菌核病
糸状菌による病害。ひと口に「菌核病」といっても、複数の種類があり、発病の部位も異なる。気温20℃前後で湿度が高いと多発する。発病直前(3月か10月頃)、株元に、淡褐色をした、径5mm程度のキノコ(子のう盤)が生える。
病原菌は、キノコを形成するために紫外線を必要とする。また、菌核が地下10cm以上の深さに埋められると、ほとんど発芽できなくなるという。
発生時期
【菌核病・黒腐菌核病】3~11月(酷暑期は一時的に減る。)
【枝枯菌核病・花腐菌核病・幼果菌核病】3~6月
被害箇所
【枝枯菌核病】新梢など。
【菌核病】地際部分、葉、花、葉柄、果実、花蕾など。
【黒腐菌核病】地際部分、根、葉など。
【花腐菌核病】花弁、がく、新葉など。
【幼果菌核病】新梢、新葉、果柄、未熟な果実など。
主な症状
【枝枯菌核病】枝などに灰褐色の病斑ができ、次第に拡大する。病斑が枝を一周すると、それより上部が枯れる。病斑上には、2mm程度の黒い菌核を生じる。
【菌核病】不整形で褐色~淡褐色・灰白色などをした水浸状病斑ができ、軟化腐敗する。病斑上には、白い綿状のカビを生じることが多い。やがて、病斑の表面または内部に、ネズミの糞に似た黒い菌核を生じる。(新しい菌核は白い。)
【黒腐菌核病】褐色の斑点ができ、内部まで進行する。やがて、病斑部分が黒く変色して腐敗し、へこむ。その後、ネズミの糞に似た黒い菌核を生じる。被害株は黄色くなって萎れ、枯死する。
【花腐菌核病】花弁などに褐色~淡褐色のシミができ、次第に拡大しながら軟化腐敗する。腐敗部分は、表面に黒い菌核を生じたり、灰白色の胞子塊に覆われることがある。
【幼果菌核病】未熟果などが褐色~黒褐色になって枯れ、腐って落ちる。干からびて枝に残ることもあり、その場合、翌年の発生源になる。
対策
【枝枯菌核病・花腐菌核病・幼果菌核病】被害部分を全て除去し、薬剤を使用。
【菌核病・黒腐菌核病】被害株は周りの土とともに処分する。
【薬剤】【散布・土壌灌注】アミスター10、アミスター20、エムダイファー、オーソサイド、オキシラン、キャプタン、グランサー、グリーンダイセンM、グリーンペンコゼブ、ゲッター、シャルマット、スミレックス、セイビアーFL20、ダコニール1000、ダコレート、ダコレックス、トップグラスDF、トップジンM、バシタック、パスポート、バリダシン、プラタン、フルピカ、ヘリテージ、ベルクート、ベルクローブ、ベンレート、フロンサイド、フロンサイドSC、ペンコゼブ、ポリオキシンAL、ポリベリン、ラビライト、リゾレックス、ロブドー、ロブラール、ロブラール500アクアなど。
【注意点】キノコの生じる3月または10月に散布を開始する。
予防策
土の水はけを改善する。通風を改善する。株に水をかけない。できれば雨に当てない。連作を避ける。窒素肥料を控える。土に未熟な有機物を混ぜない。有機質肥料を控える。土の過湿を避ける。株元をマルチングする。冬季に天地返しを行う。
被害株に用いた土や器具は消毒するまで再利用しない。株とその周囲を近紫外線除去フィルムで覆い、胞子の形成を阻害する。株に無用な傷を付けない。傷を付けたら傷口が乾くまで濡らさない。
【薬剤】【散布・土壌灌注・種苗粉衣】上記。樹木類は、冬季に石灰硫黄合剤を散布。
主な被害植物
【枝枯菌核病】
【樹木・果樹】スギ類、レンギョウなど。
【菌核病】
【草花・鉢花】アネモネ、カーネーション、ガーベラ、カスミソウ、キク、キンギョソウ、キンセンカ、グラジオラス、スイートピー、ストック、ダリア、チドリソウ、チューリップ、デージー、トルコキキョウ、ニチニチソウ、ハナナ、ヒマワリ、フリージア、ペチュニア、ポピー、マーガレット、リアトリス、ルピナスなど。
【樹木・果樹】サザンカ、ジンチョウゲなど。
【ハーブ・野菜】アブラナ、イチゴ、インゲン、エダマメ、エンドウ、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、サラダナ、スイカ、ソラマメ、チンゲンサイ、トマト、ナス、ネギ、ブロッコリー、ミツバ、ラッカセイ、レタス類など。
【ラン】カタセタム、カトレア、セロジネ、バルボフィラム、ビフレナリア、レリアなど。
【黒腐菌核病】
【草花・鉢花】ユリなど。
【ハーブ・野菜】ニラ、ネギなど。
【花腐菌核病】
【樹木・果樹】サツキ、西洋シャクナゲ、ツツジ類、ツバキ類など。
【幼果菌核病】
【樹木・果樹】オウトウ、サクラなど。