コケ類
イメージ
原産地
世界各地
科
種類によって異なる
高さ
0.5~10cm(種類による)
花期
コケ類なので花は咲かない
形態
多年草(着生植物)
別名等
蘚/苔/モス
(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)
日照
戸外で10~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50~70%遮光)。
【補足】強い西日は禁物。多くの種類に耐陰性があるが、できる限り明るい場所で育てる。
水やり
コケの表面が乾けば与える。
【補足】高い空中湿度を好み、土の過湿をひどく嫌う。野生のコケは朝露や夜露で水分補給するので、できれば、水やりも早朝か夕方に行う。
酷暑期の日中に水やりすると、蒸れて枯れやすい(多少しおれても差し支えないので、夕方まで待つ)。ゼニゴケが生えるのは過湿の証拠。
肥料
不要(むしろ、施肥をすると枯れ込む)。
植え替え
3月上旬~6月上旬か、9月上旬~10月下旬。
【補足】コケを張り付けたら、上から押さえて密着させ、目土(赤玉土細粒など)を軽く振りかけて、たっぷり水やりする。コケが小量なら、土に浅い穴を開けてコケを差し込み、土を寄せて丁寧に植え付ける方法でもよい。コケと土がきちんと密着していないと枯れるので注意。
整姿
込みすぎると枯れてくるので、ときどき間引く。スギゴケの仲間には、放任すると20cm前後まで伸びる種類があるので、早春に、軽く刈り込む。(ただし、刈り込みによって緑色の部分が無くなると、枯死の危険性がある。)
雑草に巻かれると弱いため、きちんと除草する。蒸れの原因になるので、コケの上に落ち葉などのゴミがあれば、すぐに取り除く(冬の間は寒さ除けになるので必要ない)。
繁殖
【株分け】植え替えと同時期(手順は「植え替え」の手法に準じる)。
【まきゴケ】4月中旬~7月上旬か、9月上旬~10月中旬。(よく伸びたコケをむしり、そのまま清潔な用土にばら撒いて上からしっかり押さえ、目土を軽くふりかけた後、湿度を保つと根付く。)
耐暑性
やや弱く、日中の蒸れは禁物。
耐寒性
強いが、極寒地では防寒する。
解説
- コケの仲間は、「蘚(セン)類」「苔(タイ)類」「ツノゴケ類」の三つに分かれる。セン類は茎と葉の区別が明確(「茎葉体」という)だが、タイ類は、茎葉の区別が不明瞭な(「葉状体」という)種類を擁する。ツノゴケ類は葉状体の種類のみで構成される。なお、水槽などに発生する「藻(ソウ)類」や、樹上などに着生する「地衣(チイ)類」は、ここで取り上げている「コケ」ではない。
- 園芸的に栽培されるのは、主にセン類である。従って、ここではセン類だけを扱う。
- コケは世界各地に見られるが、日本には、かなりの種類が自生しており、固有種も多い。なお、コケには園芸品種が存在せず、栽培されるコケは全て野生種である。
- ひと口に「コケ」といっても、アオギヌゴケ科、カサゴケ科、ギボウシゴケ科、コウヤノマンネングサ科、シッポゴケ科、シノブゴケ科、シラガゴケ科、スギゴケ科、センボンゴケ科、タマゴケ科、チョウチンゴケ科、ハイゴケ科、ヒノキゴケ科、ミズゴケ科、など、多くの科にまたがっている。
- 一般に栽培されるのは、下記のような種類である。
