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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ブドウ

イメージ

原産地

西アジア・ヨーロッパ・北アメリカ東部

ブドウ科

高さ

2~10m(つる性)

花期

5~6月

形態

落葉つる性木本

収穫期

7~10月

結実特性

自家結実。


前年枝の中間付近から伸びた新梢の基部4~6節に開花結実。

別名等

ビティス(属名)/葡萄


(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

戸外の直射日光下。

水やり

土の表面が乾けば与える(乾き気味に管理)。

【補足】結実中は、雨に当てないほうがよい(特にヨーロッパ系の品種)。果実の肥大中に水切れすると、甘味が少なくなる。乾き気味の土を好むとはいえ、極端な水切れもよくない。

肥料

2月、4月、6月、9月に、固形肥料の置き肥。

【補足】窒素が多いと徒長しやすい。秋の施肥はお礼肥なので、窒素(N)を控える。

植え替え

11月中旬~3月上旬(なるべく年内に済ませる)。

【補足】2年に一度行う。接ぎ木部分が土に埋まらないよう注意。(接ぎ木部分が埋まると、接ぎ穂から自根が発生し、フィロキセラの害を受ける可能性がある。)

整姿

【剪定】芽のすぐ上で切ると枝が枯れこみ、残したい芽まで枯れることがあるので、芽と芽の中間で切るか、残したい芽の一つ先にある芽の部分で水平に切る。(残したい芽の一つ先にある芽を真っ二つにするため、「犠牲芽剪定」という。)

冬剪定…12月下旬~2月上旬(なるべく早く行う)。
春に伸びた新梢を2~5節残して切り詰めておき、翌春、そこから出た新梢を一本に制限して、ここに開花結実させる(これを毎年繰り返す)。細く弱い枝は、基部から切っておく。
鉢植えの場合、つるの本数が増えすぎると収拾がつかなくなるので、2~3本に制限する。

夏剪定…5月中旬~6月。
新梢が開花期になっても勢いよく伸びていれば、新梢の基部の葉6枚程度を残し、先端を摘芯する。地植えの場合は、前年の結実部分より先、葉15~20枚ほどを残して摘芯すると、つるの伸長が抑制され、果実の品質が良くなる(大粒の品種ほど、多めに葉を残す)。
新梢の摘芯後、新梢からさらに発生したつるがあれば、発生次第、基部の葉2枚を残して摘芯する。(この摘心は9月まで可能)


【摘蕾】5月下旬頃(開花直前~上部の花が1~2輪咲き始めた頃)に行う。開花中の花に触ると落花するので注意。

蕾のある部分が、小粒種で長さ8~10cm、大粒種で4~7cm程度になるよう整えるのがコツ。

房の中間を残す場合(見た目重視)…房の上部から伸びる長い副房を付け根から切る。同時に、房の先端部も軽く摘み取る。

房の上部を残す場合(味重視)…房の下、半分近くをごっそり切り落とす。残した部分に、込み入った部分があれば、軽く間引く。


【摘房・摘粒】花が終わって二~三週間後、果実が小豆大に育った頃に行う。

枝の先端についた房や、形の悪い房は、全て取り除く。ごく小さい粒は、全て取り除く。
タネなしブドウは、下記よりも、少し多めに成らせてもよい。

小粒種…葉8~10枚につき1房(新梢1本につき2~3房)が目安(6号鉢植えの場合、木全体で5房くらいがよい)。一房に成らせる実の数は、50~70粒程度に制限する。

大粒種…葉15~25枚につき1房(新梢1本につき1房)が目安(6号鉢植えの場合、木全体で2房くらいがよい)。一房に成らせる実の数は、25~40粒程度に制限する。

ヨーロッパ系の品種は、果房に袋かけをしたほうがよい。

繁殖

【接ぎ木】2~3月。

【挿し木・取り木】3月か、6~7月。(取り木は、「圧条法」「高取り法」「盛り土法」のどれでも可能。)

