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素人園芸解説 -私はこう育てる-

カタツムリ類・ナメクジ類

「カタツムリ」とは、陸生の巻き貝のうち、殻全体が丸っこく、殻の高さの低い種類の総称である。別名、「ツブリ」「デンデンムシ」「マイマイ」などとも呼ばれる。園芸害虫とされる種類は、それほど多くない。
また、「ナメクジ」とは、殻を失った陸生の巻き貝の総称である。大きく分けて、「ナメクジ」と「コウラナメクジ」の二系統がある。日本在来のナメクジの仲間は、全て「ナメクジ科」に属する。一方、コウラナメクジの仲間は「コウラナメクジ科」に属し、ヨーロッパからの侵入種である。
この仲間はウイルス病を媒介することがあるので、油断しない。

ナメクジを民間療法に使う方法があるが、科学的根拠は無く、「広東住血線虫」という寄生虫の危険があるので、興味本位で試してはいけない。人間にとって非常に危険な寄生虫で、死亡例もある。
広東住血線虫は、奄美以南の淡水域に生息するカタツムリ・ナメクジの他、エビ、カエル、貝類などの一部を中間宿主とする。従って、それらの生物や、這った後の粘液などに触れたら、よく手を洗う。日本での死亡例は沖縄に限られるが、本土においても、ネズミに寄生しているらしい。

同じく陸生の巻き貝であるヒメオカモノアラガイの被害も、対処法は同じでよい。

発生時期

3~11月(酷暑期は一時的に減る)

被害箇所

葉、花、つぼみ、果実、芽、気根の先端など。

形態

【カタツムリ類】成体で貝殻幅15~20mm前後。普通は右巻き。殻の色は、淡褐色~黄褐色・黒褐色など。種類によって、殻の表面に、さまざまな縞模様が現れる。雌雄同体。

【補足事項】
  1. ウスカワマイマイ…名前の通り、殻が薄く、割れやすい。
  2. アフリカマイマイ…陸生の巻き貝としては世界最大種。成体で貝殻幅7~8cm、殻の高さは、時に20cm近くに達する。(その意味では、「カタツムリ」とは言いにくい。)本来はアフリカ産で、食用目的で日本にもたらされた。現在、小笠原諸島・南西諸島に定着しているが、近年の温暖化の影響で、生息域を本土に広げることが懸念されている。「要注意外来生物」の一種。

【ナメクジ類】ナメクジの仲間は、成体で体長25~80mm。(ヤマナメクジはさらに大きい。)体色は、黒紫色~灰褐色・淡褐色。甲羅の痕跡は無い。成体で越冬する。雌雄同体。
コウラナメクジの仲間は、成体で体長5~7cm前後。体色は褐色。背面に、甲羅の痕跡である、楕円形の肉板が付いている。幼体または成体で越冬する。

【補足事項】
  1. チャコウラナメクジ…体長5cm前後。体色は茶褐色で、背面に黒褐色の縦線模様がある。日本でもっとも一般的なナメクジ。成体で越冬する。
  2. ノハラナメクジ…体長2cm前後。体色は黒紫色。年2回の発生。
  3. フタスジナメクジ…体長8cm。体色は淡灰褐色で、背面に黒褐色の縦線模様がある。黒褐色の縦線模様が3本あり、特に、両端の2本が目立つ。
  4. ヤマナメクジ…体長10~16cmと、非常に大型。体色は褐色で、淡黒色の斑点がある。名前の通り、山地に多い。

主な被害

葉や花、芽、果実などを食害する。着生植物など、根が露出している植物は、新根も食害される。若く柔らかい組織を好むが、枯れ葉など死んだ組織も食べる。這った跡に独特な粘液が残り、光るので、他の害虫の食害と容易に区別できる。
なお、カタツムリ類は、大きな殻を背負っている分、ナメクジ類に比べて移動力が劣り、被害も小さめとなる。(ただし、アフリカマイマイは例外。)

