アジサイ/アマチャ
イメージ
原産地
日本・中国・ヒマラヤ・カラフト~南千島・朝鮮半島南部・北アメリカ東部~東南部
科
アジサイ科(またはユキノシタ科)
高さ
1~3m
花期
5~7月
【結実】10~11月
形態
落葉低木
別名等
ハイドランジア(属名)/紫陽花/ヨヒラ/四片/シチヘンゲ/七変化/八仙花
(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)
日照
西日を避けた戸外の直射日光下(7月上旬~9月上旬は30~50%遮光)。【ヤマアジサイ系】戸外で10~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50%遮光)。
【補足】いずれも耐陰性が強く、かなりの日陰でも耐える。ただし、品種によっては、日当たりが悪いと本来の花色が出ない。カシワバアジサイの紅葉を期待する場合は、よく日光に当てる。
水やり
土の表面が乾けば与える(葉が大きいので、水切れに注意)。
【補足】水を好むとはいえ、度が過ぎると根腐れする。鉢植えがひどく水切れしてしまったら、株全体をバケツの水に沈め、強制的に水あげさせる。
肥料
2月、5~9月に、固形肥料の置き肥。(鉢植えは、2~9月まで、10~14日に一度の液肥を施し続けてもよい。)
【補足】赤系の品種にはリン酸(過リン酸石灰など)、青系の品種にはカリ(硫酸カリウムなど)を多めに施す。(花色に応じた専用肥料が市販されているので、それを使うと楽。)
植え替え
花後すぐか、12月上旬~3月下旬。(厳寒期は避ける。3月が最適期。)
【補足】花後すぐに植え替える場合は、根をいじらない。地植え株の移植は、なるべく避ける。
整姿
【剪定】
花後剪定…花後すぐ~7月中旬。
開花した若枝(緑色の枝)を、基部(古枝との境目)から1~3節残して切る。(または、花がらの下2~4節目のすぐ上で切る。)面倒なら、株全体を2/3程度に刈り込む。(ただし、深切りするほど翌年開花しにくくなる。)
5年以上経った古い枝は程なくして枯れる(枝の寿命は短い)ため、基部から切り、地際から若い枝を伸ばさせる。新枝に開花する系統は、花後剪定を繰り返せば、次々と新しい枝が伸び、夏~秋まで咲き続ける。
冬剪定…植え替えと同時期(厳寒期は避ける)。
あまり必要ないが、行う場合は、枝先の花芽を切り落とすのを覚悟する。全ての枝を地際から切っても復活するが、枯死の危険がある。(その場合、開花を再開するのは二年後から。)
枯らすのが心配なら、一年目は半分だけ地際で切り、もう半分は翌年に切る。
【補足】種類によって、重点を置く剪定が異なる点に注意する。
- 普通のアジサイ・ヤマアジサイ、カシワバアジサイ…前年枝に開花するので、花後剪定に重点を置く。
- アメリカアジサイ、ノリウツギ…春に伸びた新枝に開花するので、冬剪定に重点を置く。
繁殖
【挿し木】2月上旬~4月上旬、5月下旬~7月下旬、9月。
【株分け】植え替えと同時期。
【タネまき】採ってすぐにまくか、保存して3~4月にまく。(乾燥保存可能らしいが、一年以内にまき切る)(発芽まで3~4週間かかる。)
耐暑性
強いが、強光と乾燥に注意。
耐寒性
【ガクアジサイ系、ハイドランジア】わりと強い(-5~-10℃)が、寒地では室内が無難。
【北アメリカ原産種、ヤマアジサイ系、アマチャ】とても強い(-20~-30℃)が、極寒地では防寒する。
【補足】特に花芽が寒さに弱いため、寒風や霜に当てない。
