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素人園芸解説 -私はこう育てる-

シュンラン

イメージ

原産地

日本(北海道南部~九州)・朝鮮半島・台湾・中国の浙江省周辺

ラン科

高さ

8~30cm

花期

1~5月(種類による)

形態

多年草(地生種が多いが、着生種もある)

別名等

シンビジウム・ゴエリンギー(学名)/シンビジウム・フォレスティー(異名)/春蘭/ホクロ/黒子/ハクリ/ホックリ/ジジババ


(※その他の種類の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

戸外で0~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50%遮光)。

【補足】西日に当てないほうがよい。日本春蘭は比較的強光を好む。

水やり

土の表面が乾けば与える(乾き気味に管理)。

【補足】変形の原因になるので、花やつぼみに水をかけない。花芽分化期(7~8月)に水やりを控えめにすると、花芽が付きやすくなるが、乾かし過ぎに注意。

肥料

4月上旬~11月下旬に、7~10日に一度、1500~2000倍に薄めた液肥を施す。加えて、4月と9月に、固形肥料の置肥。

【補足】開花中は施肥をしない。秋の施肥は、窒素(N)を含まないものを用いる。柄物(斑入り葉の品種)は、緑葉の種類より少なめの施肥を心がける。

植え替え

3月、花後すぐ~5月下旬、9月上旬~10月下旬のいずれか(開花中は避ける。花後すぐが最適期)。

【補足】1~3年に一度行う。腐った根は取り除き、生きた根は切らない。

整姿

斑入りの品種は、緑一色の葉が出たら小さいうちに摘み取り、新しい芽を出させる。葉の斑を大切にしたければ、花芽が出次第摘み取り、咲かせないほうがよい。
花が終わったら、花茎を取り除く(株元を押さえながら引っ張れば抜ける)。

繁殖

【株分け・バルブ伏せ】植え替えと同時期(バルブ伏せは、葉のないバルブを2~3個ずつ植え付け、芽を出させる)。

【タネまき】採ってすぐ、親株の根元にまく。

耐暑性

強いが、強光に注意。

耐寒性

やや弱く(-5℃)、寒地では室内へ。

【中国春蘭、台湾春蘭】最低5℃を保つ。


【補足】いずれも高温にあわせない。日本春蘭は寒さに強いが、凍らせるのは厳禁。

解説

  1. 「東洋蘭」の代表格で、きわめて品種が多く、高い人気を誇る。気難しそうに見えるが、とても丈夫な植物で、そう簡単に枯れない。とはいえ、名品は大変高価なため、最初は、安価な普及種から始める。
  2. 古典園芸植物なので、品種ごとに格付けがある。花や葉に変化がある株は「名品」と呼ばれ、ごく普通の株「並物」と区別される。「名品」のうち、八重咲きなど花が美しいものは「花物」、斑が入るなど葉が美しいものは「柄物」と呼ぶ。
  3. 春蘭は日本のみならず、東アジア地域に広く分布しており、地域変異が激しく、変種・亜種が多い。日本では、産地によって、「日本春蘭」「中国春蘭」「台湾春蘭」の三系統、または「韓国春蘭」を加えた四系統に分ける。
    • 日本春蘭…日本各地に分布。早春~春咲きで、花に香りがほとんど無い。1本の花茎に花が1輪咲く。寒さに強い。柄物が豊富。長崎・対馬には、「香い春蘭(ニオイシュンラン)」と呼ばれる、花に芳香を持つ系統が存在するが、市販されることはまず無い。
    • 中国春蘭…中国の温帯地域に広く分布。花に芳香を持つ。やや寒さに弱く、冬は最低5℃前後を保つと安全。花型が豊富。性質が強く、栽培容易。厳密には日本春蘭とは別種だが、同様に扱われる。
      • 一茎一花…早春咲き。1本の花茎に花が1輪咲く。姿が日本春蘭によく似ている。
      • 一茎九花(イッケイキュウカ)…春~初夏咲き。1本の花茎に花が6~13輪咲く。厳密には、春蘭とは別種だが、同様に扱われる。
    • 台湾春蘭…台湾の中部~北部に分布。中国春蘭に近縁で、花に芳香を持つ。中国春蘭よりさらに寒さに弱く、冬は最低5℃を保つ。厳密には日本春蘭とは別種だが、同様に扱われる。
      • 阿里山春蘭(アリサンシュンラン)…雪蘭とも呼ぶ。早春咲き。1本の花茎に花が2輪咲く。
      • 糸蘭(イトラン)…早春咲き。1本の花茎に花が1~2輪咲く。葉幅がとても細く、草丈も低め。
      • ピアナン…早春咲き。1本の花茎に花が2~3輪咲く。やや大型。名は台湾の地名に由来するらしい。高山性のため、栽培しにくい。
    • 韓国春蘭…韓国東部~南部と済州島に分布。姿・性質ともに日本春蘭によく似ている。済州島には、日本のものと同様の「香い春蘭」がある。
  4. その他、春蘭と寒蘭の自然交雑種とされる春寒蘭(ハルカンラン)というものがあり、草姿が寒蘭に似ている。花型や花色は株によってさまざまで、春蘭に近いもの~寒蘭に近いものまである。花期は早春(株によっては秋咲きもある)で、1本の花茎に2~4輪の花を咲かせる。栽培は寒蘭に準じる。

