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素人園芸解説 -私はこう育てる-

熱帯性スイレン

イメージ

原産地

世界の熱帯~亜熱帯

スイレン科

高さ

5~20cm(水上部分)

花期

5~11月

形態

多年草または春植え球根

別名等

ニンファエア(属名)/熱帯スイレン/トロピカルウォーターリリー


ニオイスイレン/匂睡蓮(オドラタ)
ケープブルーウォーターリリー(カペンシス)
タイ・ニムファ(ルブラ)
ドウベン(「ドウベニアナ」)

日照

4月中旬~11月中旬の生育期は、戸外の直射日光下(きわめて日光を好む)。
越冬中は、日光に当てなくてよい。

【補足】越冬中に周囲の温度が変動するのはよくないので、冬は日光不要。
冬も高い水温を保てる場合は、植物用育成灯を使い、光量を補う(窓越しの日光だけでは不足する)。

水やり

一年中、鉢を水に沈めておくか、水の漏れない容器に直接土を入れて植える(水深は、5~20cm程度)。

【補足】最初から水深が深いと生育が悪くなるため、まず3cm程度から始め、葉の生長とともに、徐々に深くする。真夏は水温が上がりやすいので、なるべく水深を深くする。

肥料

6~9月に、固形肥料の置き肥(緩効性肥料を用い、土中に埋め込む)。

【補足】元肥は入れない方がよい。窒素(N)は控えめに。有機質肥料は、施しすぎると腐敗し、根を傷める。
水中では肥料の分解が早いので、一度に施す量は少なめとし、回数を多くする。施肥が過剰になると、アオミドロや藻が生え、水が汚れる。
晩秋まで肥料成分が残ると、球根が腐りやすくなるため、9月で施肥を停止する。

植え替え

5月上旬~6月中旬、5号鉢に1球(小型種は4号鉢でもよい)。

【補足】腐りやすいので毎年植え替えるが、時期を焦らない。(十分に発芽する前に植え替えると、腐ることがある。)根茎や茎葉を乾かさないよう、手早く済ませる。
植える深さは、球根の先端(生長点)が土の上にわずかに出る程度。

整姿

株の中心部に日光が当たらないと花が咲かず、生育も悪くなるので、茂りすぎたら適当に取り除く。(重なり合ってる葉は、古いものから順に取り除き、常に10枚程度は残しておく)。
枯れた下葉や花がらは、まめに取り除く。

繁殖

【株分け】植え替えと同時期(殖えた球根を適当に取り外す)。

【ムカゴ採取】7~9月(「ムカゴ種」のみ可能)。

耐暑性

強いが、水温が40℃以上にならないようにする。

耐寒性

水温10℃を保つ。

【補足】高温にあわせない。温度を高く保つことより、大きく変動しないことのほうが大事。

解説

  1. スイレンの仲間には、温帯性の「温帯スイレン」と、熱帯性の「熱帯スイレン」があり、ここで取り上げているのは後者である。温帯スイレンについては、別ページを参照。
  2. 従来、熱帯スイレンは、家庭園芸で栽培しにくい植物と思われてきた。しかし最近は、小鉢でも開花することや、意外と耐寒性のあることが知られるようになり、人気が出てきた。なお、アクアリウムの世界では、水中葉を楽しむ水草として、以前からよく栽培されている。熱帯魚用の設備を整えた水槽に植え込むと、機嫌良く生長するので、その方面に詳しい人にはおすすめ。
  3. 朝に開花し、昼過ぎまで咲く「昼咲き種」と、夜に開花し、朝まで咲く「夜咲き種」がある。一般的なのは昼咲き種のほうで、ここでも昼咲き種を念頭に解説している。
  4. 花色は、白、黄、赤、桃、紅、青、紫など。とりわけ、温帯スイレンには存在しない、青~紫色の花色が大きな魅力である。花には芳香がある。
  5. 花茎が水面から伸び上がり、やや高い位置で開花する。温帯スイレンのように、水に浮かぶような形で咲くことはない。
  6. 種類によっては、葉に褐色の斑模様が入り、花の無い時期でも楽しめる。
  7. 熱帯スイレンは、温帯スイレンとは異なり、地下に球状の塊茎を持つのが特徴である。ちなみに温帯スイレンの地下茎は、ワサビのお化けのような形をしている。
  8. 原種の一つであるミクランサは、葉の中心にムカゴを作って芽と根を出し、新しい個体を作る性質がある。このミクランサの血を引く品種群にも同じ性質があり、「ムカゴ種」と総称される。ムカゴ種は総じて丈夫で、耐寒性も強く、育てやすい傾向がある。代表的な品種に、「ティナ」「ドウベン(ドウベニアナ)」「プロイデン」などがある。
  9. 最近は、小さなポット苗が市販され、入手しやすくなった。ポット苗を入手したら、根鉢を崩さないよう注意しながら、少し大きめの鉢に定植する。ポットが4号以上の大きさなら、そのまま睡蓮鉢などに沈めて育てることも可能。
  10. オーストラリア北東部原産の原種ギガンテアは、名前の通り、非常に大型で、径25cm以上の巨大な青花を咲かせる。大型種だけに家庭での栽培は容易でなく、水深は50cm以上必要。葉も非常に大きいため、池が無いと難しい。植物園の温室などで見かける。

