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素人園芸解説 -私はこう育てる-

シクラメン

イメージ

原産地

ヨーロッパ・地中海沿岸~中東

サクラソウ科(またはヤブコウジ科)

高さ

5~50cm(種類による)

花期

9~5月(種類による)

形態

秋植え球根

休眠期の管理

鉢のまま乾かす

【原種】鉢のまま控えめに水やりを続ける

別名等

カガリビソウ/篝火草/カガリビバナ/篝火花/ブタノマンジュウ/豚饅頭/ソウブレッド/アルパインバイオレット


(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

9月下旬~6月中旬の生育期は、西日を避けた戸外の直射日光下。越冬中は、室内の日当たり(暖地なら戸外で霜除け)。
休眠期は、日光に当てなくてよい(葉があれば戸外で50~70%遮光)。

水やり

生育期は、土の表面が乾けば与える。休眠期は、断水する(葉があれば、引き続き、ごく控えめに水やりを続ける)。

【補足】花や葉、球根の上部に水をかけたり、雨に当てたりしない。
原種は、休眠期に完全断水すると干からびることがあるため、たとえ葉が無くても水やりをする。

肥料

10月上旬~6月上旬に、7~10日に一度の液肥、または固形肥料の置き肥。(休眠期も葉があれば、月に一度、2000倍以上に薄めた、ごく薄い液肥を施す。)

【原種】10月上旬~5月上旬に、二週間に一度の液肥、または少量の固形肥料を置き肥。

植え替え

9月上旬~10月上旬、4~5号鉢に1球。

【原種】7月下旬~9月上旬、3~4号鉢に1球。


【補足】いずれも、植え鉢の直径は、球根の直径の1.5~2倍程度が目安。

園芸品種と、原種ペルシクム…土の間から球根の上部が見える程度の浅植え、地植えは20cm間隔。1~2年に一度植え替える。
一般的な園芸品種はやや腐りやすいので、球根の上半分が露出するほどの浅植えにする。ガーデンシクラメン以外は、あまり地植えにしないほうが無難。

ペルシクム以外の原種…深さ1cm、地植えは深さ3~5cmで3~8cm間隔、2~3年に一度植え替える。
地植えも可能だが、鉢植えのほうが安全。


【夏越し成功株の植え替え】面倒なら、休眠方法に関わらず、根鉢を崩さずに鉢を一回り大きくするだけでもよい。

葉がある状態…根鉢の表面を少し崩し、一回り大きな鉢に植え替える。

休眠状態…古土をほとんど落とし、新しい土に植える。

整姿

花が、株のあちこちから咲いてきたら、葉を外側に軽く引っ張り、花茎を中央に誘引する。(この作業を「葉組み」という。葉組みを行うことで、株の中心部に光が当たり、新しい葉やつぼみが育つ。)
枯れた花や、黄ばんだ下葉は、病気のもとなので、まめに取り除く。(取り除く際、ねじるようにして引き抜かないと、近くの芽まで取れてしまう。)夏越し中の株が、10月になる前につぼみを出したらすぐに摘み取り、消耗を防ぐ。

繁殖

【タネまき】採ってすぐにまくか、保存して10~12月にまく。(嫌光性のため、必ず覆土する。発芽まで4~6週間かかる)。

耐暑性

とても弱い。

【原種】わりと強いが、極端な乾燥に注意。

耐寒性

最低5℃を保つとよい。

【原種・ガーデンシクラメン】やや弱く(0~-8℃)、寒地では室内が無難。


【補足】いずれも、15℃以上の夜温にあわせない。

解説

  1. 冬の鉢花の定番中の定番である。従来からある、鉢物向きの華やかな園芸品種群に加え、近年は、小型の「ミニシクラメン」や、耐寒性があり暖地なら地植えできる「ガーデンシクラメン」も人気がある。その他、山野草扱いされる「原種シクラメン」もある。
  2. 非常に改良が進んでおり、品種が多い。花色は白、桃、紅、薄紫、赤、淡黄などがあり、花弁に違う色の線模様が入る「絞り咲き」や、花弁の基部と先端で色が違う「二色咲き」、花弁の縁だけ色が違う「覆輪」もある。その他、八重咲き種や、花弁の縁にフリルが入るフリンジ咲き種も見かける。
  3. ミニシクラメンとガーデンシクラメンは、原種の血を濃く受け継ぎ、従来の品種に比べて丈夫で暑さ寒さに強い。
  4. 原種のシクラメンも一般的になってきた。よく見かけるのは、秋咲きのヘデリフォリウム(ネアポリタヌム)と、冬~春咲きのコウムの二種類。いずれも小型で暑さ寒さに強く、丈夫で育てやすい。中でもヘデリフォリウムは、原種シクラメン中の最強健種で、暑さ寒さの両方に強い(耐寒性は-15℃くらいまで)。
  5. 数々の園芸品種の元になった原種ペルシクムは、寒さに弱く、冬は霜除けする。別の原種アフリカヌムも、名前の通り、寒さに弱い。その他、アルピヌムやインタミナツム、シプリウム、シリシウム、グラエクム、スーダベリクム、ミラビレ、リバノティクム、レパンダム、ロールフシアヌム(ローフシアヌム)などが少数ながら流通する。ほとんどが落葉性だが、常緑性種のプルプラッセンスもある。これらは、上記のヘデリフォリウムやコウムほどではないものの、育てにくい植物ではない。やや高価なのが欠点。
  6. 原種シクラメンの中には、株が古くなると、球根の頂部だけでなく、周辺部からも直接、葉や花が出てくるものがあるが、気にしない。
  7. 原種シクラメンは花に芳香がある。園芸品種は、品種改良の過程で香りを失ったが、最近、ミニシクラメン系を中心に、花の芳香を取り戻した品種が登場している。
  8. シクラメンの仲間は、葉に銀緑色の模様が入るものが多い。同じ種類でも、株によって違う模様が入るので、葉に着目してコレクションするのも面白い。
  9. 原種シクラメンの多くは、タネができると花茎がコイル状に巻く。園芸品種はコイル状にはなりにくいが、やはりクネクネと曲がる。しかし、株が弱るので、タネを採る目的でなければ、結実させないほうがよい。
  10. 原種・園芸品種とも、タネからの栽培が容易なので、自分だけの品種を作り出すのも面白い。鉢植えの根元に勝手にタネが落ち、いつのまにか小さな球根ができていることもある。