注意点・病害虫

  1. この仲間は、いずれも、冬の洋蘭ギフトでおなじみのシンビジウムと同属の植物である。しかし、洋蘭ではないので、水や肥料は少なめがよい。
  2. とはいえ、やはりシンビジウムの一種なので、地上部の大きさの割に、太い根が長く伸びる。そのため、やや深めの鉢に植えたほうがよい。専用の「東洋蘭鉢」というものもあり、プラスチック製~焼き物製まで、いろいろ揃っている。最も良いのは楽焼きの鉢だが、高価で困る。
  3. 植える土は、東洋蘭専用土を使うと、楽ができる。自分で作るなら、硬質赤玉土、焼き赤玉土、硬質鹿沼土、川砂、桐生砂、富士砂などを混合する。鉢底の3cmくらいに大粒、表土1cmくらいに小粒、その中間に中粒の土がくるように植え込む。(つまり、鉢底に近いほど土の粒を大きくする。)
  4. 日本春蘭は寒さに強く、ほぼ日本中で地植えが可能。水はけのよい落葉樹の下が最適。寒地でも、雪に覆われてさえいれば、かなりの寒さに耐える(-15℃まで)。ただし、凍結させるのは禁止。
  5. 花色をよく発色させるには、赤・朱色系の濃色花なら強めの日光に当て、白・桃・黄・緑色系の淡色花なら弱い日光に当てながら咲かせるのが原則。
  6. 東洋蘭を植えた鉢は、なるべく、地面や床などに直接置かず、下にスノコなどを敷き、鉢底に風が通るようにする。専用の「ラン掛け」を使うのもよい。
  7. ウイルス病に注意。新葉に淡いかすり状の模様や、黒い壊疽斑が現れたら危険信号である。春蘭に限らず、シンビジウムの仲間はウイルスに冒されやすい傾向がある。