解説
- 属名の「ハイドランジア」は、「水の器」を意味する。とても品種が多いが、育て方はどれもあまり変わらない。大きく分けて、下記のような系統がある。
- ガクアジサイ系…日本原産のガクアジサイの仲間と、その園芸品種群。大型。大きな葉に光沢がある。
- ハイドランジア(西洋アジサイ)…ヨーロッパで改良されたガクアジサイ系園芸品種群。性質はガクアジサイ系と同じだが、耐寒性がやや弱い。
- ヤマアジサイ系…日本原産のヤマアジサイの仲間と、その園芸品種群。やや小型で楚々とした風情。葉が薄く光沢が無い。アマチャもこの仲間である。
- ノリウツギ系…日本原産のノリウツギの仲間と、その園芸品種群。
- カシワバアジサイ系…北アメリカ原産。葉の形がカシワに似る。
- アメリカアジサイ系…北アメリカ原産。純白の花を咲かせる。
- ガクアジサイの原種は、関東南部~伊豆諸島に自生する。園芸品種が最も多く、ハイドランジアも含めて、鉢花としてよく見かける。地植えにすると、見上げるような大株に育つ。暑さ寒さに強いが、ヨーロッパで改良されたハイドランジア系の品種はやや耐寒性が劣るので、霜や寒風に当てない。この系統には、黄金葉を持つ品種や、四季咲きの品種、咲き進むにつれて花色・花型が変化する品種などもある。
- ヤマアジサイの原種は、主に関東地方~九州の太平洋側に自生する。また、北海道南部~日本海側には、ヤマアジサイの変種(ガクアジサイの亜種とも)で、やや大型のエゾアジサイがある。いずれも、多くの園芸品種がある。斑入り葉の品種もある。エゾアジサイ系の品種は、非常に寒さに強い。
- アマチャは、ヤマアジサイの変種の一つ。名前から分かるように、花祭りでおなじみの甘茶の原料である。乾燥葉を発酵させる必要があり、一般家庭で甘茶を作るのは少々難しい。
- 円錐形の花序に白~桃色の花をたくさん咲かせるノリウツギの仲間も人気がある。樹皮から採れる糊料を和紙の原料に用いたため、この名があるらしい。園芸品種には、「ミナヅキ」「ピンク・ダイヤモンド」などがある。なお、ダルマノリウツギは、エゾノリウツギの変種で、矮性の種類。花序の形はヤマアジサイに似ている。いずれも、とても耐寒性が強い。
- 北アメリカ原産のカシワバアジサイは、名前の通り、葉がカシワ(正確には、アメリカ原産のアカガシワ)の葉に似ている。初夏に白い花をピラミッド状に咲かせ、秋になると紅葉する。八重咲き種や、黄金葉の品種もある。とても寒さに強い(-30℃限界)。
- ノリウツギに似て、小さな白花を手まり型に咲かせる種類は、北アメリカ原産のアメリカアジサイである。園芸品種の「アナベル」が有名で、よく出回っている。栽培はきわめて容易。とても耐寒性が強く、-30℃まで耐える。
- 最近は、ツルアジサイも見かける。名前の通り、つる性のアジサイで、茎から気根(吸着根)を出し、塀などをよじ登る。花色は白。なお、アジサイ属のつる性種は、これ一種類しかないらしい。日本在来の植物だが、やや暑さを嫌い、寒地のほうが育てやすい。耐寒性はとても強い。
- アジサイの花は、花房の中心部に固まって咲く、小さな「両性花」と、その周りを取り囲む、ガク片が変化した「装飾花」から成る。しかし、ハイドランジアなどガクアジサイ系の品種は、装飾花だけを手まり型に咲かせるものが多い。なお、コアジサイ(日本在来種)のように、装飾花をまったく持たない、地味な種類もある。
- 両性花と装飾花に分かれている種類は、花が終わりに近づくと、装飾花が裏返しになって面白い。