注意点・病害虫

  1. 市販の鉢物は、底面給水鉢に植えられていることが多いため、底面の水が減ったら足しておく。なお、肥料などの塩類が、土の表面に押し上げられて固まっていることがあるので、週に一度は表土に直接水やりし、塩類を下から押し流す。
  2. 原種・園芸品種を問わず、いずれの系統も、夜間の最低温度が15℃以上になると、徐々に萎れて休眠に入ろうとする(夜温20℃を超えると完全に休眠)ので、冬に鉢物を購入したときは、置き場所の温度に注意する。暖かい部屋に置き続けていると、すぐに花が終わって萎れる。暖房器具の温風に直接当てるのも厳禁。
  3. 地植えにしたガーデンシクラメンは、5月に掘り上げ、鉢植えにしてから夏越しに臨んだほうが安全。
  4. 園芸品種の夏越しは、一般的には休眠させた状態で行う。が、人為的に断水し、強制的に休眠させるのは最終手段である。気温が上がるにつれて葉が減るが、それでも乾かし気味に水やりを続け、最後の葉が黄ばみ始めたら初めて水やりを停止する。(休眠するかしないかは、株自身に決めさせる。)うまくいけば、夏になっても葉が数枚残り、暖地でも休眠せずに夏越しさせることが可能。
  5. どの方法をとっても、夏越しに失敗するときはする。運に左右される要素もあるので、一度や二度失敗したからといって、あきらめるのはよくない。
  6. 原種も、初夏になると葉を枯らして休眠する(常緑性種を除く。)。しかし園芸品種とは異なり、葉が無いからといって水やりを止めると、球根が干からびて枯れてしまうことがある。鉢を涼しい日陰に置き、月に数回、湿らせる程度に水やりをする。
  7. 花がらや枯れ葉を放置すると、すぐに灰色かび病が発生し、殺菌剤を散布する羽目になる。常に清潔を心がけ、土の過湿を避ける。その他、ウイルス病や軟腐病などにも注意。
  8. ホコリダニの被害を受けると、新葉や花芽がケロイド状になり、生長が止まる。殺ダニ剤を散布するが、虫が肉眼で見えないこともあり、なかなか駆除できない。日頃から空中湿度を高めにし、発生を防ぐ。なお、アブラムシやアザミウマの被害でも似た症状が出るが、こちらは肉眼で虫が見える。
  9. 誰も食べないと思うが、球根(塊茎)には毒性があるらしい。また、人によっては、触れるとかぶれることがある。
  10. 園芸品種の中には、時折、ゴキブリに似た臭いを持つ株があるが(花ではなく、茎葉の基部が臭う)、病害虫が発生しているわけではない。どうやら性質の模様。
  11. 咲かせたい日の40~50日前に、ベンジルアデニンの50~100ppm液と、ジベレリン1~4ppm液を、球根頂部の生長点付近にごく小量散布すれば、好きな日に咲かせることができる。ただし、品種によって希釈濃度や散布適期が異なり、間違うと奇形花が咲くので注意。

余談

  1. 切り花にできる。花茎を回しながら引っ張れば根元から抜けるが、そのまま生けると水あげが悪いので、花茎の途中で切り直すとよい。

各種の和名・異名

  1. トロコプテランツム(アルピヌムの異名)
  2. グレイカム/グラエカム(いずれもグラエクム)
  3. コウム亜種コーカシクム(コーカシクムの異名)
  4. クーム/コーム(いずれもコウム)
  5. エウロパエウム/ファトレンセ(異名)/ユーロピアンシクラメン(いずれもプルプラッセンス)
  6. ネアポリタヌム/ネアポリタナム(いずれも異名)/ヘデリフォリューム/アキザキシクラメン/秋咲きシクラメン/ツタバシクラメン/アイビーリーブドシクラメン(いずれもヘデリフォリウム)
  7. ペルシアンバイオレット/フローリスツシクラメン(いずれもペルシクム)

(※データ:大阪市基準)