ハナショウブ
イメージ
原産地
日本(沖縄除く)・朝鮮半島・シベリア南部~東部・中国東北部
科
アヤメ科
高さ
40~120cm(種類による)
花期
5~6月(種類による)
形態
多年草
別名等
イリス・エンサタ変種エンサタ(学名)/花菖蒲/ジャパニーズアイリス/ジャパニーズウォーターアイリス/ジャパニーズフラッグ
ケンプフェリ(異名)/ノハナショウブ/野花菖蒲(いずれもエンサタ変種スポンタネア)
日照
戸外の直射日光下。
水やり
土の表面が乾けば与える(湿地性のため、水切れは厳禁)。
【補足】真夏は浅い腰水にするとよい。水生植物ではないので、過湿にしすぎない。
肥料
3月上旬~7月上旬、10月に、固形肥料の置き肥(比較的、多肥を好む)。
【補足】秋の施肥は、窒素(N)を含まない肥料を用いる。植え替え直後の株は、2~3週間待ってから与える。
植え替え
花後すぐ~7月中旬か、8月下旬~10月上旬(花後すぐが最適期)。
【補足】鉢植えは毎年、地植えは3~4年に一度行う。作業時、葉を1/3~1/2に切り詰めるが、このとき、外側の葉ほど短くするとよい(扇形のイメージ)。
整姿
一番花が終わったら、早めに花がらを摘み取る。
繁殖
【株分け】植え替えと同時期。
【タネまき】採ってすぐにまくか、保存して3~4月にまく(タネからだと、開花まで二年かかる)。
耐暑性
わりと強いが、乾燥に注意。
【ノハナショウブ】やや弱い。
耐寒性
とても強い(-20~-30℃)。
解説
- 「ハナショウブ」という名は、日本に自生するノハナショウブから改良された園芸品種群の総称である。古典園芸植物の一つでもある。
- きわめて品種が多く、系統によって草姿や花型が異なる。最近は、別系統同士の複雑な交配種が増え、下記のような系統分類の意味合いが薄れつつある。
- 江戸系…江戸時代後期、天保年間の成立。草丈が高く、群植向き。花は平べったい形に咲く(平咲き)。奇形花など、花型の変化が多い。風雨に強い。
- 菖翁花…江戸時代後期の旗本、松平左金吾定朝(「菖翁」と号した)が作出した江戸系の古い品種群を、特にこう呼ぶ。一部が現存する。
- 伊勢系…江戸後期より成立。紀州藩士、吉井定五郎が作出した品種群。草丈が低く、花弁が垂れ下がる。優美で繊細な花が多く、花色も淡色系が主流。花弁の垂れ方によって、「怒肩型」「地蔵肩型」「富士型」などに分かれる。「伊勢三花」の一つ。
- 肥後系…江戸末期、天保年間より成立。江戸系(菖翁花)から改良された系統。鉢植え向きで、草丈が低め。大輪で豪華な花が多い。
- 長井古種…山形県長井市に保存されている品種群。上記の三系統とはまったく別の系統で、江戸時代中期頃の成立とみられ、ハナショウブの園芸品種群としては最古である。原種のノハナショウブの面影を強く残す、素朴な花が多い。
- 江戸系…江戸時代後期、天保年間の成立。草丈が高く、群植向き。花は平べったい形に咲く(平咲き)。奇形花など、花型の変化が多い。風雨に強い。
- 最近は、アメリカなどで改良された、外国系のハナショウブも導入されている。洋風の豪華な花が多い。
- ハナショウブの世界では、外側に垂れ下がった花弁(正確には花被片)を「英」と呼ぶ。花型は、花弁が三枚の三英花、四枚の四英花、六枚の六英花、花弁がさらに多い八重咲きなどがある。その他、数多くの奇花がある。
- 黄色い花を咲かせる別種のキショウブと近縁で、種間交配種が作られている。ハナショウブの黄花品種は、大抵、キショウブの血を引いている。(純粋なハナショウブには、黄色の花を咲かせるものはない。)
- 葉の中心に、はっきりと隆起した葉脈(主脈)が一本あり、これがアヤメやカキツバタなどとの大きな違いである。ちなみに、キショウブも同じ特徴をもつ。
注意点・病害虫
- 水を好むが、水生植物ではない。カキツバタのように水に沈めて育てたりすると、根腐れしてしまう。見頃を迎えた花菖蒲園において、株の周りに水が張られているのは、管理上の都合、および観賞上の演出である。花どき以外は、普通の土で栽培されている。
- 草丈が高くなるので、鉢植えの場合、最低でも6号鉢に一株とする。
- 連作を嫌う。鉢植えなら毎年株分けし、新しい土で植え替えないと、3~4年で生育が衰え、消えてしまう。
- 時に、葉が黄色くなり、萎縮して、よく育たないことがある。(「萎縮病」や「疫病」らしい。)不治の病気なので、土ごと処分する。ハナショウブは、急に具合が悪くなって枯れることがあるので、日頃から株分けなどで予備を作っておいたほうがよい。
- アヤメキバガ(ズイムシ)が発生すると、茎の内部や花芽が食害されるので、オルトランなどで予防する。
余談
- 端午の節句にショウブ湯として用いるのは、このハナショウブではなく、サトイモ科のショウブの葉である。ハナショウブの葉に薬効は無く、それどころか、肌の敏感な人はかぶれる恐れがあるので、間違えない。
(※データ:大阪市基準)