カエデ
イメージ
原産地
東アジア・小アジア・ヨーロッパ・北アメリカ
科
ムクロジ科(またはカエデ科)
高さ
2~30m(種類による)
花期
3~5月(種類による)
【紅葉・結実】10~11月
形態
落葉小高木~高木
別名等
アケル/アセル(いずれも属名)/楓/椛/紅葉/モミジ/メープル
(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)
日照
西日を避けた戸外の直射日光下(7月上旬~9月上旬は50%遮光したほうがよい)。
【補足】耐陰性は強いが、日光不足になると美しく紅葉しない。樹皮が薄く、幹や枝も日焼けに弱い傾向がある。
水やり
土の表面が乾けば与える(葉が傷みやすいので、水切れは厳禁)。
肥料
2月と、5月に、固形肥料の置き肥。
【補足】美しく紅葉させるため、7月以降は施肥をしない。
植え替え
11月中旬~3月中旬(なるべく年内に行う)。
【補足】2~3年に一度行う。
整姿
【剪定】剪定に弱いので、切り口に必ず癒合剤を塗る。適期以外に剪定すると、樹液が出て木が弱りやすい。枝の途中で切っても芽吹かないので、葉や芽のない枝を作らないよう注意。
冬剪定…11月下旬~12月下旬。
不要な枝は早めに間引く。(太い枝を切るのは好ましくない。)どうしても太い枝を切りたければ、落葉直前に行う。
夏剪定…5月下旬~8月上旬。
伸びすぎた新梢を切り縮める程度。
【摘葉】5~6月。
葉柄を残して葉だけを全て摘み取ると、再萌芽し、再度美しい新葉を観賞できるが、木に大きな負担がかかる。(盆栽仕立てのトウカエデにおいて行われる。)
繁殖
【挿し木】3月か、6~7月(種類によってはできないらしい)。
【取り木】5月上旬~6月下旬(高取り法)。
【接ぎ木】2~3月、5月下旬~9月下旬。
【タネまき】採ってすぐにまくか、乾かないよう保存して3~4月にまく。(一晩水に浸けてからまく。タネが完熟すると発芽まで2年かかるので、タネが完全に乾ききる直前に採種し、すぐにまく。)
耐暑性
強いが、強光と乾燥に注意。
耐寒性
とても強い(-25℃)が、凍ると枯れることがある。
解説
- 「カエルの手」を意味する「カエデ」が正式名だが、日本古来の、紅葉を楽しむための園芸品種群を、特に「モミジ」と呼ぶ。「モミジ」の名は、本来「紅葉(黄葉)する」という意味の「もみづ」という言葉が変化したものらしい。
- 種類が多いが、単に「モミジ」というと、紅葉の美しいイロハモミジの系統を指す。また、オオモミジやヤマモミジの系統も同様に美しく、人気がある。いずれも園芸品種が多い。なお、イロハモミジは、花も実も上向きにつくが、オオモミジやヤマモミジは下向きにつく。
- 紅葉の美しい種類は、他に、トウカエデやウリハダカエデ、ハウチワカエデ、ハナノキなどがある。これらは、上記の種類に比べ、葉の切れ込みが少ない。トウカエデは、名前の通り中国原産で、享保年間に渡来したとされる。
- ハナノキは、愛知・岐阜・長野のごく限られた地域のみに自生する固有種で、国の天然記念物に指定されている。紅葉だけでなく、花も濃紅色をしている。
- 樹皮の煎液で目を洗浄するメグスリノキも、この仲間である。暖地でも美しく紅葉するが、葉の形は繊細さに欠ける。よく似たミツデカエデも、同様の形状・性質である。
- クスノハカエデは、日本産のカエデとしては唯一の常緑種である。琉球諸島南部~中国南部に自生する。
