ユリ
イメージ
原産地
北半球の亜寒帯~亜熱帯
科
ユリ科
高さ
20~200cm(種類による)
花期
4~8月(種類による)
形態
秋植え球根
休眠期の管理
鉢のまま控えめに水やりを続ける
別名等
リリウム(属名)/百合/リリー
チャイニーズトランペットリリー(オーレリアン系の総称)
(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)
日照
【オリエンタル系、OT系】3月下旬~11月上旬の生育期は、戸外で0~10%遮光(7月上旬~9月上旬は50%遮光)。
【アジアティック系、LA系】3月上旬~7月下旬の生育期は、戸外の直射日光下(花後も茎葉が枯れない種類は、酷暑期のみ30~50%遮光)。
【ロンギフローラム系、LO系】10月下旬~7月下旬の生育期は、戸外の直射日光下(花後も茎葉が枯れない種類は、酷暑期のみ30~50%遮光)。
【補足】いずれも、茎葉のない時期は日光に当てなくてよい。どの系統も、株元に直射日光が当たらないよう注意する。アジアティック系は、日光不足になるとつぼみが落ちる。
水やり
生育期は、土の表面が乾けば与える(水切れは厳禁)。休眠期は、ごく控えめに。
【補足】種類によっては花後すぐに茎葉が枯れ、地上部が無くなるが、乾かしすぎないよう注意。
肥料
3月、5月、花後すぐ~10月に、10~14日に一度の液肥、または固形肥料の置き肥。
植え替え
9月上旬~11月下旬(できる限り10月までに済ませる)、6~8号鉢に1球(植え付けが遅れると、開花しないことがある)。
【補足】深さ5~10cm、地植えは深さ15~30cmで20~50cm間隔。鉢植えは1~2年、地植えは5~6年に一度植え替える。
植え替え時、根をなるべく傷付けない。球根の上の茎から出る根は特に大切なので、深植えする。
整姿
高性種は支柱を立てる(球根に突き刺さないよう注意)。株元の高温や乾燥をとても嫌うので、マルチングするか、草丈の低い草花などを植える。
繁殖
【分球】植え付け時(種類によっては、浅植えすると分球しやすい)。
【タネまき】2~3月か、9月下旬~11月下旬。(原則として採ってすぐにまくが、種類によっては、葉が出るまで2年以上かかる。覆土は1~3cmくらい。まいてすぐ発芽する種類は、春まきしないと冬の寒さで枯れる。)
【鱗片挿し】2~3月か、7~10月(球根の鱗片を外して清潔な用土に挿し、子球を出させる)。
【ムカゴ採取・木子採取】採ってすぐに植え付ける。(ムカゴは地上部、木子は地下にできる。ムカゴができるのは、原種のオニユリとリーガルリリー、および、その血を引く交配種のみ。)
耐暑性
わりと強いが、強光と乾燥に注意。
【山地性・高山性種】とても弱い。
耐寒性
強い(-15~-30℃)。
【冬に芽が出る種類(テッポウユリなど)】やや弱く(-3~-8℃)、防寒しないと傷む。
【補足】休眠打破に低温が必要なので、高温にあわせない。
解説
- 古来より親しまれてきた、上品で美しい球根植物である。人気が高く、多くの園芸品種が作られている。改良元になった原種によって、下記のような系統がある。
- オリエンタル・ハイブリッド(ジャパニーズ・ハイブリッド)…日本原産のヤマユリ、オトメユリ、カノコユリ、ササユリ、タモトユリなどの血を引く系統。元になった原種の全てが日本産である。花色が豊富。花は大輪で、強い芳香を持つ。強い直射日光を嫌い、ややデリケート。
