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素人園芸解説 -私はこう育てる-

日本サクラソウ

イメージ

原産地

日本の高原地帯~シベリア東部・朝鮮半島・中国北東部

サクラソウ科

高さ

10~40cm(種類による)

花期

4~5月

【クリンソウ】5~6月

形態

宿根草

別名等

プリムラ・シーボルディー(学名)/桜草/ニホンサクラソウ/日本桜草/翠南報春/シーボルツプリムローズ


(※その他の種類の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

西日を避けた戸外の直射日光下(7月上旬~9月上旬は50%遮光)。

【補足】少し耐陰性があるが、なるべく日光に当てないと生育が悪い。

水やり

【日本サクラソウなど】土の表面が乾けば与える。

【クリンソウ】土の表面が乾ききる直前に与える(湿地性なので、水切れは厳禁。真夏のみ、腰水で管理する)。


【補足】この仲間は水切れを嫌うが、停滞水に弱い。雨に当てると根腐れしやすい。夏に地上部が無くなっても、根は生きているので、水やりは必要。

肥料

2~3月、花後すぐ、10月に、固形肥料の置き肥、加えて、4~6月に、週に一度、1500~2000倍に薄めた液肥を施す。

植え替え

【日本サクラソウなど】2月上旬~3月上旬、花後すぐ~7月上旬、9月下旬~11月下旬のいずれか(晩秋か早春に行うとよい)。

【クリンソウ】3月、花後すぐ~6月中旬、9月下旬~11月中旬のいずれか(秋が最適期だが、寒冷地では春か花後に行う)。


【補足】いずれも鉢植えは毎年、地植えは3~4年に一度行う。
日本サクラソウは、鉢土の表面が、鉢の高さの2/3くらいになるよう、土を少なめにして植える(後で増し土するため)。早春に植え替えた株は、生育がよければ、花後すぐにもう一度植え替えてもよい。

整姿

タネを取る予定がなければ、花後すぐに花がらを摘み取る。病気のもとなので、枯れた下葉はまめに取り除く。
日本サクラソウは、5月上旬~7月上旬と、9月の二回、株元に少しずつ増し土し、根や芽が露出するのを防ぐ。

繁殖

【株分け・根伏せ】植え替えと同時期。(早春に行うとよい。根伏せは、太い根か地下茎を数cm切り取り、植え付けて芽を出させる方法)。

【タネまき】採ってすぐにまくか、2月中旬~3月上旬。(好光性のため、覆土は薄く。発芽は春になってから。(湿らせて密閉し、1ヵ月ほど冷蔵庫に入れてからまくと発芽率が上がる。)

耐暑性

【クリンソウ・日本サクラソウ】わりと強いが、地上部は枯れ込む。

【その他の種類】弱い。

耐寒性

とても強い(-25~-30℃)。

解説

  1. プリムラの仲間のうち、シーボルディーという原種から改良された園芸品種群を、園芸上、「サクラソウ」または「日本サクラソウ」と称する。
  2. 日本サクラソウは、北海道南部~九州まで、日本各地(四国と沖縄を除く)に自生地があり、サクラに似た花を咲かせるため、この名前で親しまれている。やや暑さを嫌うが、プリムラの仲間では最も低地性の種類であり、比較的育てやすい。
  3. 江戸時代から品種改良が進められ、非常に数多くの品種が存在する。品種ごとに、花色・花型はきわめて多彩。
  4. 日本サクラソウの品種は、それぞれに、花のイメージに合った優雅な名前が付いている。例を挙げると、「朝日」「赤蜻蛉(あかとんぼ)」「明烏(あけがらす)」「宇宙」「隠れ蓑」「京鹿子」「喰裂紙(くいさきがみ)」「五大州」「獅子奮迅」「前代未聞」「伊達男」「南京小桜」「緋の袴」「無礼講」「北斗星」など。なお、「南京小桜」は、享保年間に作出された、現存する最古の品種である。
  5. カッコソウとシコクカッコソウは、関東北部や四国に自生する、日本サクラソウの近縁種である。同様に育てられるが、強い日光を避ける。その他、イワザクラやコイワザクラも、日本サクラソウと近縁の種類で、育て方も同じだが、耐暑性が劣る。これらの種類も、根伏せで殖やせる。
  6. クリンソウは、日本特産種で、草丈40~90cmにもなる大型種。湿地性の植物なので、水を切らさない。やはり暑さを嫌うが、栽培は比較的容易な種類。
  7. その他の日本産サクラソウ類には、オオサクラソウ、テシオコザクラ、ハクサンコザクラ、ヒナザクラ、ミチノクコザクラ、ユキワリコザクラ、ユキワリソウ、レブンコザクラなどがある。これらはいずれも、寒地性または高山性のため、暖地では夏に枯らしやすい。

