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素人園芸解説 -私はこう育てる-

ホトトギス

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原産地

日本(北海道西南部・関東以西~九州)・台湾・ヒマラヤ

ユリ科

高さ

5~100cm(種類による)

花期

7~11月(種類による)

形態

宿根草

別名等

トリキルティス(属名)/時鳥/杜鵑/杜魂/蜀鳥/蜀魂/時鳥/子規/田長鳥/夏告鳥/黄昏鳥/不如帰/時鳥草/杜鵑草/射千玉鳥/ユテンソウ/油点草/ウリナ/ヤマキュウリ/ホトトギスソウ/トードリリー


(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

戸外で0~30%遮光(6月上旬~9月下旬は50%遮光)。

【補足】耐陰性が強く、かなりの日陰でも耐える。ジョウロウホトトギス系は強い日光を嫌うので、遮光を怠らない。

水やり

土の表面が乾けば与える(水切れは厳禁)。

【補足】キバナホトトギス系は、特に過湿に弱い。ジョウロウホトトギス系は下葉が枯れやすいため、常に高い空中湿度を保つ。

肥料

3月下旬~6月中旬と、9月中旬~11月上旬に、固形肥料の置き肥、または7~10日に一度の液肥。

【補足】秋の施肥は、窒素(N)を含まないものを用いる。

植え替え

2月中旬~4月した旬か、花後すぐ(春のほうがよい)。

【補足】1~2年に一度行う。

整姿

草丈が高くなる種類は、5月下旬~6月中旬に、一度だけ切り戻す。(地際近くまで、強く切り戻しても大丈夫。)下垂性の種類は、基部から3~5節を残して摘芯する。
株元をマルチングすると、地温が安定し、下葉の枯れ込みが減る。タイワンホトトギス系は、地下茎が長く伸びて広がるので、適宜間引く。

繁殖

【株分け】植え替えと同時期(春のほうがよい)。

【挿し芽】5月上旬~7月上旬か、9月。(秋挿しは失敗しやすいので、初夏に行うとよい。節の部分から発根するので、必ず一節以上が土に埋まるように挿す。鉢上げできるのは翌春になってから。)

【タネまき】採ってすぐにまく(発芽は翌春)。

耐暑性

強いが、強光と乾燥に注意。

【ジョウロウホトトギス系】やや弱く、下葉から枯れやすい。

耐寒性

わりと強い(-10~-15℃)。

【タイワンホトトギス系】最低0℃を保つとよい。

解説

  1. この仲間は種類が多いが、基本種は、「ホトトギス」という正式和名を持つ、原種のヒルタである。花に斑点模様が入っており、それが、ホトトギスという野鳥の胸にある模様を思い出させるので、この名が付いたという。
  2. ホトトギスの仲間は、日本固有の種類が多い。園芸上は、下記の三つの系統に分けられる。
    • 茎が直立し、斑点のある花が上向きに咲く系統…ホトトギス、タイワンホトトギス、ヤマジノホトトギス、ヤマホトトギスなど。
      このうち、ヤマジノホトトギスは花の斑点模様が少なく、花弁(花被片)がほぼ水平に開く。ヤマホトトギスは花の斑点模様が多く、花弁(花被片)が強く反り返る。タイワンホトトギスは、花茎が分枝するのが特徴。
    • 茎が直立し、黄色い花が上向きに咲く系統…キバナホトトギス、タカクマホトトギス、タマガワホトトギス、チャボホトトギスなど。
      このうち、チャボホトトギスは、草丈15cm以下の矮性種。タマガワホトトギスは夏咲き種。寿命が短め。
    • 下垂性で、黄色い花が下向きに咲く系統…ジョウロウホトトギス、キイジョウロウホトトギス、サガミジョウロウホトトギス、スルガジョウロウホトトギスなど。
      このうち、ジョウロウホトトギスとキイジョウロウホトトギスはよく似ているが、後者は、葉の基部が茎を抱いているため、茎が葉を突き抜けているように見える点で区別する。サガミジョウロウホトトギスは、やや小型の種類。
      この系統は、他の系統よりもいくぶんデリケートである。
  3. キバナツキヌキホトトギスは、黄色い花が上向きに咲くが、茎が枝垂れる下垂性種でもある。茎が葉を突き抜けているように見えるので、この名がある。
  4. コハクジョウロウホトトギスは、ヤマホトトギスとジョウロウホトトギスの交雑種とされる種類で、茎が下垂し、ヤマホトトギスに似た花を上向きに咲かせる。花の中心は黄色。下垂性種の中では最も丈夫で育てやすく、花付きもよい。
  5. 最近は種間交配が進み、タイワンホトトギス系を中心に、園芸品種が数多く作られている。「天の川」「東雲」「青竜」「大納言」「桃源」「白秋」「藤娘」「松風」などいろいろ。「東雲」は、切り花としてなじみ深い品種である。その他、シロホトトギス「白楽天」のような、ほとんど斑点の入らない白花品種や、「少納言」などの斑入り葉の品種もある。
  6. キバナホトトギスやタマガワホトトギス、チャボホトトギスなどの葉には、濃緑色の斑点(「油点」という)がくっきりと入る。まるで水玉模様のようである。他の種類にも油点は存在するが、葉の生長と共に消滅する。

