いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育てる-

ヒガンバナ

イメージ

原産地

日本・台湾・中国~イラン北部・東南アジア

ヒガンバナ科

高さ

30~70cm

花期

7~10月(種類による)

形態

夏植え球根

休眠期の管理

鉢のまま控えめに水やりを続ける

別名等

リコリス(属名)/マジックリリー


(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

7月中旬~6月上旬の生育期は、戸外の直射日光下(酷暑期は西日を避ける)。
休眠期は、日光に当てなくてよい。

【補足】耐陰性があるが、なるべく日光に当てる。

水やり

生育期は、土の表面が乾けば与える。休眠期は、ごく控えめに。

肥料

夏の元肥の他、12月と、3月に、少量の固形肥料を置き肥、または二週間に一度の液肥(やせ地でよく育つので、多肥にしない)。

植え替え

6月上旬~9月下旬(なるべく立秋までに済ませる)、5号鉢に2~3球(大球性種は5~6号鉢に1球)。

【補足】深さ3cm、地植えは深さ5~10cmで10~30cm間隔。鉢植えは2~4年、地植えは3~6年に一度植え替える。浅植えすると細かく分球しやすい。植える鉢も深めのものを。

整姿

球根が混み合えば、掘り上げて植え替える。

繁殖

【分球】植え付け時。

【タネまき】採ってすぐにまく。(多くの種類は、タネのできない「不稔性」である。実生苗の1年目は葉が出ない。開花まで最低でも6~8年を要する。)

【ツインスケーリング】7~8月。(球根を縦に切り分け、発根部を付けて鱗片を二枚ずつ外し、清潔な土に植え付けて子球を発生させる。)

耐暑性

強い。

耐寒性

強い(-10~-15℃)が、極寒地では防寒する。

【ショウキスイセン・およびその改良品種】やや弱く(-3~-5℃)、寒地では室内へ。

解説

  1. いくつか種類があるが、普通、「彼岸花」と呼ばれるのは、深紅の花を咲かせる原種ラディアタである。日本全国に自生し(元は大陸からの帰化とされる)、各地に多くの俗名を持つが、墓場によく植えられる植物だったため、「死人花」「幽霊花」など、悪い名前が目立つ。ちなみに「マンジュシャゲ(曼珠沙華)」は、梵語で「天上に咲く花」の意。三倍体であるため、結実してもタネはできない。
  2. その他、白~クリーム色花を咲かせる「白花ヒガンバナ」、淡黄~濃黄色花の「ショウキスイセン」、濃黄~橙色花の「キツネノカミソリ」、大きな桃色花の「ナツスイセン」、淡桃花で花弁に紅紫の線が入る「インカルナタ」、淡紅花で花弁の先が青い「スプレンゲリー」、の六種類が一般的。
  3. ヒガンバナ、白花ヒガンバナ、ショウキスイセンの三種類は、秋に開花し、その直後、葉が出てくる。キツネノカミソリ、ナツスイセン、インカルナタ、スプレンゲリーは、夏~秋に開花し、春になってから葉が出てくる。耐寒性は、冬に葉が無いぶん、後者のほうが強い。
  4. 市販されるのは大球性の種類が多く、特に、ナツスイセンの球根は非常に大きい。小球性種には、キツネノカミソリや、プミラ(ヒガンバナの二倍体種)などがある。
  5. ヒガンバナの仲間はかつて、縁起の悪い植物として敬遠されていた。が、最近は徐々に人気が出て、美しい園芸品種が数多く作られている。これらの品種の中には、寒さに弱いものがある(特に黄~橙花系の品種は要注意)。
  6. この仲間は花に変異が多く、同じ種類でも花色に微妙な変化がある。例えば、白花ヒガンバナは、ヒガンバナとショウキスイセンの自然交雑種とされ、そのためか、花色は純白ではなく、かすかに橙色を帯びている。なお、ショウキスイセンやキツネノカミソリも、株によって、花色に濃淡の差が出やすい。
  7. キツネノカミソリは、ほとんど市販されていない。たまに売られているのは、変種のオオキツネノカミソリらしい。名前からわかるように、キツネノカミソリに比べて大型の種類で、関東以南~九州に自生する。(キツネノカミソリは、北海道まで自生する。)
  8. 「キツネノカミソリ」があれば、「ムジナノカミソリ」もある。キツネノカミソリの変種で九州に自生するが、日本では、ほぼ絶滅状態にあるといわれる。

注意点・病害虫

  1. 球根植物だが、ほぼ一年中、生育を続けており、初夏の短い休眠期間中も、根が乾かないよう、水やりを続ける。葉がある間は、ひたすら日光に当てる。
  2. 球根を新しく購入するときは、生きた根が多く残っているものを選ぶ。しかし、大きなよい球根を買っても、必ず花が咲くとは限らないのが困りもの。そのくせ、貧弱な球根が開花したりする。なお、よく似たネリネとは異なり、根詰まりすると咲きにくい。
  3. 極めて丈夫な植物で、庭に一度植え付けたら放任できる。もともと日本の植物なので、特別な世話は必要ない。(スプレンゲリとナツスイセンは中国からの帰化種とされる。)混み合ってきたら植え替える程度。この場合、掘り上げたら、根が乾かないうちにすぐ植え付ける。
  4. 鉢植えでも、植え替えの必要はあまりなく、3~4年はそのまま据え置き栽培できる。できれば地植えにしたほうが、はるかに生育がよい。
  5. やや砂質の土を好む。日当たりの良いやせ地なら、なお良い。
  6. ウイルス病にかかると、花や葉に変な模様が入ったり、萎縮・変形したりする。処分するより他に方法はない。
  7. 有名な有毒植物である。決して食用にしてはいけない。ただし、下の余談のようなこともある。

余談

  1. 有毒植物だが、水にさらせば毒が溶けて抜け、良質のデンプンがとれるという。そのため、救荒植物(飢饉が起こったときなどに、非常食にする植物)でもあった。
  2. ヒガンバナが墓場によく植えられた理由は、墓を荒らす獣を毒によって遠ざけるためらしい。(昔は土葬が主だったため、墓を荒らされやすかった。)

各種の和名・異名

  1. シロバナヒガンバナ/白花彼岸花/シロバナマンジュシャゲ/白花曼珠沙華(いずれもアルビフローラ)
  2. ショウキスイセン/鍾馗水仙/ショウキラン/鍾馗蘭/ゴールデンスパイダーリリー(いずれもオーレア)
  3. キツネノカミソリ/狐の剃刀/オレンジスパイダーリリー(いずれもサンギネア変種サンギネア)
  4. オオキツネノカミソリ/大狐の剃刀(サンギネア変種キウシアナ)
  5. ナツスイセン/夏水仙/ハダカユリ/裸百合/マジックリリー/サプライズリリー/リザレクションリリー/ネイキッドレディース(いずれもスクアミゲラ)
  6. ムラサキキツネノカミソリ(スプレンゲリ)
  7. ヒガンバナ/彼岸花/マンジュシャゲ/曼珠沙華/ハカバナ/カジバナ/シビトバナ/ソウシキバナ/ユウレイバナ/キツネノカンザシ/スパイダーリリー/レッドスパイダーリリー(いずれもラディアタ)

(※データ:大阪市基準)