余談

  1. 花と花茎は食用になるほか、塩漬けにしてラン茶をつくる。
  2. 東洋蘭の代表格は春蘭と寒蘭であるが、東洋蘭の仲間は他にもある。いずれも、栽培は春蘭に準じるが、やや遮光気味に育てる。また、下記の種類は、いずれも暖地性で寒さに弱いため、冬は最低5℃、できれば8℃を保つ。
    • 金稜辺(キンリョウヘン)…蜜蜂蘭とも呼ぶ。中国中南部~台湾に分布。半着生種。4~6月に開花。1本の花茎に多数の花を付ける。芳香は強くないが、日本蜜蜂が集まることで有名。変種に、淡黄緑色の花を咲かせる「白花金稜辺」がある。
    • 恵蘭(ケイラン)…(「恵」の字は、正しくは上にくさかんむりが付く。)特定の蘭の名前ではなく、複数の柄物東洋蘭の総称である。主に中国南部~台湾・東南アジアにかけて分布し、1本の花茎に7~13輪の花を咲かせる。花に芳香を持つ種類が多い。葉の幅により、二系統に分かれる。
      • 細葉恵蘭…駿河蘭(スルガラン)、玉花蘭(ギョッカラン)、雌蘭(メラン)、素心蘭(ソシンラン)、小蘭(コラン)、寒鳳蘭(カンポウラン)など。
      • 広葉恵蘭…報歳蘭など。
    • 中国奥地の蘭…文字通り、中国南部の奥地~東南アジア・ヒマラヤ一帯に分布する東洋蘭の総称。二系統に分かれる。分類が未整理の種類が多い模様。
      • 一茎一花または二花…豆弁蘭(ズベンラン)、朶々香(ダダコウ)など。春蘭の仲間だが、個体変異が豊富なためか、別物として扱われることが多い。
      • 一茎多花…春剣蘭(シュンケンラン)、春緑蘭、蓮弁蘭、大雪蘭など。なじみが薄い。どちらかというと、東洋蘭ではなく、洋蘭のシンビジウムの原種として紹介されることが多い。
    • 梛蘭(ナギラン)…関東以南~東南アジア・ヒマラヤなどに分布。7月に開花。葉幅がとても広く、東洋蘭には見えない。1本の花茎に2~8輪の花を咲かせる。小型種で生育は遅い。変種に、花期の遅い「秋咲き梛蘭」がある。
  3. 上記のうち、恵蘭の仲間は非常に多いため、ここでもう少し詳しく記す。外国産の恵蘭は、やや山地性で、蒸し暑さを嫌う傾向がある。
    • 細葉恵蘭…葉の幅が細い系統。
      • 駿河蘭…「雄蘭(オラン)」とも呼ぶ。日本の暖地・中国南部~インド・東南アジアに広く分布。江戸時代より駿河地方(静岡県)で愛培されてきたため、この名がある。大型で立性。7~9月に開花。1本の花茎に3~8輪開花し、芳香を放つ。
        • 焼刃蘭、古今輪、岩古今輪…上記の駿河蘭に近縁とされ、姿も性質もよく似ている。駿河蘭と同一と見る向きもある。
      • 玉花蘭…九州南部~中国中南部に分布。新芽が赤みを帯び、葉にクリーム色の覆輪斑が入る。やや葉幅が広い。性質等は駿河蘭に準じる。
        • 青玉花…玉花蘭と同一種で、葉に斑が入らないものをいう。
      • 雌蘭…中国福建省に分布。上記の雄蘭(駿河蘭)に対し、葉が枝垂れ性で、柔らかな草姿をしていることから名付けられた。性質等は駿河蘭に準じる。
      • 素心蘭…九州南部~台湾・中国中~南部に分布。8~10月に開花。1本の花茎に3~6輪開花し、芳香を放つ。葉の幅によって「広葉系(大葉系)」と「細葉系」に分かれ、生産地によって、さらに細かく分類される。この仲間は名前の通り、花色がほぼ白に近く、花弁・唇弁に模様が入らないのが特徴。花付きは悪い。
        • 玉チン蘭…(「チン」の漢字は、「沈」のさんずいを、さかなへんに変えた字。)性質等は素心蘭に準じる。
        • 新竹蘭(シンチクラン)…「赤芽素心蘭」の名でも知られる。台湾に分布。素心蘭に似るが、新芽が赤みを帯びており、また、花が素心(=無地)ではなく、赤紫色の模様が入る。
      • 小蘭…九州南部~台湾・中国中~南部に分布。8~9月に開花。1本の花茎に3~5輪開花し、芳香を放つ。名前の通り、もっとも小型の東洋蘭。やや高山性で栽培しにくい。
    • 広葉恵蘭…葉の幅が広い系統。
      • 報歳蘭…屋久島・中国南部~台湾に分布。1~2月に開花。1本の花茎に5~10輪、時には十数輪も開花し、芳香を放つ。東洋蘭の中では最も大型。葉や花の差違によって、下記のように分類されている。
        • 中国報歳蘭…大型で、葉が立ち葉である。
        • 大明蘭(タイミンラン)…葉がやや枝垂れ性で、葉先がよじれるのが特徴。
        • 台湾報歳蘭…全体的にやや小型。優れた品種が多数存在するため、恵蘭の仲間としては、最も人気が高い。

各種の和名・異名

  1. アキザキナギラン/秋咲梛蘭(アスピディストリフォリウム)
  2. スルガラン/駿河蘭/雄蘭/建蘭/地蘭/馬耳蘭/四季蘭(いずれもエンシフォリウム)
  3. カンラン/寒蘭(カンラン)(※学名と和名が同一)
  4. ピアナン(グラシリムム)
  5. ホソバシュンラン/細葉春蘭(ゴエリンギー品種アングスタツム)
  6. コラン/小蘭/姫蘭(いずれもコラン)(※学名と和名が同一)
  7. ホウサイラン/墨蘭/報歳蘭/報才蘭/ハッカホウサイ/客家報歳/中国報歳(いずれもシネンセ)
  8. ランシフォリウム(異名)/ナギラン/梛蘭/兎耳蘭(いずれもナギフォリウム)
  9. ホシガタナギラン/星型梛蘭(ナギフォリウム品種コンフォルメ)
  10. ハルカンラン/春寒蘭(ニシウチアヌム)
  11. ナギノハヒメカンラン/梛葉姫寒蘭(ノマチアヌム)
  12. 一茎九花(ファベリ)
  13. 台湾シュンラン/カヤラン(いずれもフォルモサヌム)
  14. 中国シュンラン/シナシュンラン(いずれもフォレスティー)
  15. タイワンカンラン/台湾寒蘭(プルプレオヒエマレ)
  16. オオナギラン/大梛蘭(ランシフォリウム)

以下の種類は、学名不詳。

  1. 雪蘭/阿里山春蘭(アリサンシュンラン)
  2. 玉珍蘭/玉チン蘭/魚チン蘭(ギョクチンラン)
  3. 玉花蘭/多花蘭(ギョッカラン)
  4. 赤芽素心蘭/新竹蘭(シンチクラン)
  5. 彩辺墨蘭/大明蘭/太明蘭(タイミンラン)
  6. 雌蘭/ショウラン(メラン)

(※データ:大阪市基準)