注意点・病害虫
- この仲間は、乾燥に弱すぎるので、真夏に日照りが続けば、地植えでも水やりする。株元をマルチングするのもおすすめ。鉢植えがひどく萎れたときは、鉢ごとバケツの水に1~2時間ほど沈め、強制的に吸水させる。
- 花色を左右するのは、土中のアルミニウムイオンの吸収量である。装飾花の中には、デルフィニジンという青色の色素があり、土が酸性(pH5以下)になれば、土中にアルミニウムが溶け出して吸収が促進され、デルフィニジンと結合して、青色が強く出る。逆に、中性~アルカリ性(pH5.5以上)になると、アルミニウムが溶け出さず、吸収されないため、デルフィニジンが働かず、赤~桃色が強く出る。従って、青系の花は酸性(pH4.5~5.0)の土、赤系の花は中性~弱アルカリ性(pH6.0~7.0)の土で育てる。なお、白花の品種やヤマアジサイ系品種、それと、北アメリカ原産種は、あまり土壌酸度の影響を受けない。
(※余談になるが、アルミニウムイオンは本来、植物にとって有害である。アジサイは、アルミニウムイオンを無毒化できる、珍しい植物らしい。) - だからといって、品種本来の色を大きく変えるのは無理がある。赤花の株を酸性の土に植えて、青い花を咲かせようとしても、くすんだ紫色になることが多い。(ただし、最近は、花色がくすまない品種が出ている。例、「ありがとう」「城ヶ崎」など。)
- 発色を良くしようと、極端な強アルカリ性や強酸性の土に植えたりすると、かえって生育不良を引き起こすので、ほどほどに。アジサイは本来、弱酸性~中性の土を好む。花色別のアジサイ専用土を利用すれば楽。
- 花色のよしあしは、肥料にも左右されるため、アジサイ専用の肥料を使うと楽。なお、土中のリン酸(P)が多いとアルミニウムが溶け出しにくくなるので、青系のアジサイは、リン酸の少ない肥料を使う。
- 青色系の品種には、市販の焼ミョウバンの1000倍液を、開花前年の11月と、開花前の4月下旬~5月中旬に、土に灌注しておくと、花色がよく発色する。灌注の間隔は7~10日おきで、回数はそれぞれ二回ずつ。このとき、希釈液が株にかからないよう注意する。また、作業を行うのは、土がある程度湿っている時に。
- やや粘土質の肥沃な土を好む。乾燥地は適さない。
- 新葉のうちは萎縮していて、生長するにつれて普通の葉に戻るのは、ウイルス病の症状である。(葉の萎縮については、アザミウマの被害でも起こるので、虫の有無を見極める。)ウイルス病の症状がひどいと、葉が完全に展開しても、表面がでこぼこになる。治療法が無いため、罹病株は処分するか、隔離して、剪定などの作業を最後にまわし、蔓延を防ぐ。
- 葉化病にかかると花が緑色になる。ファイトプラズマ(植物病原微生物)による病気とされ、ウイルス病と同じく、治療法が無い。罹病株は処分か隔離する。少し前に、この病気にかかった個体が、珍しい緑花の品種として一般に販売され、問題となった。
- 葉は有毒とされ、口に入れないよう注意。アマチャは唯一の例外だが、小さい子供が甘茶を飲むと食中毒を起こすことがある。また、人によっては、葉に触れるとかぶれるらしい。
余談
- アメリカアジサイとカシワバアジサイは、花後に花がらを放置すると、ドライフラワー状になり、長く楽しめる。他のアジサイも、花が枯れた後、品種によってさまざまな色に変わるため、最近は、わざと花がらを残して楽しむ人が増えている。
- すぐに水を下げてしまうので、切り花には向かない。
