イチジク
イメージ
原産地
西アジア~アラビア半島南部
科
クワ科
高さ
2~9m
花期
5~9月
形態
落葉高木
収穫期
【夏果】6~7月
【秋果】8~10月
結実特性
単為結果。
前年枝の中間付近から伸びた新梢の先端付近に夏果、春に伸びた新梢の葉脇に秋果が結実。
別名等
フィカス・カリカ(学名)/無花果/トウガキ/フィグ/コモンフィグ
日照
戸外の直射日光下。
【補足】少し耐陰性があるが、なるべく日光に当てる。
水やり
土の表面が乾けば与える(葉が大きいので、水切れに注意)。
【補足】土中の停滞水に弱い反面、乾燥も嫌うので、水やりの仕方に注意が必要。
肥料
4月、6月、8月、10月に、固形肥料の置き肥。
【補足】秋に収穫できる品種は、春~秋まで肥料切れを起こさせない。
植え替え
2月下旬~3月下旬か、10~11月。
【補足】3~4年に一度行う。
整姿
【剪定】節のすぐ上で切ると枯れこみやすいので、節と節の中間で切る。
春剪定…植え替えと同時期。
前年に伸びた枝の、基部2~3芽を残して剪定し、新梢の発生を促す。
夏果種は、前年枝の先端付近に小さな果実があるため、切り捨てないよう注意。
夏剪定…7月。
徒長枝を切り戻す程度で、あまり必要ない。
繁殖
【挿し木】2月上旬~4月上旬か、6~8月(春のほうがよい)。
【取り木】4~8月。
【株分け】植え替えと同時期(株立ち樹形になった場合のみ可能)。
耐暑性
強い。
耐寒性
やや弱く(-5~-15℃)、寒地では室内へ。
【補足】凍らせると枯れる。高温にあわせない。夏果種は越冬果実の凍結にも注意。
解説
- イチジクという名前は、「一熟」=「一日一個熟する」の意らしい。日本に渡来したのは、江戸時代初期、寛永年間のことである。
- 雌雄異株だが、単独で結実する品種が一般的。ただ、種類によっては雌雄同株で、花のみ雌雄が分かれるものがあるらしい。
- 花は、花嚢(実のように見える部分)の中に咲き、外からは見えない。漢字で「無花果」と書くのはそのため。
- 夏に熟する実を「夏果」、秋に熟する実を「秋果」と呼ぶ。種類によって、夏果のみの「夏果種」と、秋果のみの「秋果種」、夏と秋の二回収穫できる「夏秋兼用種」がある。
- 夏果種…夏のみ収穫できるが、あまり見かけない。主な品種は「ザ・キング」「サン・ペドロ・ホワイト」など。
- 夏秋兼用種…夏と秋の二回収穫できる。主な品種は、「アーチペル」「カドタ」「カリフォルニアブラック」「ショートブリッジ」「バナーネ(「バナナクイーン」「ロングドゥート」)」「ビオレドーフィン」「ブラウンターキー」「ブルンスウィック」「ホワイトイスキア」「桝井ドーフィン(単に「ドーフィン」とも)」など。
- 秋果種…秋のみ収穫できる。主な品種は、「ゼブラスイート(「タイガー」「パナッシュ」とも)」「セレスト」「ネグローネ(「ボルドー」)」「ビオレソリエス」「蓬莱柿」など。このうち、「セレスト」「蓬莱柿」は耐寒性に優れる。
- 園芸店で売られている品種名無記載のイチジクは、「桝井ドーフィン」であることが多い。やや性質が弱いものの、栽培は容易。
- 最近人気の「ゼブラスイート(タイガー)」は、果実に斑が入り、緑色と黄緑色の縦縞模様になる、面白い品種。観賞用にも適する。食味も良い。
注意点・病害虫
- 暖地性の木で、耐寒性が弱い。特に幼木は、たとえ暖地でも、防寒して越冬させたほうが安全。成木になれば寒さに耐える(品種によるが、-15℃が限界)。
- 最低気温が15℃を下回ると、果実が熟しにくくなる。そのため、寒い地域ほど収穫期が短くなる。
- 中性~弱アルカリ性の土を好むが、酸性土にも耐える。なお、連作を嫌うため、以前イチジクの植えてあった場所に、新たにイチジクを植え直してはいけない。どうしても植えたい場合は、大穴を掘り、土を入れ替える。
- 果実が色付き始める直前に、植物性の食用油(ナタネ・ダイズ・ゴマ・オリーブなど)を1~2滴程度、果実の先端の穴から塗布または注入すると、糖度が上がり、果実が早く熟す。この作業を「油処理」または「オイリング」という。作業の適期は、淡黄緑色の果実の先端の穴が、かすかに赤みを帯びる頃。
- 傷を付けると、傷口から白い乳汁が出るが、触るとかぶれることがあるので注意。この乳汁は蛋白質を分解する酵素を含み、昔からイボ取りに用いられてきた。
- 比較的寿命の短い木で、15~20年程度で老木に達するらしい。
- さび病や炭疽病にかかることがある。また、株枯病になると、地際部分の幹に褐色~黒褐色の病斑ができて腐敗し、下葉から萎れて枯死する。トップジンMを散布して予防する。
- サツマイモネコブセンチュウにきわめて弱い。また、木が老いると、幹にカミキリムシ(クワカミキリなど)が入りやすくなり、衰弱・枯死に追いやられる。
収穫・利用
- 果実が完熟すると、下向きにやや垂れ下がって、果皮に淡いヒビのような模様ができ、付け根から簡単に外れる。日持ちが悪いため、収穫後は早めに食べる。食べきれない分は冷凍保存するか、ジャムやドライフルーツなどに。
余談
- 野生のイチジクは、イチジクコバチの仲間と共生関係にある。イチジクコバチは花嚢の内部を食べて育ち、雌成虫が脱出する際に、体に花粉を付ける。これが別のイチジクの花嚢に産卵すると、その際に授粉が成立する仕組みになっている。日本にあるイチジクは単為結果なうえ、イチジクコバチの仲間がいないためタネができないが、外国からの輸入品(ドライフルーツなど)には、タネのできたものが混じっているらしい。
(※データ:大阪市基準)