- アオギヌゴケ科…アオギヌゴケ、ヒツジゴケ類、ヤノネゴケなど。
- ギボウシゴケ科…ギボウシゴケ類、スナゴケ類など。
- コウヤノマンネングサ科…コウヤノマンネングサなど。
- シッポゴケ科…シッポゴケ類、フデゴケ類など。
- シノブゴケ科…シノブゴケ類など。
- シラガゴケ科…シラガゴケ類など。
- スギゴケ科…スギゴケ類、タチゴケ類など。
- センボンゴケ科…ネジクチゴケ類、ハマキゴケ類など。
- タマゴケ科…サワゴケ類、タマゴケなど。
- チョウチンゴケ科…コツボゴケ、チョウチンゴケ類、ヘチマゴケ類など。
- ツヤゴケ科…ツヤゴケ類など。
- ハイゴケ科…ハイゴケなど。
- ハリガネゴケ科…カサゴケ類、ギンゴケ、ハリガネゴケ、ホソウリゴケなど。
- ヒノキゴケ科…ヒノキゴケ類など。
- ホウオウゴケ科…ホウオウゴケ類など。
- ミズゴケ科…ミズゴケ類など。
- コウヤノマンネングサは大きく茎が立ち上がり、まるで木のような姿になる。ハイゴケやヤノネゴケはほふく性。洋蘭の植え込み材料で有名なミズゴケは、湿地性のコケで、極端な乾燥を嫌う。ギンゴケやスギゴケ、スナゴケ、ハイゴケ、ハマキゴケ、ホソウリゴケなどは、適度な湿り気さえあれば、強めの日光でも耐える。
- コケは胞子で殖えるため、花は咲かない。が、早春頃になると、胞子の入った小さな袋(「蒴(さく)」という)を、上に向かってたくさん伸ばす。まるで花が咲いたように見えるため、これを「コケの花」と呼ぶことがある。
- コケは大きな園芸店、盆栽専門店などで売られているが、道端やコンクリート塀などにも生えている(ギンゴケ、ホソウリゴケなどが多い)ので、種類にこだわらなければ採取してくるのも手。(もちろん地権者の許可は必要。)また、鉢植え植物の土に勝手に生えてくることもある。身近な場所で採種したコケは、環境に適応しており、栽培しやすい。
- コケは盆栽の根元に張る以外にも、浅鉢に植え込んで観賞したり、グラウンドカバーに使ったり、と用途が広い。苔玉にも。
注意点・病害虫
- コケというと、じめじめした暗い場所を好むと思いがちだが、多くの種類は、明るい木漏れ日がよく当たる場所と、水はけのよい腐食質の土を好む。昼間から薄暗かったり、雨が降ったら水たまりになるような場所では育たない。
- コケを単体で栽培する場合、植え込む土は、やや粘土質で保水性・排水性に優れた基本用土(赤玉土・黒土など)を主体に、有機物(バーク堆肥・ピートモス・腐葉土など)や、砂(桐生砂・富士砂など)を適量混合したものを用いる。土の粒の大きさは、細粒が適する。
- 苔玉に使う土は、上記の配合では形が崩れるので、ケト土と等量混合する。
- 根を持たない(ただし、石などに張り付くための「仮根」はある)ため、植え込む鉢は浅鉢で足りる。むしろ、深い鉢に植えると過湿で枯れやすい。
- グラウンドカバーにする場合は、芝生と違い、踏みつけに弱い点に注意する。また、あまり広い範囲を覆うのは無理がある。さらに、真夏と真冬は葉が傷み、乾いて褐色になったり、部分的にはげたりする。
- 植えてあるコケの間から雑草が生えたら、早めに抜く。芝生とは違うので、除草剤は使えない。また、ゼニゴケが生えると、育てているコケが追いやられるため早めに除去する。なお、ゼニゴケは「タイ類」の一種である。
