いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育てる-

エビネ(春咲き種)

イメージ

原産地

日本(北海道南西部以南)・済州島・台湾・ヒマラヤ・朝鮮半島南部・中国南東部

ラン科

高さ

20~60cm

花期

3~5月

形態

多年草

別名等

カランセ・ディスコロール(学名)/ジエビネ/地海老根/海老根/蝦根


(※その他の種類の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

戸外で10~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50%遮光)。
越冬中は直射日光下でもよい。

【補足】耐陰性が強く、かなりの日陰でも耐える。

水やり

土の表面が乾けば与える。

【補足】花や葉に水をかけたり、雨に当てたりしない。

肥料

花後すぐ~10月下旬に、二週間に一度の液肥、加えて、花後すぐと、10月に、固形肥料の置き肥。

植え替え

花後すぐ~5月下旬か、9月上旬~10月下旬。

【補足】1~3年に一度行う。腐った根は取り除き、生きた根は切らない。バルブ(葉の下の膨らんだ部分)が隠れる程度の深さに植える。

整姿

花茎が伸び始めたら、全て開花するまで、鉢を移動させない。(鉢を動かすと、花茎が曲がることがある。)花が終わったら、株元を押さえつつ花茎を引き抜く。
葉の付け根を覆う「はかま」は、害虫の住みかになるので、茶色く乾燥したら取り除く。葉のない古いバルブ(葉の下の膨らんだ部分)は、茶色くなったり、しなびていれば切り取る。

繁殖

【株分け・バルブ伏せ】植え替えと同時期(バルブ伏せは、葉のない古いバルブを2~3個ずつ植え付け、芽を出させる)。

【タネまき】10~11月。(親株の根元にまくとよい。発芽まで半年以上かかり、開花までさらに4~5年かかる。)

耐暑性

強いが、強光に注意。

【山地~高山性種】とても弱い。

耐寒性

わりと強い(-5℃)が、寒地では防寒する。

【暖地性種】最低5℃を保つ。

解説

  1. 古典園芸植物の一種で、きわめて品種が豊富。同じ種類であっても、株によって、花色や花型は変化に富む。葉に斑が入る品種もある。
  2. エビネの仲間は、春咲き種と夏咲き種に分かれるが、ここで取り上げているのは前者である。夏咲き種のツルランやオナガエビネは、別ページに分けた。ナツエビネも夏咲き種なので、別ページを参照。
  3. 春咲き種の主な種類には、最も一般的なジエビネ、大型で黄花を咲かせるキエビネ、白~淡桃色花のアマミエビネ、白~淡紫色の花が下向きに咲くキリシマエビネ、緑色花のサクラジマエビネ、赤い唇弁が猿の顔を思わせるサルメンエビネ、花に強い芳香があるニオイエビネなどがある。
  4. 他に、奄美大島に自生するアマミエビネ、紀伊半島南部以西~屋久島に自生するキリシマエビネ、伊豆諸島に産するニオイエビネなどがある。これらは寒さに弱く、冬は室内に入れるのが無難である。なお、上記のキエビネも、ジエビネなどに比べるとやや耐寒性が劣る。
  5. 逆に、暑さに弱いエビネもある。(ほとんどが夏咲き種だが。)冷涼な山地に生えるサルメンエビネやナツエビネ、高山性のキソエビネやキンセイラン、台湾の山地に生えるトガリバエビネなどは、耐暑性が無く、暖地では栽培困難。半面、耐寒性は非常に強く、-25℃程度まで耐える。
  6. エビネといえば、昔はとても高価な植物だった。が、現在は、一部の銘品を除き、安価に入手できるようになった。近年は改良が進み、花色のカラフルなものが増えている。丈夫で育てやすい交配種が多数出回っているので、シェードガーデンの彩りに使うなど、気軽に楽しみたい。
  7. 落葉樹の下に地植えしてもよく育つ。性質の強いジエビネ、キエビネ系の交配種が育てやすい。耐陰性が強いため、一年中直射日光が当たらない、暗い場所でも育つが、花付きが悪くなる。
  8. 最近は、夏咲きエビネとの交配種も作られている。カシワ、ヤチヨなどがそうで、これらは、春咲きエビネと夏咲きエビネの中間的な姿・性質を持ち、開花期は6~7月。丈夫な種類が多い。

