カキ
イメージ
原産地
日本(北海道除く)・中国・朝鮮半島南部
科
カキノキ科
高さ
4~10m(種類による)
花期
5月
形態
落葉高木
収穫期
9~12月(種類による)
結実特性
【雄花のある品種】単為結果。
【雄花のない品種】雄花のある品種を一緒に植える。
いずれも、前年枝の先端4~5節から伸びた新梢に開花結実。
別名等
ディオスピロス・カキ(学名)/柿/朱果/赤実果/カキノキ/ジャパニーズパーシモン
(※その他の種類の和名・異名はページの一番下にまとめた)
日照
戸外の直射日光下(きわめて日光を好む)。
水やり
土の表面が乾けば与える(葉が大きいため、水切れは厳禁)。
【補足】地植えでも、新たに植え付け・植え替えした株は、根付くまでの間、水やりを続ける。
肥料
3月、6月、9~10月に、固形肥料の置き肥。
【補足】カリ(K)を多めに施す。幼木は7月にも施肥をし、株作りに努める。
植え替え
11月中旬~3月中旬(なるべく年内に済ませる)。
【補足】1~3年に一度行う。細根が少ないため、土を落としすぎない。
植え傷みしやすいので、太根を強く切り詰めるのはよくない。(ただし幼木の場合は、真下に向かって伸びた直根の先端を切り詰めると、細根の発生が促される。)
地植え株の移植は難しい。(強行すると、枯死するか、枯れないまでも、一年以上も休眠してしまうことがある。)
根が真っ黒で腐っているように見えるが、含まれるタンニンのせいなので気にしない。
整姿
【剪定】
冬剪定…植え替えと同時期(なるべく年内に済ませる)。
枝の先端を切ると花芽がなくなるので注意。雄花は細く弱い枝に付くので、少し残しておく(雄花が咲く品種のみ)。結実した枝は、翌年は結実しないので、1~2芽残して切り詰める。
木を小さくしたい場合は、思い切って切り戻すが、その後、切り口から出る徒長枝は、太いものを数本残し、他は全て切る。(残した徒長枝は2~3年放任し、後で整枝すると、よい実を付ける。)
夏剪定…6~7月。
徒長枝や不要な枝を剪定する。
【摘花】5月。
枝1本につき雌花1~2個に制限すると、摘果の手間が省ける。(雌花は大きなヘタがあるのでわかりやすい。)
枝の先端に咲いた雌花、枝の付け根付近に咲いた雌花、ごく短い枝に咲いた雌花を摘み取る。
【摘果】6月下旬~7月下旬(生理落果が終わり次第すぐ)。
枝の先端または付け根付近になった果実や、上向きになった果実を、優先的に摘み取る。前年枝の先端から伸びた結果枝に付いている果実は、良いものになるので残す。
結果枝1本につき、大果種なら実1個、中~小果種なら実1~3個とする。(葉15~30枚につき実1個が目安。)6号鉢植えの場合、木全体で2~3個程度。
繁殖
【接ぎ木・芽接ぎ】2月上旬~4月中旬(接ぎ木の台木はヤマガキがよい。芽接ぎをする場合は、「盾芽接ぎ」とする。)
【根伏せ・根挿し】11~3月か、5~6月。(接ぎ木された株だと、台木の根を挿すことになるので注意。)
【タネまき】採ってすぐにまくか、乾かないよう保存して3月にまく。(ただし、甘柿のタネをまいても渋柿が育つ可能性がある上、結実まで10年はかかる。)
耐暑性
とても強い。
耐寒性
強い(-10~-13℃)が、極寒地では室内が無難。
解説
- 古い時代に中国から渡来したとされる。渋柿と甘柿があり、甘柿は日本で誕生したらしい。いずれも雌雄異花。
- 雌雄同株だが、甘柿の品種の多くは、雌花しか咲かない。とはいえ、カキはある程度の単為結果性があり、一本でも収穫自体は可能である。ただし授粉樹があった方が、品質の良い果実がたくさん採れる。
