ヒャクニチソウ、フジバカマ、フクシア、フクジュソウ、フジバカマ、プリムラ類、フユサンゴ、ベゴニア類、ヘリコニア、ホオズキ、マトリカリア、マリーゴールド、ミヤコワスレ、メランポジウム、ユキワリソウ、ランタナ、リンドウ、ルエリア、ワタなど。

【観葉・多肉】アカリファ、アグラオネマ、アスパラガス、アスプレニウム、アナナス類、アフェランドラ、アロカシア、アンスリウム、カラジウム、カラテア、クロトン、ゴムノキ類、コルディリネ、ササ類、サボテン類、シェフレラ、シダ類、シッサス、シバ類、シュロチク、シンゴニウム、ゼブリナ、タケ類、ディフェンバキア、ドラセナ類、パキラ、ピレア、ブレクナム、ベンジャミン、ポトス、ヤシ類、ユッカなど。

【樹木・果樹】アケビ、アセビ、アジサイ、イチジク、イヌツゲ、イブキ類、オウトウ、カキ、カシワ、カルミア、カンキツ類、キウイ、キョウチクトウ、キンモクセイ、ギンモクセイ、クランベリー、クリ、クワ、コトネアスター、サザンカ、サツキ、サンゴジュ、シャクナゲ、スギ類、スグリ類、スターフルーツ、ストロベリーグァバ、スモモ、チャ、ツガ、ツツジ類、ツバキ類、ドイツトウヒ、ドウダンツツジ、トウヒ、ナシ、ナラ類、パイナップル、ハスカップ、パパイヤ、バラ、ヒイラギモクセイ、ヒノキ、ビャクシン類、ブドウ、マサキ、マツ類、マンゴー、モクセイ類、モッコク、モミ、モモ、ヤツデ、ヤマブキ、ライチ、ライラック、リンゴなど。

【ハーブ・野菜】アシタバ、アニスヒソップ、イチゴ、イネ、インゲン、ウリ類、エダマメ、エンドウ、オクラ、カボチャ、キャベツ、キュウリ、ササゲ、サツマイモ、サトイモ、サトウキビ、サンショウ、シシトウ、シソ、ジャガイモ、スイカ、セージ、セロリ、ダイズ、チンゲンサイ、トウガラシ、トウモロコシ、トマト、ナス、ニガウリ、ニンニク、バジル、バナナ、ハヤトウリ、ピーマン、ペピーノ、ホウレンソウ、マメ類、マロウ、ミツバ、メロン、モロヘイヤ、ヤマイモ、ラッカセイなど。

【ラン】エビネ、オンシジウム、カタセタム、カランセ、シンビジウム、デンドロビウム、ネオムーレアナ、バニラ、バンダ、ミルトニア、リカステなど。

主な種類

アシノワハダニ、オウトウハダニ、オンシツヒメハダニ、カンザワハダニ、クローバーハダニ、サボテンヒメハダニ、スギハダニ(スギノハダニ)、タケスゴモリハダニ、タケトリハダニ、チビコブハダニ、チャノヒメハダニ、トドマツハダニ(トドマツノハダニ)、ナミハダニ、ニセナミハダニ、ヒメササハダニ、ビャクシンハダニ、ブドウヒメハダニ、マツヤドリハダニ、ミカンハダニ、モッコクハダニ、リンゴハダニなど。