- アジアティック・ハイブリッド…東アジア原産のスカシユリ、エゾスカシユリ、オニユリ、ヒメユリ、イトハユリ、バルビフェルムなどの血を引く系統。花色が豊富で、上を向いて咲く。芳香はない。丈夫で育てやすい。花後に茎葉が枯れて休眠する。
- ロンギフローラム・ハイブリッド…日本(奄美以南)原産のテッポウユリや台湾原産のタカサゴユリなどの血を引く系統。白花が多いが、最近は色数が増えてきた。花の基部が長い筒状になり、芳香がある。丈夫で育てやすいが、寒さに弱い。秋に球根を植えるとすぐに発芽してロゼットを形成し、花後しばらくすると茎葉が枯れて休眠する。タカサゴユリは、タネからでも容易に育つ。
- トランペット・ハイブリッド(オーレリアン・ハイブリッド)…中国原産の黄カノコユリ、リーガルリリー、サーゲンティアなどの血を引く系統。花色が豊富。上記の三系統に比べると、ややなじみが薄いが、丈夫で育てやすく、植えっ放しにしても大丈夫。
- なお最近は、バイオ技術の発展により、本来は自然交雑しない、別系統間の特殊な交配が増え、系統ごとの垣根が低くなりつつある。下記はその一例。特殊な交配は、これらの他にも存在する。
- LAハイブリッド…ロンギフローラム系とアジアティック系の交配種。
- LOハイブリッド…ロンギフローラム系とオリエンタル系の交配種。
- OAハイブリッド…オリエンタル系とアジアティック系の交配種。
- OTハイブリッド…オリエンタル系とトランペット系の交配種。
- 日本には、十数種類の美しい原種が自生する。丈夫な種類から、とても気難しい種類までさまざま。原種で育てやすいのは、オニユリ、カノコユリ、コオニユリ、スカシユリ、テッポウユリ、ヒメユリなど。このうち、カノコユリは強い直射日光を嫌う。
- 日本産の原種のうち、ヤマユリやサクユリは、基本的には丈夫だが、気難しく、人の手にかかると育ちにくい。また、小型のオトメユリや、葉がササに似たササユリ、葉が車輪状に付くクルマユリなどは、高地や山地に生える植物で、低地では夏に傷みがち。また、球根が腐敗する病気にも冒されやすい。なお、ここにあげた種類は、クルマユリを除き、強い直射日光を嫌う。
- 栽培の難しいオトメユリやヤマユリは、丈夫な改良品種が作られているので、そちらを育てるとよい。
- サクユリは、ヤマユリの変種である。世界で最も花の大きいユリとして知られ、花の直径は30cmにも及ぶ。ヤマユリと同様、むせかえるような強い芳香を放つ。
- オニユリは不稔性のため、タネができない。その代わり、茎にムカゴがびっしりとつくので、これをまいて殖やす。黄花種もあり、「黄金オニユリ」と呼ばれる。よく似たコオニユリは、ムカゴができないので区別できる。
- 日本産の原種のうち、ウケユリ、オトメユリ、タモトユリ、ヒメユリなどは、絶滅が危惧されている種類である。増殖品を除き、栽培は好ましくない。
- 西アジア原産のマドンナリリーは、暑さ寒さに弱く(夏は休眠し、冬は0℃を保つ)、日本では普及していなかったが、最近、丈夫な交配種が出てきた。花には芳香がある。名前からわかるように、ヨーロッパでは聖母マリアの象徴であったが、日本からテッポウユリが持ち込まれると、取って代わられたと聞く。
注意点・病害虫
- ユリの仲間は秋植え球根として売られるが、球根の肥大期が、高温期の夏~秋と遅く、冬の低温で花芽形成が促され、春に花芽形成を行うことから、実際はほぼ一年中活動している。しかも、掘り上げて乾燥貯蔵することができない。従って、宿根草として扱っても問題ないと思われる。
- ユリの根は、球根の下部から伸びる「下根(支持根、またはベースルートともいう)」と、茎から直接伸びる「上根(吸収根、またはステムルートともいう)」の二種類がある。上根がしっかり張らないと生育がよくないので、球根はかなり深めに植える。
