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素人園芸解説 -私はこう育てる-

リンゴ

イメージ

原産地

西アジア~ヨーロッパ南東部・コーカサス

バラ科

高さ

2~10m

花期

4~5月

形態

落葉小高木~高木

収穫期

8~10月

結実特性

他家結実。ただし一部に、品種が違っていても結実しない組み合わせがある。下方参照。


2年枝(前年枝)の先端付近と、3年枝(前々年枝)に付く短枝の先端に開花結実。(1年目の枝には花芽が付かない。)

別名等

マルス・プミラ変種ドメスティカ(学名)/マルス・ドメスティカ(異名)/セイヨウリンゴ/西洋林檎/アップル


オトメリンゴ/乙女林檎(「アルプス乙女」)
ハナリンゴ/花林檎(クラブアップルの総称)
(※その他の種類の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

戸外の直射日光下(きわめて日光を好む)。

【補足】暖地では真夏の西日を避ける。

水やり

土の表面が乾けば与える。

【補足】とかく病気を誘発するので、暖地では雨に当てない。過湿に弱いが、乾燥も嫌う。

肥料

3~5月、9月、12月に、固形肥料の置き肥。

【補足】この仲間は、かなりの肥料食いなので、真夏と真冬以外、断続的に効かせ、肥料切れさせない。

植え替え

11月中旬~3月中旬(厳寒期は避けたほうがよい)。

【補足】2~3年に一度行う。細根が少ないので、なるべく根を切らない。

整姿

【剪定】剪定に弱いので、切り口には必ず癒合剤を塗る。

冬剪定…植え替えと同時期。
不要な枝を除く程度とする。短果枝(短枝)に開花結実するため、大切にする(一度開花した短果枝は、数年間開花する)。徒長枝は、1/3程度に切り縮める。

夏剪定…6月。
不要な枝を除く程度に、軽く剪定する。徒長枝は、先端を軽く切り返す(葉が展開していない未熟な部分だけを切る)。


【摘蕾】食用種のみ行う。花房の中心にある1~3個のつぼみを残し、他は取り除く。


【摘花】食用種のみ行う。日当たりの悪い部分に咲いた花を全て取り除く。摘蕾を行わなかった場合は、中心の1~3花を残し、他を取り除く。


【摘果】食用種のみ行う。

一回目…開花後二週間を過ぎ、果実が親指の先程度の大きさになった頃。
一箇所につき、もっとも充実した果実(多くの場合、中心にある果実)を、1個だけ残す。

二回目…5月中旬~6月中旬頃。
葉60~70枚(小果種は30~50枚)につき実1個が目安。6号鉢植えの場合、大玉種なら全体で2~3個、小玉種なら全体で5個程度。最終的に、果実同士の間隔を15cm以上空ける。

食用種の果実は病虫害にあいやすいので、袋かけをしたほうがよい。(収穫の1ヵ月前には外し、日光によく当てて発色を促す。)

繁殖

【接ぎ木】2~3月。(台木はマルバカイドウや、台木専用の品種を用いる。)

耐暑性

わりと強い。

耐寒性

強い(-20~-30℃)。

解説

  1. 知らない人はいない果物。一般的なのは、「西洋リンゴ」の園芸品種群である。日本にも在来種の「和リンゴ」があったが、果実が小さく、品質も劣っていたため、現在は栽培されないという。
  2. 園芸の世界では、「ミカン地帯(=温暖地)」「リンゴ地帯(=寒冷地)」という言葉を用いることがある。そのことからわかるように、リンゴは典型的な寒地向き果樹である。(越冬最低温度-33℃。)
  3. 食用の品種の他、観賞用の品種もある。観賞用種は、もっぱら花を観賞する品種と、花と果実を観賞する品種に分かれる。
  4. もっぱら花を観賞する品種は、カイドウ(ハナカイドウやミヤマカイドウなど)や、「クラブ・アップル」と呼ばれる品種群がある。クラブ・アップルには、「アメリカン・ビューティー」「ヴァン・エセルタイン」「ゴールデン・ホーネット」「ドルゴクラブ」などがある。いずれも野生種に近く、果実の酸味・渋みが強いが、果実酒によい。また、食用品種への授粉樹として使える。
  5. 花と果実を観賞する品種には、「アルプス乙女」のほか、「バレリーナ系」と呼ばれる園芸品種群がある。バレリーナ系には、「ポルカ」「ボレロ」「メイポール」「ワルツ」などがある。いずれも矮性で、枝が横に広がらず、大木にならない。果実は小さく、主に加工用。他の食用品種への授粉樹として適する。
  6. なお、「アルプス乙女」は、有名品種の「ふじ」と下記のイヌリンゴの交雑種で、生食でもおいしく、自家結実性があり、授粉樹にも適する、お得な品種。小さな果実はリンゴ飴にも使われる。
  7. 盆栽でよく見かけるヒメリンゴ(学名…マルス・セラシフェラ)は、日本に自生するエゾノコリンゴと、中国原産のイヌリンゴ(学名…マルス・プルニフォリア)が交雑したものとされる。なお、この中国原産のイヌリンゴは、別名を「ヒメリンゴ」ともいい、親と子に同じ和名があってややこしい。

