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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ウイルス病/ウイロイド病

ウイルスまたはウイロイドによる病害。症状によって、非常に多くの病名を持つため、「主な病名」という項目で、一番下に載せた。

植物体の一部しか発病していなくても、病原体は全体に広がっていることが多い。潜伏期間は、病原体や植物の種類によって、数日~数年と幅がある。
ウイルスには多くの種類があり、中でも、CMV(キュウリモザイクウイルス)は、寄主となる植物が最も多く、被害も最大である。なお、ラン科植物ではCymMV(CyMV、シンビジウムモザイクウイルス)の寄主範囲が最も広く、ORSV(オドントグロッサムリングスポットウイルス)がこれに続く。

病原体を伝播する害虫としては、アブラムシが最もよく知られる。しかし、アブラムシは必ずしも集団を形成するわけではなく、「数匹が風に乗って飛来し、少しの時間(1分以内)吸汁して、すぐ飛び去る」という加害の仕方もする。ウイルスは、そうした僅かな加害を受けただけで感染することがあり、防除を困難にしている。なお、アブラムシによって伝播されるウイルスは、種子伝染しないものが多いらしい。

余談だが、アオキ、オモト、ハラン、ツバキ、ツワブキなどでは、葉や花に生じた不規則な「ウイルス斑」に観賞価値を見出し、珍重する。(ただし、斑入り植物=ウイルス病というわけではなく、遺伝性の斑も多いので、偏見を持たない。)これらの斑を生じさせるウイルスは、毒性や伝染力が弱く、危険が少ない。
一般的に、性質上現れた斑は、色や境界線が鮮明だが、ウイルス斑は、全体がぼんやりと不明瞭となる傾向がある。また、葉が古くなると、斑の中心部が壊死してくることがある(特にツワブキ)。

ウイロイドによる病害は、高温の年ほど症状が悪化するという。

やや余談になるが、カンキツ類に葉の黄化や果実の緑斑をもたらす「グリーニング病」は、細菌による病害だが、治療不可能なことや、接ぎ木伝染・虫媒伝染(媒介虫はミカンキジラミ)することから、ウイルス病と同様に扱うことがある。

発生時期

周年

被害箇所

葉、茎、花、花茎、果実、バルブ、シースなど。根を除く、ほぼ全体。(根も感染するが、目立った症状がない。)

主な症状

独特な病斑(小斑点・斑紋・かすり模様・くさび型模様・網目模様・縞模様・すじ模様、輪状模様など)が現れる。病斑の大きさは様々で、色は、褐色・白・黄・黄緑・黒・赤紫など。病斑の輪郭は不鮮明。しばしば、茶~黒褐色の壊疽(えそ)斑や、へこみ・黄化・萎縮・変形を伴う。数種類のウイルスが重複感染すると、症状も激しくなる傾向がある。(※それとは逆に、ウイルス同士で牽制しあい、表立った症状が出てこないこともある。)
症状が進行すると、株の一部、または株全体が矮化したり、奇形化したり、汚らしい壊疽斑だらけになったりして、極端に生育が衰え、やがて枯死する。その反面、株に体力があると、症状がほとんど出ないこともある(「不顕性感染」)。

葉は最も症状を見つけやすい部位である。病斑は葉脈に沿って現れることが多く、葉の裏表は問わない。また、上記の症状以外にも、葉脈だけが黄色~赤褐色・黒褐色になったり、逆に、葉脈以外の部分だけが変色することもある。葉全体が黄色くなることもある。症状は、古葉より新葉に顕著に現れる傾向がある。

花も比較的症状が出やすい。葉と同様、花弁の脈に沿って病斑が現れることが多い。開花後、数日経ってから病斑が目立ってくる。花が奇形化したり、妙に小さくなったり、花持ちが悪くなることもある。また、花後の結実率も低下する。

果実の場合は、まず、株が弱るために、着果数が減る。着果しても、小さいまま色付いたり、裂果したり、収穫前に果肉が腐ったり、味が悪くなったりする。また、果皮にまだら模様が現れたり、でこぼこになったり、コルク化することもある。

樹木類が被害を受けると、幹や葉などに小さなコブができる、ヤニを吹く、樹皮がザラザラに荒れるなど、特有の症状が出る。また、樹皮下に、褐色の不整形斑点(細胞の壊死痕で、「ネクロシス」という)や、縞のような細長いへこみ(「ピッティング」という)ができたりする。
接ぎ木されている木の場合、台木と穂木の境目の樹皮下に、黒っぽい筋状のへこみができ、生育が悪くなることがある。その他、接ぎ木や挿し木の活着率が悪くなったりする。

ラン科植物は非常に被害を受けやすい。感染した場合、被害葉を裏側から透かすと、葉脈が白っぽく透けたりする。また、ノビル系・セッコク系デンドロビウムの場合、バルブの上部へ行くほど、花が小さくなったりする。