注意点・病害虫

  1. ムカゴ種であっても、品種によって、ムカゴの付きやすさに差がある。ほとんどムカゴのできないムカゴ種も存在する。
  2. 茎葉と根が十分に育ったムカゴがあれば、親株の茎葉ごと採取し、別の鉢に植え付ければ、簡単に殖やせる。根が少なければ、子株が浮かび上がらないよう、U字ピンなどで土に固定し、発根を待つ。
  3. 水生植物なので、鉢に植えてバケツなどの容器に沈めて栽培するとよい。睡蓮鉢などに直接土を入れて植える場合は、植えた後の移動が大変なので、置き場所をよく考える。なお、熱帯スイレンは、株の大きさと、植わっている容器の大きさが比例する傾向があり、大きな容器に植えると、とても大きく育つ。
  4. 植える用土は、荒木田土が最適だが、水に浸けても浮かばない粘土質の重い土なら何でもよい。赤玉土なども使える。その場合、腐葉土を2割ほど混ぜて手でこね、土の粒をよく潰す。(品質の悪い赤玉土は粒が崩れやすいため、こんな時に重宝する。)また、様々な用土を1mm目のふるいにかけた後に残った「みじん」も使える。
  5. 植える鉢の大きさは、小型種で4号、中~大型種で5号鉢が目安。あまり大きな鉢に植えず、小さめの鉢で育てたほうが、何かと扱いやすい。たくさんの花を楽しみたければ、大きな鉢に植える。
  6. 夜咲き種は、昼咲き種のように小さな鉢で育てることはできないので、6号以上の大鉢に植え込む。
  7. 鉢を沈める容器の大きさは、最低でも直径40cm欲しい。適切な水深を確保できるよう、なるべく深い容器を用いる。容器に直接土を入れて植え込む場合も同様。
  8. 夏場は、水が腐ったり、ボウフラが発生したりするので、頻繁に水を替える。アオミドロが発生したら、すぐに取り除く。珪酸塩白土(商品名「ミリオン」)を網袋などに詰めて沈めておくと、水が腐らないのでおすすめ。
  9. アブラムシが付きやすい。薬剤でも駆除できるが、ホースの水圧で虫を洗い流したほうがよい。魚を一緒に飼っている場合は、絶対に薬剤を使ってはいけない。
  10. バッタがよく葉をかじり、ボロボロにする。

冬越し

  1. 本来、常緑性の植物で、20~22℃以上の水温があれば一年中生長・開花する。しかし、一般家庭で、一年中熱帯の環境を保つのは難しいため、冬は休眠させ、球根だけの状態で過ごさせるのが楽。
  2. 晩秋に葉が枯れてきたら、水を張ったまま室内に持ち込み、温度の安定した、涼しい部屋に置く。暖かすぎても寒すぎても良くないので、室温は5~10℃程度とする。春になるまで水を切らさないよう注意。越冬中は水温10℃くらいを保ち、それより低温・高温にあわせない。低温にあわせると球根が腐るし、高温にあわせると休眠しきれず発芽し、モヤシのようになって弱る。水を換える場合は、冷たい水道水ではなく、くみ置いた温水を使う。
  3. 室内の保管場所に困る場合は、球根を傷つけないよう丁寧に掘り上げ、水をためたコップなどに沈めて、冷暗所に置く。この場合、ときどき水を入れ替え、清潔に保つ。
  4. その他、鉢を水から引き上げ、乾かないようビニールで密閉して、そのまま室内で越冬させることもできる。また、掘り上げた球根を湿った土や水ゴケにくるんで密閉保存する、という方法もある。が、なるべく水中に沈めたまま越冬させたほうが、温度が安定し、土中の雑菌の活動も抑えられ、腐敗の危険が少ない。

余談

  1. 切り花にもできる。

(※データ:大阪市基準)