- コケは養分を吸収する根を持たないため、施肥は行わない。葉色が薄くなるなど、肥料が必要と思われるときは、2000倍に薄めたごく薄い液肥を、生育期間中、月に一~二度、コケ全体にかけてやる。
- コケ独特の繁殖法に、「まきゴケ」がある。コケをきちんと土に密着させ、根付くまで絶対に乾かさないようにする。生育の盛んな時期なら、わりと簡単に根付く。
- 市販の乾燥ミズゴケは、水を含ませると、まれに生き返って生長を始めることがある。そのまま放置すると、植えられている植物を覆い隠すほど茂り、生育を妨げるので、ミズゴケを別の鉢に移して栽培したほうがよい。
- 近年人気の「コケリウム」は、コケを主体に植えこんで作ったテラリウムである。作り方や管理は通常のテラリウムに準じるが、使えるコケは、湿潤な環境を好む種類に限られる。具体的には、オオカサゴケ、コウヤノマンネングサ、コツボゴケ、タマゴケ、ヒノキゴケ、ホソバオキナゴケなど。
余談
- 「盆景」は、植物を浅鉢に植え込んで、建物・動物などのミニチュア(小物)や、自然の石を飾り、大自然の情景を表現する文化である。コケを利用して作ることが多い。奥の深い世界だが、小物の種類が豊富で、可愛らしいものばかりなので、格式にとらわれず気軽に作ってみたい。
- クラマゴケは、名前にコケと付くが、コケではなくシダの一種である。属名のセラギネラで呼ばれることもある。黄緑色や青緑色の葉がとても美しいが、踏まれると枯れる。余談だが、タイ類に「クラマゴケモドキ科」という科がある。
- スパニッシュモス(スペインヒゲ)も、コケではなく、観葉植物のチランジアの一種である。育て方は、チランジアのページ参照。
各種の和名・異名
アオギヌゴケ科
- ヒメナギゴケ/姫梛蘚(オキシリンキウム・サバティエリ)
- ハネヒツジゴケ/羽羊蘚/羽根羊蘚(ブラキテキウム・プルモスム)
- ヒモヒツジゴケ/紐羊蘚(ブラキテキウム・ヘルミントクラドゥム)
- アオギヌゴケ/青絹蘚(ブラキテキウム・ポプレウム)
- キンモウヤノネゴケ(ブリーニア・トリコミトリア)
- ヤノネゴケ/矢の根蘚(ブリーニア・ノバエ-アングリアエ)
ギボウシゴケ科
- ケギボウシゴケ/毛擬宝珠蘚(グリミア・ピリフェラ)
- ホソバギボウシゴケ/細葉擬宝珠蘚(スキスティディウム・ストリクツム)
- エゾスナゴケ/蝦夷砂蘚(ラコミトリウム・ジャポニクム)
- コバノスナゴケ/小葉砂蘚(ラコミトリウム・バルブロイデス)
コウヤノマンネングサ科
- コウヤノマンネングサ/高野万年草/コウヤノマンネンゴケ/高野万年蘚/マンネンゴケ(いずれもクリマシウム・ジャポニクム)
- フジノマンネングサ/富士万年草(プレウロジオプシス・ルセニカ)
シッポゴケ科
- フデゴケ/筆蘚(カンピロプス・ウンベラツス)
- ヤマトフデゴケ/大和筆蘚(カンピロプス・ジャポニクス)
- シッポゴケ/尻尾蘚(ディクラヌム・ジャポニクム)
- カモジゴケ/髢蘚(ディクラヌム・スコパリウム)
- オオシッポゴケ/大尻尾蘚(ディクラヌム・ニッポネンセ)
シノブゴケ科
- トヤマシノブゴケ/外山忍蘚(ツイディウム・カネダエ)
- ヒメシノブゴケ/姫忍蘚(ツイディウム・シンビフォリウム)
- オオシノブゴケ/大忍蘚(ツイディウム・タマリスキヌム)
- アオシノブゴケ/青忍蘚(ツイディウム・プリストカリックス)
シラガゴケ科