カンキツ類も被害を受けやすい。感染すると、未熟な緑色の果実に、淡黄色のまだら模様を生じることがある。(「トラミカン」という。)
また、カンキツ類には、ウイロイドによる「エクソコーティス病」という独特な病気がある。被害株は、接ぎ木の台木の、地際部分の樹皮が腐敗してささくれ立ち、ホタテの貝殻に似た縦方向の亀裂を生じる。

対策

治療不可能。被害株は周りの土とともに処分する。処分しない場合は隔離し、世話を一番最後にまわす。

予防策

病原体を媒介する害虫(アブラムシ、アザミウマ、ウンカ、カイガラムシ、コナジラミ、センチュウ、ハムシ、ハモグリダニ、フシダニ、ナメクジ、ヨコバイなども)を防除する。
被害株から、子株や子球・挿し穂・穂木などを取らない。接ぎ木の台木にも使わない。(種子伝染するウイルスは多くないが、罹病株からの採種は、なるべく避ける。なお、ウイロイドは種子伝染するものが結構あるらしい。)
栽培していた土や、被害株の残骸(古い根など)、被害株が触れた水(水やり後、鉢底から出る水など)なども感染源となるため、土・鉢の再利用を避け、鉢底から出た水を健全株に触れさせない。連作も避ける。
株同士が接触すると被害が拡大するため、株間を取る。周囲の雑草も感染源となるので、きちんと除草する。
市販の植物がすでに罹病していることがあるため、よく観察して購入する。

被害株の汁液が付いた器具で健全な植物に触れると伝染するので、一株ごとに、下記のいずれかの方法で消毒する。

同様に、被害株に触れた手で健全な植物に触ると伝染するので、上記のレンテミン液剤か、第3リン酸ソーダで消毒する。(第三リン酸ソーダは強アルカリ性のため、肌の弱い人はレンテミン液剤で。)それらが無ければ、石けんでよく手を洗い、爪の間まできれいにする。

夏~秋まきのアブラナ科野菜の場合、タネまきの適期を厳守する。
果樹や野菜類では、耐病性台木に接がれた株や、耐病性品種を栽培する。
カンキツ類の場合は、ウイルスの中間宿主となるサンゴジュやゲッキツを近くに植えない。特に、サンゴジュから伝染する場合、土壌伝染があるので注意。


【薬剤】【散布】レンテミン。

【注意点】レンテミンは、ウイルスの感染力を失わせる予防薬であり、治療薬ではないため、すでに罹病した株には効果が無い。また、予防効果が認められるのは、ORSV(オドントグロッサムリングスポットウイルス)と、CyMV(シンビジウムモザイクウイルス)の二種類だけである。これらのウイルスはランにしか感染しない。

主な被害植物

非常に多い。下記は一例。

【草花・鉢花】アイリス類、アザミ類、アスター、アネモネ、アマリリス、アルストロメリア、イベリス、インパチエンス、エキザカム、エンジェルストランペット、オーニソガラム、オシロイバナ、オダマキ、カーネーション、ガーベラ、カスミソウ、カッシア、カラスウリ、カランコエ、カルセオラリア、カンナ、カンパニュラ、キキョウ、キク、キルタンサス、キンギョソウ、キンセンカ、グラジオラス、クローバー、グロキシニア、クロッカス、グロリオーサ、ケイトウ、コスモス、サクラソウ、サルビア類、ジギタリス、シクラメン、シザンサス、シネラリア、ジャーマンアイリス、シャクヤク、スイートピー、スイセン、スターチス、ストック、スミレ、セラスチウム、ゼラニウム、セントポーリア、センニチコウ、ソリダスター類、ダツラ、ダリア、チューリップ、ツユクサ、デージー、デルフィニウム、トケイソウ、トルコキキョウ、ナデシコ類、ニオイバンマツリ、ニチニチソウ、バーベナ、ハイビスカス、ハゲイトウ、ハコベ、パッションフルーツ、ハナショウブ、ハナタバコ、ハナトラノオ、パンジー、ヒアシンス、ヒオウギ、ヒマワリ、ヒャクニチソウ、ブーゲンビレア、フリージア、フリチラリア、プリムラ、ベゴニア類、ヘチマ、ペチュニア、ベニバナ、ホウセンカ、ホオズキ、ホトトギス、マツバボタン、マリーゴールド、ミヤコワスレ、ムギワラギク、ムラサキツユクサ、モルセラ、ヤグルマギク、ユリ、ラケナリア、ラナンキュラス、ランタナ、リンドウ、ロベリア、ユーチャリス、ユキノシタなど。

【観葉・多肉】アナナス類、アフェランドラ、イレシネ、オモト、ギヌラ、ギボウシ、コーヒーノキ、ココヤシ、コリウス、コルムネア、サボテン類、シバ類、シンゴニウム、セダム類、ソテツ、ツワブキ、ドラセナ類、ハラン、ペペロミアなど。