- 西洋種では、ネグンドカエデ系の園芸品種「フラミンゴ」がよく知られる。あまり切れ込みのない葉に、白と桃色の斑が入り、とても美しい。その他、「オーラツム」などの品種がある。この仲間はやや暑さに弱く、寒冷地向き。雌雄異株。
- ヨーロッパ・コーカサス原産のノルウェーカエデは、葉が大きく、五裂している。こちらも品種が多く、葉が赤銅色の「クリムソン・キング」や、黄金葉の「プリンストン・ゴールド」、斑入りの「ドラモンディー」などがある。この仲間は枝が立ち上がり、樹形が自然にまとまる。この仲間もネグンドカエデ系と同様、耐暑性に欠ける傾向がある。
- その他の西洋種には、ヨーロッパ~西アジア原産で、斑入りの園芸品種が多いセイヨウカジカエデや、北アメリカ原産で、紅葉の美しいベニカエデなどがある。
- メグスリノキによく似た、中国原産のグリセウムも、紅葉の見事な種類である。メグスリノキに比べ、葉に切れ込みが入りやすい。樹皮がよくはがれる。
- トウカエデ系の「花散里」は、葉色が、春の芽出しから次々に変化するため人気がある。芽出し時の葉色は桃色だが、次第に白くなり、次いで、黄~黄緑~緑色へと変化する。秋には紅葉する。
- カエデといえば紅葉が想起されるが、中には、アサノハカエデ、イタヤカエデ類、テツカエデ、ヒトツバカエデ、ミツデカエデ、ミネカエデ、ヤマモミジなど、黄~山吹色に黄葉する種類も多い。また、ウリカエデ、オオイタヤメイゲツ、トウカエデ、ハナノキのように、紅色と黄色が入り混じるものもある。
- 種類によって、雌雄異株のものと、雌雄同株のものがある。雌雄異株なのは、ウリハダカエデ、カジカエデ、ネグンドカエデ、ハナノキ、ミツデカエデ、メグスリノキなど。
- 樹木類は通常、幹の周縁部分(樹皮に近い部分)の細胞だけが生きており、中心部分は死んでいる。(生きている部分を「辺材」、死んだ部分を「心材」といい、「心材」は材木として利用される。)しかし、カエデ類は、「辺材」の細胞が長期間生存するため、材木になりにくい。また、樹皮のコルク層が薄いため、樹皮でも光合成をすることができる。
注意点・病害虫
- 葉が繊細で、日焼けや水切れ、薬剤に敏感である。できれば真夏は遮光し、水切れ・強風を避ける。
- 新芽も黄緑色で美しいので、5~7月に摘葉(葉を全て取る)を行うと、再萌芽して、もう一度新緑を楽しめる。しかし、弱った木では枯死することもある。たとえ枯死しなくても、病気が出やすくなるのでおすすめしない。(主に、盆栽の世界で行われる。)
- 紅葉は、朝晩の温度差が大きい寒地のほうが、鮮やかな色になる。なお、土壌酸度がアルカリ性に偏っていると、良い色が出ない。
- 中性~酸性の土を好む。
- 春~初夏に低温が続くと、新梢に首垂細菌病が発生し、葉が黒褐色になって垂れ下がり、腐敗する。カスミンボルドーやサンボルドーなどを散布して予防する。その他、品種によっては、うどんこ病にもかかりやすい。
- カミキリムシの幼虫が幹の中に入り、木を枯らしてしまうことがある。日頃から観察し、幹に穴が開いておがくず状の糞が出ていたら、早めに殺虫剤を注入して駆除する。アブラムシにも注意。
- 根がセンチュウの被害を受けることがある。
- 病虫害が多いわりに、薬害が出やすいので、薬剤散布の前には、必ず試しがけをする。新葉や新梢は、特に薬剤に弱い。
余談
- メイプルシロップが取れるのは、北アメリカ原産のサトウカエデである。カナダの国旗にデザインされていることで有名。なお、イタヤカエデ.類の樹液も、少し糖分を含むらしい。
各種の和名・異名