各種の和名・異名
- ビロサ(異名)/ヒマラヤアマチャ/タイワンゴトウヅル(いずれもアスペラ)
- サージェンティアナ(アスペラ亜種サージェンティアナの異名)
- アメリカアジサイ/アメリカノリノキ/セブンバーク(いずれもアルボレッセンス)
- ヤクシマアジサイ/屋久島紫陽花/ヤクシマコンテリギ(いずれもアングスティペタラ)
- タマアジサイ/玉紫陽花(インボルクラタ)
- テマリタマアジサイ/手毬玉紫陽花(インボルクラタ品種ステリリス)
- ヤエノギョクダンカ/八重玉段花(インボルクラタ「ホルテンシス」)
- カシワバアジサイ/柏葉紫陽花/オークリーブドハイドランジア(いずれもクエルキフォリア)
- ヤハズアジサイ/矢筈紫陽花(シコキアナ)
- シネンシス変種シネンシス(異名)/アングスティセパラ/アングスティペタラ(いずれも異名)/カラコンテリギ/タイワンコンテリギ/トキワアジサイ/常盤紫陽花/タイワントキワアジサイ/台湾常盤紫陽花(いずれもシネンシス)
- ヤエヤマコンテリギ/シマコンテリギ(いずれもシネンシス変種コイズミアナ)
- ガクウツギ/額空木/コンテリギ(いずれもスカンデンス)
- ベニガクウツギ/紅額空木(スカンデンス品種ロゼア)
- マクロフィラ変種アクミナタ/マクロフィラ亜種セラタ(いずれも異名)/ヤマアジサイ/山紫陽花/サワアジサイ/沢紫陽花/コガク(いずれもセラタ)
- マクロフィラ亜種エゾエンシス/マクロフィラ変種メガカルパ(異名)/エゾアジサイ/蝦夷紫陽花/ムツアジサイ/陸奥紫陽花(いずれもセラタ変種エゾエンシス)
- ヒメアジサイ/姫紫陽花/ニワアジサイ/庭紫陽花(いずれもセラタ変種エゾエンシス品種クスピダタ)
- 四季咲きヒメアジサイ/四季咲き姫紫陽花(セラタ変種エゾエンシス品種クスピダタ「シキザキヒメ」)
- マクロフィラ亜種セラタ「プロリフェラ」(異名)/シチダンカ/七段花(いずれもセラタ品種プロリフェラ)
- マクロフィラ変種アクミナタ「ロサルバ」(異名)/ベニガク/紅額(いずれもセラタ品種ロサルバ)
- セラタ品種プルクラ/マクロフィラ品種プルクラ(いずれも異名)/キヨスミサワアジサイ/清澄沢紫陽花(いずれもセラタ「キヨスミ」)
- ノリウツギ/糊空木/ノリノキ/サビタ/サビタノキ(いずれもパニクラタ)
- ミナヅキ/ピラミッドアジサイ(いずれもパニクラタ「グランディフローラ」)
- コアジサイ/小紫陽花/シバアジサイ(いずれもヒルタ)
- アノマラ亜種ペティオラリス(異名)/ツルアジサイ/蔓紫陽花/ツルデマリ/ゴトウヅル(いずれもペティオラリス)
- ブレットシュナイデリ(ヘテロマラ品種ブレットシュナイデリの異名)
- アマギアマチャ/天城甘茶(マクロフィラ変種アマギアナ)
- オオアマチャ/大甘茶(マクロフィラ変種オアマチャ)
- アマチャ/甘茶/コアマチャ/小甘茶(いずれもマクロフィラ変種ツンベルギー)
- ガクアジサイ/額紫陽花/ガク/ガクバナ/ガクソウ(いずれもマクロフィラ変種ノルマリス)
- セイヨウアジサイ/西洋紫陽花(マクロフィラ品種ホルテンシア)(※ヨーロッパで改良された園芸品種群の総称)
- アジサイ/紫陽花(マクロフィラ品種マクロフィラ)
- クロジクアジサイ/黒軸紫陽花(マクロフィラ「ニグラ」)
- コガクウツギ/小額空木(ルテオ-ベノサ)
- 花火/花火アジサイ(いずれも「隅田の花火」)
(※データ:大阪市基準)