いろんな植物の育て方や知識をご紹介。

素人園芸解説 -私はこう育てる-

シダ類

イメージ

原産地

世界各地

種類によって異なる

高さ

5~150cm(種類による)

花期

シダ類なので花は咲かない

形態

多年草または宿根草(地生種・着生種の両方あり)

別名等

羊歯/デンダ/連朶/カグマ/ファーン


(※各種の和名・異名はこちらのページにまとめた)

日照

【常緑性種・夏緑性種】3月上旬~11月中旬の生育期は、戸外で10~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50~70%遮光)。
休眠期は、戸外で0~10%遮光。


【冬緑性種】9月上旬~5月下旬の生育期は、戸外で10~50%遮光。
休眠期は、日光に当てなくてよい。


【補足】いずれも耐陰性があるが、なるべく日光に当てる。着生種は遮光を弱く、地生種は強めにする。
ヒトツバ類、イワオモダカ、イノモトソウ類、シシガシラ、ベニシダなど一部の種類は、戸外の直射日光下でも大丈夫だが、半日陰で育てたほうが美しい葉になる。

水やり

生育期は、土の表面が乾けば与える(湿った場所を好むので、水切れは厳禁)。休眠期は、ごく控えめに。

【補足】湿度を好むとはいえ、度が過ぎると腐るため、雨に当てないほうがよい。葉が丸まったら水切れの合図。空中湿度を高く保ち、強い風にさらさない。夏場は、水やり以外に、葉水も欠かさず与える。
着生種は、冬に水やりが多いと枯れるので、月に一~二度くらいとする。(空中湿度は高く保ち続ける。)

肥料

4月上旬~6月下旬に、10~14日に一度の液肥。(生育が思わしくなければ、9月下旬~10月下旬にも施肥をする。)

【補足】秋の施肥は、窒素(N)を含まない肥料を与える。

植え替え

【常緑性種】3月上旬~4月下旬、5月下旬~7月上旬、9月上旬~10月上旬のいずれか。

【冬緑性種】6月中旬~7月中旬(休眠中に行う)。

【夏緑性種】2月下旬~3月下旬(萌芽前後に行うのが無難)。


【補足】2~3年に一度行う。地生種の場合、古土を落とすのは最小限とし、あまり根をいじらない。
着生種は、ヘゴやコルクなどに着生させると楽(着生作業は初夏が最適期)。

整姿

枯れた下葉は、まめに取り除く。

繁殖

【株分け】植え替えと同時期。

【挿し芽・取り木】4~7月(挿し芽はイワヒバ類、取り木はヒカゲノズラ類で可能)。

【子株採取】4~9月(子株を出す種類のみ)。

【胞子まき】採ってすぐにまく。(通常は6~9月。土はかけない。)
(あらかじめ湿らせた清潔な水苔やピートモスなどに胞子を直接まき、透明なビニール袋などでフタをして、明るい日陰に置く。水やりは霧吹きで行う。前葉体ができるまで約2~4ヵ月かかり、葉が出るまでさらに数ヵ月かかる。)