【樹木・果樹】アーモンド、アオキ、アジサイ、アボカド、アンズ、イチョウ、ウメ、オウトウ、カイドウ、カキ、カナメモチ、カンキツ類、キウイ、キョウチクトウ、クコ、クチナシ、サカキ、サクラ、ザクロ、サザンカ、サンゴジュ、シキミ、シャリンバイ、シラカバ、ジンチョウゲ、スモモ、チャ、ツタ、ツバキ類、トベラ、ナシ、ナンテン、パッションフルーツ、パパイヤ、ブドウ、ブルーベリー、プルーン、マサキ、モチノキ類、モモ、ヤツデ、ユズ、リンゴなど。

【ハーブ・野菜】アカザ、アサツキ、アズキ、アスパラガス、イタドリ、イチゴ、イネ、インゲン、エダマメ、エンドウ、オオバコ、オクラ、カブ、カボチャ、カラシナ、カリフラワー、キノア、キャベツ、キュウリ、キンサイ、クズ、ケール、コウサイ、ゴボウ、ゴマ、コマツナ、コンニャク、ササゲ、サツマイモ、サトイモ、サトウキビ、シソ、ジャガイモ、シュンギク、ショウガ、食用ホオズキ、スイカ、ズッキーニ、セリ、セロリ、ソラマメ、ダイコン、タバコ、タマネギ、タンポポ、チンゲンサイ、ツルナ、テンサイ、トウガラシ、トウモロコシ、ドクダミ、トマト、ナタネ、ニガウリ、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ、ハクサイ、ハコベ、バジル、バナナ、ピーマン、フキ、フダンソウ、ブロッコリー、ベルガモット、ホウレンソウ、ホップ、ミツバ、ミョウガ、ミント、ムギ、メロン、ヤマイモ、ヤロウ、ユウガオ、ヨモギ、ラッカセイ、ラッキョウ、レタス類、ワサビなど。

【ラン】アカカリス、アクリオプシス、アシネタ、アスコセントラム、アペンディクラ、アラクニス、アランセラ、アルンディナ、アングレカム、アングロア、イッケイキュウカ、イノブルボン、ウチョウラン、エピデンドラム、エビネ、エリデス、オドントグロッサム、オルキス、オンシジウム、カタセタム、カトレア、カランセ、ガンゼキラン、カンラン、グラマトフィラム、ケイラン、コクラン、コクリオダ、コクレアンテス、コラックス、コルマナラ、コンドロリンカ、サーコキラス、サギソウ、ジゴペタラム、シプリペディウム、シュンラン、ションバーキア、シンビジウム、スタンホペア、ステニア、ステノグロッティス、スパソグロッティス、セッコク、セロジネ、ソフロニティス、タイリントキソウ、ダクティロリザ、ディプロカウロビウム、デンドロキラム、デンドロビウム、ドックリリア、ドリティス、ネオガードネリア、ネジバナ、バニラ、パピリオナンテ、パフィオペディラム、バプチストニア、ハベナリア、バルボフィラム、バンダ、ビフレナリア、ファイウス、ファレノプシス、プテロスティリス、フラグミペディウム、ブラサボラ、ブラッシア、フリッキンゲリア、プレイオネ、プレウロサリス、ブレティア、プロメネア、フントレア、ペスカトレア、ペリステリア、ホウサイラン、ポリスタキア、ボレア、マキシラリア、マスデバリア、ミルトニア、ユーロフィア、ユーロフィエラ、リカステ、リパリス、リンコスティリス、リンコレリア、レナンセラ、レリア、ロドリゲッチア、ロビクェティアなど。

主な病名

【ウイルス病】味無果病(あじなしかびょう)、萎黄病、萎縮病、ウッディネス病、雲紋病、えそ病、えそ萎縮病、えそ果病、えそ斑病、えそ斑点病、えそ斑紋病、えそモザイク病、えそ輪点病、えそ輪紋病、黄化えそ病、黄化葉巻病、黄色網斑病、黄色斑紋病、黄色斑紋モザイク病、黄色輪紋病、黄斑病、奇形果病、奇形葉モザイク病、金砂(きんすな)、グラッシースタント病(褐穂黄化病)、黒すじ萎縮病、黒条萎縮病、虎斑病、虎斑様症、縞葉枯病(幽霊病)、条斑病、すじ萎縮病、すじえそ病、ステムピッティング病、叢根病(そうこんびょう)、粗皮病、帯状粗皮病、退緑黄化病、退緑斑病、退緑輪紋病、ダイヤモンドモットル病、高接病(たかつぎびょう)、接木部異常病、トラミカン、バーモットル病、花の斑入病、葉巻病、斑紋モザイク病、斑葉病、斑葉モザイク病、微斑モザイク病、斑入病、斑入果病、ファンリーフ病、ブラックデス、ベインエネーション病、モザイク病、葉縁えそ病、葉脈モザイク病、ラギットスタント病(旋葉萎縮病)、リーフロール病、緑斑モザイク病、輪点病、輪紋病、輪紋モザイク病、矮化病など。

【ウイロイド病】イエロースペックル、エクソコーティス病、黄果病、カダンカダン病、奇形果病、くぼみ果病、さび果病、サンブロッチ病、粗皮病、斑入果病、ブリスタキャンカー、やせいも病、ゆず果病、矮化病など。