- 鉢植えにする場合は、なるべく大きな鉢に植える。できれば地植えにしたほうが生育はよい。一度、庭に植え付けたら、よほど生育が悪くならない限り、そのままにする。鉢植えは、1~2年に一度植え替えるが、この時、根を切り詰めてはいけない。
- ユリの仲間は、根元に日光が当たると、上根の生育が悪くなる。根元をマルチングするか、草丈の低い草花などを植えて日除けするとよい。
- 球根を購入するときは、生きた下根が多いものを選ぶ。裸の球根は乾燥に弱いため、買ったらすぐに植え付ける。特に、オトメユリのような小球性の種類は、乾燥すると発芽しなくなるので注意。
- 食用の百合根も、植え付ければ花が咲く。大抵、オニユリかコオニユリ、あるいはそれらの自然交雑系統なので、日なたに植える。ヤマユリの球根は高級食材だが、植えてみるなら、草木がよく茂った、明るい日陰を選ぶ。
- タネからでも殖やせるが、発芽から開花まで3~4年以上かかり、あまり一般的でない。なお、ユリの仲間は基本的に自家結実しない性質を持つ。
- しかし、タカサゴユリや、その交配種「新テッポウユリ」は、秋にタネをまけば、翌年の初夏に開花する。これらは雑草化しやすいので注意する。
- 新テッポウユリをタネから育てると、花後、地下に球根ができる。この球根から毎年栽培できるが、あまり寿命の長いユリではなく、数年で絶える。この種類は、球根ではなくタネで殖やすユリと割り切ったほうがよい。
- ユリのタネは乾燥保存できるが、発芽率が落ちるため、万全を期すなら採りまきがよい。自家採取のタネには、薄い紙くずのような「しいな」が含まれるので、まく前に取り除く。タネ自体も薄っぺらいが、しいなと違い、中心部が少し膨らんでいる。
- タネまき後1~2ヵ月以内に発芽する種類は、コオニユリ、スカシユリ、スゲユリ、テッポウユリ、ヒメユリなどである。キカノコユリ、マドンナリリーなどは秋にまけば翌年の晩春に発芽する。それ以外の種類は、まず根を出した後、少なくとも半年~1年半くらい葉を出さず、土の中でひたすら球根作りに努める。ユリの実生とはそういうものなので、タネまき後、いくら待っても発芽しないからといって捨てない。
- きわめてウイルス病に弱く、特に暖地では、容易に罹病する。葉に淡い色の縞模様が出たり、萎縮・変形するなどしたら処分する、といいたいところだが、日本では野生種も含め、ユリのウイルス保有率は高いらしい。なお、症状が出ている株でも、生育環境が改善すると、見た目には症状が消えてなくなる。(もちろん、ウイルス病が治ったわけではない。)
- キカノコユリは、ユリの仲間としては珍しく、ウイルスに耐性があるらしい。なお、ユリのウイルスは種子伝染しないので、罹病株を処分する前に、タネを採っておくのも手。
- アブラムシがよく付く。ウイルス病を媒介するので、きちんと駆除する。とはいえ一般家庭で完全に防ぐのは不可能。暖地では、ユリの球根は消耗品、と割り切るのもあり。
余談
- 切り花によいが、茎を根元から切ってしまうと球根が弱り、翌年咲かなくなる。なるべく葉を残すように、上の方で切る。水あげ法は、水切りが普通だが、湯あげしてもよい。
- 花粉が衣服などに付くと、なかなか落ちない。もし付着したら、アセトンで落とす。(ただし、化学繊維にはアセトンを使わない方がよい。)切り花にするときは、雄しべの葯(先端の花粉の出る部分)を取り除いたほうが安全。
- オニユリやヤマユリに限らず、ほとんどのユリは球根が食用になる。