耐暑性

わりと強いが、強光と乾燥に注意。

【寒地性・山地性・高山性種】弱い~とても弱い。

耐寒性

強い(-20℃)が、寒地では必ず防寒し、凍らせない。

【暖地性種】最低5℃を保つとよい。

【亜熱帯~熱帯性種】最低10℃を保つとよい。

解説

  1. ひと口に「シダ類」と言っても、イノモトソウ科、イワデンダ科(メシダ科)、ウラボシ科、オシダ科、シノブ科、ゼンマイ科、チャセンシダ科、ツルシダ科、ハナヤスリ科、ヒメシダ科など、かなり多くの科にまたがっている。従って、育て方を一つのページにまとめるのは乱暴だが、いちおう基本的な事柄を載せてみた。
  2. 非常に種類が多く、半日陰を好む種類と、日向を好む種類がある。ヒカゲノカズラの仲間は名前に反し、強い日光を好む。
  3. また、常緑性種と落葉性種がある。落葉性種は、冬に葉を枯らす「夏緑性種」と、アオネカズラやフユノハナワラビのように夏に葉を枯らす「冬緑性種」がある。冬緑性の種類は、常緑性種と同様に扱う。なお、常緑性種といっても、冬に枯れ込む種類も混じっている(暖かい地域では常緑でも、寒い地域では夏緑性となることが多い)。
  4. さらに、地生種と着生種にも分かれる。大雑把に言って、地生種は一箇所から複数の葉柄を出してモサモサと茂るが、着生種は葉数が少ない傾向がある。
  5. 着生種の代表格は、シノブであろうか。夏になると、しばしば苔玉の状態で売られている。半日陰で管理するが、日向でも育つ。冬に落葉する。よく似たトキワシノブは台湾原産で、名前の通り常緑性種。こちらは半耐寒性なので、暖地以外では、室内で越冬させる。
  6. 着生種は他に、イワオモダカやマメヅタ、ノキシノブ、ヒトツバ、ビロードシダなどを比較的よく見る。日光を好むが、半日陰で育てたほうが葉は美しくなる。いずれもウラボシ科に属し、常緑性種である。
  7. 地生種は、基本的に半日陰~日陰向きである。主な種類だけでも、常緑性種なら、イノモトソウ、シシガシラ、タマシダ、ベニシダ、マツザカシダ、落葉性種なら、クサソテツ、クジャクシダ、ジュウモンジシダ、ゼンマイなどがある。
  8. カニクサは、数少ないつる性種である。つるの長さは数mに達するが、冬は枯れこみ、地下の根茎だけになる。このつるは、実は、一枚の葉が長く伸びたものらしい。至る所で見られる雑草。
  9. 雑草のスギナ(ツクシ)もシダの仲間で、トクサ科に属する。ツクシはスギナの胞子茎で、胞子を出した後、間もなく枯れる。また、水辺などに植えられるトクサの仲間もトクサ科に属し、スギナに近縁のシダ植物である。トクサは別ページで解説済み。
  10. 古典園芸植物として知られるイワヒバ、マツバランもシダの仲間である。いずれも園芸品種が多い。また、半日陰~日陰地のグランドカバーに用いられるコンテリクラマゴケも同様。空中湿度の高い、涼しい場所を好む。
  11. 観葉植物として出回る、アジアンタムやアスプレニウム、トクサ、ネフロレピス、プテリス、ブレクナムなども、もちろんシダである。いずれも別ページで解説済み。
  12. シダ類には、水生植物もある。浮遊性のアカウキクサやオオアカウキクサ、一年草のサンショウモの他、四つ葉のクローバーそっくりのデンジソウ、ニラに似た葉を水上に伸ばすミズニラ、切れ込んだ細い葉を持つミズワラビなどが該当する。荒木田土など、重めの土に植え、鉢ごと水に沈めて育てる。
  13. シダの仲間は葉に胞子をつけるが、種類によって、葉裏につけるものと尾表につけるものがある。また、胞子を付ける葉(胞子葉)と、付けない葉(栄養葉)が、明確に分かれている種類もある。この場合は、胞子葉と栄養葉の形は、異なっていることが多い。
  14. 種類によっては、葉の一部やランナーの先などに子株を付ける。アマミデンダ、カミガモシダ、コモチデンダ、ジョウレンシダ、チャセンシダ、ツルデンダ、ハチジョウカグマ、ヌリトラノオ、ヒノキシダなどが該当する。子株がある程度育ったら独立させる。
  15. シダ類は古典園芸植物の一つでもあり、古くから、葉の変化(葉芸)が珍重されてきた。特に、ヒトツバやシノブ、タマシダの仲間が顕著で、斑入りや、獅子葉(葉先が細かく分枝)の品種がいくつか現存する。

注意点・病害虫

  1. どの種類も、極端な乾燥に弱い反面、根茎周辺の停滞水を嫌うため、水はけに注意する。水ゴケに植えるのもよい。
  2. また、乾いた風も大の苦手とする。頻繁に葉水を与えたり、水辺で育てたり、他の植物と一緒に栽培するなどして、空中湿度を高めに保つ。
  3. 植える鉢は、普通の焼き物鉢やプラ鉢でよいが、軽石鉢のような、岩を削った鉢に植えると、風情が出るうえ、夏越しの難易度が下がる。着生種なら、ヘゴやコルク、流木などに着生させて吊るすのもよい。なお、あまり深い鉢に植えると過湿害を受けやすくなる。
  4. 用土は、山野草専用土が使いやすい。着生種なら、水ゴケも適する。自分で作る場合は、赤玉土・桐生砂・軽石砂などを混合する。堆肥や腐葉土といった有機物は入れないほうがよい。
  5. 土の酸度は中性~弱酸性。ただし、アジアンタム属と、ヒカゲノズラ科に属する種類は酸性がよい。なお、アオネカズラ、イチョウシダ、エビガラシダ、オオヒメワラビモドキ、キンモウワラビ、コシダ、コバノヒノキシダ、ナガバヤブソテツ、ヒメウラジロ、ヒメカナワラビ(キヨスミシダ)、ビロードシダ、メヤブソテツのように、石灰質を好む種類もある。
  6. シダの仲間にはナメクジがよく来るので、鉢植えは、地面に近いところに置かないほうがよい。その他、カイガラムシやコナジラミにも気を付ける。

余談

  1. クサソテツの新芽は、コゴミと呼ばれ、山菜の一種である。ゼンマイとワラビはいうまでもない。キヨタキシダやミズワラビ、ヤシャゼンマイも食べられるらしい。

各種の和名・異名はこちらのページにある。(あまりに数が多いため、別ページに分けた。)

(※データ:大阪市基準)