※薬剤防除できないフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の害を防ぐため、抵抗性のある台木に接いだ接ぎ木苗を育てるほうがよい。(挿し木苗や取り木苗では、この虫の害を防げない。)

耐暑性

わりと強い。

【ヨーロッパ系】やや弱い。

耐寒性

とても強い(-15~-30℃)。

解説

  1. 紀元前4000年頃には既にに栽培されていた、人類最古の栽培果物である。
  2. 品種ごとに栽培難易度がかなり違う。特に病害が少なく育てやすい品種は、「キャンベル・アーリー」「デラウェア」などである。
    • 【ヨーロッパ系】…野生種ビニフェラの血が濃い系統。食味に優れるが、やや気難しく育てにくい。主な品種は「ネオ・マスカット」「マスカット・オブ・アレキサンドリア」など。
    • 【アメリカ系】…野生種ラブルスカの血が濃い系統。丈夫で育てやすい。主な品種は「ナイアガラ」など。
    • 【欧米雑種】…ヨーロッパ系とアメリカの系の交配種で、最も一般的な系統。主な品種は「キャンベル・アーリー」「巨峰」「デラウェア」「ピオーネ」「藤稔」「マスカット・ベリーA」など。
  3. 野生種のブドウもある。北海道~四国に自生するヤマブドウと、本州以南に自生するエビヅル、サンカクヅルなどが食用になる。育て方はブドウに準じるが、雌雄異株なので、両方必要。