【補足事項】
  1. アフリカマイマイ…きわめて雑食性で食害量が多いうえ、広東住血線虫の媒介者でもある。
  2. ヤマナメクジ…山林に住み、しばしば、栽培されているシイタケを食害する。

対策

夜8時以降(できれば9時以降)に見回り、見つけ次第捕殺する。ビールや日本酒、バナナの皮、米ぬか、酒粕、ジャガイモの輪切り、フスマ、菜種油かすなどに集まるため、それらで誘引してもよい。(元来、腐りかけ・発酵しかけの物を好むため、アルコール類やアルデヒド類に強く誘引される性質を持つ。)
夜が無理なら、昼間、鉢の裏や石の下、落ち葉の間など、日の当たらない湿気のある隙間を探し、集中的に捕殺する。


【薬剤】【散布】グリーンベイト、サンヨールAL、ナメキール、ナメクジカダン、ナメクジ駆除剤、ナメクリーン、ナメダウン、ナメトックス、ナメトリン、マイマイペレットなど。

【注意点】粒剤は、水がかかると効果が無くなるので注意。
最もよく使われるメタアルデヒド系薬剤(ナメキール、ナメクジカダン、ナメクジ駆除剤、ナメクリーン、ナメダウン、ナメトックス、ナメトリン、マイマイペレットなど)は、コウラナメクジ類にはよく効くが、ナメクジ類(特にフタスジナメクジ)に対しては、効果が劣る。

予防策

湿った場所を好むため、乾き気味に管理する。雨に当てない。なるべく有機質肥料を使わない。有機物の過剰施用を改める。住み処になる落ち葉や雑草などを除く。鉢底穴を網などで塞ぎ、鉢内に侵入させない。
土に、石灰か草木灰をまき、土壌酸度が酸性に偏らないようにする。(株の周囲に直接まいても効果がある。)
銅イオンを嫌うので、鉢に銅製テープを巻いたり、鉢の下に銅板を敷いたり、消毒用の殺菌剤として銅水和剤を使用する。
鉢や茎に、乾いた綿を厚く巻き付ければ、それより上に登って来ることが減る。

主な被害植物

非常に多い。下記は一例。

【草花・鉢花】アスター、アネモネ、イチリンソウ、ウチョウラン、エビネ、オキザリス、オキナグサ、カーネーション、ガーベラ、キク、ギボウシ、キンギョソウ、キンセンカ、クレマチス、サルビア類、シクラメン、ジニア、スイートピー、ストック、ゼラニウム、ダリア、デージー、ナデシコ類、パンジー、ビオラ、フクジュソウ、プリムラ類、ベゴニア類、ペチュニア、ホトトギス、マリーゴールド、リンドウ、ルピナスなど。

【観葉・多肉】アジアンタム、アスプレニウム、アンスリウム、コルディリネ、サボテン類、シダ類、ストレリチア、フィットニアなど。

【樹木・果樹】イチジク、カンキツ類、サンショウ、チェリモヤなど。

【ハーブ・野菜】アスパラガス、イチゴ、エンドウ、キャベツ、クレソン、セロリ、ソラマメ、タラゴン、トウガラシ、ナス、ハクサイ、パセリ、ホウレンソウ、マメ類、レタス、レモングラスなど。

【ラン】エピデンドラム、エビネ、オンシジウム、カトレア、シンビジウム、セロジネ、デンドロビウム、パフィオペディラム、バルボフィラム、バンダ、ファレノプシス、ペスカトレア、ミルトニア、リカステなど。

主な種類

【カタツムリ類】アフリカマイマイ、ウスカワマイマイ、オナジマイマイ、ミスジマイマイなど。

【コウラナメクジ類】コウラナメクジ(キイロナメクジ)、チャコウラナメクジなど。

【ナメクジ類】ノハラナメクジ(ノナメクジ)、フタスジナメクジ(ナメクジ)、ヤマナメクジなど。