スイセン
イメージ
原産地
アジア~地中海沿岸・北アフリカ
科
ヒガンバナ科
高さ
5~70cm(種類による)
花期
10~5月(種類によるが、3~4月が多い)
形態
秋植え球根
休眠期の管理
掘り上げて乾燥保存
【原種系】鉢のまま乾かすか、掘り上げて乾いた土に埋める
別名等
ナルシッサス(属名)/水仙/セッチュウカ/雪中花/長寿花
ダフォディル(ラッパ系の英名)
(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)
日照
10月上旬~6月上旬の生育期は、戸外の直射日光下。
休眠期は、日光に当てなくてよい。
【補足】やや耐陰性があり、少しの日陰なら耐える。
水やり
生育期は、土の表面が乾けば与える(原種系のみ、越冬中は霜除けする)。休眠期は、断水する。
【補足】原種系は雨に当てないほうがよい。耐湿性があり、多少水はけの悪い場所でも育つ。
肥料
秋の元肥の他、花後すぐ~5月下旬に、7~10日に一度の液肥、または固形肥料の置き肥。
【原種系】10月上旬~4月下旬に、7~10日に一度、2000倍以上に薄めた、ごく薄い液肥を施す(原種系は、元肥を与えないほうが安全)。
【補足】いずれも、多肥に弱い。特に窒素(N)過剰になると球根が腐る。
植え替え
8月下旬~11月下旬(ニホンスイセンなどの早生種は、なるべく早く植え付ける)、5号鉢に2~3球。
【原種系】6月上旬~10月上旬、5号鉢に3~5球。(生育開始が早いので、できる限り早く植え付ける。特に、秋咲き種は初夏に植え付けないと、開花が間に合わない。)
【補足】いずれも深さ3~5cm、地植えは深さ6~10cmで10~20cm間隔(原種系は地植えしないほうがよい)。鉢植えは2~3年、地植えは4~5年に一度植え替える。原種系は、浅植えすると細かく分球しやすい。
整姿
葉が邪魔であっても、自然に枯れるまでは切らない。
繁殖
【分球】植え付け時。
【タネまき】採ってすぐにまく(実生苗は、開花まで3年ほどかかる)。
【ツインスケーリング】7~8月(球根を縦に切り分け、発根部を付けて鱗片を二枚ずつ外し、清潔な土に植え付けて子球を発生させる)。
耐暑性
強い。
耐寒性
強い(-5~-25℃)が、秋に葉が出る種類は防寒する。
【原種系】最低0度を保つ。
【補足】いずれも、高温にあわせない。
解説
- 爽やかな芳香とともに春の到来を告げる、おなじみの花である。古くから改良が進んでおり、園芸品種が非常に多い。ごく一部を除き、栽培もきわめて容易である。
- 種類によって、秋に葉が出る種類(早生種)と、早春に葉が出る種類(中生~晩生種)がある。
- 花や茎葉の形状により、下記のような系統に分かれる。なお、「副花冠」とは、花の中心にあるラッパ状のものを指し、「花被片」とは、その周りに付いている花弁を指す。
- ラッパ…一茎一花で、副花冠が花被片の長さと同じか、それ以上。
- 大杯…一茎一花で、副花冠が花被片の長さの1/3より長いが、花被片よりは短い。
- 小杯…一茎一花で、副花冠が花被片の長さの1/3以下。
- 八重咲き(ダブル)…副花冠や雌しべ・雄しべが花弁化している。
- トリアンドルス…一茎多花で、花は下を向いて咲き、花被片がやや反転する。原種トリアンドルスの血が濃い。
- シクラミネウス…花がやや下向きに咲き、花被片が、シクラメンの花のように強く反転する。原種シクラミネウスの血が濃い。
- ジョンキラ(ジョンキル)…一茎多花で、茎葉がとても細く、葉は筒状。花に芳香がある。原種ジョンキラの血が濃い。
- 房咲き(タゼッタ)…一茎に三輪以上の花を付ける。花に芳香がある。原種タゼッタの血が濃い。
- 口紅(ポエティクス)…副花冠が小さな皿状で、その縁が紅色になる。
- バルボコジウム…一茎多花で、副花冠が大きく、花被片が小さい。
- バタフライ(スプリットコロナ)…副花冠が、長さの1/3以上裂けている。
- その他…上記のどの系統にも属さないもの。
- 原種・野生種・自然交雑種
- RHS(英国王立園芸協会)の取り決めにより、スイセンの花型・花色の分類記号として、数字とアルファベットの組み合わせを使うことがある。具体的には、「分類群+花被片の色」‐「副花冠の色」という形式で表す。「分類群」は、上記の分類のうち、どの系統に属するかを表す番号である。「花被片の色」と「副花冠の色」は、色名の最初の文字である。すなわち、白はW、黄色はY、赤はR、ピンクはP、オレンジはO、レモン色はL、緑はG、といった具合である。なお、花被片や副花冠が複色になっている場合は、YR(基部が黄色で先端が赤)などと表記する。
- 例えば、ラッパ系ピンクスイセンの代表品種「ピンクパラソル」の場合、「分類群」はラッパなので1、「花被片の色」は白なのでW、「副花冠の色」はピンクなのでPである。従って、表記は「1W-P」となる。
