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素人園芸解説 -私はこう育てる-

カンラン

イメージ

原産地

日本(静岡以西)・済州島・台湾・中国

ラン科

高さ

20~70cm

花期

9~12月(種類による)

形態

多年草

別名等

シンビジウム・カンラン(学名)/寒蘭


ハルカンラン/春寒蘭(ニシウチアナム)
ナギノハヒメカンラン/梛葉姫寒蘭(ノマチアヌム)
タイワンカンラン/台湾寒蘭(プルプレオヒエマレ)

日照

3月下旬~11月中旬の生育期は、戸外で10~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50~70%遮光)。
越冬中は室内で0~10%遮光。

水やり

土の表面が乾けば与える。

【補足】花やつぼみに水をかけない。空中湿度も高めに保つ。

肥料

3月下旬~7月上旬に、7~10日に一度、1500~2000倍に薄めた、ごく薄い液肥を施す。加えて、4月と9月に、小量の固形肥料を置肥。

【補足】開花中は施肥をしない。柄物(斑入り葉の品種)は、緑葉の種類より少なめの施肥を心がける。

植え替え

3月、花後すぐ~5月上旬か、9月下旬~10月下旬のいずれか(花後すぐが最適期)。

【補足】1~3年に一度行う。腐った根は取り除き、生きた根は切らない。

整姿

斑入りの品種は、緑一色の葉が出たら、小さいうちに摘み取り、新しい芽を出させる。葉の斑を大切にしたければ、花芽が出次第摘み取り、咲かせないほうがよい。

繁殖

【株分け・バルブ伏せ】植え替えと同時期(バルブ伏せは、葉のないバルブを2~3個ずつ植え付け、芽を出させる)。

【タネまき】採ってすぐにまく(親株の根元にまくとよい)。

耐暑性

強いが、強光と乾燥に注意。

耐寒性

最低3℃を保つ。

【中国寒蘭、台湾寒蘭】最低5℃を保つ。

【補足】いずれも、極端な高温にあわせない。

解説

  1. 春蘭や恵蘭(「恵」の字は、正しくは上にくさかんむりが付く)、報歳蘭などと並ぶ、典型的な「東洋蘭」の一種である。寒蘭は、東洋蘭の中では人気があるほうで、良い株は、かなり値が張る。最初は、安価な育てやすい品種から始めたい。
  2. 東洋蘭の仲間は、株ごとに格付けがある。花や葉に変化がある株は「名品」と呼ばれ、ごく普通の株「並物」と区別される。「名品」のうち、八重咲きなど、花が美しいものは「花物」、斑が入るなど、葉が美しいものは「柄物」と呼ぶ。
  3. 寒蘭の柄物は、以前は「恵蘭」の仲間に含められていた。なお、「恵蘭」とは、特定の蘭の名称ではなく、複数の柄物東洋蘭の総称である。
  4. 寒蘭は一本の花茎に3~8輪の花を咲かせ、芳しい香りを放つ。名前からわかるように、冬咲き。花色や花型はきわめて変化に富む。新芽の彩りや花茎の伸び方、花の付く間隔まで観賞の対象とされる。
  5. 寒蘭は、日本だけでなく、中国や台湾にも分布する。とはいえ、最もよく栽培されるのは日本寒蘭である。
    • 日本寒蘭…産地によって、「阿波寒蘭」「紀州寒蘭」「薩摩寒蘭」「土佐寒蘭」「日向寒蘭」などの名で呼ばれる。それぞれに、多くの品種がある。
    • 中国寒蘭…中国南部に広く分布。「杭州寒蘭」以外はあまり見かけない。
      • 杭州寒蘭…浙江省のごく限られた地域(竜泉地区周辺)にのみ産する希少種。名前に反し、省都の杭州周辺には分布しない。11~1月に開花。やや寒さに弱い。寒蘭としては珍しく、花に香りが無い。
    • 台湾寒蘭…台湾に分布。花期が遅く、12~1月に開花。やや寒さに弱い。
  6. 寒蘭と春蘭の自然交雑種とされる春寒蘭(ハルカンラン)は、草姿が寒蘭に似ている。葉色・花型は、株によって差があり、春蘭に近いもの~寒蘭に近いものまでさまざま。花期は早春(株によっては秋)で、1本の花茎に2~4輪の花を咲かせる。育て方は寒蘭に準じる。

注意点・病害虫

  1. この仲間は、基本的に丈夫で育てやすいが、きわめて生長が遅く、新芽の発生が二年に一度になったり、一つの新芽が成熟するまで二年かかったり、ということがある。初期費用をケチって小苗を買うと、なかなか開花する大きさに育たないので、最低でも4~5本のバルブを持つ株を買いたい。
  2. 暖地性のランで、やや寒さに弱い。越冬中は0℃以上(できれば5℃)を保ち、凍らせないよう注意する。なお、加温の必要はない。寒蘭は冬季の高温にも順応する性質を持つが、徒長しやすいため、生育期間の限られる寒冷地でもない限り、加温する意味は薄い。
  3. 寒蘭は、シンビジウム属の植物で、学名を「シンビジウム・カンラン」という。しかし、洋蘭のシンビジウムとは異なり、直射日光や多肥を嫌うので注意。
  4. とはいえシンビジウムの一種なので、太い根が長く伸びる。深めの鉢での栽培が望ましい。駄温鉢でも十分育つが、専用の「東洋蘭鉢」のほうが見栄えがする。
  5. 東洋蘭の鉢は、なるべく地面や床などに直接置かず、栽培棚を用意し、やや高めの位置に置くのが望ましい。栽培棚が無理なら、鉢の下にスノコなどを敷いて、鉢底に風が通るようにする。鉢の転倒を防ぐため、専用の「ラン掛け」を使うのもよい。
  6. 植える土は、東洋蘭専用土を使えば、楽ができる。自分で作る場合は、硬質赤玉土、焼き赤玉土、硬質鹿沼土、川砂、桐生砂、富士砂などを混合する。鉢底にいくほど、土の粒が大きくなるように植え込む。(鉢底の3cmくらいが大粒、表土の1cmくらいが小粒、その中間が中粒の土。)
  7. 花色を鮮やかに発色させるには、赤・朱色系の濃色花なら強めの日光に当て、白・桃・黄・緑色系の淡色花なら弱い日光に当てながら咲かせる。

余談

  1. ラン科植物なので、花が食用になるほか、塩漬けにしてラン茶をつくる。

(※データ:大阪市基準)