- 猫にとっては致命的な有毒植物である。切り花も生けないほうがよい。
各種の和名・異名
- ヤマユリ/山百合/ヨシノユリ/エイザンユリ/リョウリユリ/ホウライジユリ/ゴールデンレイドリリーオブジャパン(いずれもアウラツム)
- コマユリ(アマビレ)
- ウケユリ/請百合(アレクサンドラエ)
- サクユリ/作百合/タメトモユリ/為朝百合(オウラツム変種プラティフィルム)
- カナダリリー/メドウリリー/ワイルドイエローリリー(いずれもカナデンセ)
- ヘルドレイチー(カルセドニクムの異名)
- スゲユリ/萓百合/ノヒメユリ(カロスム)
- マドンナリリー/ニワシロユリ(カンディドゥム)
- ウバユリ/姥百合(コーダツム)
- オオウバユリ/大姥百合(コーダツム変種グレーニー)
- ヒメユリ/姫百合(コンコロール)
- キバナヒメユリ/黄花姫百合(コンコロール品種コリディオン)
- ササユリ/笹百合/サユリ/小百合/バンブーリリー/ジャパニーズリリー(いずれもジャポニクム)
- ジンリョウユリ(ジャポニクム変種アベアヌム)
- フクリンササユリ/覆輪笹百合/シコクフクリンササユリ/四国覆輪笹百合/(いずれもジャポニクム変種アルボマルギナツム)
- カノコユリ/鹿子百合/タナバタユリ/七夕百合(いずれもスペシオスム)
- シロカノコユリ/白鹿子百合(スペシオスム変種アルブム)
- マツバユリ/松葉百合(セルヌーム)
- ヒメエゾスカシユリ/姫蝦夷透かし百合(ダウリクム変種アルピヌム)
- ノモチャリス・ナナ(ナヌムの異名)
- タモトユリ/袂百合(ノビリッシムム)
- レオパードリリー/パンサーリリー(いずれもパルダリヌム)
- タケシマユリ/竹島百合(ハンソニー)
- タカサゴユリ/高砂百合/タイワンユリ/台湾百合/ホソバテッポウユリ/細葉鉄砲百合(いずれもフォルモサヌム)
- テヌイフォリウム(異名)/イトハユリ/糸葉百合/ホソバユリ/細葉百合(いずれもプミルム)
- ハカタユリ(ブラウニー変種ビリデュルム)
- ファイヤーリリー/オレンジリリー(いずれもブルビフェルム)
- ダウリクム/マクラツム変種ダウリクム(いずれも異名)/エゾスカシユリ/蝦夷透かし百合(いずれもペンシルバニクム)
- キカノコユリ/黄鹿子百合/タイガーリリー(いずれもヘンリイ)
- ツンベルギアヌム(異名)/スカシユリ/透かし百合/イワユリ/岩百合/イワトユリ/岩戸百合(いずれもマクラツム)
- ミヤマスカシユリ/深山透かし百合(マクラツム変種ブコーサネンセ)
- ヤマスカシユリ/山透かし百合(マクラツム変種モンティコラ)
- マルタゴンリリー(マルタゴン)
- クルマユリ/車百合(メデオロイデス)
- ソビトシアヌム(モナデルフムの異名)
- ライヒトリニー/ライヒトリニー変種ティグリヌム(いずれも異名)/コオニユリ/小鬼百合/スゲユリ(いずれもライヒトリニー変種マキシモウィッツィー)
- キヒラトユリ(ライヒトリニー変種ライヒトリニー)
- ティグリヌム(異名)/オニユリ/鬼百合/タイガーリリー/テンガイユリ/天蓋百合(いずれもランシフォリウム)
- オウゴンオニユリ/黄金鬼百合(ランシフォリウム変種フラビフロルム)
- ヒメサユリ/姫小百合/オトメユリ/乙女百合(いずれもルベルム)
- リーガルリリー/オウカンユリ/岷江百合(いずれもレガレ)
- テッポウユリ/鉄砲百合/イースターリリー/チャーチリリー/ホワイトトランペットリリー(いずれもロンギフロルム)
(※データ:大阪市基準)