- 関東~九州に自生するニホンスイセンは、初冬から咲き始める早生種の代表格である。原種スイセンの一種ながら、極めて栽培容易。本来は日本原産ではなく、平安時代末期以降、大陸から海流に乗って流れてきた帰化植物らしい。(乾燥した球根は水に浮く。)そのためか、海辺に大規模な群生地がある。他のスイセンと異なり、低温にあわなくても花芽が成熟するため、開花期が早い。
- 最近は、黄花のバルボコジウムや、白花のカンタブリクス、秋咲き白花のセロティヌス、淡緑色花のビリディス、淡黄色花のロミエウクシーなど、原種系のスイセンも見かける。品種は少ないが、「キャナリーマウス」「ジュリア・ジェーン」「ミスレモン」「ミルクティー」などがある。丈夫だが、一般的なスイセンより耐寒性・耐暑性が劣るため、鉢植えにし、2~3年おきに植え替える。夏に水分が多いと腐るので、地植えはおすすめしない。しばしば山野草扱いされる。ロックガーデン向き。
- 原種スイセンは、カンタブリクス、ジョンキラ、タゼッタ(日本スイセン)、バルボコジウム、ポエティクス(口紅スイセン)、ロミエウクシーなど一部を除き、やや気難しい種類が多く、山野草専門店でもない限り、ほとんど見かけない。
注意点・病害虫
- 多くの種類は、地植えなら、ほとんど放任状態でもよく開花する。球根が混み合い、花付きが悪くなってきたら植え替える程度。鉢植えも、毎年植え替える必要は無く、2年に一度でも足りる。
- ヒガンバナ科の球根植物にありがちだが、1個の大球に見えて、実は、中で2~3個に分球している球根がある。そんな球根を購入してしまうと、球根が小さくて開花しないことがある。球根を真上から見たり、皮の上から軽く押してみると判別できる。
- タネでも増やせるが、多くの品種は自家結実しないため、他の個体の花粉が必要。
- やや痩せ気味の土を好む。
- ウイルス病によくかかる。花や葉に不規則な縞模様が入ったり萎縮したりしたら、根ごと掘り上げて処分する。罹病株の近くに健全株を植えると、高確率で伝染するようである。(土中のセンチュウ類が媒介していると聞いたことがある。)
- ウイルス病に関しては、品種によって、罹病しやすさに大きな差があるらしい。ニホンスイセンは、非常にかかりやすいので注意。
- 葉先枯病にもかかりやすい。葉先に不整形の褐色病斑ができ、次第に拡大する病気で、病斑の周辺は黄色く変色する。多発すると、葉の大部分が白っぽく枯れこむ。秋に葉が出る種類が被害にあいやすい。ダコニール1000、トップジンMなどを散布するが、被害株から分球したり、連作したりするのは好ましくない。
- ナミクキセンチュウの寄生を受けると、休眠中の鱗茎が腐って干からびてしまう。特に、ラッパ系や黄房スイセン系の品種が弱いという。ジョンキラ系は強いらしい。なお、ラッパ系品種はネダニにも弱い。
- 有名な有毒植物である。多食すると死に至ることもある。どういうわけか、これをタマネギやニラと間違えて食べ、中毒を起こす人が時々いる。
各種の和名・異名
- ミニムス(アスツリエンシスの異名)
- ジュンシフォリウス/レクイエニー(いずれもアッソアヌスの異名)
- カンペルネリー(異名)/キフサスイセン/黄房水仙(いずれもオドルス)
- プセウドナルシッサス亜種オブバラリス(オブバラリスの異名)
- シクラメンフラワードダフォディル(シクラミネウス)
- ジョンキル/ジョンクィラ/キズイセン/黄水仙/芳香水仙/ワイルドジョンキル/ラッシュダフォディル(いずれもジョンキラ)
- クイーンアンズジョンキル(ジョンキラ「フロレ・プレノ」)
- フサザキスイセン/房咲水仙/エダザキスイセン/枝咲き水仙/ポリアンツスナルシス/ポリアンツスナルシッサス/バンチフラワードナルシッサス(いずれもタゼッタ)
- タゼッタ亜種タゼッタ変種シネンシス(異名)/ニホンスイセン/日本水仙/金盞銀台/チャイニーズセイクリッドリリー(いずれもタゼッタ変種シネンシス)
- トリアンドルス変種アルブス(トリアンドルス変種セルヌスの異名)
- ペーパーホワイトダフォディル(パピラセウス)
- レントリリー/トランペットナルシッサス/ワイルドダフォディル(いずれもプセウドナルシッスス)
- ミノール亜種プミルス(プミルスの異名)
- バルボコジウム/フエフキスイセン/ペチコートスイセン/フープペチコート/ペチコートダフォディル/フープペチコートダフォディル(いずれもブルボコジウム亜種ブルボコジウム)
- ペチコートスイセン(ブルボコジウム変種コンスピキュース)
- クチベニイスセン/口紅水仙/ポエツダフォディル(いずれもポエティクス)
- ナヌス(ミノールの異名)(※ナヌスという名の原種はこれとは別に存在する)
- ビフロルス(メディオルテウスの異名)
(※データ:大阪市基準)