注意点・病害虫

  1. 地植えするなら、ホトトギスかタイワンホトトギスの仲間が向いている。真夏に直射日光が当たらず、乾燥し過ぎない場所なら、土質を選ばない。地下茎がよく伸びるので、不要な場所から芽が出たら間引く。
  2. 下垂性の系統は、茎葉が枝垂れるため、背の高い鉢に植えるか、鉢を吊り下げると見栄えがする。地面から離した高い位置に置いてもよい。
  3. 病虫害は少なめだが、ナメクジやヨトウムシに葉をかじられやすい。また、ウイルス病にかかりやすい。

余談

  1. 切り花によい。茶花としておなじみ。
  2. タマガワホトトギスやヤマホトトギス、ヤマジノホトトギスは、若芽が食用になるらしい。油炒めや天ぷら、おひたしなどに。

各種の和名・異名

  1. ヤマジノホトトギス/山路杜鵑草(アフィニス)
  2. サガミジョウロウホトトギス/相模上臈杜鵑草(イシイアナ)
  3. フラバ亜種オースミエンシス(異名)/タカクマホトトギス/高隈杜鵑草(いずれもオースミエンシス)
  4. チャボホトトギス/矮鶏杜鵑草(ナナ)
  5. ホトトギス(ヒルタ)
  6. シロバナホトトギス/白花杜鵑草/シロホトトギス/白杜鵑草(いずれもヒルタ変種アルベッセンス)
  7. サツマホトトギス/薩摩杜鵑草(ヒルタ変種マサムネイ)
  8. ストロニフェラ(異名)/タイワンホトトギス/台湾杜鵑草(いずれもフォルモサナ)
  9. キバナホトトギス/キバナノホトトギス/黄花杜鵑草/タチチャボホトトギス/立矮鶏杜鵑草(いずれもフラバ)
  10. キバナノツキヌキホトトギス/キバナツキヌキホトトギス/黄花突抜杜鵑草/ツキヌキホトトギス/突抜杜鵑草(いずれもペルフォリアタ)
  11. ジョウロウホトトギス/上臈杜鵑草/ジョウロホトトギス/トサジョウロウホトトギス/土佐上臈杜鵑草(いずれもマクランサ)
  12. マクランサ亜種マクランソプシス(異名)/キイジョウロウホトトギス/紀伊上臈杜鵑草(いずれもマクランソプシス)
  13. ヤマホトトギス/山杜鵑草(マクロポダ)
  14. タマガワホトトギス/玉川杜鵑草(ラティフォリア)
  15. ハゴロモホトトギス/羽衣杜鵑草(ラティフォリア変種マキノアナ)
  16. コハクジョウロウホトトギス/琥珀上臈杜鵑草/コハクホトトギス/琥珀杜鵑草(いずれも「コハク」)

(※データ:大阪市基準)