- アマミカジカエデ/奄美梶楓(アマミエンセ)
- パルマツム変種アモエヌム(異名)/オオモミジ/大紅葉/ヒロハモミジ/広葉紅葉(いずれもアモエヌム変種アモエヌム)
- フカギレオオモミジ/深切大紅葉(アモエヌム変種アモエヌム品種パルマティパルティツム)
- ホロナイカエデ/幌内楓(アモエヌム変種アモエヌム品種ホロナイエンセ)
- ナンブコハモミジ/南部小葉紅葉(アモエヌム変種ナンブアヌム)
- パルマツム変種マツムラエ(異名)/ヤマモミジ/山紅葉(いずれもアモエヌム変種マツムラエ)
- ホンドウジカエデ(アモエヌム変種マツムラエ品種ラティアラツム)
- タムケヤマ/手向山(アモエヌム変種マツムラエ「オルナツム」)
- ノムラ/野村/ノムラモミジ/野村紅葉/野村楓/ムサシノ/武蔵野(いずれもアモエヌム「サンギネウム」)
- パルマツム「ショウジョウ-ノムラ」(異名)/ノムラ/野村/ショウジョウノムラ/猩々野村(いずれもアモエヌム「ショウジョウ」)
- アサノハカエデ/麻葉楓(アルグツム)
- シマウリカエデ/島瓜楓(インスラレ)
- オガラバナ/麻幹花/ホザキカエデ/穂咲楓/ロウソクカエデ/蝋燭楓(いずれもウクルンデュエンセ)
- オブロングム亜種イトアヌム(異名)/クスノハカエデ/樟葉楓(いずれもオブロングム変種イトアヌム)
- ホソエカエデ/細柄楓/ホソエウリハダ/細柄瓜膚(いずれもカピリペス)
- チドリノキ/千鳥の木/ヤマシバカエデ/山柴楓/ホーンビームメイプル(いずれもカルピニフォリウム)
- オオバチドリノキ/大葉千鳥の木(カルピニフォリウム品種マグニフィクム)
- オナガカエデ/尾長楓(カワカミイ)
- コブカエデ/瘤楓/ヘッジメイプル(いずれもカンペストレ)
- ギンナラ/タタリクム変種ギンナラ(いずれも異名)/カラコギカエデ/鹿小木楓(いずれもギンナラ変種アイヅエンセ)
- ウリカエデ/瓜楓/メウリカエデ/メウリノキ(いずれもクラタエギフォリウム)
- アカハダメグスリノキ/赤肌目薬木/グリセウムカエデ/ペーパーバークメイプル(いずれもグリセウム)
- ギンカエデ/銀楓/ギンヨウカエデ/銀葉楓/シルバーメープル(いずれもサッカリヌム)
- サッカリヌム品種ピラミダレ/サッカリヌム「ファスティギアツム」(いずれもサッカリヌム「ピラミダレ」の異名)
- サトウカエデ/砂糖楓/カナダアカカエデ/シュガーメイプル(いずれもサッカルム)
- コハウチワカエデ/小葉団扇楓/イタヤメイゲツ/板屋名月(いずれもシーボルディアヌム)
- ミツデカエデ/三手楓(シッシフォリウム)
- ハウチワカエデ/葉団扇楓/メイゲツカエデ/名月楓(いずれもジャポニクム)
- マイクジャク/舞孔雀(ジャポニクム「アコニティフォリウム」)
- オオイタヤメイゲツ/大板屋名月(シラサワヌム)
- ジャポニカ「オーレウム」(異名)/オウゴンイタヤ/黄金板屋/黄金/金隠れ/隠れ笠(いずれもシラサワヌム「オーレウム」)
- ツタカエデ/蔦楓(シルシナツム)
- シナカエデ/支那楓(ダビディー)
- ミネカエデ/峰楓(チョウノスキー変種チョウノスキー)
- アウストラレ(異名)/ナンゴクミネカエデ/南国峰楓(いずれもチョウノスキー亜種アウストラレ)
- カジカエデ/梶楓/オニモミジ/鬼紅葉(いずれもディアボリクム)
- ヒトツバカエデ/一葉楓/マルバカエデ/丸葉楓(いずれもディスティルム)
- ヒナウチワカエデ/雛団扇楓(テヌイフォリウム)