- ホソバオキナゴケ/細葉翁蘚/ホソバシラガゴケ/細葉白髪蘚/ヤマゴケ/マンジュウゴケ(いずれもレウコブリウム・ジュニペロイデウム)
- オオシラガゴケ/大白髪蘚(レウコブリウム・スカブルム)
- アラハシラガゴケ/粗葉白髪蘚/アラハオキナゴケ/粗葉翁蘚/ヤマゴケ/マンジュウゴケ(いずれもレウコブリウム・ボウリンギー)
スギゴケ科
- ナミガタタチゴケ/波形立蘚(アトリクム・ウンドゥラツム)
- コスギゴケ/小杉蘚(ポゴナツム・インフレクスム)
- チャボスギゴケ/矮鶏杉蘚(ポゴナツム・オタルエンセ)
- ホウライスギゴケ/蓬莱杉蘚(ポゴナツム・シルラツム亜種フルカツム)
- オオスギゴケ/大杉蘚(ポリトリクム・フォルモスム)
- ウマスギゴケ/馬杉蘚(ポリトリクム・コムネ)
センボンゴケ科
- ホンモンジゴケ/本門寺蘚(スコペロフィラ・カタラクタエ)
- チュウゴクネジクチゴケ/中国捻口蘚(ディディモドン・コンストリクツス)
- コモチネジレゴケ/子持捻蘚(トルトゥラ・パゴルム)
- ヘラハネジレゴケ/箆葉捻蘚(トルトゥラ・ムラリス)
- カタハマキゴケ/片葉巻蘚(ヒオフィラ・インボルタ)
- ハマキゴケ/葉巻蘚(ヒオフィラ・プロパグリフェラ)
- ネジクチゴケ/捻口蘚(バルブラ・ウングイクラタ)
タマゴケ科
- タマゴケ/玉蘚(バルトラミア・ポミフォルミス)
- コツクシサワゴケ/小筑紫沢蘚(フィロノティス・スワイテシー)
- カマサワゴケ/鎌沢蘚(フィロノティス・ファルカタ)
- サワゴケ/沢蘚(フィロノティス・フォンタナ)
チョウチンゴケ科
- コバノチョウチンゴケ/小葉提灯蘚(トラキシスティス・ミクロフィラ)
- コツボゴケ/小壺蘚(プラジオムニウム・アクツム)
- オオバチョウチンゴケ/大葉提灯蘚(プラジオムニウム・ベシカツム)
- ケヘチマゴケ/毛糸瓜蘚(ポーリア・フレクスオサ)
- ヘチマゴケ/糸瓜蘚(ポーリア・ヌタンス)
- コチョウチンゴケ/小提灯蘚(ムニウム・ヘテロフィルム)
- ナメリチョウチンゴケ/滑提灯蘚(ムニウム・リコポリオイデス)
ツヤゴケ科
- ヒロハツヤゴケ/広葉艶蘚(エントドン・カレンゲリ)
- エダツヤゴケ/枝艶蘚(エントドン・フラベッセンス)
ハイゴケ科
- ハイゴケ/這蘚/オニゴケ/鬼蘚/ガーデンモス/フェザーモス(いずれもヒプヌム・プルマエフォルメ)
ハリガネゴケ科
- ホソウリゴケ/細瓜蘚(ブラキメニウム・エクシレ)
- ギンゴケ/銀蘚(ブリウム・アルゲンテウム)
- ハリガネゴケ/針金蘚(ブリウム・カピラレ)
- オオカサゴケ/大傘蘚(ロードブリウム・ギガンテウム)
- カサゴケ/傘蘚(ロードブリウム・ロセウム)
ヒノキゴケ科
- ハリヒノキゴケ/針檜蘚(ピルホブリウム・スピニフォルメ)
- ヒロハヒノキゴケ/広葉檜蘚(ピルホブリウム・スピニフォルメ変種バダケンセ)
- ヒノキゴケ/檜蘚/イタチノシッポ(いずれもピルホブリウム・ドジアヌム)
ホウオウゴケ科
- トサカホウオウゴケ/鶏冠鳳凰蘚(フィッシデンス・ドゥビウス)
- ホウオウゴケ/鳳凰蘚(フィッシデンス・ノビリス)
ミズゴケ科
- ホソバミズゴケ/細葉水蘚(スファグヌム・ギルゲンソーニー)
- オオミズゴケ/大水蘚(スファグヌム・パルストレ)
(※データ:大阪市基準)