注意点・病害虫

  1. 暖地性の種類を除けば、比較的耐寒性が強い。しかし、常緑性の植物なので、寒冷地では、マルチングするなどして防寒するのが無難。
  2. ジエビネなど、寒冷地でも生育できる系統は、冬になると、葉がロゼット状に地面に伏す性質がある。弱っているのではなく、雪や寒さから根と芽を守るための知恵らしい。
  3. 葉が大きいため、水切れと、乾いた強風が苦手である。葉先から枯れ込みやすいため、空中湿度を高めに保つのが望ましい。
  4. 根が空気に触れること好むため、小豆~大豆大の用土が適する。エビネ専用土を使うと楽。鉢も、エビネ鉢か、駄温鉢がよい。
  5. 病気は、ウイルス病が大敵。ラン科植物としては、かなり罹病しやすい部類に入るので、新葉や花に不規則な斑紋が現れたら要注意。怪しい株は、隔離して様子を見る。
  6. 害虫は、アブラムシやカイガラムシ、ハダニ、ナメクジの被害を受けやすい。

交雑種・交配種

日本のエビネは、地方によって、さまざまな自然交雑種が誕生しており、さらに人工交配種、園芸品種も数多い。下記はその一例。

  1. イシズチ(イシヅチ)…サルメンエビネ×ジエビネ(ジエビネ以外との交雑種も、イシズチに含めるらしい。)
  2. キサラズ…キリシマエビネ×ヒゼン
  3. コウヅ(コオズ)…ジエビネ×ニオイエビネ
  4. サツマ…キエビネ×キリシマエビネ×ジエビネ
  5. スイショウ…キリシマエビネ×ニオイエビネ
  6. タカネ…キエビネ×ジエビネ
  7. ヒゴ…キエビネ×キリシマエビネ
  8. ヒゼン…キリシマエビネ×ジエビネ
  9. ヒュウガ…キエビネ×サルメンエビネ
  10. アネサキ…キサラズ×ハヤト
  11. オオイド…タカサルメン×ヒゴ
  12. カオリユタカ…トミス×ユタカ
  13. キタ…サルメンエビネ×サツマ
  14. キタナラシノ…キタ×ナラシノ
  15. キヨスミ…ミショウ×ユタカ
  16. タカサルメン…サルメンエビネ×タカネ
  17. トミス…コウヅ×ヒゼン
  18. ナラシノ…ジエビネ×タカネ
  19. ノロ…ナラシノ×ユタカ
  20. ハヤト…サツマ×ヒゼン
  21. フジ…コウヅ×サツマ
  22. ミクラ…ニオイエビネ×ヒゼン
  23. ミショウ…サルメンエビネ×ヒゴ
  24. ミユキ…コウヅ×ヒゴ
  25. ユタカ…サツマ×タカネ
  26. ワカマツ…フジ×ミユキ

各種の和名・異名

  1. アリスツリフェラ(異名)/キリシマエビネ/霧島海老根(いずれもアリスツリフェラ変種キリシメンシス)
  2. コキリシマエビネ/小霧島海老根(アリスツリフェラ変種アリスツリフェラ)
  3. ニオイエビネ/匂海老根/オオキリシマエビネ(いずれもイズ-インスラリス)
  4. ストリアタ/シーボルディー(いずれも異名)/キエビネ/黄海老根(いずれもシトリナ)
  5. ヤブエビネ/藪海老根(ディスコロール品種ビリディアルバ)
  6. サルメンエビネ/猿面海老根(トリカリナタ)
  7. タカネエビネ(ビコロル)
  8. タガネラン/鏨蘭(ブンゴアナ)
  9. マツダエビネ/松田海老根(マツダエ)
  10. オブランセオラタ(異名)/サクラジマエビネ/桜島海老根(いずれもマンニー)

(※データ:大阪市基準)