- オニメグスリ/鬼目薬(トリフロルム)
- キタノテツカエデ/北鉄楓(ニッポニクム亜種オリエンタレ変種オリエンタレ)
- コウシンテツカエデ/甲信鉄楓(ニッポニクム亜種オリエンタレ変種コシネンセ)
- テツカエデ/鉄楓(ニッポニクム亜種ニッポニクム変種ニッポニクム)
- ナンゴクテツカエデ/南国鉄楓(ニッポニクム亜種ニッポニクム変種アウストラレ)
- ネグンドカエデ/トネリコバノカエデ(いずれもネグンド)
- イロハモミジ/伊呂波紅葉/タカオカエデ/高雄楓/タカオモミジ/高雄紅葉/コハモミジ/小葉紅葉(いずれもパルマツム)
- セイガイ/青崖(パルマツム「ルベルム」)
- カギリニシキ/限り錦(パルマツム「ロゼオ-マルギナツム」)
- イタヤカエデ/板屋楓(ピクツム)
- ウラジロイタヤ/裏白板屋(ピクツム亜種グラウクム)
- イトマキイタヤ/糸巻板屋/モトゲイタヤ(いずれもピクツム亜種サバティエリ)
- タイシャクイタヤ/帝釈板屋(ピクツム亜種タイシャクエンセ)
- モノ変種コンニベンス「ディッセクツム」(異名)/エンコウカエデ/猿猴楓/アサヒカエデ(いずれもピクツム亜種ディッセクツム)
- モノ変種コンニベンス(異名)/ウラゲエンコウカエデ/裏毛猿猴楓(いずれもピクツム亜種ディッセクツム品種コンニベンス)
- ケウラゲエンコウカエデ/毛裏毛猿猴楓(ピクツム亜種ディッセクツム品種プベルルム)
- オニイタヤ/鬼板屋(ピクツム亜種ピクツム)
- ミヤマオニイタヤ/深山鬼板屋(ピクツム亜種ピクツム品種プルビゲルム)
- アカイタヤ/赤板屋/ベニイタヤ/紅板屋(いずれもピクツム亜種メイリー)
- エゾイタヤ/蝦夷板屋(ピクツム亜種モノ)
- オオエゾイタヤ/大蝦夷板屋(ピクツム亜種モノ品種マグニフィクム)
- ハナノキ/花の木/ハナカエデ/花楓(いずれもピクナンツム)
- トウカエデ/唐楓/サンカクカエデ/三角楓/スリートゥーストメイプル(いずれもブエルゲリアヌム)
- タイワントウカエデ/台湾唐楓/ミヤサマカエデ/宮様楓(いずれもブエルゲリアヌム変種フォルモサヌム)
- セイヨウカジカエデ/西洋梶楓/シカモア/シカモアカエデ/グレートメイプル(いずれもプセウドプラタヌス)
- ヨーロッパカエデ/ノルウェーカエデ/ノルウェーメイプル(いずれもプラタノイデス)
- シロスジカエデ/白筋楓(ペンシルバニクム)
- 五葉楓(ペンタフィルム)
- ニコエンセ(異名)/メグスリノキ/目薬の木/チョウジャノキ/長者の木(いずれもマキシモウィッツィアヌム)
- ヒロハカエデ/広葉楓(マクロフィルム)
- コミネカエデ/小峰楓(ミクランツム)
- クロビイタヤ/黒皮板屋(ミヤベイ)
- ミヤベイ変種シバタエ(異名)/シバタカエデ/柴田楓(いずれもミヤベイ品種シバタエ)
- カピリペス変種モリフォリウム(異名)/ヤクシマオナガカエデ/屋久島尾長楓(いずれもモリフォリウム)
- フランスモミジ(モンスペッスラヌム)
- ウリハダカエデ/瓜膚楓/ウリ/ウリノキ(いずれもルフィネルベ)
- ハツユキカエデ/初雪楓(ルフィネルベ品種アルボリンバツム)
- ベニカエデ/紅楓/アカカエデ/赤楓/アメリカハナノキ/レッドメイプル/スカーレットメイプル/スワンプメイプル(いずれもルブルム)
- フリードマンニー「アームストロング」(ルブルム「アームストロング」の異名)
- フリードマンニー「モーガン」(ルブルム「モーガン」の異名)
(※データ:大阪市基準)