注意点・病害虫

  1. 日本サクラソウは、根と新芽が土の表面に露出しやすい。花後すぐと秋の二回、株の周囲に土を足す。日本サクラソウ栽培において、最も大切な作業の一つなのでサボらない。
  2. 耐暑性があるとはいえ、夏場はできる限り涼しく過ごさせたい。乾燥に弱いが、過湿になるとあっけなく腐る。
  3. 4~5号鉢に、3~5芽程度植えるのが一般的。根がよく張るため、深めの鉢を使う。日本サクラソウ専用の「桜草鉢」もある。土は普通の培養土でも良いが、山野草専用土あたりが無難。
  4. 日本サクラソウは落葉樹の下に地植えすることも可能。
  5. プリムラの仲間は、株によって、雌しべが長く雄しべが短い花(長花柱花、またはピン花ともいう)の咲く個体と、雄しべが長く雌しべが短い花(短花柱花、またはブラシ花ともいう)の咲く個体がある。タネを採りたいときは、花型をよく見て、異なる型同士をかけあわせると、よく結実する。
  6. この仲間は、花後に、親株の周囲に子株ができる種類と、そうでない種類とがあり、植え替え適期が異なる。日本サクラソウ類、イワザクラ類、カッコソウ類、テシオコザクラ類は後者で、早春に植え替えるが、それ以外の種類(クリンソウを除く)は前者なので、花後すぐに植え替え、子株の生育を促す。なお、クリンソウは他の種類と異なり、秋が最適期。
  7. カッコソウのように、寿命が短く、ある時突然枯れる種類もある。日頃から、根伏せなどで後継株を作っておくと安心。
  8. アブラムシ、ナメクジ、ネコブセンチュウに注意。

余談

  1. カッコソウの原種は、いわゆる「種の保存法」により、有償・無償を問わず、流通が禁じられている。ただし、栽培は禁止されておらず、また、タネの流通は問題ない。なお、カッコソウの園芸品種や交配種は、そもそも保護の対象ではなく、栽培も流通も自由である。

各種の和名・異名

  1. オオサクラソウ/大桜草(エソアナ)
  2. エゾオオサクラソウ/蝦夷大桜草(エソアナ変種プベッセンス)
  3. カッコソウ/勝紅草(キソアナ)
  4. シコクカッコソウ/四国勝紅草(キソアナ変種シコキアナ)
  5. エゾコザクラ/蝦夷小桜(クネイフォリア)
  6. ハクサンコザクラ/白山小桜(クネイフォリア変種ハクサネンシス)
  7. ミチノクコザクラ/陸奥小桜(クネイフォリア変種ヘテロドンタ)
  8. クリンソウ/九輪草/ジャパニーズプリムローズ(いずれもジャポニカ)
  9. ソラチコザクラ/空知小桜(ソラチアナ)
  10. テシオコザクラ/天塩小桜(タケダナ)
  11. イワザクラ/岩桜(トサエンシス)
  12. シナノコザクラ/信濃小桜(トサエンシス変種ブラキカルパ)
  13. チチブイワザクラ/秩父岩桜(トサエンシス変種ロードトリカ)
  14. ヒナザクラ/雛桜(ニッポニカ)
  15. ヒダカイワザクラ/日高岩桜(ヒダカナ)
  16. カムイコザクラ/神威小桜(ヒダカナ変種カムイアナ)
  17. モデスタ変種マツムラエ(異名)/レブンコザクラ/礼文小桜(いずれもファリノサ亜種モデスタ変種マツムラエ)
  18. モデスタ(異名)/ユキワリソウ/雪割草(いずれもファリノサ亜種モデスタ変種モデスタ)
  19. ヒメコザクラ/姫小桜(マクロカルパ)
  20. サマニユキワリ/様似雪割(モデスタ変種サマニモンタナ)
  21. ユキワリコザクラ/雪割小桜(モデスタ変種フォウリエイ)
  22. ユウパリコザクラ/ユウバリコザクラ/夕張小桜(ユパレンシス)
  23. コイワザクラ/小岩桜(レイニー)
  24. クモイコザクラ/雲居小桜(レイニー変種キタダケンシス)
  25. ミョウギイワザクラ/妙義岩桜(レイニー変種ミョギエンシス)
  26. チチブイワザクラ/秩父岩桜(レイニー変種ロードトリカ)

サクラソウとは別属の種類。

  1. サクラソウモドキ(コルツサ・マッティオリ亜種ペキネンシス変種サハリネンシス)

(※データ:大阪市基準)