- 授粉樹がまったく不要なのは、もともと花粉の多い「さえふじ」「禅寺丸(禅師丸)」くらいで、意外と少ない。その他、「大宮早生」「貴秋」「御所柿」「早秋」「太秋」「太豊」「鶴の子」「西村早生」「筆柿」なども、それなりに収穫できる。「いさはや」「伊豆」「次郎(治郎)」「富有」などは、授粉樹を用意したほうが無難。
- 甘柿の中には、「不完全甘柿」と呼ばれる系統がある。これは、受精してタネがたくさんできなければ果実の渋が抜けない。該当する品種は、「甘百目(「江戸一」)」「黒柿」「さえふじ」「禅寺丸」「西村早生」「筆柿」などで、開花期に人工受粉しておくと確実。この系統は、良いタネができると、タネの周囲の果肉に黒っぽい小斑点(不溶性のタンニンそのもの)を多数生じ、切ったときの見た目がやや悪くなることがあるが、これが甘くなったサインである。
- 渋柿は、授粉樹が無くても果実が成る品種が多い。主な品種には、「愛宕」「大西条」「大核無(おおたねなし)」「市田柿」「祇園坊」「甲州百目(百匁柿または江戸柿、蜂屋)」「西条」「太天」「刀根早生」「平核無(ひらたねなし)」「四溝(よつみぞ)」などがある。
- 渋柿のうち、「不完全渋柿」と呼ばれる系統は、完熟後の渋残り(果実の渋が抜けきらない現象)が比較的少ない。とはいえ、不完全甘柿のように、甘くなるわけではないので、生食するには渋抜きが必要。
- 甘柿、渋柿ともに、秋になると紅葉し、果実とともに楽しめる。「錦秋」は、名前が示すように、特に紅葉の美しい甘柿である。
- カキの渋みはタンニン(「カキタンニン」という成分)によるものだが、これは甘柿、渋柿のどちらにも含まれる。甘柿は、果実が熟すると、タンニンが変質して唾液に溶けなくなるため、渋みがなくなり、甘く感じる。
- 防腐剤として知られる「柿渋」は、主にマメガキから採られる。マメガキは中国原産で、日本でも古くから栽培されており、名前の通り果実が小さいが、普通のカキと同様、高木に育つ。いうまでもなく果実は渋い。雌雄異株。
- 盆栽でよく見かけるロウヤガキは、中国南部原産のカキの仲間である。主にタネで殖やされるため、株によって、果実の色は、黄色~赤色まで差がある。雌雄異株なので、果実を楽しむには両方揃える。(厳密には雌雄異株ではなく、「雌花だけが咲く個体」と、「多数の雄花と少しの雌花が咲く個体」の二系統が存在するらしい。従って、一本だけで結実する品種もある。)カキほど大きな木には育たず、地植えでも2~3m程度。耐寒性はある(-10℃)が、極寒地では室内へ。挿し木や取り木、根伏せでも殖やせる。果実は渋い。
- 暖地に自生するトキワガキ(トキワマメガキ)や、中国原産のシセントキワガキは、いずれも名前から分かるように、常緑性のカキの仲間である。普通のカキと同様、高木に育つ。暖地性で寒さにやや弱い。完熟果実は食用になるが、小さいわりにタネが大きく、食べる部分が少ない。これらも雌雄異株。
注意点・病害虫
- 甘柿は、果実の成熟期に気温が低いと、「脱渋(果実の渋が抜けること)」がうまくいかないので、関東地方以南の暖地向きである。渋柿は東北地方北部まで地植え可能。
- 太い根が地中深く伸びる性質(深根性)なので、鉢植えより地植えのほうが生育がよい。鉢植えは、なるべく大きく深い鉢を使う。意外に植え傷みしやすい植物なので、植え付け時に、必要以上に根を切らないよう注意する。
- 隔年結果の傾向がとても強く、果実を成らせ過ぎると、翌年必ず不作になる。