注意点・病害虫

  1. 上記の通り、典型的な寒地向き果樹である。暖地で育てる場合は、夏の西日や多雨を避け、カイガラムシやカミキリムシに注意する。
  2. 暖地では、秋の気温が高すぎて、果皮の着色が悪いまま、果肉だけが熟する傾向がある。(果肉の成熟は高温によって促され、果皮の着色は低温によって促されるため。)これを避けるには、果肉が熟するのが遅い、晩生の品種(「王林」「国光」「ふじ」など)を選べば良いらしい。
  3. 木を大きくしたくない場合や、早く果実を成らせたい場合は、矮性台木(台木の品種名は「JM5」「JM7」「M9」「M26」「M27」など)に接いだ苗木を植える。「M27」台の株は、最も小さく仕上がるが、短命になるらしい。しかし、市販の苗木は、大抵、台木の品種名を明示していない。
  4. 矮性品種や樹勢の弱い品種は、強健なマルバカイドウに接がれることが多い。また、このマルバカイドウ台に別の台木を接ぎ、その上にリンゴの品種を接いだ「二段接ぎ」も行われる。二段接ぎされたリンゴは、木がやや大型になる。
  5. やや病気に弱い果樹である。斑点落葉病は、葉に小さな赤褐色の病斑が多数でき、夏の間に落葉する病気で、多発すると木が弱る。トリフミンや有機銅、ロブラールなどを散布する。また、モニリア病にかかると、花や葉、果実に褐色の病斑ができ、腐敗するので、トップジンMなどを散布する。
  6. 腐らん病は、春、幹や枝の一部が赤褐色になり、鮫肌状・凸凹になって腐る病気。早めに患部を除去して癒合剤を塗らないと、進行してからでは打つ手がない。また、葉が銀色に変色して薄くなり、同時に枝や幹の樹皮が腐って紫色のキノコ(ムラサキウロコタケ)を生じるのは、銀葉病である。腐らん病と同様、早期発見に努め、腐らん病と同じ対策をとる。いずれの病気も、剪定跡などの傷口から発病するので、傷を付けたらきちんと癒合剤を塗る。
  7. 他に、うどんこ病や黒星病などにかかる。ウイルス病にもかかるので、接ぎ木の穂木は、健全なものを使う。(穂木から伝染することが多い。)症状がひどいと、果実が奇形化する。
  8. 果実の表面がでこぼこになり、内部の果肉が褐色のコルク状になることがある。これはカメムシ等の害虫被害も考えられるが、果皮に傷が無い場合は、上記のウイルス病(奇形果病)か、ホウ素欠乏による生理障害である。
  9. 枝の樹皮が荒れてささくれ立ち、やがて枝全体が枯死する粗皮病は、病気ではなく、土中のマンガン過剰による生理障害らしい。
  10. 害虫は、アブラムシやカイガラムシ、カミキリムシに注意。

結実について

  1. 他家結実性のため、授粉樹が必要。しかし、「ジョナ・ゴールド」「陸奥」のように花粉が不完全な品種は、授粉樹に使えない。これらは「三倍体」の品種で、花粉に授精能力が無い。(他品種から花粉をもらえば結実する。)
  2. 一部、品種が違っていても結実しない組み合わせがある。以下は、その例。(なお、両方とも結実しない組み合わせと、片方だけ結実しない組み合わせが混ざっている。)
    • 「アルプス乙女」…「セイリンスパー」「ふじ」
      (※「セイリンスパー」は「ふじ」の枝変わり品種であるため、結局、「ふじ」と同一個体である。当然、「セイリンスパー」と「ふじ」の組み合わせも結実しない。)
    • 「シナノ・ゴールド」…「秋映(あきばえ)」
    • 「世界一」…「王林」「ふじ」
    • 「ふじ」…「アルプス乙女」「王林」「紅玉」「セイリンスパー」「世界一」「陸奥」
    相性が合うかどうか分からなければ、カイドウの仲間や、クラブ・アップル系の品種を授粉樹にすれば、失敗が少ない。

収穫・利用

  1. 有名品種である「スターキング・デリシャス」や「ふじ」は、果肉に蜜(甘味料として知られる「ソルビトール」)が入りやすい。蜜入りになると、食味は良くなるが、日が経つにつれて果肉が褐色になり、日持ちが悪くなる。また、蜜も減ってしまう。食べるなら早めに。
  2. 有名品種の「紅玉」は、収穫後、果実の表面に「ジョナサン・スポット(紅玉斑点病)」と呼ばれる黒い点が現れることがある。これは、湿気の少ない冷暗所に貯蔵すれば防げる。カルシウム欠乏による生理障害なので、根本的な対策としては、果実の肥大期に、塩化カルシウムか蟻酸カルシウムの水溶液を4~5回果実の表面に散布する。

余談

  1. リンゴの果実は、植物の老化を促進するエチレンを多く放出するため、切り花の近くに置かない。しかし、キウイなど、追熟の必要な果物と一緒に置くと、早く熟させる効果がある。また、観葉植物のエクメアやグズマニア、フリーセアなどの中には、リンゴの出すエチレンによって、開花が促進される種類がある。
  2. リンゴやナシの果実は、ヘタの付いている側(結果枝に近い側)を「こうあ部」、花の付いていた側を「ていあ部」と呼ぶ。

各種の和名・異名

  1. ヒメリンゴ/姫林檎/エゾリンゴ/蝦夷林檎(いずれもセラシフェラ)
  2. シーボルディー(異名)/ズミ/桷/酸実/トウリンゴ/唐林檎/コリンゴ/小林檎/ツクシカイドウ/筑紫海棠(いずれもトリンゴ)
  3. シベリアコリンゴ/シベリアンクラブ(いずれもバッカタ)
  4. エゾノコリンゴ/蝦夷小林檎(バッカタ変種マンジュリカ)
  5. ワリンゴ/和林檎/ヘイカ/苹果(いずれもプミラ変種ダルシッシマ)
  6. イヌリンゴ/犬林檎/ヒメリンゴ/姫林檎(いずれもプルニフォリア)
  7. パープルクラブ(プルプレア)
  8. ナガサキリンゴ(ミクロマルス)

(※データ:大阪市基準)