注意点・病害虫

  1. つる性なので、苗から育てるなら、まずしっかりした主枝をつくる。主枝にする新梢は、最初の一年間は支柱にまっすぐ誘引し、巻きつかせない。この間、側枝は全てかき取るか、一~二本残して、二本仕立てや三本仕立てにするのもよい。主枝ができれば、改めて行灯やトレリス、フェンスなどに誘引する。誘引するときは、枝をなるべく水平にし、徒長を抑える。
  2. 同じつる性果樹のキウイと同様、主枝から結果母枝を出させ、そこから伸びた新梢に結実させる。キウイに比べると、樹形作りも剪定も簡単である。
  3. 棚仕立ては、次のような四種類の枝から構成される。原則として主枝は、一度決めたら、別の枝に交代することはない。
    • 1~2本の主枝→主枝から30~40cm間隔に出た側枝(3~4年枝)→側枝から出た1~3本の結果母枝(2年枝)→結果母枝から出た新梢の結果枝
  4. 冷涼で雨の少ない気候を好み、日中と夜間の気温の差が大きいほうが、果実の品質がよくなる。特に、果実が赤い品種は、気温の差が少ないと、きれいに色付かない。なお、「巨峰」のように果実が黒い品種も、夜温の高い地域では、十分に黒くならずに完熟してしまう。
  5. 「巨峰」「デラウェア」「ピオーネ」「マスカット・ベリーA」などをタネなしブドウにするには、花房全体をジベレリン(商品名「ジベラ」など)に浸す、ジベレリン処理が必要。処理は、計二回行い、薬液に浸す時間は約2秒である。(二回目の処理を忘れると、果実が小粒になる。)品種によって、処理の適期や、薬液の濃度が異なるので注意。処理の仕方を間違うと落花する。中でも「デラウェア」は、処理の適期の見極めが特に難しいらしい。
    • 「巨峰」「ピオーネ」…満開直前~満開期に0.0025%液、さらに、満開の3~10日後にもう一度同じ濃度で。(※「巨峰」の場合は、満開期に0.01%液を一回処理するだけでも可能らしい。)
    • 「デラウェア」「マスカット・ベリーA」…満開の14日前(ひとかたまりになっていた花房がばらつき始めた頃)に0.01%液、さらに、満開の10~15日後にもう一度同じ濃度で。
  6. 同じ房に成っている果実は、まず色付いた後、上部の果実から順に酸味が抜けていく。そのため、収穫を急ぐと、上の果実は美味しいのに下の果実が酸っぱい、という目に遭う。
  7. 鉢植えにする場合は、8号以上の大鉢に一株とする。小鉢では収穫が望めない。
  8. 酸性の土を嫌うので、石灰を施すとよい。
  9. 病気にかかりやすい果樹である。古枝の節間が膨らみ、でこぼこのがんしゅ状になる枝膨病、完熟直前の果実が腐敗して干からびる晩腐病(おそぐされびょう、ばんぷびょう)、果実が房ごと腐って干からびる房枯病などがある。できれば雨よけし、定期的にアミスター10、ジマンダイセン、トップジンMなどを散布する。なお、葉が萎縮するウイルス病だけは打つ手がない。
  10. ペスタロチアつる枯病は、若い枝や葉、果実に、暗褐色の水浸状病斑ができてへこむ病気である。やがて、病斑上に亀裂を生じ、それより上部が枯死する。マネージなどで予防する。また、つる割病も同様に、若い枝や葉、幼果などに黒褐色の細長い病斑が多数できて亀裂を生じる。ビスダイセンやベンレートなどを散布する。
  11. マスカット系や巨峰系の品種では、黒痘病が発生しやすい。葉の葉脈上や花、果実、枝、巻きひげなどに、円形で黒褐色の小斑点が多数できる病気で、果実では肥大が止まり、奇形化することがある。発芽前に石灰硫黄合剤を散布しておくと予防できる。発芽後は、アミスター10、トップジンM、トリフミンなどを散布する。
  12. カミキリムシの被害に遭うと、枝の内部を食害される。3月と8月の二回、スミチオンなどの殺虫剤を予防散布しておく。葉をかじってボロボロにするドウガネブイブイは、見つけ次第捕殺する。
  13. 樹皮が粗いので、よく害虫が中に入り込み、越冬する。手間を惜しまないなら、冬の間に、枝の又の部分など、特にガサついている部分の樹皮を削り落としておく。
  14. ブドウの最も恐ろしい害虫は、フィロキセラである。和名を「ブドウネアブラムシ」といい、もともとは北アメリカ東部に生息していたが、ブドウの苗木に付いて世界各地に広がった。19世紀後半に、ヨーロッパ各地のブドウ園を壊滅させたことで有名。この虫に寄生されたブドウは衰弱枯死するが、抵抗性のある台木に接ぎ木された株は、被害を受けない。しかし最近、日本国内では、挿し木や取り木で作った自根苗が多く出回り、被害が再発しそうな気配らしい。少々値段が高くても、接ぎ木苗を育てるのが望ましい。
  15. 意外にも、犬猫にとって危険な有毒植物である。葉や果実などはもちろん、ブドウパンやレーズンバターのような加工品にも注意が必要。

余談

  1. 日本全土に自生するノブドウは、ブドウ科アンペロプシス属の植物である。一つの果房に、淡黄緑、赤紫、青紫など、いろんな色の果実が成ることで知られる。果実の内部には虫が寄生しており、食用にならない。斑入り品種の「エレガンス」が流通している。観賞用によい。もともと日本の植物なので、栽培は容易。

各種の和名・異名

  1. マンシュウヤマブドウ/アムールグレープ(いずれもアムーリエンシス)
  2. ヤマブドウ/山葡萄/オオエビヅル/サナヅラ/クリムゾングローリーバイン(いずれもコアネティアエ)
  3. トゲブドウ(ダビディー)
  4. エビヅル/海老蔓/エビカズラ(いずれもツンベルギー)
  5. ヨーロッパブドウ/グレープバイン(いずれもビニフェラ)
  6. サンカクヅル/三角蔓/ギョウジャノミズ(いずれもフレクシオサ)
  7. アメリカブドウ(ラブルスカ)

ビティス属以外の種類。

  1. ノブドウ/野葡萄/ウマブドウ/イシブドウ(いずれもアンペロプシス・グランデュロサ変種ヘテロフィラ)

(※データ:大阪市基準)