- 日当たりの悪い場所に成った果実は、脱渋が遅れる傾向がある。ちなみに、果実の渋が抜けきらないことを「渋残り」という。
- 梅雨時に未熟な果実がかなり落ちるが、これは不受精や、果実の成りすぎによる生理落下である。
- 肥沃な粘質土を好む。
- 放任されている木は、6~7月頃、葉に褐色の斑点ができ、早くに落葉することがある。葉脈に区切られた角ばった斑点ができるのが角斑落葉病、鮮明な丸い病斑が多数できるのが円星落葉病(まるほしらくようびょう)である。サンボルドーやビスダイセン、プルークなどを散布する。落葉した葉を放置すると、翌年の発生源になる。
- 夏~初秋にかけて、ヘタを残して果実だけが落ちるのは、ヘタミガ(カキノヘタムシ)の被害である。6~8月に、スミチオンなどの殺虫剤を2~3回散布しておくと防げる。
- 6~10月にかけて、イラガが2~3回発生する。触れるととても痛いため、早めに駆除する。
- 樹皮が粗いため、よく害虫が中に入り込み、越冬する。手間を惜しまないなら、冬の間に、枝の又の部分など、特にガサついている部分の樹皮を削り落としておく。
収穫・利用
- 渋柿は、「渋抜き」をすれば甘柿よりも甘くなる。方法は以下の通りだが、ヘタが乾ききる前に行う。
- まず箱の中にビニールを敷き、その中に渋柿を並べ、柿10kgにつき35~40度の焼酎(またはエチルアルコール)50~100mlをまんべんなく吹き付ける。次に、掃除機などでビニール袋の中の空気を抜き、密閉して、20~25℃くらいの場所に置いておけば、だいたい5~10日(品種によって異なる)で渋が抜ける。このとき、一段目はヘタを上に向けて並べ、その上の二段目はヘタを下に向けて(つまり、ヘタ同士を合わせて)並べたほうが効果的らしい。「西条」「四溝」は、渋が抜けるのが早い。
- 渋抜きする実の数が少なければ、上記のような方法はとらず、果実のヘタだけを、焼酎に3秒間浸してビニール袋に入れ(やはりヘタ同士を合わせたほうが効果的らしい)、中の空気を抜いて密閉するだけでもよい。ヘタが茶色くなれば完了。一個ずつ焼酎に浸すのが面倒なら、霧吹きでヘタに直接吹き付ける。
- 他に、40度のお湯に一晩浸したり、ドライアイスと一緒にしばらく密閉しておいても、渋が抜けるらしい。
- 渋柿のヘタを取って皮をむき、果梗(枝に付いていた茎の部分)にヒモを付けて、雨のかからない軒下に吊せば、「干し柿」になる。数日おきに軽くもめば、まず「あんぽ柿」ができる。そこで食べてもよいが、干し柿を完成させるには、その後さらに、硬くなるまで乾燥させ、ヒモから外して、風通しのよい寒い場所に置いて放置する。3~4週間経ち、表面に白い粉(カビではなく果糖・ブドウ糖)を吹けば完成。
- 昔から、果実を二日酔いの薬とし、ヘタの煎液をしゃっくり止めにする。葉は乾燥させ、お茶にしてもよい。
各種の和名・異名
- ヤマガキ/山柿(カキ変種シルベストリス)
- シセントキワガキ/四川常磐柿/タマフリノキ(いずれもキャセイエンシス)
- リュウキュウマメガキ/琉球豆柿/シナノガキ(いずれもジャポニカ)
- リュウキュウガキ/琉球柿/クロボウ/クサノガキ(いずれもマリティマ)
- トキワガキ/常磐柿/トキワマメガキ/常磐豆柿(いずれもモリッシアナ)
- マメガキ/豆柿/シナノガキ/信濃柿/ブドウガキ/葡萄柿/デートプラム(いずれもロツス)
- ロウヤガキ/老爺柿/ロウアガキ/老鴉柿/オキナガキ/翁柿/ツクバネガキ/衝羽根柿/ヒメガキ/姫柿(いずれもロンビフォリア)
(※データ:大阪市基準)