苗黒腐病/苗立枯病
糸状菌による病害。別名「ダンピング・オフ」とも呼ばれる。育苗経験のある人なら、一度は遭遇するほどありふれた病気。気温17~28℃の比較的高温の時期に多発する。
苗黒腐病は、ピシウム属菌による。一方、苗立枯病の病原菌はさまざまで、疫病菌、ピシウム属菌、フザリウム属菌、リゾクトニア属菌などがある。発病に際しては、このうち一種類が関与する場合と、複数種が関与する場合がある。
スイートピーなどに発生する「腰折病」も、同様の病気。こちらはピシウム属菌による。
発生時期
3~11月
被害箇所
【苗黒腐病】ランの茎、葉の基部、バルブなど。
【苗立枯病】地際部分、根など。
主な症状
【苗黒腐病】黒色の水浸状病斑ができ、急速に拡大・腐敗する。やがて、バルブや根まで腐敗が進行し、被害株は枯死する。
【苗立枯病】発芽後まもない幼苗や、定植前の小苗、挿し木した穂木などの地際部分に、褐色~黒褐色の水浸状病斑ができてへこみ、軟化腐敗する。根も褐色になって腐敗する。被害株は倒れて枯死する。枯死株の周辺には、くもの巣状のカビを密生することがある。苗床や挿し木床では、一株ずつではなく、集団で発生する。
対策
被害株は周りの土とともに処分する。苗床や挿し木床で発生した場合は、健全株だけを別の土に移植する。
【薬剤】【散布・土壌灌注・土壌混和】オーソサイド、キャプタン、キャプレート、グランサー、シャルマット、セレンターフ、ダコニール1000、ダコレート、タチガレエース、タチガレン、トップグラスDF、トップジンM、バシタック、パスポート、バリダシン、プレビクールN、ベンレート、ベンレートT、ホーマイ、モンカット、モンセレン、リゾレックス、リドミルMZ、リドミル銅など。
予防策
出所不明な怪しいタネをまかない。苗床や挿し木床には清潔な土と器具を用いる。土の水はけを改善する。土の過湿を避ける。土に未熟な有機物を混ぜない。連作を避ける。清潔な水を与える。通風を改善する。近くに被害株があれば除去する。
株に水をかけない。被害株に用いた土や器具は消毒するまで再利用しない。被害株に触れた手で健全株に触れない。植物によっては種子伝染するので、健全なタネをまく。鉢底から出た水が他の株に触れないようにする。土壌酸度がアルカリ性に偏らないようにする(病原菌がリゾクトニア属菌の場合のみ)。
【薬剤】【散布・土壌灌注・種苗浸漬・種苗粉衣】上記と同じ。
主な被害植物
【苗黒腐病】
【ラン】カトレア、シンビジウム、デンドロビウム、パフィオペディラム、バンダ、ブラサボラ、レリアなど。
【苗立枯病】
【草花・鉢花】カスミソウ、キンギョソウ、サクラソウ、シクラメン、シネラリア、ストック、ダリア、ナデシコ類、ニチニチソウ、ヒマワリ、パンジー、プリムラなど。
【樹木・果樹】サツキ、ツツジ類、マツ類など。
【ハーブ・野菜】アーティチョーク、インゲン、エンドウ、オクラ、カブ、カボチャ、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、コマツナ、サラダナ、スイカ、ダイコン、タマネギ、トウモロコシ、トマト、ナス、ニガウリ、ネギ、バジル、ピーマン、フェンネル、ブロッコリー、ホウレンソウ、ミツバ、メロン、ラッカセイ、レタス類など。